ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「恨ミシュラン」 神足裕司・西原理恵子

2007-12-03 09:26:46 | 
正直、味覚には自信がない。

舌の味覚よりも、胃袋の満腹感を優先するためた。また、嫌な人と食べる名店の料理よりも、気の合う友人たちと安い居酒屋でなごやかに食べるほうが好きなせいでもある。味覚なんて気分次第と思っている。

おそらく、生涯で一番美味しいと思った味は、標高3000メートルの稜線上で、台風並みの低気圧に襲われた時のドライカレーだと思う。立って歩けないほどの強風と豪雨のなか、命からがら辿り着いた避難小屋(大きなドラム缶)。あり合せの食材で作ったドライカレーは、生き延びられた喜びの味だった。

あまりに感動的な味だったが、同じ食材で自宅で作ったドライカレーは、お世辞にも美味いとは言えない味だった。

そんないい加減な味覚の私でも、やっぱり美味しい食事には関心が高い。幸か不幸か、日本一の高級(高価格だと思うが・・・)繁華街である銀座で働いているので、人並みにグルメご用達の店で食事をしたことは少なくない。さすがに値段が値段だ。不味いとは言わない。ただ、あの値段なら、あの味は当然との思いはある。

しかし、世の中には高い値段にも関らず、味もサービスも低調というお店が実在する。私的な会話でなら、「あの店、最低~!」と口にすることは容易い。しかし、公の場で、とりわけ活字媒体などでそれを公言するのは、案外勇気がいる。営業妨害等で訴えられたり、苦情の電話に四苦八苦するのが目に見えているからだ。

それにも関らず、その暴挙を敢行したのが表題の本だ。雑誌週刊朝日の連載をまとめたものだが、穴吹編集長(当時)、よくぞこの企画を了承したものだと思った。実際問題、言いたい放題の二人に我慢が出来ずに、抗議の電話などが相当いったようだ。しかし、それ以上に読者がこの企画を支持した。

「王様の耳はロバの耳」と誰もが言いたかったのだろう。それを雑誌というマスメディアで堂々やってのけたがゆえに、この本は売れた。弱いやつに喧嘩を売っても、それは弱いもの虐めに過ぎない。強い奴に売ってこそ、喧嘩の花は鮮やかに輝く。打ち上げ花火のように散る定めではあるが、その輝きは爽快だった。

三巻も刊行されたのだが、私が実際に行ってみて、美味しいと思った(神足氏、西原女史も劇賞)のは、恵比寿の「イル・ボッカローネ」。パスタの茹で加減も絶妙だったが、なにより食材の質が高かった。特に宣伝もしていなかったが、肉の質のよさには感激した。悪口を言う企画で、逆に二人が褒めてしまった店こそ、本当に美味しい店だった。

でも、本当は自分の足で探し、自らの舌で判断するのが大事だと思う。私自身は、グルメ雑誌などの情報よりも、知人の評判などの口コミの方を頼りにしています。でも、たまにはグルメ・ガイドなどに頼って冒険してみるのもいいかも。ほとんどの場合、期待値以下だけど、稀に当りもありますからね。

人生、あたりもはずれもあるものですって。
コメント (6)
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