ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「21世紀(この国は買い、この国は売り)」 ジム・ロジャース

2007-12-27 11:38:51 | 
株には痛い目にあっている。

新入社員の頃、証券会社の外交員に勧められるままに安易に株を買っていた。わかったような振りして買っていたが、当時ろくに決算書も読めなかったし、罫線読みも知らない世間知らずだった。

二年後に退職したときも、株のことは念頭になく、気がついたら買値を割り込んでいた。病気療養中に税理士試験に挑むため、その資金として止む無く株を売り払ったが、売却損であったことは言うまでもない。以来、どうも投資には苦手意識がある。

そんな私でも、ジム・ロジャースの名前は知っていた。白状すると、かなり胡散臭いと思っていた。表題の本は、彼がオートバイで世界を駆け巡った旅行記だ。

アイルランドに始まり、ヨーロッパ、中央アジア、中国を抜けて一度、日本に渡り一休み。日本海をわたりシベリアのツンドラ地帯を抜けて、再びヨーロッパへと戻る。次はアフリカを縦断し、南北アメリカをバイクで縦断した大旅行だ。

前人未到のバイク旅行だと思うが、面白いのは彼がいつでも投資家の目でその訪れた土地をみていることだ。その視点には、驚くと同時に感心もする。投資家らしく市場による調整機能こそ最上のシステムだと信じているが、必ずしも民主主義至上論者ではない。政府や国家に対する醒めた目線が、その投資の根幹にあるように思う。

さらに付け加えるなら、彼は相当に歴史を勉強しているようだ。欧米のみならず、アフリカ、アジアも調べているようで、歴史的な観点から、その地を観察することを怠らない。

投資の秘訣を「損をしないこと」だと言い切り、そのためには資金を寝かすことも厭わない。投資の判断に現地の情報のみならず、歴史的背景と未来への展望を加味することを欠かさない。

この本は、オートバイによる世界旅行記なので、投資について語ったものではないはずだが、そこかしこに彼の投資哲学が覗けるのが非常に興味深い。いつか来日(時折、来ているらしい)したら、講演聴きに行ってみようかな。
コメント (2)
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