ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「冷たい方程式」 トム・ゴドウィン

2007-12-08 13:05:00 | 
どうしようもないことって、たしかにある。

この方程式には、解はひとつしかない。どうしようもなく、ひとつしかない。

遠く離れた星にいる兄に逢いたくて、宇宙船に密航した少女。でも、その宇宙船にはパイロット一人分ギリギリのエネルギーしか搭載されていない。密航に気がついた時には、戻るにも遠すぎ、二人では辿り着けない虚空の真っ只中。周囲に助けを呼べるものはない。大切な積荷を目的の星に届けねば、多くの人が死滅する。共唐黷キるわけにはいかない。だから答えは一つ。

そんな決断を迫られたら、どうする。やるべきことは分っている。

方程式が導き出す答えは冷たい。

冷たい答えなのに、なぜか少しだけ暖かい結末が心に深く残った短編でした。ほんの少しの暖かさだけれど、とても哀しい暖かさでもある。それだけが唯一の救いであり、その暖かさを生み出した労苦に頭が下がる。

同じような状況に陥ったら、果たして自分はどうするだろうか?そんな疑問がいつまでも残る傑作だと思います。
コメント (2)
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