ピート・ローズの言い分も分からないではない。
先だってのことだが、アメリカのNYヤンキースでプレーをするイチローが、日米通算4000本安打を放ったと、華々しくニュースが駆け回った。
絶賛する記事の片隅に、往年の名選手であるピート・ローズがその記録にケチをつけているとあった。要するに日本のプロ野球での安打記録を入れていいなら、俺の3A時代の安打記録も入れてくれとのことであるらしい。
日本のプロ野球のレベルが、メジャーの3Aレベルかどうかはともかく、たしかに日米通算記録の価値については、私とて疑念はある。同じルール、同じボールで野球をやろうと、日本とアメリカでは微妙に違う。
それは日本にやってくる助っ人外人選手をみれば分かる。メジャーでは大物で実績もあれど、日本の野球に馴染めず惨めな記録とだけを残した選手は数知れずだ。一方、メジャーではたいしたことはなくとも、日本で花開き活躍した選手も少なくない。
それは日本人も同様で、野茂やイチロー、松井らが華々しく活躍したのは事実だが、メジャーの野球に適応できずに去っていった名選手も数多い。同じ野球というゲームであっても、やはり微妙に違う。
それを単純に通算した数字をもって評価することには、あまりフェアではないと思う。だからNYヤンキースの同僚であるジーターの言うように「メジャーだろうと、リトルリーグだろうと4000本はたいしたものさ」という単純にして素直な感想が一番適切に思える。
その程度の感想で構わないと思うのだが、意地の悪い私はピート・ローズに言いたくなる。
メジャーだろうと日本のプロ野球であろうと、所詮は興業。注目を集め、観客の歓心を呼び起こしてこそプロ。日米問わず、マスコミの関心を集めることが出来るニュースなのだから、日米通算4000本は十分騒ぐ価値があるぞ。
第一、この話題が上がったからこそ、八百長賭博疑惑で追放されたピート・ローズの下にも取材がいったはず。やっぱりたいした記録ですぜ、4000本はね。
もっとも、イチロー自身はあまり高く評価してないと思いますがね。今年のヤンキーズは優勝圏外みたいだし、来年の去就を考えれば安穏とは出来ないのが彼の本音かもしれません。
ちなみにピート・ローズ自体は記録よりも記憶に残る名選手だったと私は考えています。もちろん、その安打記録は凄いのですが、彼が一番凄かったのはファイト溢れるプレーそのもので、その勢いでチームを勢いづけて何度もワールドチャンピオンに導いたリーダーでもありました。
その彼が監督時代に八百長賭博疑惑で追放されたのは、野球ファンにとっても痛恨の不祥事でした。これさえなければ、彼は名選手としてだけでなく、熱血名監督として名声を築き大成功を収めたのでしょう。それだけに、きっと彼自身も満たされぬ思いを抱いており、その鬱屈がイチローの記録にケチをつけたくなったのかもしれません。