ちょっと気の毒に思うのがナメクジ。
まァ、好きな人はまずいない。同じ種目なのに、カタツムリはそこそこ人気があるが、その殻がないだけなのがナメクジ。それなのに人気はない。これは学界でも同様で、日常的な生き物なのに、未だ生態には不明なことが多い。あまりの不人気ゆえに専門家がいないらしい。
生物学的にいえば、カタツムリの殻が退化したのがナメクジとされる。つまりカタツムリより進化した存在なのだが、優位性はあまり感じられない。
実際のところ農作物への被害などは、カタツムリのほうがはるかに大きく、近年はハワイ産のカタツムリが沖縄などで大きな食害を引き起こしている。ところがナメクジに関しては、農作物への被害ははるかに少ない。
食害がないわけではないが、どちらかといえば観賞用の植物を育てる園芸家から嫌われる。食害そのものはカタツムリのほうがはるかに大きいが、ナメクジの場合容姿を嫌われる。だから不快害虫とも呼ばれている。
やはり気の毒な生き物だと思うが、私とて好きではない。やっぱり、あのヌメヌメ感は気持ち悪い。
人気漫画の「NARUTO」では、術者に口寄せされて、傷病者を癒す有益な生き物として描かれているが、これは例外中の例外だろう。後はせいぜい講談の自来也忍法帳ぐらいか。小説、漫画、映画を問わず、ナメクジはまず無視される存在である。嫌われるというより、その存在が無視される。
表題の作品は、私の知る限り唯一、そのナメクジを主役級のモンスターとして取り上げたホラー小説。先日取り上げた「闇の祭壇」を読んだ際、どこかで聞いた作者だと思ったら、やはり十数年前に表題の作品を読んでいた。
内容はほとんど忘れたが、ナメクジを取り上げたことだけは忘れずに覚えていた。
なにせ巨大ナメクジが大挙して現れて人々を襲い、押し潰して肉をすするのである。その軟体ゆえに、家屋でもどこでも忍び込んでくるのだから、気が付くと寝ていたはずの家人が、巨大ナメクジに覆い尽くされて苦悶のうちに死んでいく。
これだけは言っておきますが、この場面そうとうにグロいです。執拗にこの巨大ナメクジによる殺戮シーンを描き続けております。この手のグロさを受け入れがたい人が間違って読むと、トラウマになりかねない醜悪さです。個人的には、クーンツのあのオゾましい「ウィスパーズ」の最後の場面に匹敵するのではと思っています。ただし、グロさだけですが。
このイメージが強すぎて、ストーリーがぶっとんでしまい、思い出せなかった。気になるので探しているのだが、どうも本棚の奥に隠れているらしく、見つからない。さて、どんな顛末なのだろか。
読んだはずなのに思い出せないのは、少々苦痛でさえある。さりとて買い直すほどの名作でもない。もっとも絶版であり、古書店で買い求めるしかない。内容からして公立図書館は期待薄だしね。
さて、どうしたものか。現在悩み中です。