多分、一過性の効果しかない。
先週末、突如発表された日銀の追加金融緩和策により日本のみならず、世界中で株式市場が高騰したのはご存じのとおり。
しかし、現在の景気の停滞は資金不足が原因ではない。消費税の増税による景気の冷え込みの影響はあるが、根幹的には総需要不足である。言い換えれば、欲しいものがない、だから買わない。
実際、欲しいものが出れば売れている。妖怪ウォッチにせよ第三のビールにせよ、売れているのは確か。またご当地もの、レアものの食品とかは、行列が出来るほど売れている。欲しいものがあれば、並んだって買うのが日本の消費者だ。
ところが、それでも好景気観に乏しいのは、これまで日本の景気をけん引してきた生活家電、車、住宅が売れないからだ。
無理もないと思う。家を見渡せば大概の家電製品があり、故障以外で買い替える気は起こらない。車に至っては、免許を持たない若者が増えるばかりで、売れるのは利幅の薄い軽自動車ばかり。都会でも10軒に1軒が空き家であり、少子高齢化が進行中ならば無理に家を買う必要はない。
つまるところ、日本は既に社会全体が高齢化し、停滞化し、変化よりも安定を求める傾向が顕著なのだ。そうなると輸出以外で設備投資が伸びるわけもなく、むしろ円安による輸入価格の上昇が、原材料の値段を押し上げ、ガソリン、小麦、大豆などを値上げさせる。
実質賃金が増加したのは公務員と一部の大企業のみであり、その給与でさえ社会保険料の値上げで目減りしている。これで景気が良く感じられたら、私はその方が不自然だと思う。
結果、黒田バズーカとも呼ばれた今回の日銀の金融緩和も、一時しのぎの効果しかない。
だが、日銀及び財務省はそれでもかまわないのだろう。要は12月までに景気が現状を維持していれば、来年10月の消費税再増税にゴーサインを堂々出せる。それが今回の金融緩和の最大の狙いではないか。
私は安倍政権は、前政権に比べればよくやっている方だと考えているが、あまりに財務省の描くシナリオに素直過ぎると思う。今回の金融緩和による通貨の大量発行は、国債の買い入れに充てられ、市場には出回らない可能性が高い。
なぜなら低迷する景気を受けて税収は増えず、一方補正やら追加やらの財政支出は増える。そうなれば国債発行して歳入不足を補うしかない。その国債の買い手は、まず金融機関であることを思えば、その資金に今回の金融緩和による増発紙幣が充てられるのは必然である。
つまり、国民の大半には無関係であり、実質所得が伸びない以上、消費も増えるはずはなく、企業の設備投資も低調に終わる。
ただ、私はそれほど絶望している訳ではない。円安により外国人旅行客が増えているのは、ニュースなどで報じられているとおり。それだけではない。外国人による不動産購入も確実に増えている。円安は、外国人投資家にとっては絶好の投資チャンスでもある。
それは国内景気を押し上げる強い要因ともなりうる。この機会を逃さず、これまで以上に投資環境を整えれば、日本にもまだまだ成長の機会はあると思う。
その障害になっていることの一つが印鑑である。先進国で「印鑑」を公式な証明として使っているのは日本だけだ。印鑑証明付の印鑑の押印がないと、不動産登記などを法務省は受け付けない。これが外国人にとっては、殊の外障害となる。
ほとんどの国は、サイン証明であることを思えば、これは早急に改善する必要がある。ちなみに海外居住の日本人は印鑑証明がとれない(国内に住所がないため)ので、領事館で領事立会いの下でのサイン証明が必要となる。これまた数万円の経費と時間がかかり、大きな障害となっている。
PCスキャナーの発達により、印鑑の印影なんざ簡単に偽造できる時代だからこそ、今や印鑑には実質的な法的担保力は薄くなっているのが現実である。それでも法務省や銀行は印鑑に拘る。印鑑を廃止しろとまでは言わないが、サイン証明も認めるべきだと思う。
これは政治が主導して進めないと出来ないことだ。安倍政権には是非取り組んで欲しいと思います。
足の引っ張り合いほど醜いものはない。
なにがって、先月以来安倍政権に登用された女性閣僚らに対する政治資金の収支報告書がらみの事件である。安倍首相が自ら強く希望して登用させた女性閣僚を攻撃することで、安倍政権の信用失墜を狙ったものらしい。
政治団体の資金を公正に報告することは大切だとも思うが、攻撃していた野党のほうだって怪しいもんだ。そう思っていたら、早速に民主党の枝野氏がやり玉に挙がっている。どっちも、どっちだ。
私は公職選挙法や政治資金規正法を蔑ろにする気はないが、それでも気になるのは、小渕優子に対する攻撃だ。一応言っておくと、私は彼女の支持者でもないし、特段評価している訳でもない。だが、彼女の選挙区である群馬県には仕事でしばしば足を運ぶので、いろいろと情報は入ってくる。
ただし、飲み屋での噂話が大半なので、確証はまったくない。だが、今回の噂はかなり真実に近いと思っている。
小渕議員の後援会での観劇接待は、地元では有名であり、多くの有権者が楽しみにしていた。それは父親の代から続く行事であり、小渕議員の意思で積極的に行われたものではない。だから、私が地元の人たちとの会話のなかでも、それを悪いことだと思っていた人は皆無であった。
むしろ私が聞かされたのは、男の嫉妬であった。誰とは云わないし、訊かれても答える気はない。小渕議員が単なる女性議員なだけなら良かった。しかし、閣僚ともなれば話は別だ。
国会議員であるならば、誰だって一度は閣僚になりたい。決して簡単ではない。有力政治家の支持、政治献金、人望だけでなく実績も必要だ。長い年月の積み重ねが求められる苦難の道のりである。
それを女性閣僚の積極的な登用を求める安倍首相の鶴の一声で決められたら、それまで努力してきた男性議員はたまったもんじゃない。女だから簡単に閣僚になれていいのか。
その思いは、男性政治家だけでなく、その支持者にも共通するようだ。この事件は民主党ら野党からの指摘で発覚したが、私が聞かされたのは、密告者は同じ自民党関係者に違いないとの話ばかりであった。
なにせ自民党王国といわれた群馬だけに、自民党関係者は多い。福田、中曽根といった大物を輩出した土地だけに、膨大な数となるのは当然だが、なぜか私の耳に入ってくるのは、某○○氏の名前であった。
さりとて証拠があるわけでもないのだが、飲み会の席では、まるで確定しているかのような感じであった。野郎の嫉妬はみっともないとの非難が出るのは致し方ない。でも証拠がないのも分かっていたので、私は素直に聞くふりして聞き流していた。
観劇招待などが公職選挙法や政治資金規正法に引っかかるのは分かるが、私は長年日本の至る所で行われていたことであることも知っている。PTAやら町内会でも、似たような行事がけっこうあるのも知っている。
いささか暴論なのは承知しているが、大騒ぎするような問題ではないと思っている。むしろ、こんなことで国会を空転させていい気になっている、馬鹿ども(野党だけでなくマスコミも含めて)に呆れる気持ちの方がはるかに強い。
暴論ついでに言わせてもらえば、私は政治家にいちいち女性という冠を付けねばならぬ現実こそ、真の問題だと考えている。優秀な政治家ならば、男であろうと女であろうと構わない。
閣僚の大半が女性であっても、優れた結果さえ残してくれれば、一向に構わない。もちろん閣僚が全て女性でも、全て男性でもいい。要は結果である。大臣として立派な実績さえ残してくれるなら、男だろうと女だろうと関係ない。
政治とは、何を言ったかではなく、何をしたかで評価すべきだと考えている。
だから、今回安倍首相が女性閣僚を意図的に増やそうとしたことには、いささか疑問であった。ただし反対ではなかったのは、結果次第だと考えていたからだ。残念ながら結果以前の段階で、閣僚の座を退かざるを得なかったようだ。
何度も書いているが、21世紀の日本は人口は減少し、少子高齢化時代を迎える。政治家が男でなければならない理由はないし、女性でいけない理由もない。
それどころか、優秀な人材を積極的に登用し、活用しなければならない時代が目前に迫っている。
今回の騒動には、その危機感がまるで欠如しており、情けない嫉妬と、無様な足の引っ張り合いだけしか見られなかった。それは報道していたマスコミも同じである。
まァ、マスコミの本音は安倍政権を貶めることなのは分かっているのですがね。
公認の民間軍事組織が増加していることに、もう少し関心を持っておいたほうが良いように思う。
日本政府は既にソマリアや東チモールで民間軍事会社(通称PMC)を活用している。つまり日本国民が納めた税金が、海外の現代版傭兵組織に支払われているわけだ。
日本政府が如何に平和憲法なんて無視しているかがよく分かる。同時に憲法改正などに大反対している平和愛好市民たちが、如何に現代の戦争に無知であるかが良く分かる。
実際のところ、PMCは現代版傭兵組織なんてものじゃない。その枠をはるかに超えた過去に類例のない存在となっている。テロとの戦いにおいて重要なのは軍事行動だけではない。警察や司法組織などの平時の治安機構こそがテロの抑制に有益である。
しかし、従来の軍隊はそのような任務には向いていない。そこでイラクや旧ユーゴでは、PMCが警察組織の構築、行政機構の再編まで取り仕切っている。軍隊とは、どこの国でも官僚組織そのものであり、それゆえに硬直化しやすく臨機応変な活動には不向きだ。
そこで民間から有能な人材を雇い、その国の社会に応じた警察や行政組織を作り、訓練を施すような業務にはPMCが活用される。今や一大産業であり、軍事費の削減に悩むアメリカ軍だけでなく、他の多くの国からも依頼が殺到しているのがPMCなのである。
今や駐留基地の構築、食料や武器、燃料などの輸送、管理までもPMCが取り仕切ることは珍しくもない。それどころか、ハイテクの塊であるミサイルや無人偵察機などの操作、メンテナンスは現役の軍人では手に負えず、PMCに外注して運用している有様である。
だが問題も多い。まずやり玉に挙がったのが不適当な過大請求である。予算を議会が厳しく管理するアメリカでは、PMCからの請求書が適切とはいえないケースが議員たちにより発覚して問題となっている。
またイラクで問題になった捕虜に対する違法な尋問と拷問には、PMCが深く係っていたことも判明している。軍隊なら軍事裁判だが、PMCに対しては想定外なゆえに従来のシビリアン・コントロールが効かず、法的な地位さえも不確定である。
またPMCと軍との連携不足からくる事故も絶えず、味方から攻撃されての死傷事件も発生している。当然に敵からの攻撃にさらされて損害も出し、軍とPMCとの間での情報のミスマッチも問題となっている。
ご存知のかたもいるだろうが、日本人がPMCに雇用されイラクなどで業務に就いて、そこで攻撃を受けての死傷事故も発生している。民生技術では定評ある日本企業が、PMCから依頼を受けての輸出入もあるようで、従来の法規制の抜け道として活用されている。
平和志向の強い日本でさえ、民間の軍事組織を利用しているほど広く世界中で活躍しているのだ。アメリカ軍などPMC抜きでの軍事行動はありえないし、これはヨーロッパのみならずアジア、中東、中南米でも同様である。
その背景にあるのは軍事的脅威の質的変貌にある。20世紀までは国家対国家であり、西側自由経済諸国と、ソ連シナの東側社会主義陣営との対決であった。どの国の軍隊も、そのことを前提とした軍事組織を構築し保有していた。
しかし21世紀の軍事的脅威は、少数の武装集団による破壊活動、すなわちテロとの戦いである。私服をまとって一般市民に紛れて爆発を起こし、社会を不安定化させるこれらのテロリストは、世界中至る所に拡散しており、巨大な軍隊組織ほど小回りが利かないが故にテロに対しては後手後手にまわる。
20世紀には有効であった軍事組織は、その大きさゆえに巨大な官僚機構と化し、予算と組織に縛られる。一方、民間企業であるPMCは、高給でベストのスタッフ(多くは特殊部隊出身の軍人だ)を雇い、柔軟に組織を作り替え、最新の兵器さえ使いこなすだけでなく、警察官の訓練や公共施設の建築までも請け負う。
少人数の武装集団であるテロリストとの戦いにおいては、正規の軍隊以上の実力を発揮するのがPMCであり、テロの温床たる不安定な社会を再建する役割までこなすPMC抜きでの戦争はありえない。
だが、私は怪しんでいる。古来より王様が一番警戒したのは、本来味方であり国内外を問わず自らを守ってくれるはずの軍隊が裏切り、王の座を奪おうとすることだった。それは現代においても変わりなく、エジプトでもタイでも軍事クーデターが起きて政権交代が起こっている。
だからこそ、近代国家は法制度と組織運用を固めて軍隊が勝手をしないように縛ってきた。もはや先進国では軍事クーデターは不可能に近い。その状況を一変しかねない可能性をもつのがPMCではないか。
私は21世紀は、食料危機と水資源争い、そして化石燃料の争奪戦の時代だと予測している。いつの時代でも戦乱の時代には、古い国家が滅び、新しい国家が勃興する。PMCはその戦乱の時代に大きな役割を果たすのではないか。そう考えています。