入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「夏」(35)

2020年07月11日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 少し風が出てきた。大粒の雨が小屋の屋根を打つ音が聞こえてくる。目に入る物と言えば単調で、少し押しつけがましく感ずる緑の色彩と、灰色の雨雲だけで、昨日も一昨日もずっと変わらない退屈な風景だ。外に出ようとしたが、あまりにも雨脚が強くなり、しばらく様子を見ることにした。天気予報は、午後の方が雨の降り方は激しくなると言っていたが、そうかも知れない。面白いことに、こんな天気では一番先に雲の中に姿を隠す権兵衛山が、珍しく電波塔を含め西側の山の輪郭や落葉松の森も見えている。複雑な気象状況のような気がする。
 そういえば、今気が付いたがきょうは鳥の声がしない。風と雨の微妙な違いがあってそれが分かるのか、しつこいほど鳴き続けるカッコーも、そういう時は伴奏役に甘んじるホトトギスやウグイスも沈黙している。
 ここから見える小入笠の頭へ続く山腹は途中まではコナシ、白樺、そして落葉松の混生林となっていて、恐らくそのどこかにあの牛たちはいる。ただ、きょうも和牛の15,16番は群れから離れて、2頭だけで雨に濡れているのだろうか。

 またヤノマミのことを考えている。以前にも呟いたように、ブラジルの北部、アマゾンのジャングルで文明から取り残されたまま、未開の暮らしを営む人たちのことだ。
 彼らの暮らしは、広場を囲むようにして建てた大きな円型の家での集団生活だが、家族ごとの囲炉裏があって、寝るときはハンモックだという。しかし各家には仕切りがないから「性行為の最中でさえ、他人から丸見えとなるのだ」(「ヤノマミ」国分拓著、NHK出版)と、彼らの暮らしを150日間にもわたり取材を続けた著者は書く。
 この人たちヤノマミのことは、雨ばかりが幾日も続けて降る今の時季に、繁茂し過ぎた木々の葉が濡れて、重く垂れこめてる森の中で、唐突に浮かんでくる。きょうもそうだった。彼ら、彼女らのように裸だったり、腰布程度とは大分違った格好をしていても、あの本に書かれたことを脈絡もなく思い出していると、気持が知らずして引き寄せられていきそうな不思議な気分になってしまう。今度、彼らと同じような裸で頭数確認をしてみるか、というのは冗談。牛が驚いて逃げる。
 とにかく、ヤノマミと雨、そして森は切り離せない。生乾っきの薪が燃える時の、煙も加えて・・・。

 本日はこの辺で、全頭の牛の確認と、電牧の補修は無事終了、明日は沈黙します。
 
 
コメント
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