入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「夏」(41)

2020年07月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 いつの年だったか、それほど前のことではないが「入笠に今年は夏が来なかった」と呟いたことがあった。今年はまだそれを言うのは早過ぎるが、短命な夏だとは今からでも言えるだろう。予報では例年に比べて、梅雨明けが遅れるようなことが言われ、もしそうなれば入笠には1ヶ月の夏もなかったことになる。ここでは、お盆が過ぎれば秋風が立つ。長くても1ヶ月ほどの短い夏でしかない。
 14年間というもの夏といってどこへ行くわけでもなく、ここで牛の世話や、訪れた人々の相手をしながら過ごしてきた。それでもかつての自分たちのように子供らが、熱狂の夏を過ごして欲しいとは思う。もう、顔を思い出すことはできないが、楽しかった牧場での思い出を絵に描いて送ってくれた子もいて、小屋の部屋に大切に張ってある。HALがいて、本人がいて、鹿に牛がいて、望遠鏡とそれで眺めた土星と月の絵だ。
 
 今こうして振り返ってみれば、夏の天竜川での水泳、それから冬のスケートと橇遊び、あれほど無邪気に夢中になれたことは他になかった。後年、スキーや山に憑かれて大分現実の生活をおろそかにしたが、それでもあの童心の時に味わったような幸福は帰ってこなかったと、今はそう思う。
 この年齢になって、子供のころを過剰に美化するようになったのかも知れないが、しかし、そうであってもいい。いろいろ思い返せば当然、愉快で幸福なことばかりではなかったが、そういうことを差し引いても、あの頃の夏の空はもっと輝いて見えていたし、その季節はもっと長かった。ホタルもカブトムシも、真っ青な空も、無数の星が煌く夜空も、みんな当たり前だった。スイカは井戸で冷やしたし、食卓は野菜ばかりだと文句を言った。
 そんな知恵をどこで覚えたのか、天竜川の水で冷えた身体を温めようと、稲を傷めないように水田の中に入った。夏の日に暖められた田の水に横たわり、そして感じた安堵感が、今も耳に残る遠い天竜川の川音と重なる。

 草刈りはテイ沢より、北原新道の方が大変だということが分かった。雨は止もうとしない。

 O里さん、往復の列車は要注意ですが、その他は問題ないので是非試みてはいかがですか。芦安から広河原経由北沢峠、さらに戸台へ下り小黒川林道を入笠へ、渋いです。そそられます。
 本日はこの辺で、明日は沈黙します。


コメント
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