夜が明けようとしている。この頃はこんな時間に目が覚め、新聞が配達されるのを待ちながら、この詮ない独り言を始めたり、朝風呂の準備や朝飯、昼弁当の用意をする日がある。昨夜は9時半ごろに寝たが、日によっては8時を待てずに寝てしまうこともある。「嗜眠癖」などという言葉があるのかどうか知らないが、目下はそういう状態で、充分過ぎるほど眠ることができた時は、鬱積していた疲労感が一度に消えたような爽快感に浸れる。考えてみれば山でもそうだったが、湿度の高い梅雨時期のせいかも知れない。
一昨日、迷ったが結局、久しぶりにヒルデエラ(大阿原)経由で、テイ沢へ下った。小雨交じりのあんな天気だったし、午後も大分過ぎていたから、湿原に人の姿はなかった。だからかも知れないが、たまさか訪れた湿原は侘しさがあって、それが懐かしく、風雨さえも心地よく、厚い雲の下の視界は時折靄の中に隠れてしまうこともあったが、それさえも縹緲としたあの湿原の趣に合っていた。
沢の入り口で少し草を刈った。あまり思うようにいかなかったが、そこに拘っていると先の仕事ができなくなることを案じてほどほどにして、草刈り機をその場に残しチェーンソーだけ首にぶら下げて沢を下った。
とりあえず、最初の丸太橋の先にあった、道を横切って倒れていたモミの木を片付けた。水に浸かったあの木の枝は相変わらず重く、手を焼いた。少し戻って他に2本、これらの木は迂回できたがついでとばかりに処理した。
ダケカンバだったか、写真の弓状にしなったまま倒れた木には手を出さないでおいた。乏しい時間のせいもあったが、当面通行には支障なく、他にも沢の流れの中に倒れ込んだモミの木が2,3本とあって、出直す必要があったからだ。
また、ここに架かっている丸太橋は3本の組み合わせのためいかにも貧弱で、前からこのことは気になっていた。しかし、この場所は丸太を担いでは下から上がっても、湿原から下っても一番遠くて、3本の丸太を運ぶでさえも苦労したから、簡単にはいかない。
帰路の湿原の木道を歩きながら、ささやかな自己満足で気が済んだ。
HALが死んで、もう1ヶ月が過ぎた。とてもそれほどの日数が経ったとは思えない。しかしその間にHALは小太郎、キク、そして幼い一人の女の子と一緒に、記憶の中のそれなりの所を得て落ち着いてくれた。それでいい。
本日はこの辺で、雨は止まず天が嗤っているが、まあ悪あがきだ。