入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「冬」(30)

2020年12月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょう読む本は決まっていた。今夕何を飲むかも決めてある。その為に、久しぶりに長湯をしたが、ビールは抑えた。ところが目の前の炬燵の上に「ホレ、どうだ」と言わんばかりにウイスキーがあったので、軽く含んだ。そして、長いこと忘れていたことを思い出した。
 
 毎年の冬、雪の法華道を歩いて登り、入笠牧場の管理棟の前の日溜りで飲むあのドロドロとしたウイスキーのことをだ。普段なら汗でもかけばビールになるが、雪のあの古道を歩いていると不思議なことに決まって、冷えたウイスキーに「早く来い、早く来い」と急かされるのだ。
 小屋に着くと何を措いても、寒い部屋からウイスキーを持ち出し、コップに注ぎ、口に含む。冷え切ったウイスキーが口中を滑り、喉を焼く。「ウマイ!」。この時の琥珀の液体が口、喉、腹を襲った後の小さな嵐を、言葉で表すことなどできない。そしてようやく安堵して、権兵衛山や周囲のお馴染みの雪の景色を眺めながら、冬の日を一人だけで楽しむ・・・。
 そういえば、昨冬は法華道を登らなかった。厳冬期の来訪者はなく、積雪も少なく、たまに様子を見に行く時は車で行けた。それに唯一の同行を務めたHALには、あの雪道、あの距離はもう無理だったから、そのことも少しは影響していただろう。これまでの14年間、時には雪の上に足から血を流すこともあったが、いつも黙って供をしてくれた。嬉しかったのか、切なかったのか、どちらだろう。
 
 先日上に行ったときは、例年と比べいつになく雪が少なかった。来週あたりから気温も下がるような予報だったと思うが、もう以前ほどの降雪量を期待しても無理なような気がする。もしかすれば、スノーシューズや山スキーで法華道や、白い森の中を歩いたことなど昔語りになってしまうかも知れない。
 子供のころは毎朝6時起きして、運動場を利用したスケートリンクで滑った。裏山で橇遊びもできた。日が暮れるまで田圃から、子供の遊ぶ声が聞こえていた。この年齢になってそういうことを懐かしく思い出すが、最近では子供の数も減ったし、遊び方も変わり、そういうことができなくなってしまった。今の子供たちにはどんな遊びや楽しみが残るのだろうか。
 
 きょうは柿の木の向こうの空に、茜色に染まった雲が見えてる。椋鳥のせいで、その柿木の実もかなり片付いたようだ。これから冬の大半を、丸裸になったあの木を眺めながら同じような日々を送ることになる。
 本日はこの辺で。
 


 
 
 
コメント
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