入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「冬」(34)

2020年12月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今朝7時の気温、零下10度。部屋から見えてる空の半分は晴れているが、権兵衛山の背後には不機嫌そうな雪雲がかかっている。先程まで朝焼けが見えていたが、これから天気が良くなるのかどうか。昨日歩いた落葉松の林の、そのか細い枝に施された繊細な雪化粧が何よりも美しく見える。積雪は10センチくらいで、この程度ならきょう山を下るのにも差支えはない。
 不思議なことに、昨日きょうとたった二日目にしただけの雪景色だというのに、ずっとここで見ていたような気がする。それほど外の風景に違和感がない。一昨日までの冬枯れた黄土色の風景が、一夜にして白く一変して、その時は少し驚いたもののいつの間にかすっかり馴化し、ずっと極地にでも暮らす者のように当たり前に受け入れている。まるで14年分の冬までが、この景色の背後に、というよりか意識の裡に、出番を待って控えていたかのように。
 今、目の前の小入笠に延びる尾根の上部にようやく朝日が射してきて、暗く寒そうな落葉松の林の雰囲気がその梢の辺りだけ眩い光を浴びて輝き出し、青い空を背景に神々しくさえ見える。

 昨日は少し森の中を歩いてみた。雪の積もった中を足跡を気にしながら、そこだけは黒々とした水が流れる沢まで歩いていった。そして、この独り言の為に取り貯めをしておこうと何枚かの写真を撮ろうとしたが、しかし静まり返った雪の森は目にこそは見せてくれても、あれほど映像となるのを拒否するとは思わなかった。
 写真家になら、あの自然のモデルは従順に様々な姿、格好を見せて撮らせただろうが、飛び入りの素人にはそこに近付くことさえも許してもらえない、そういう気分を味わった。1本のコナシの細い枝に積もった雪、精緻な白い枝を大きく広げた落葉松の樹々、墨の濃淡だけで描いたような陰影のない林や、そこを流れる色のない水・・・。

 突然、人の声がした。外からのようだが、かんとさんはまだ隣の部屋で寝ているはずだ。誰かと思ったら、Ume氏だった。彼も、この雪の景色を目当てに上ってきたのだろう、声だけかけてすぐにまた外へ出ていった。ああ、彼になら牧場の外からでも、自然は思いっきりその姿を晒して見せるに違いない。時折、それを妬む突風の嫌がらせを受けることはあるだろうが。
 まだコソリとも物音を立てないかんとさんだが、彼も昨夜遅くまでふたご座の流星群を狙っていたのだろうか。
 本日はこの辺で。
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