■大同有害スラグ問題とは、群馬県渋川市にある大同特殊鋼株式会社・渋川工場が、長年にわたり特殊鋼を造る際に出る有害ごみを、許可を得ないで道路や駐車場、公園などに敷き込んだ事件です。特に近年は(株)佐藤建設工業とブラック同士で連合して闇タッグを組み、詐欺まがいに毒を薄めると見せかけ天然石に混ぜ込み、上武道路やメガソーラー発電所、大規模・民間工場建設工事そしてコンビニエンスストア駐車場など、群馬県中に広く不法投棄現場を作ってしまったのです。
群馬県廃棄物リサイクル課は、違法にスラグをばら撒いた佐藤建設工業の産廃許可を取り消しましたが、ばら撒かれてしまった有害スラグはどうなったのでしょうか?有毒廃棄物は撤去片づけが廃棄物処理法の基本です。
↑吉岡町の古墳前駐車場に投棄されていた“有害スラグと天然石の混合砕石”。佐藤建設工業の天然石は赤い石が多く、この写真の中央にある有害スラグは白っぽい色をしているので目立つ。固体同士は液体のように混ざり合う事はないのに、混合砕石と称して、有毒スラグを天然石に紛れ込ませて群馬県中に広くばら撒いたのは、まさに極悪人ならではの所業だ。一刻も早く撤去=かたづけてもらいたい。↑
↑2016年8月3日に佐藤建設工業の処分取り消しを伝えた同8月5日付の上毛新聞記事↑
**********2016年8月5日上毛新聞
※PDF ⇒ 2016n0805v.pdf
鉄鋼スラグ問題の業者
県が許可取り消し
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場(渋川市)からでた鉄鋼スラグが県内の公共工事で使われ、一部で環境基準値を超すフッ素や六価クロムが検出された問題で、県は4日、廃棄物処理法に違反したとして、佐藤建設工業(同市小野子)の産業廃棄物収集運搬業などの許可を取り消す行政処分をしたと発表した。処分は3日付。
処分理由は、スラグを含む鉱さいを収集運搬する許可を得ていないのに、2009年7月から14年1月までスラグを運搬した。産業廃棄物の処理業はがれき類の破砕しか許可されていなかったが、12年6月スラグと天然砕石を混合して処分した。
佐藤建設工業は「スラグは産業廃棄物とする県の見解を受け入れていない。異議申し立ても含めて対応を検討したい」とコメントした。
県の調査によると、同工場から出た鉄鋼スラグは公共工事などに使われ、3月末時点で県内では373カ所で使用が確認されている。環境基準値を超えるフッ素などが検出された場所があるが、地下水への影響は確認されていない。国土交通省や県、渋川市などがスラグの撤去や、アスファルトで舗装するなどの対策を講じている。
この問題をめぐっては、県が14年に関係先を立ち入り調査し、15年9月に大同特殊鋼などを刑事告発した。県警は4月26日、産業廃棄物処理法違反の疑いで、同社と子会社の大同エコメット(愛知県)、佐藤建設工業の3社と役員ら5人を前橋地検に書類送検した。
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■上毛新聞の記事によると、許可を取り消された佐藤建設工業がばら撒いた有害スラグにてついて「国土交通省や県、渋川市などがスラグの撤去や、アスファルトで舗装するなどの対策を講じている。」としています。
国土交通省は、佐藤建設工業の試験成績表が提出されていた現場は、たとえ天然石が使われることになっていても、ボーリング調査を実施してまで、スラグ使用箇所を特定し不十分ですが、対策に着手しようとする動きを見せていました。
しかし群馬県は、佐藤建設工業の主張をうのみにして、スラグを使用するとして届け出た現場のみ書類を審査して、ほんの少しのボーリング調査を実施するのみで、他はほとんど調査を実施していません。実際には佐藤建設工業は、その販売する全ての建設資材に有害スラグを混ぜていましたので、対策は不十分と言わざるを得ません。
さらに、渋川市に至っては佐藤建設工業がばら撒いたスラグの書類調査をしたことすら何も伝わってきません。
■このように、なぜ、群馬県や渋川市は調査すら不十分なのでしょうか?
それは、群馬県廃棄物リサイクル課が廃棄物の不法・不適正処理について“原状回復”つまり撤去片づけが基本であるのに、大同特殊鋼や佐藤建設工業に忖度して、なるべく撤去=片づけなくても済むように、大甘な対応をしているからに他ならないと思えてなりません。
それは、佐藤建設工業の廃棄物処理業の許可取り消し理由にも見て取れるからです。群馬県廃棄物リサイクル課の行政処分を見ていきましょう。
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【8月4日】産業廃棄物処理業者に対する行政処分について(廃棄物・リサイクル課)
産業廃棄物処理業者に対する行政処分について
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)第14条の3の2及び第15条の3の規定に基づき、産業廃棄物処理業及び産業廃棄物処理施設設置の許可を下記のとおり取り消しました。
記
○事業者の氏名又は名称:
群馬県渋川市小野子1579番地 株式会社佐藤建設工業 代表取締役 佐藤本位田
○許可の番号:産業廃棄物収集運搬業許可 第01000-042372号 産業廃棄物処分業許可 第01020-042372号 産業廃棄物処理施設設置許可(がれき類の破砕施設) 群馬県第326-0号
○処分の年月日:平成28年8月3日
○処分の内容:産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業及び産業廃棄物処理施設設置の許可の取消し
○処分理由:
株式会社佐藤建設工業は、平成21年7月から平成24年6月までの間、大同特殊鋼株式会社から委託を受け、産業廃棄物たるスラグ(種類:鉱さい)を運搬し、天然砕石と混合する行為を行った。
また、平成24年7月から平成26年1月までの間についても産業廃棄物たるスラグの運搬を行った。
株式会社佐藤建設工業が許可を受けている産業廃棄物収集運搬業の事業範囲に鉱さいは含まれていないほか、同社が許可を受けている産業廃棄物処分業は、がれき類の破砕のみであり、許可なく事業の範囲を変更した。
当該行為は、法第14条の3の2第1項第5号(平成22年改正法施行前においては、法第14条の3の2第1項第2号)及び第15条の3第1項第2号に該当する。
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■「同社が許可を受けている産業廃棄物処分業は、がれき類の破砕のみであり、許可なく事業の範囲を変更した。」として廃棄物処理法第14条の3の2第1項第2号違反として許可を取り消していますが、佐藤建設工業の許可をよく良く見ると、「ちょっと違うな?」と思えてくるのです。
↑群馬県のホームページの「産業廃棄物処理業者名簿検索」に掲載中の佐藤建設工業の業者名簿※PDF ⇒ ij.pdf↑
この許可は、前橋・高崎を除く群馬県内でコンクリートやアスファルトなどの「がれき類」の処理ができるという許可ですが、上の図をご覧ください。「業の種類2」の所に「(破砕(移動式))」と書いてあります。
■この許可は、移動式の破砕・中間処理の許可になります。
つまりビルの解体現場などに出向いて、その場でコンクリートなどを砕く許可になり、比較的許可が容易に認められるという傾向があるそうです。
佐藤建設工業は東吾妻町の中央混合場という場所で、近隣住民に相談もせず長期固定的に大同の有害スラグを受け入れ、天然石と混合していましたが、この移動式の許可では、廃棄物を受け入れることはできません。
■もう一度、佐藤建設工業に対する行政処分をみてみましょう。
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「○処分理由: 株式会社佐藤建設工業は、平成21年7月から平成24年6月までの間、大同特殊鋼株式会社から委託を受け、産業廃棄物たるスラグ(種類:鉱さい)を運搬し、天然砕石と混合する行為を行った。」
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当会は、この記述を読んで、おやっ?と思いました。「大同特殊鋼株式会社から委託を受け、産業廃棄物たるスラグ(種類:鉱さい)を運搬」するまでは、鉱さいを処理する許可を正しく受ければ問題がない(?)かのような書き方になっているからです。
その結果「同社が許可を受けている産業廃棄物処分業は、がれき類の破砕のみであり、許可なく事業の範囲を変更した。」として事業範囲の逸脱として処分されているのです。
■佐藤建設工業が得ていた許可では、そもそも依頼を受けて廃棄物を受け入れることができないはずです。受け入れることができないのに受け入れることを世の中では不法投棄というのでは、ないのでしょうか?
群馬県廃棄物リサイクル課は、なぜか大同有害スラグについては、“不法・不適切な廃棄物の原状回復”つまり撤去片づけしなくても済むように行政処分をも大甘に(?)発出しているように感じてならないのです。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】