どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

きつねの写真

2015年08月02日 | あまんきみこ

 

きつねの写真  

    きつねの写真/あまんきみこセレクション2 夏のおはなし/三省堂/2009年

 

 ごんざ山にすむ木こりの松ぞうじいさんとまごのとび吉のところに、きつねの写真をとりたいと若い新聞記者がやってきます。

 松ぞうじいさんは「人間にうちとられたり、病気かかったりして、きつねはいねえ」とことわりますが、新聞記者は「きつねのすんでいた穴だけでも」と熱心にたのみます。
 松ぞうじいさんの案内で、きつねのすんでいた穴をうつして新聞社にかえった記者のもとに、現像があがった写真が届けられます。
 すると、そこには大きなきつねと小さなきつねがうつっています。

 記者は、二人がみおくってくれたときに写真をうつし、そこではたしかに人間であったはずなのですが・・・・。

 記者は「これはなかったことにしよう」と写真をそっとしまいます。

 デジカメではなく、フィルムというのがこのお話にはぴったりで、記者の心情がつたわってくるようです。

 小さい子にはどううけとめられるか知りたいお話です。


えっちゃんの森

2015年07月13日 | あまんきみこ
えっちゃんの森  

    えっちゃんの森/作:あまん きみこ 絵:西巻 茅子/フレーベル館/2002年初版

 

 たぬき新聞にミスたぬきと紹介された「えっちゃんはミスたぬき」、どんどんセミをつかまえセミにかえられててしまう「だいちゃんぜみ」、空のうえのいろとりどりのふうせんばたけにまよいこむ「ふうせんばたけはさあらさら」の三つの話がのっています。

 絵のタッチがどこかで見たような感じがあって「わたしのワンピース」の西巻さんというので納得しました。

 「きつねのおきゃくさま」で、はじめて、あまんさんお話にひかれ、読んでみましたが、なんとも心がほんわかする世界です。

 安房直子さんの本を読んでいて、図書館の棚は五十音順なので、すぐそばにあまんさんのものもあったのですが、これまでは読んでいませんでした。

 あまんさんのお話は、うんうんいいながら素直に響いてきます。


北風ふいてもさむくない

2015年07月08日 | あまんきみこ
北風ふいてもさむくない  

   北風ふいてもさむくない/文:あまん きみこ 絵:西巻 茅子/福音館書店/2011年初版
 

 クリスマスのころ読みたい絵本。

 かこちゃんは、おかあさんにあんでもらった赤いマフラーでおでかけ。
 「北風ふいてもさむくない」とうたいながらいくと青いマフラーをしたきつねのこが。
 かこちゃんがきつねとあるいていくと、こんどはももいろ毛糸のマフウーをした、うさぎのこが。
 きいろい毛糸のマフラーをしたねずみのこも。

 うさぎがなにかちいさななきごえをききつけます。
 みんなでいってみると、大きな木のねっこのそばの家で、へびのこが、「さむいよう」「ふわふわのふとんがほしいよう」とないています。
 そこでみんなで、相談しますが・・・・。

 文も絵もこころあたたまります。

 みんなで相談したとき、かこちゃんがきつねの耳をつけて、ひそひそ。
 きつねが、うさぎの耳に、ひそひそ。
 うさぎが、ねずみの耳にひそひそ。

 ”ひそひそ”が、ひみつめいていますが、いいだしっぺのかこちゃんや動物たちのあたたかい思いやりが伝わってきます。     


きつねのおきゃくさま

2015年06月24日 | あまんきみこ
  きつねのおきゃくさま  

   きつねのおきゃくさま/作:あまん きみこ 絵:二俣 英五郎/サンリード/2001年初版

 

 教育出版の二年生の国語にのっていたので、図書館からかりました。

 先生による指導の記録もあり、絵本ナビには60人をこえる感想があります。
 教科書にのるだけあって、読んだときの子どもたちの感想をひきだすにはぴったりのようです。

 こんな話を語る人がいても不思議ではないのですが、なぜか聞いたことがありません。

 教科書にのっているので、話しにくいかもしれませんが、他の出版社の教科書では、取り上げられていないので、ぜひ聞きたいもの。
 
 図書館から借りてきて読んだ絵本のなかでは、相当の人気があるようです。      


 2015年7月9日、勉強会でこの話を語ってみました。

 昨日の小学校の授業で、この話の音読を聞かれた方がいて、この時期に小学校でとりあげられていることがわかりました。
 いつもはどんなに短くても一つの話を覚えるのに2か月以上は必要ですが、この話は2週間で覚えることができました。
 やはり魅かれる話だと覚えやすいようです。

 「むかしむかしあったとさ」からはじまって、最後は「とっぴんぱらりのぷう」でおわる昔話風なので、よけいにそうなのかもしれません。

 この話は、心理劇風でもあり、芝居にしてもおかしくありません。    

(おぼえるために書き写してみました。絵本版のものです)

 むかし むかし あったとさ。
 はらぺこきつねが あるいていると、やせた ひよこが やってきた。
 がぶりと やろうと おもったが、やせているので かんがえた。
 ふとらせてから たべようと。
 そうとも。よく ある、よく ある ことさ。
「やあ ひよこ」
「やあ きつねおにいちゃん」
「おにいちゃん? やめてくれよ」
 きつねは ぶるると みぶるいした。
 でも ひよこは、目を まるくして いった。
「ねえ、おにいちゃん。どこかに いい すみか ないかなあ。こまってるんだ」
きつねは こころの なかで、にやりと わらった。
「よし よし、おれの うちに きなよ」
すると ひよこが いったとさ。
「きつねおにいちゃんって やさしいねえ」
「やさしい? やめてくれったら、そんなせりふ」
でも きつねは うまれてはじめて 「やさしい」なんていわれたので、すこし ぼうっとなった。
 ひよこを つれてかえる とちゅう
「おっとっと おちつけ おちつけ」
 きりかぶに つまづいて、ころびそうに なったとさ。
 きつねは ひよこに、それは やさしく たべさせた。
 そして、ひよこが 「やさしい おにいちゃん」というと、ぼうっと なった。
 ひよこは まるまる ふとってきたぜ。

 あるひ、ひよこが さんぽに いきたいと いいだした。
――はあん。にげるきかな。
 きつねは、そうっと ついていった。
 ひよこが はるの うたなんか うたいながら あるいていると、やせた あひるが やってきたとさ。
「やあ、ひよこ。どこかに いい すみかはないかなあ。こまっているんだ」
「あるわよ。きつねおにいちゃんちよ。あたしと いっしょに いきましょ」
「きつね? とおんでもない。 がぶりと やられるよ」
と、あひるが いうと、ひよこは くびを ふった。
「ううん。きつねおにいちゃんは、とっても しんせつなの」
 それを かげで きいた きつねは うっとりした。
 そして 「しんせつな きつね」という ことばを 五回も つぶやいたとさ。
 さあ、そこで いそいで うちに かえると、まっていた。
きつねは、ひよこと あひるに、それは しんせつだった。
そして、ふたりが 「しんせつな おにいちゃん」の はなしを しているのを きくと、ぼうっと なった。
 あひるも まるまる ふとってきたぜ。

 あるひ、ひよこと あひるが さんぽに いきたいと いいだした。
――はあん。にげるきかな。
 きつねは、そうっと ついていった。
 ひよこと あひるが なつの うたなんか うたいながら あるいていると、やせた うさぎが やってきたとさ。
「やあ、ひよこと あひる。どこかに いい すみかはないかなあ。こまっているんだ」
「あるわよ。きつねおにいちゃんちよ。あたしたちと いっしょに いきましょ」
「きつねだって? とおんでもない。 がぶりと やられるぜ」
「ううん。きつねおにいちゃんは、かみさまみたいなんだよ」
 それを かげで きいた きつねは うっとりして、きぜつしそうに なったとさ。
 そこで きつねは ひよこと あひると うさぎを、そうとも、かみさまみたいに そだてた。
 そして、三人が、「かみさまみたいな おにいちゃん」の はなしを していると、ぼうっと なった。
 うさぎも まるまる ふとってきたぜ。

 あるひ。
 くろくも山の おおかみが おりてきたとさ。
「こりゃ、うまそうな においだねえ。ふん ふん、ひよこに あひるに うさぎだな。」
「いや、まだ いるぞ。きつねが いるぞ。」
 きつねの からだに ゆうきが りんりんと わいた。
 おお、たたかったとも、たたかったとも。
 じつに じつに いさましかったぜ。
 そして、おおかみは、とうとう にげていったとさ。

 そのばん。
 きつねは、はずかしそうに わらって しんだ。

 まるまる ふとった ひよこと あひると うさぎは、にじの もりに ちいさい おはかを つくった。
 そして、せかいいち やさしい しんせつな、かみさまみたいな そのうえ ゆうかんな きつねのために なみだを ながしたとさ。
              
 とっぴんぱらりの ぷう。


 「きつねは、はずかしそうに わらって しんだ。」のですが、なぜ恥ずかしかったのでしょうか。

 ひよこ、あひる、うさぎをオオカミから救ったきつねは、自分を犠牲にしています。

 信頼され、ほめられてきつねの気持ちがかわってきたのですが本当はどうだったのでしょうか。

 ひよこは本当に一点の曇りもなくきつねを信頼したのでしょうか。

 素直にうけとるのが一番でしょうが、疑問をもつと、またちがった意味合いが生まれてきそうです。


ひみつのひきだしあけた?

2014年01月16日 | あまんきみこ
ひみつのひきだしあけた?  

   ひみつのひきだしあけた?/あまん きみこ・さく やまわきゆりこ・え/PHP研究所/1996年初版/2008年新版

 

 押入れのすみっこから桜色の毛糸玉がころりでてきて、チイばあちゃんはベレー帽を編もうとかぎ針を探し始めます。

 とらねこのとらたがはなをぴくぴくさせると、においは古机のひきだしから。

 「みたよと」というチイおばあちゃんに「おくのおくまでみたの」ととらたがいいます。
 もういちど見てみようと引き出しの取っ手を引っ張ると、引き出しはするするとでてきます。
 すると引出しには、かいがら、かせき、うごかない時計やら、きれいな小石、千代紙、包装紙が次々にでてきます。

 何でも引出しにしまうくせがあるおばさあんもびっくり。
 引出しは引っ張るだけ「歩い」ていきます。
 どこまでも伸びる引出し。壁で行きどまると、おばあちゃんは壁に穴をあけます。
 それでも歩く引出し。

 よもぎのはらまで伸びると、ようやくかぎ針は見つかりましたが、野原で遊んでいた子どもたちが走ってきます。
 長―い長―い引出しのなかにみんなは目をまるくし、これを頂戴、あれを頂戴と大騒ぎ。

 おおばあちゃんがなんでもおとりよというと、子どもたちはよろこんでいろんなものをもらいます。
 すると、子どもたちがとった分だけ、引き出しが縮みはじめます。
 おばあさんはベレー帽を編めたし、おまけに素敵な六人の遊び友達まで。
 そして、引出しは普通に戻ります。

 この引出しは、一人暮らしのおばあちゃんへの素敵なプレゼントだったんですね。
 なんとも夢のある引き出しです。


トントントンをまちましょう

2013年12月11日 | あまんきみこ
トントントンをまちましょう  

   トントントンをまちましょう/あまん きみこ・作 鎌田暢子・絵/ひさかたチャイルド/2011年初版

 

 山あいの町に、夕方から雪が降りだすと、おかあさんはあわてて甘酒を作り始めます。みこちゃんが甘酒づくりを手伝っていると、トントントンと、玄関のドアをたたく音が・・・

 入ってきたのは黄色の服を着た子どもたち。みこちゃんの知らない子です。

 甘酒を飲んで「あったまったあ」「おいしかったあ」「げんきわくわく」「もうだいじょうぶ」とかえっていきます。

 トントントン。すると今度は赤い服を着た子どもたちが、寒そうに手をこすりながらドアのところに。
 どの子も甘酒を飲んでほっぺたはももいろに。

 お父さんが、「今夜は甘酒のよるだからね」とブザーも鳴らさず、そっと入ってきます。
 お父さんは知らない子の秘密を小声で教えてくれます。「はなたちだよ。この雪で花たちは雪をかぶってこどえるだろう?。それでお母さんの甘酒を飲みにくるのさ」

 お母さんも横からいいます。
 「さっきの子は福寿草、そして次は椿の花たちよ。今夜はまだまだくるでしょう。いろいろな花も、草も、それにりすも、うさぎも、きつねもやってくるはずよ」
 トントントントン。トントントントン。また誰かがドアをたたく音がします。

 舞台は冬から春をまつ頃で、少し早いですが、雪の夜はなぜか扉をたたく音が聞こえる気がしませんか、という作者のメッセージが伝わってきます。

 こんな風景は山あいの家のほうがぴったりします。トントントントンのリズムも子どもの心をつかみそうです。

 お父さん、お母さんの自然への思いや優しい気持ちがつたわり、心があったかくなる絵本です。