どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おおきなありがとう

2025年02月08日 | 絵本(日本)

  おおきなありがとう/きたむら えり・文 片山健・絵/福音館書店/2012年こどものとも

 

 うさぎが、かわうそにあうと、「ありがとう」には、ちっちゃな ありがとうと おっきなありがとうがあるといわれ、森の中のいきものに、ちいさなありがとうか おおきなありがとうか 聞いていきます。

 リスは、くるみを おばあちゃんに もっていって おばあちゃんが ぎゅっと だきしめ、ありがとうというのは おおきなありがとう といいます。

 ビーバーが、道のわきにたおれた木をカリカリして、短い丸太にすると、それを くまが はこぶと、動物たちがいう ありがとうは おおきなありがとう。 

 スカンク、つぐみも、ありがとうといってもらったことを いいました。

 うさぎは、みんなの話を聞いて、「わたしだけ、だれにも おおきな ありがとうをいってもらえないんだ」と、とぼとぼ あるいて いきました。森を抜けると はらっぱ一面に  きれいな 花が さいています。

 花を摘んで、また、森の中であった しかやくまやりす、ビーバーに 花をあげると・・・。

 

 かわうそが ”おおきなありがとう” ”ちいさいありがとう”があるといったのは、自分が いばりたかったからでしょう。いのちを助けられる場合もありますから、これは おおきな”ありがとう”でしょうか。

 殺伐とした世の中で、ちょっとしたことで、”ありがとう”って いわれると、まだまだ 世の中、捨てたもんではないなと、思い直します。

 電車で席をゆずるがわから、ゆずられるがわになって、”ありがとう”は、相手の思いやりに感謝することばです。


ことのおこりは ぽたぽた から・・インド

2025年02月07日 | 昔話(アジア)

   現代アジア児童文学選5/アジアの笑いばなし/ユネスコ・アジア文化センター・編 松岡享子・監訳/東京書籍/1987年

 

 気むずかしやの老女が、小屋のあちこちで、ぽたぽた雨もりして、「このぽたぽやのやつ! ほんとうにもう、こいつからのがれる道はないのかね!」「ああ、このぽたぽたときたら、わたしをころす気だよ!と、わめいていると、小屋の壁で雨やどりをしているトラが、それをききつけました。
 トラは、「ぽたぽたってなんだろう。こんなすごい音をたてるんだから、おそろしい生き物に違いない」と、おそろしくなりました。

 トラが、なんだかわけがわからないでいると、そこに通りかかった焼物師のボレナスが、おもいっきりトラを蹴っ飛ばすと、トラの両耳をにぎって、「あるけ!さもないと、骨をへしおるぞ!」と、どなりました。焼物師は、ロバに逃げられて虫の居所が悪かったのです。

 トラは、ボレナスを、「おそろしい ぽたぽたにちがいない。」と、思い、そのまま焼物師のあばら家にいき、柱に縛りつけられてしまいます。朝、おかみさんが外に出てみると、トラがいることに気がつき、おおさわぎになりました。おかみさんもボレナスも、トラが、家に入らないように戸口にベッドとトランクをおしつけました。

 さわぎを聞きつけて、村びとがボレナスの家の前に来て、トラがつながれているのを見ると、仰天し、ほかに人に知らせました。おびえたトラは、とうとう綱を食いちぎって。ジャングルに 逃げかえりました。

 恐怖が去って、元気を取り戻したボレナスは、あつまってきた人びとに、「蹴っ飛ばしたり、ひっぱりしたどころか、耳をつかんでひっぱってやったんだぜ」と、自慢し、高笑いしました。

 事件の噂はひろまって、王さまの耳にもはいりました。ボレナスの武勇!を知った王さまは、軍の大将に任命しました。ところがそうそうに、となりの王が、八万人の軍隊をひきつれて国境にやってきました。総指揮官に任命されたボレナスは、おそろしさに、胸が波うち、どうしていいかわかりません。

 おかみさんに相談すると、「わたしが、馬にしばりつけてやるから、あとは神さまにおまかせするんだね」と、いいました。

 おかみさんと、四人の召使が、ボレナスを王さまの馬にのせ、しっかりしばりつけ、おかみさんは縄の一方のはしを馬のしっぽにむすびました。そんなことをされては、馬は気持ちが悪くてたまりません。急にあと足で立ちあがり、全速力で駆け出しました。ボレナスは、馬がまっしぐらに敵地にむかっていることに気がつき、「やめろ、とまれ!」とさけびました。このとき、道のはしからパンヤンの木の気根がたれさがっているのが見え、手をのばしてそれにつかまろうとしました。けれども、馬の勢いがあまりにもつよかったので、根は枝から離れ、ボレナスの手ににぎられたまま、ばたばたとゆれはじめました。馬は、一直線に敵地に向かって突進しました。敵の兵隊は、木の根をふりまわして、大声でせまってくるボレナスを見て、「ありゃ悪魔だ!」「敵は悪魔の軍隊をもっているんだ!」と、口々に叫び四方八方ににげだしました。

 一人で敵軍をぜんぶ撃退したことになった勇敢な焼物師の話は、いまでも人びとのあいだでかたりぐさになっています。

 

 後半はよくある武勇談。しかし、「雨もり」を怖いものと勘違いする話と一緒になっているのは、あまりないかも。


ピンクだいすき!

2025年02月06日 | 絵本(外国)

   ピンクだいすき!/ピレット・ラウド:作絵 まえざわ あきえ・訳/福音館書店/2014年

 

ピンクだいすきの うさぎの エマちゃん。

着るものも、持つのも みんな ピンク。

歯ブラシだってピンク。

でも、もっともっと ピンクのものが欲しい。

ピンクの木、ピンクのちょうちょ、ピンクの雪だるま。

ピンクの月も、ピンクの星も あったら いいね。

ピンクの雨が降って ピンクの虹が でたら いいね。

 

きょうは、エマちゃんの誕生日

おともだちのフェルナンデスから 誕生日プレゼントに もらったのは?

みどりの キャベツ。

あまくて とっても おいしい。それに みどりの キャベツって、すごくきれい。

おともだちのフェルナンデスのほっぺに チュツ

すると、おともだちのフェルナンデのかおが ピンク色に。

 

あれもこれもピンクがいい と想像するエマちゃん 楽しそう。でも、みどりもすきになったエマちゃんです。

フェルナンデスは、カエルですから みどりがすきだったのかな?

 

ふだんは、作者の国を意識しないのですが、絵のタッチで、すぐにエストニアの作者とわかりました。

ピンク=女の子と、うけとめるかたが おおいのですが、男の子だって ピンクがすきな子がいますよね。


だらじむことカニ・・島根

2025年02月05日 | 昔話(中国・四国)

      島根のむかし話/島根県小中学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 あるところに、だらじ(ばか)の若者がいて、婿入りすることになった。わかもんのかかさんは、「よめさんのところでカニがごちそうにでるかも知れん。そしたら、ふんどし(カニの殻)はずいて、ぜんの先へやっちょいてくわしゃいよ」と、教えてやったげな。

 婿入りして、ほんに、大きなカニがぜんの上にでちゃげで、かかさんからいわれたように、ゴソゴソ、自分のふんどしをはずいて、ぜんのうえにすえおいて たべたげな。

 よめごさんが、「おまえ、なにするか」ときいたら、かかさんがおしえてくれたことを話した。

 おどろいたよめさんが、「お前のふんどしではない、カニのふんどしのことだがね」というと、ふんどしをごそごそ自分でして、なにもなかったように、カニのふんどしをはずいて、クワったと。

 

 ”ばか”というと、どうにも抵抗があるが、”だらじ”といわれると、すんなりはいってくる話。


だるまちゃんしんぶん

2025年02月04日 | 絵本(日本)

    だるまちゃんしんぶん/加古里子/福音館書店/2016年

 

 本文は、”「だるしん」へんしゅうちょう だるまちゃん”のご挨拶と、記事の紹介の2ページだけ。袋を開けると、春、夏、秋、冬号の4枚の手作りの新聞がはいっています。

 まずは、斬新なスタイルにびっくり。仕掛け絵本も数多くありますが、新聞を折って、袋に入れる製本作業だけでも大変そう。

 にっぽんきせつニュース、せかいびっくりニュース、まちやむら あちこちニュースのほか、なぞなぞ、クイズ、ことばあそび、えさがしなどの記事が満載。クイズはすぐにとけません。

 かこさんのほかの絵本の登場人物がでてくるので、探す楽しみもあります。

 新聞社の所在地<にほんこく あさやけし みらいまち こどものともどおり 9の99の9>、編集部<・きたがわさよこ・ふゆどたけお・かんさつ かんぞう・はちみちあるよ>も ばっちり。ふたりは実存の人物?

 冬号には、光や電波をだしている星は、宇宙全体の5%、光や電波をださないかたまりが27%、まだよくわからないエネルギーの集まりが68%(せかいびっくりニュース)とあって、かこさんらしい科学の視点に おしえられました。


お月さまをたすけた男・・イラン

2025年02月03日 | いろいろ

  現代アジア児童文学選5/アジアの笑いばなし/ユネスコ・アジア文化センター・編 松岡享子・監訳/東京書籍/1987年

 

 ある心優しい男が、ふと、井戸の中を見ると、水にお月さまがうつっているのが見えました。

 お月さまが、井戸の中におっこちて、気の毒に思った男が、大急ぎで長い綱の先に手かぎをゆわえつけたものをもってきて、お月さまを すくいだそうと、力任せに ひっぱりました。

 綱がきれ、男がどしんとあおむけにひっくりかえって頭を打ち、気を失ってしまいました。

 しばらくして、気がついてみると、男がいちばんはじめに目にしたのは、お月さまでした。今は、空たかくしずかにかがやいています。

 男は、うめき声をあげながらも、まんぞくそうにいいました。

 「おら、背骨おっちまったけど、ありがたいことに、お月さんは、ちゃんとたすかったよ」

 

 いま、井戸は見かけません。井戸がどういうものか説明が必要な時代です。

 


びっくりサラダ

2025年02月02日 | 紙芝居

   びっくりサラダ/脚本・新沢としひこ 絵・村上康成/童心社/2012年

 

 ママが作ったフルーツサラダのなかには、そうちゃんが大好きなリンゴとバナナ、大嫌いなニンジンとキュウリ。
 そうちゃんが、「だれか ニンジン ほしい ひと いませんか~」とさけぶと、ウサギが 部屋にとびこんできて、カリカリカリカリと、ぜんぶたべると、まどからとびだしていきました。

 「キュウリも だれか たべてくれないかな」とつぶやくと、ずぶぬれのカッパが、キュルキュルキュルと たべて おふろばに もどっていきました。

 ここで おわればよかったのですが、大好きなリンゴは、ゾウが、バナナとレタスはゴリラが たべてしまったから そうちゃん、おなかが ぺこぺこ。

 ママは、ニンジンもキュウリもなくなっていたのを見て、びっくり。

 そうちゃん、ママに おかわりして、こんどは、ニンジン、キュウリ、リンゴもバナナも いただきまーす。

 

 これで、そうちゃん、きらいなものが なくなったかな。


ゴハおじさん2・・エジプト

2025年02月01日 | 昔話(アフリカ)

     ゴハおじさんのゆかいなお話/千葉茂樹・訳/徳間書店/2010年初版

 

・むすこに世の中をおしえるゴハおじさん
 ゴハおじさんのむすこは、他の人が自分をどう思っているか気になってしかたがない。
 そこでおじさんは、ロバに乗って隣の村へ。
 ゴハおじさんがロバに乗って、息子があるいていると、茶店にいた男は、「おい、みろよ、なんて自分勝手なやつなんだ。自分はロバにふんぞりかえっているのに、かわいそうに、息子は歩いているよ」とささやく。
 そこで、今度は自分がロバをおりて、息子をロバにのせていく。こんどは、「あの子はひどいもんだ。おやじを歩かせているぞ。目上の者を敬わないなんて礼儀しらずもいいところだ」。
 つぎに二人がロバにのると、それを見た人が、ロバがかわいそうだという。
こんどは、二人でロバをかついでいくと、おかしな親子と大笑いされる。

 ここでゴハおじさんの教訓。
 全ての人に気に入られるのはそもそも無理。他の人がどう思うかくよくよ考えるのはやめなさい。

 これは他人の目をきにする、われわれにも教訓にとんだ話です。

・ゴハおじさんとくつ

 ゴハおじさんの友だちが、ゴハおじさんをからかってやろうと、家に押しかけ、昼ご飯にまねかれたからきた、とうそをいいました。ゴハおじさんは、まねいたおぼえなどありませんでしたが、そこは人のいいおじさん、みんなをまねきいれ、客間にとおしました。

 そして、おくさんに、昼ご飯を出してほしいと頼みましたが、「食べ物なんか何もない。あなたは、からかわれているのよ。客間で待たせておいたら、まちくたびれて、そのうちかえるでしょう」といわれ、友だちをほうっておくことにしました。

 友だちは、ゴハおじさんをうまくだましたつもりで、声をあげてわらっています。ゴハおじさんは、おかえしのいたずらをすることにしました。友だちの靴をぜんぶかきあつめ、大急ぎで市場にいき、靴をみんな売りとばしてしまい、売ったお金で食べ物を買ってかえりました。おくさんは、その食べ物で、昼ご飯をこしらえました。

 みんな、散々待たされ、おなかがぺこぺこだったので、よく食べること、食べること。ようやく食べ終わったみんなが、かえろうとすると、玄関には靴が一足もありません。みんながゴハおじさんにくってかかると、ゴハおじさんは、すずしい顔で答えました。

 「ああ、靴なら、ぜんぶ、きみらのおなかのなかだよ!」

・水あび

 うだるような暑い日、ゴハおじさんが、川で水遊びをして、もどってみると、土手に置いておいた服がありません。だれかがもっていってしまったのです。

 これにこりたゴハおじさんが、つぎに川遊びをするときは、服を着たままでおよぎました。それをみて、みんなは大笑い。シカシ、ゴハおじさんのいいぶんは・・

 「ぬれた服を自分できているほうがずっとましだよ。かわいた自分の服を、ほかのだれかがきているよりはね」

・ゴハおじさん、おふろ屋さんにいく

 ある日、ゴハおじさんは、おふろ屋さんに、いつものそまつなシャツとズボンででかけました。ゴハおじさんは、これまでいちども公衆浴場にいったことがありませんでした。

 おふろ屋さんの世話係の人は、ゴハおじさんのことを馬鹿にしたような目でみて、ちっぽけなせっけんと、ちいさなぼろぼろのタオルしかくれません。ふろあがりによくよく見ると、ほかの客は大きなふわふわのタオルにくるまって、ハチミツやナッツのたっぷりかかったケーキやお茶をもらっています。もらっていないのは、ゴハおじさんだけ。おもしろくなかったゴハおじさんでしたが、かえるとき世話係に金貨一枚づつチップとしてわたしました。

 つぎの週、ゴハおじさんがやってくると、世話係の人たちは、たくさんのチップを期待してうんと、もてなしました。いい香りのするせっけん、清潔でまっしろなタオルをわたしました。ふろあがりには、あついお茶と、お皿いっぱいのおいしいケーキも もってきました。

 ところが、ゴハおじさんが、かえるとき、やすい銅貨を世話係にわたしました。あてがはずれた世話係の人に、ゴハおじさんはいいました。

 「いいかね、その銅貨は、この前のひどいあつかいをしたときのぶんだよ。あのときあげた金貨は、きょうのすばらしいもてなしの分だ。まあ、人を見た目できめつけないことだな。」

 

 国がちがえば、おふろ屋さんも いろいろです。

・クマ狩りにいったゴハおじさん

 ゴハおじさんは、狩りが大嫌い。しかしえらい領主さまにさそわれて、いやいや おともしていきました。

 まる一日中領主さまのおともをして、クマ狩りをしたゴハおじさんでしたが、家にもどる途中、友だちに会ってこたえました。

 「クマ狩りはどうだった?」
 「ああ、うまくいったよ」
 「山ではクマを何頭、おいかけたんだい?」
 「一頭も」
 「じゃあ、クマを何頭、しとめたんだい?」
 「一頭も」
 「それなら、クマを何頭見たんだい?」
 「一頭も」
 「おいおい、クマを一頭も見ないで、どうして、うまくいったなんていうんだ?」
 「いいかね、クマ狩りっていうのは、クマなんぞ、一頭も見かけないのがいちばんなんだよ」

 

 ゴハおじさんは殺生がだいきらいのようです。