てのひらむかしばなし こだぬきのおんがえし/長谷川摂子・文 菊池日出夫・絵/岩波書店/2009年
いつもすかんぴんのびんぼうで、大家に借金ばかりしていた うまかたが こどもらにいじめられていた こだぬきを助けます。
こだぬきは、ととさんたぬきから「たすけてもらったら その おんを かえさねばなんね。」といわれ、うまかたのところへ。
「おんがえしなんぞ いらんいらん」といわれ、すごすごと山奥にかえりますが、「おまえのできることでいいから、かならずおんがえし してこい」と、ととさんたぬきにいわれ、もう一度うまかたのところへ。
ちょうどそのとき、大家がやってきて、借金をかえせと うまかたをせめたてます。
ひたいを床にこすりつけ なんとか今月の末までにかえすことになったうまかた。
一部始終をみていた納戸のこだぬきは、小判に化けるから、それで「はらってこい」と、小判にばけます。
ところが、この小判は大きすぎ。大きすぎるといわれ、またちゅうがえりすると、今度は中ぐらいの小判に。まだ大きいといわれ、もういちど宙返りすると、ちょうほどよい大きさに。
小判で借りた金を全部まとめてかえしたうまかた。大家はもらった小判を、においをかいだり、はじっこをガチガチかんだり、棒でたたいたりして 本物と思いタンスの中にすまいこみます。
次の日、大家がタンスをあけると小判はきえていました。小判にばけていたこだぬきは、うまかたのところかえると、山奥にもどります。
ととさんたぬきは「おまえは にんげんより えらい」と、たいそうほめます。
背中をたたかれたり、がっぷがっぷ かじられながら、じっと我慢するこだぬきの姿に、うまかたにかぎらず同情してしまいます。
ととさんたぬきと、こだぬきの関係もあたたかく、後味がよい昔話になっています。
(鈴木サツ全昔話集をもとに再話したとありました)
うまかたとこだぬき/香山美子・文 野村たかあき・画/教育画劇/2003年
馬方が、晩ごはんをたべて、ごろんとよこになっていると、だれかが 入り口の戸をたたきました。馬方が、「あしたにしてくれ」といっても とんとんたたく音はやまない。しょうがなく入口の戸をあけると、たぬきの親子が ならんでいました。
おやだぬきが、息子を助けてくれたお礼を言い、「親方の手伝いを させてくだされ」と、こだぬきを おいていきます。こだぬきは、こどもらにいじめられているところを、馬方に助けられていたのです。
それから、こだぬきは”たんた”といいましたが、めしたき、せんたく、そうじ、そして馬の世話も ちいさい手でよくやった。
ある日、馬方のところへ、大家がやってきて、たまった家賃をはらうようにいうが、ない袖は振れない。しかし、大家は、払わないと 馬をもっていくという。馬がなければ仕事ができない。
そのとき、押し入れにかくれていた”たんた”が、「ちょっと まって、おやかた」と さけんでしまいます。その声を、ともだちとかんちがいした大家は、よそをまわって またくるから、それまでに お金を そろえておくように、いいます。
たんたは、小判に化けて窮地を救おうとします。ところがこれがなかなかうまくいきません。お鍋の蓋のようになったり、コメ粒ほどになったり。ようやく本物そっくりになった小判は 大家のところへ。
「もうにどとかえってこないかも しれないぞ」と、心配する馬方のところへ、からだじゅう きずだらけの こだぬきが かえってきました。大家が本物か かんだり、別の小判でたたいたりしたのでした。
馬方は、たんたの傷の手当てをし、おやだぬきに かえしました。それからは家賃をためないで、しっかりしっかり 働いたという。
素朴な感じの版画が、昔話にぴったりです。家事をするこだぬきの可愛いこと可愛いこと。
輸送手段としても利用された馬や牛ですが、昔話にでてくる馬方は西日本、牛方は東日本といいますが、必ずしもそうではないようです。