新装世界の民話16 アルバニア・クロアチア/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1978年初版
アルバニア版「聞耳頭巾」です。
森の火事からへびを救った男が、お礼にどんな話でも聞こえることになります。ただし、このことを誰かに話したら倒れて死んでしまうという条件がついていました。
男が、二羽の鳥が地面の下に金がいっぱい入った瓶が三つあると話しているのを聞いて、地面を掘り起こしてみると確かに金の入った瓶がみつかります。
この男、牛が腹をへらしているのを聞くと、草をたべさせたり、おくさんが雌馬に乗って山にいくとき、おくさんののった雌馬が、おなかのなかには子どもがいて、乗せてるおかみさんは身ごもっていて、四人分で大変といっているのを聞いて、おかみさんを雄馬にのせるというやさしい?ところもあります。
不思議におもったおかみさんが、秘密を聞き出そうとすると、男は雄鶏の話を聞いてこん棒でおかみさんを殴りつけます。
犬や羊、鶏たちの会話も楽しい話です。
この「世界の民話16」は、ドイツの出版社で刊行したものを訳したものですが、いま一つうなずけない訳で、語るとしたら相当の工夫が必要なようです。
アルバニアはあまりテレビ等で取り上げられないので、よく知りませんでした。調べてみると興味深い国でした。
秩父に温泉がわかないわけ/新版日本の民話57 埼玉の民話/根津富夫・編/未来社/1975年
え!秩父に温泉がなかったけ。
しかし、昔、武甲山の麓にある湯の沢にはきれい流れがあって、ここには湯が沸き出ていて土地の人たちが一日の疲れをおとして家にかえっていたそうだ。
ところがここにでっかい猪がすんでいて、土地の人からは大事にされていたが、なにも知らない猟師がこの猪に矢を打ち込んだところ、上州の伊香保まで落のび、それ以来秩父には温泉がわかなくなったという、なにかうなづける伝説。
うおいちば/安江リエ・文 田中清代・絵/福音館書店/2009年かがくのとも発行
沼津市の水産会社が取材に協力しています。
働く人、いろいろな魚、セリの様子がいきいきと描かれています。
朝4時に魚市場にでかけたきよちゃんを、おじいちゃんはいろいろ案内してくれますが、目は金色でまんまるの金目鯛をみつけてくれときよちゃんにいいます。
金目鯛を競り落としたお母さん。この金目鯛はおばあちゃんの誕生日用でした。
海の幸いっぱいのおばあちゃんのお祝いはとってもおいしそうです。
魚市場のことを知り尽くしたおじいちゃんが、孫に金目鯛をさがしてとさりげなく声をかけるのはおじいちゃん流の愛情表現でしょう。
豊洲市場はどうして、こういう事態になったのでしょう。
新装世界の民話16 アルバニア・クロアチア/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1978年初版
「アリババと40人の盗賊」にアリババがもちかえった金貨を数えるため、裕福な兄のところから枡をかりてくるところがあります。この枡には油が塗ってあって、そこに金貨が張り付いていて、アリババが大金を得たことを知った兄が、盗賊が宝物をかくしてあった洞窟にでかけていきます。
「貧乏人が福の神をみつけたこと」には、同じようなシチュエーションがでてきます。
へんな福の神のおかげで、金貨を手に入れた男。女房が男の兄のところにはかりを借りに行きます。
二度目にはかりを借りに行ったとき、兄ははかりにハツミツを塗り付けます。はかりがかえってきたとき、はかりに一枚の金貨がくっついています。
弟が大金を得たことを知った兄は、二人で大金を手に入れたところにでかけますが・・・・。
両者とも金貨を数えるというのは、奥さんの方。そしてでてくるのは兄弟です。
タイトルから日本版の「貧乏神」のような展開かと思ったら、へんな?生き物が福の神で、弟は何の苦労せず、お爺さんのところにいって、なんと目の前から金貨をいただいてきます。
このお爺さんの正体はまったくわかりません。とにかく鷹揚な人ですが、二人がやってきたときは、あまりに欲張りだったので金貨をすべて取り上げてしまいます。
アーノルド・ローベル・作 エイドリアン・ノーベル・彩色 アーサー・ビナード・訳詩/長崎出版/2013年初版
一ページ一話でダジャレが楽しい絵本です。
フクロウ編とブタ編があって、父親の絵本に娘が彩色したとありました。絵も優しい感じです。
フクロウくん、くるまにのるんだが、きょうもブーブーブクロウ
そりにのびのり、みんなをおいてけぼりにして「ごめんね!おおい どけどけ! おさきにアイムソリイイイ!」
ブタたちったら すってんころりん どどどん! きんじょのみんながおどろいた。「おっ ゆれてるね」「いまのはおおきかった」「しんど5くらい?」「しんげんちは?」
ただいまのゆれは しんど3びきで しんげんちったら バナナのかわだった。
しゃれについていくのも大変そうです。
フクロウくん、ピアニストになったり、サーカスでショウをしたり、ケーキで天気予報をしたりと忙しそうです。
ふうせんをふくらまし、ふうせんがフクロウをふくらます勝負はどっちにころんだかな・・・。
正部家ミヤ昔話集/小池ゆみこ他・編/小澤昔ばなし研究所/古今社/2002年初版
CDで正部家ミヤさんの語りを聞きました。
方言で四苦八苦。理解しきれないところが多く、やはりCDでは雰囲気だけで満足しなければなりませんでした。
「親父を買った話」とあるので、どういう内容かなと思っていると、オチはすごくシンプルでした。
町で死んだ親父そっくりの男を買ってきた男。
大事に長持ちのなかにいれて飯時には膳を、ときどきお酒をやったりするので、不思議におもった女房が、男がいないときに長持ちを開けてみると、そこには姉さま。
嫉妬した女房が男を問い詰めます。男は親父を買ってきたと主張するのですが、喧嘩がはじまります。
そこにやってきた六部、長持ちを立てさせ、六部は真ん中に、両脇には男とその女房。
長持ちの中には三人がいました。
六部は、これは鏡というものと教えます。
はじめて鏡を見た若い者の騒動だったというオチです。
はじめから長持ちがでてくると終わりが想像できるのですが、親父を買うというイメージがわかないうちに、最後はなるほどと思わせます。
アマゾン・アマゾン/今森光彦 文・写真/福音館書店/1991年初版
テレビで世界各地の映像が流れているので、わかったような気がしても、まだまだ知らないことばかり。
アマゾンの支流の一軒の家にすんで作者がとった写真集です。
ジャングルの宝石といわれるファルキドンミイロタテハ。
世界最長の羽をもつナンベイオオヤガは羽の長さが27センチ。
ゴキブリもアリもジャンボ。
子どもがのっかても平気だというオオニバスの葉。
直径20センチのシッポジアグラというツタからは水がふきでます。
パイナップルやカカオの原種。
ただただ初めて見るばかり。神秘なものばかりです。
そして子どもの笑顔。いつまでも笑顔でいてほしいものです
正部家ミヤ昔話集/小池ゆみこ他・編/小澤昔ばなし研究所/古今社/2002年初版
狐と犬の二匹連れ。
狐が自分のことを自慢したくなり、犬になんぼくれ先までわかる?と聞くと、犬は先のことはわからないと答えます。狐は三年先のことまでわかると鼻高々。
この二匹が深い谷川にかかっていた一本橋をわたろうとすると、犬は狐にむかって「お前のような偉い人の前を渡っていくわけにはいかないから」と狐を先に渡るようにいいます。
真ん中までいったあたりで、犬が「ワン」と吠えるとびっくりした狐が谷底に落ちてしまいます。
すると犬は「三年先までわかるたって、今の災難もわかんねべな」と揶揄。この気持ちよーくわかりますね!。
自分が正しい正しいという人にも、どこかで落とし穴がまっているかも。
おばけマンション/鈴木翼・文 村上康成・絵/世界文化社/2016年初版
魔女の部屋に遊びいったのはデーテル君とスケーテルちゃん。
こうもりのからあげを食べてデーテル君の頭がかぼちゃになって。
ドラゴンの涙が薬になると聞いて、ドラゴンのところにいきますが、そこにいたのは小さい小さいドラゴンです。
ドラゴンが住むのはおばけマンション。
おばけマンションの住人は、入歯なので血が吸えないドラキャラ、包帯が足りなくて上半身裸のミイラ、狼男は変身しきれなくてお尻がまるだし、ばらばらになってもとにもどれないガイコツと全くさえない面々。
さいごにデーテル君は狼男の子どもで、スケーテルちゃんは透明人間の女の子という種明かしもあります。
思わず笑ってしまうおばけマンションの住民。どんなおばけか想像してみてください。
「わらしべ長者」は、「観音祈願型」「三年味噌型」の二つがあり、「三年味噌型」では、若者が、「わら3本」をもって旅に出て、わらから蓮の葉、三年味噌、名刀と交換し、最後には千両を手に入れ、長者の娘と結婚することに。
・たる腹(インドネシア)(新装世界の民話22 インドネシア・ベトナム/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1979年初版)
腹だけが突き出て頭や足とつりあっていなかった男の話。
「わらしべ長者」と同じように、魚からにわとり、杵、水牛、ドリアンと交換し、このドリアンを食べたお姫さまと結婚する物語。
交換するきっかけは、杵が水牛にふまれてこわれたかわりに、水牛を手にいれるというもの。一つ一つの交換の様子が詳しい。
「たる腹」では、姫さまと結婚する前に、大臣がたる腹を教育すると、大臣が教えたことをすぐにすべて理解し、体つき全体も機敏になり、醜い男のなごりがなくなってしまうという終わりかたをします。
だんだん価値の高い?ものに交換していくという話があるなかで、逆のパターンがあるのも面白い。
グリムの「しあわせハンス」は、7年間働いてもらった給金をもって家に帰る途中、馬、牛、豚、ガチョウ、砥石に交換し、最後に砥石が泉へころがりこんで、無一文に。
別の意味での問いかけがあるようです。
ゆきのよあけ/いまむら あしこ・文 あべ 弘士・絵/童心社/2012年初版
夏の日、きつねに追われて、おかあさんとはぐれた野ウサギの子。
一人ぼっちで夏と秋を過ごし、しんしんと夜がふけ、雪の白さがどこまでもどこまでも広がる森の中。
きつねのにおいがただよい、野ウサギの子は鉄砲玉のように飛び出します。空からはふくろうのするどいかぎづめがふりかかります。
野ウサギの子は、死に物狂いで雪をけって、前へ前へ飛び出してゆきます。足をとめたそのときが命の終わりなのです。
雪煙を舞い上げながら逃げる野ウサギ・・・・。
夜が明けると、雪の森が目を覚まし、森中の鳥たちがさえずりはじめます。アカゲラは木のドラムをたたき、りすたちは、まぶしい銀世界を軽々と飛び跳ねます。
天敵から追われる必死の逃避行のあと、体中の力がみなぎり、つよいよろこびがこみあげた野ウサギの子は思いっきり雪をたたきます。
雪原に繰り広げられるドラマチックな展開に思わず引き込まれ、朝の風景におもわずほっとします。
夜のしずんだ色と朝のまぶしさが対照的です。、
遠藤登志子の語り 福島の民話/吉沢和夫・藤田浩子・編/一声社/1995年初版
「姥の皮」は、継母から川に突き落とされた娘が、婆さまから「姥の皮」をもらって、長者の屋敷で働き、そこの息子と結ばれる話ですが、ご本人にいわせると、この話は三晩で語るものだという。
川に流されるところまで一晩、姥皮脱いだところまでが一晩、そして最後。
冒頭で継母が、娘に厳しく仕事をさせる場面がでてきます。
洗濯では、手がのろい、足がのろいといわれ、飯炊きは燃えねえ木で炊かせたり、ぼろになった布を、着れるようにする針仕事。
女の仕事は、畑仕事から、味噌つき、裁縫、糸取り、機織り、書を書くこと、歌、舞などなど。
このあたりをくわしく語っていくと長くなり、省略するとあっというまに終わるような自由自在な語りが遠藤さんの語りのようです。
普段は婆様だが、あるときお姫様のように化けた娘?をみて、末の息子がどうしても嫁にしたいといいだし、親が、針仕事、飯炊き、機織りさせてみると何でもこなしてしまう娘だったので、納得します。
継母のきびしい教えが、娘にしあわせをもたらしてくれるので、はじめの憎たらしいイメージがかわるところが面白いところです。
昔の女性は、なんでもこなせなくてはならず、大変だったようです。それにくらべると男は・・・。
ジェリー・スピネッリ・作 ジミー・リャオ・絵 ふしみ みさを・訳/鈴木出版/2013年初版
お店屋さんや職業が出てくると思ったら、あららというものばかり。
自由にすきなことを考えていいんだよとというメッセージがあふれています。
なにしろ「おばけカボチャやさん」「タンポポンのわたげふきやさん」「みずたまりバシャバシャやさん」「リンゴまるかじりやさん」から「かいじゅうへんしんめいじん」「もうじゅうわらわせやさん」などなど。
想像力をいっぱいひろげてくれ、のびのび遊び心があふれています。
子どもはせせこましくならず、夢をもつことがまず一番でしょう。
新装世界の民話22 インドネシア・ベトナム/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1979年初版
どこの国にもある”ほら話”。
二人の男があって、互いに自己紹介。
一人は巨大なさつまいもを見に行くところという。それを聞いた男が「一万人の兵隊が一か月以上毎日食べても、そのさつまいものほんの一部分」と話します。
もう一人が高い橋を見に行くという。それを聞いた男が、その橋のことを話します。
小さな男の子が橋の上から落ちて、その子を助けようと、急いで家に帰り一か月かかってボートを作り、子どもが落ちたところにきてみると、ちょうどそのとき子どもが落ちてきてなんとかうまくつかまえたという。
さらにお互いに歳をたずねると、一人は六千年かかってできた桃を食べた記憶があるという。
もう一人は、年をとるごとに、つまようじのおおきさの板切れに書き込むのだが、その板切れが家だけでなく町いっぱいになるほどだという。
二人が食事していた食堂のおかみさんにどれだけ春と秋をかぞえたかきくと、弟は地球上最初の人間だと答えます。
ほら話も大きければ大きいほど楽しめるのですが、最近は、ほらか嘘かわからないような情報が飛び交って、政治や経済が左右されているのも不思議な現実です。
世界のだっことおんぶの絵本/エミリー&ドウルガ・バーナード 文絵 仁志田博司・園田正世・監訳/メデイカ出版/2006年初版
北から南、もじどおり世界のおんぶとだっこ。
赤ちゃんはだっことおんぶの中で、母親の暖かさを感じて育ちます。
背中にだっこ、おぶひももさまざま。
バリ島ではスリングという布
ズヘル(北アフリカ)では、体にむすびつけた布
カナダの北のはしっこでは、お母さんの上着のフード
パプアニューギニアの高地では、母親の頭にひっかけたすずしいあみのふくろ
どれもお母さんが働きながらおんぶしています。
母親の仕事は、どこかで記憶の底に眠っていて、いつの日にか気がつくのかも知れません。
暑いところ、寒いところ、それぞれの衣装が、その地での暮らしぶりを表しています。
各地の人びとの暮らしぶりの詳しい解説がついていて、知らないことが多いのをあらためて実感します。