どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

がいとうの ひっこし

2024年12月31日 | 絵本(日本)

   がいとうの ひっこし/山田彩央里・作 山田和明・絵/イマジネーション・プラス/2024年

 

 今ではやや古めかしく、あちこちでじゃまものあつかいの街灯が、居場所を探していきますが、なかなか居場所が見つかりません。

 街をあちこちあるき、ようやくさびれた暗い広場のベンチの隣にたどりつきました。そこへ、悩みや疲れた人がベンチに座り、明かりに照らされて、もういちど頑張ってみようと立ち去っていきました。

 いえにかえっても、そとにでかけても はなしあいてのいない、ひとりぼっちのおじいさんは、「まるで だれかが はなしを きいてくれるようだ。またくることにしよう」といいながら、かえっていきました。

 ベンチも、「ここにはね 誰もゆっくり すわって いったことがないんだ。今夜はよく人がくるよ。ねえ これからも ここにいてくれよ」

 

 暗い中での明かりは、心もてらしてくれる存在。どこもかしこも明かりだらけで じゃまものにされた街灯がみつけた 最高の居場所でした。ただ、街路灯だけだと、人は多分通り過ぎるだけ。ベンチがあってはじめて なりたつ空間だったのでしょう。

 

 ところで、わたしのすんでいる小さな街では、シャッター通り商店街で、あいていたとしても閉じるのが早く、ちょと裏通りに入ると真っ暗。とくに日が暮れるのが早い冬場には、人通りも少なく 寂しい感じ。こんな中で、数少ない街灯の明かりを見つけると、それだけで ほっとします。

 

 山田彩央里さんのはじめての絵本とありました。なじみのない出版社の絵本ですが、会社の理念は、「イマジネイション・プラス の社名は「想像力」に何かをプラスしていけたら、という意味です。
 子どもたちの「無限大の想像力」 にプラスするものは「絵本」かもしれませんし、「音楽」「絵画」「生き物」あるいは「自然」「普段の生活」といったものなのかもしれません。

 そのような多様な「何か」をプラスして「おもいやり」「やさしさ」のような気持ちに結びついて欲しいと思っております。そしてそのような気持ちがきっと争いのない平和な世界にもつながっていくと信じて出版の活動をしてまいります。」とありました。


とんだ ぬけさく・・エチオピア

2024年12月30日 | 昔話(アフリカ)

   グラのきこり/山の上の火/クーランダー、レスロー・文 渡辺茂男・訳/岩波書店/1963年初版

 

 読んでて楽しい話があれば、聞いて楽しい話もあったりして、両方が一致すれば一番ですが そうそう うまくはいきません。「とんだ ぬけさく」は、読むと「なんじゃ これ?」となりますが、聞くと楽しい昔話。

 ある日、もうじき子どもが生まれるといわれたテスファというお百姓が、そんな子どもが生まれるかと心配になり、山の洞穴にすんでいるおぼうさんのところへ、お礼の牛をいっぴきつれて、たずねていきました。

 テスファもお坊さんも すこし抜けた人。

 このおぼうさん、「おまえのうむ子どもは、男の子か、それとも女の子か、どちらかじゃ」という。それを聞いたテスファは、「ほう、なんともしあわせなこった!」と 喜んで家に帰りました。

 うまれたのは、男の子。テスファは、「ぼうさんのいうとおりになったでないか!」と 繰り返しいいました。名前をつけるだんになって、おかみさんと言い合いになり名前がきめられません。テスファは、また牛をいっぴきひっぱっておぼうさんのところにでかけました。

 おぼうさんは、「名前を おまえの手の中にいれてやるから、落とすんでないぞ」といい、テスファが両手を出してつくったおわんのかたちの手の中へ、口を近づけて、手の中にむかって、なにかをつぶやきました。

 テスファが、手をしっかり握りしめてかえるとちゅう、ムギをうっているお百姓たちにむかって、「名前をもってるだ! 名前をもってるだ! おらあ、うんのいいおとこだぞ! おらのせがれの名前をもってるだ!」と叫んだのはいいが、もみがらで つるりとしばって すってんところびました。名前を落としてしまったと思ったテスファが、あちこちをさがしはじめると、百姓さんたちも手伝いはじめました。あちこちさがしていると、おばさんがやってきて、そこで何をしているかと、聞きました。わけを聞いたおばさんは、「とんだ ぬけさく!」というと、そのままいってしまいました。

 家にかえったテスファは、おかみさんから聞かれて、「ぼうさまからさずけてもらったけど、わらの中へ、おっこしちまっただよ。」「それで、あわててさがしとるとな、村のおばさんがやってきて、『とんだ ぬけさく』って、おしえてくれたっつうわけだ。そんで、さがすのはやめたけんで、どうして、あのおばさん、しっとったかのう?」

 

 テスファとおぼうさんのやりとりも とぼけています。読んでいると、なにこれ となりますが、笑い話には、極端なものがあって、おおかれすくなかれこうしたことがみられます。

 「とんだ ぬけさく」という名前がつけられたのでしょうか。現地の言葉だったら、日本語訳と違う意味になるのかも。


なきむし

2024年12月29日 | 絵本(日本)

 

   なきむし/みやにし たつや/ポプラ社/2024年

 

 いつもといっしょに遊びたがる妹。

 ぼくが ともだちのたかしくんのいえに あそびにいこうとしたら 妹が「わたしも つれてって」

 ぼくが かいじゅうの おもちゃで あそんでいたら 妹が、「ままごとしよう」

 あめふりのひ、あたらしい 傘を 買ってもらったら 妹が、「おおきくて いいなあ かえて」

 ぼくが なわとびをしていたら 妹が、「なわとびかして」

 ぼくが 「だめ!」って いったら 妹は、「う、う、う、ううう・・・」

 うわーーん うわーーん

 結局は、妹のいうとおりの お兄ちゃん。

 

 それだけ頼りにされている頼もしいお兄さんです。

 なわとびでころんで、ぼくが うわーん うわーん とないていたら、妹が あたまをやさしく なでてくれて、「よしよし いたいの いたいの とんでけ-!」って、やってくれたよ!

 

 たったふたり。なかよしが いちばん。


おしゃくしょうとえんまさま

2024年12月28日 | 絵本(昔話・外国)

  おしょうとえんまさま/君島久子・再話 佐藤忠良・絵/福音館書店/2024年第二刷

 

 むかし、中国のえんま様のお祭りには、村の人びとがいろんなおそなえをしていました。
 欲張りのえんまさまから、「だれがいちばん おそなえを けちけちしていたか?」ときかれた手下が、ここをとおる百姓が、いちばんけちとこたえました。おこったえんまさまは、お百姓を こらしめることにしました。

 えんまさまの手下の鬼たちは、稲が実らないよう 「あたまがほそく、ねっこがふとくなる」 魔法をかけることにしました。ところが、これを聞いていた えんまさまと同じお堂に住んでいる堂守のおじいさんが、お百姓に、そっとおしえてやりました。そこで、それを知ったお百姓は、稲を作るのをやめて里芋を植えたので、その年は やまほどの さといもが とれました。

 えんま様に怒られた鬼たちは、こんどは、いもがとれないように、「まんなかをふとく、うえと したをほそく」する呪文をかけることにしました。

 堂守のおじいさんからこれをきいたお百姓は、こんどは、トウモロコシをうえたので、その年は、たべきれないほどのトウモロコシがとれました。

 うえからしたまで ふとく・・さとうきび

 あたまを むっくり したを ひょろひょろ・・稲

 つぎつぎに 鬼たちの呪文を逆手にとるお百姓の知恵が生きています。

 


 中国の昔話の再話ですが、落ち着いた佐藤忠良さんの絵も楽しめます。

 作物が育たないような案を出し、呪文をかけ 実行するのは鬼たち。じぶんは何も考えていないえんまさま、鬼たちを叱る資格はなさそう。

 野菜の特徴がよくでている昔話で、野菜の入門編としてもつかえそうです。


はんたいばかりの おかみさん・・エチオピア

2024年12月27日 | 昔話(アフリカ)

   グラのきこり/山の上の火/クーランダー、レスロー・文 渡辺茂男・訳/岩波書店/1963年初版

 

 むかし、ある村にシュムという男がいました。シュムのおかみさんは、とてもがんこで、いつでもだんなさんの反対のことばかりしていました。

 「石をつかって、まるい家をたてたい」とうと、「ねんどをつかった四角い家のほうがいい」
 「川の水は、くさりかけているから、水をくむなら泉の水がいい」というと、「川の水がいちばん」
 「のどがかわいたから、コーヒーでもおくれ」というと、「ホットケーキがいい」という具合。

 だんだんと、じぶんのやりたいことをおぼえたシュムは、肉をたべたければ やいたモロコシをたのみ、じぶんの両親にあいたくなったら、おかみさんの両親にあいたいといえばいいのです。

 ある日、シュムとおかみさんが町へいって、村に帰ろうとすると大雨が降ってきました。ふたりが村の近くの川までくると、もう川は、渦をまいていました。シュムが、「川をわたるのは、あぶないぞ!」というと、おかみさんは、「なんの、あぶないことがあるもんですか!」「水がへるまでまったほうがいいな」「ばかげたことですよ」といいました。

 そこで、シュムは足で浅いところを探りながら、やっと、向こう岸につきました。
 シュムが、「水があわだっているところへ、足を入れないように」と言うと、おかみさんは、いつものとおり、水のあわだっているところへ足を入れました。シュムのいった通り、おかみさんは、水の中へおちこんで、急な流れにながされてしまいました。村人の助けをかりて、おかみさんを探そうとしますが、どっちに流れていったか わかりません。いつもはんたいばかりをいうおかみさんでしたから、川下でなく川上に行ったに違いないと、川上をさがしましたが、おかみさんの姿はみえません。とうとう日が暮れたので、村人たちは、ひきあげてしまいました。

 シュムは、悲しそうに首を振ってこういいました。「・・・というわけです。じぶんかってにやることは、そんなにいつまでもつづくもんでないからなあ。

 

 おかみさんが、どうなったのかはわからないまま。おかみさんだって、いいたいことがあったのかも!


ふくべは縁起がいい・・茨城

2024年12月26日 | 昔話(関東)

      茨城のむかし話/茨城民俗学会編/日本標準/1975年

 

 田植え時期というのに雨が降らない日がつづき、水不足に悩んでいたおっかさんが、たんぼのあぜ道にいると、目の前に大きな男が立っていた。

 男は、おっかさんのところに三人の娘がいることを知っていて、ひとりくれるならおまえさんのたんぼに水をいっぱいいれてやるという。三人いるからひとりぐらいやってもいいから、田んぼに水をいれてくれといったおっかさんが、「いったいおまえはだれだ」と聞くと、男は、「今晩のうちに、おまえさんのたんぼに、水をいっぱいにしてやる。わしは普通の人じゃねえ。たまげねえでくれよ、わしは池の大蛇なんだ。」というと、さっとくらやみの中にきえてしまった。

 上のふたりは、大蛇のよめになるなんて、とんでもねえと断るが、末娘は、たんぼに水をひけるならと、泣きながら、よめになることを承知した。次の朝、いままで一滴の水もなかった田んぼに、水がいっぱいあり田植えがおわった。

 末の娘は、いよいよ約束通りよめにいくことになったが、「よめ入りの道具として、長持ちをひとつと、ふくべ(ひょうたん)を千個、針を千本買ってほしい」という。おっかさんとふたりの姉は、長持ちをひとつと、ふくべを千個、針を千本用意し、森の中へいくと、池に向かって、やくそくどおり よめをつれてきたと、さけんだ。すると池の水が急にざわざわして、池の中から大蛇がやってきた。

 末の娘は、「いまこの池にふくべを千個まくけど、その中のどれでもいいから一つしずめられたらあんたのよめになる。」と、条件を出した。「ひとつぐらいしずめるのはなんでもねえ、はやくまけ」と大蛇がこたえ、ふくべをしずめようとすると、しずめたとおもったふくべが、全部うかびあがった。おどろいた大蛇は、別のふくべを五、六個口にふくみしずめたが、これもすぐうかびあがってきた。ふくべには針が一本ずつつきささっていて、その針が、大蛇の背中や腹をぶつり、ぶつりさすもんだから、大蛇は痛くてしょうがなくて、「大蛇のよめはやっぱり大蛇がいい。人間なんぞまっぴらだ。さっさと帰れ。」と叫んだ。

 末娘は、「大蛇のよめになるつもりでここにきたんだから、約束ははたした。よめにしねえというんだから仕方があんめい。田植えもしたし、義理もたてたし、よかったな。さあけえろう、けえろう」といって、無事に家に帰ってきたんだと。だから、ふくべは縁起がいいんだそうだ。

 

 大蛇のいいぶんが、なんともいえない。


悲しむべきこと

2024年12月25日 | 星 新一

   悲しむべきこと/星新一/ものがたり十二か月 ふゆ物語/偕成社/2008年

 

 星新一さんのオチは、いつもながら秀逸です。クリスマスなのでサンタにまつわる話。

 大きな邸宅に住むN氏のところにやってきたサンタクロース。N氏は、「よくいらっしゃいました。ごくろうさまです。しかし、わが家はけっこうです。小さい子どものいることはいるのですが、うちはまあ、お金持ちのほう。どうせなら、貧しく恵まれぬ子どものいる家をおたずねください。」といいますが、このサンタクロースは、拳銃らしきものをむけたのです。

 N氏が、なんで強盗まがいのことをするのか、わけをたずねると、

 「じつは、ご存じのように、わしはむかしからクリスマスの夜、かわいそうなこどもたちに、ずっとおくりものをとどけつづけてきた。みな喜んでくれている。」「そのためには金のかかることを、理解してもらわねばならんよ。喜んでくれるのはいいが、金のことはだれも考えてくれない。わしのたくわえは、とっくのむかしになくなった。つぎには家具や装飾品を処分して、おくりものを買う金とした。」「それから借金だ。わしの家を抵当にし、金を作った。かえすあてもなく利息がたまってしまった。もうどこからも借りられないし、返済を強硬にせまられている。」「もはや万策つきた。あしたになると、わしは家から立ち退かなけばならぬ。トナカイたちは肉屋に持っていかれれる。背に腹はかえられない。さあ金をだせ。」

 義憤を感じたかどうか、N氏は、サンタクロスにアドバイスします。

 「だれもかれも、あなたをだしに商品を売りまくっている。人のいい点につけ込み、無断で肖像権を使っている。本来なら、あなたのために積み立てておくべきものです。それを正当にとるだけで、かなりのお金がはいります。」「裁判にかければいいのですが、それでは急場にまにあいません、あなたをだしにいちばんもうけたところから取るべきです。Gデパートがいい。あそこは最大のデパートで、このクリスマス・セールでは大変な売り上げを得ました。」「Gデパートの金庫にはいれば、大金を手にすることができます。そうしなさい。遠慮することはありません。あなたは報酬として、当然それをもらう権利があるのです。」

 そして、Gデパートの地図を書き、金庫を破る道具をもっていることを確認し、激励しました。

 サンタクロースは忍び込むのがうまいし、にげるときは、道路が閉鎖されても心配ないだろうとおくりだしたN氏。

 ところがN氏は自分の金がおしいだけでなく、とんでもない策略がありました。それはサンタクロースが金庫破りに成功し、Gデパートが没落してくれれば、じぶんの経営するデパートが、かわって一位にのしあがれるだろうというものでした。


クリスマスコンサート

2024年12月24日 | 日記

いまのところに引っ越ししてから、十四年あまり。

町でどんなことがおこなわれているかわからず何年も経過しました。

いくつかのイベントはあるのですが、身近なところでクリスマスコンサートがひらかれていることに気がつきませんでした。今回は昨年につづいて二度目の参加。

クリスマスコンサートと割烹料理の組み合わせで、音楽プラス料理と楽しみが倍でした。

旅行とは縁遠くなって、いま年一度の楽しみ。

主催は老舗の旅館(ただし、いまは旅館は営業していないようですが・・)

聞き手は20人弱とちょっとこじんまり。贅沢な時間がもてました。


本の福袋

2024年12月24日 | いろいろ

 利用している図書館の貸し出し期間は二週間。

 先日、「本の福袋」があって、冬休み期間に本に親しんでもらうためか、通常よりも長い貸出期間が設定されていました。いまでは珍しくない「本の福袋」ですが、たしかはじめての試み。

 中身は空けてみないとわからないところがミソ。最初は年齢別に区分されていましたが、気がついてかりたのは、幼児むけでした。

 「おやおや、おやさい」「わたし ほんが よめるの」「まるてん いろてん」の、幼児が親しめる三冊。

 数多くの福袋を用意するためには、職員が本の中身を知っていることが前提で、職員の力量もためされるところ。こうした取り組みが継続出来たらいいなと思いました。


日記帳 冬ものがたり

2024年12月23日 | 創作(日本)

   日記帳/那須正幹・作/ものがたり十二か月 ふゆ物語/偕成社/2008年

 

 新年をむかえる時期になると、今年こそという気持ちになるが、結局は三日坊主になるというのもたびたび。今年こそ禁煙をとおもっていたら、いつの間にか 何十年! 一日も続かない。

 

 今度こそ、日記をつけようとして日記帳をもとめたヤスオ。「つけだしたらやめられなくような、そんなやつがあればいいんだけどね」というヤスオに、店のおやじさんが、自分も愛用しているという、布ばりの装丁がしてある緑色の当用日記をすすめてくれた。

 本屋のおやじさんがいう、「だまされたと思ってつかってごらん、一年間つづけずにはいられたくなるから」という日記帳を買って帰ったヤスオ。

 新しい年がはじまり、ヤスオはあたらしい日記帳をつかいはじめた。二週間がすぎたころ、うっかりわすれて布団に入った。しかし布団にもぐりこんだものの、すこしもねむれない。なにかの力がはたらいてヤスオをむりやりおこしているみたいだ。きょうはまだ日記をつけていないことを思い出したヤスオが、日記帳をつけたとたん、たちまちねむくなって、朝までぐっすり眠った。

 修学旅行の際、日記帳を持たずに旅行すると、二泊とも一睡もできなかった。どうやら日記帳になにかのしかけがあるにちがいなかった。おかげでその年、ヤスオは生まれてはじめて一年間日記をつけた。

 十二月もおしせまったころ、「去年買った日記帳ね。あれすごくよかった。ことしもあれください」と、ヤスオはふたたび本屋をたずねた。

 ここ、十年ばかりのあいだ日記帳をつけていたという本屋のおじさんは、「あの日記の紙には、とくべつな薬がしみこませてあって、ペンのインクと化合すると、そいつが人間のからだに作用するしかけになっていたんだ、一種の中毒作用でね。一日に一度はそいつを吸収しないとねむれなくなるってわけさ。」といいながら、ゆううつそうな顔でつづけた。

 「この夏、あの日記帳を製本している会社がつぶれてしまってね。もうあの日記帳は売ってないんだよ。いったい来年はどうしたらいいのかねえ。へたをすると、あんたもわたしも永久にねむれないことになっちまうぜ。」

 

 三日坊主を克服するのも大変です。


トムとモモ

2024年12月22日 | 絵本(日本)

  

   トムとモモ/みやこしあきこ/月間絵本こどものとも825号/福音館書店/2024年12月

 

 動物が擬人化されています。

 ウサギのトム一家は、すこしまえにマンションにひっこしてきました。近くにはモモがすんでいましたが、まだあったことはありません。

 トムがシャボン玉で遊んでるとき、モモはちかくで自転車にのっていました。
 トムがバスででかけるとき、モモは自転車ででかけていきます。
 トムが レストランに ごはんを たべに来ると、モモはたべおわって かえるところ。

 ふたりは、すぐちかくに いるのに、まだおたがいのことを しりませんでした。

 クリスマスイブの日、トムと おかあさんは、ケーキ屋さんへ。モモも、おかあさんとケーキ屋さんへ。

 ケーキ屋さんとスーパーによった かえりみち、トムはモモがうしろから ついてくるのを みていました。モモもトムをみつけました。

 トムが家につくと、モモも はいってきました。同じマンションでした。

 ふたりは、クリスマスケーキを いっしょにたべ、部屋にあったテントで 遊びました。そしえまた遊ぶ約束をして・・・。

 

 雪、クリスマスツリーと、この時期ならでは。色がおさえられている感じもしましたが・・。

 あたらしいところで、おともだちができる よろこびが すんなり つたわりました。


カエルのもちしょい・・茨城

2024年12月21日 | 昔話(関東)

      茨城のむかし話/茨城民俗学会編/日本標準/1975年

 

 むかし、新しく取れた米で餅をついて、田の神さまにお祭りしたもんだと。

 カエルは、田の神さまの家来だったが、十月になると、八百万の神さまは、みな大社の出雲へいかれるもんだから、お供えした餅を背負って、田の神さまのあとにしたがって、出雲へ行っていた。だけど、重い餅をもって歩くのは、カエルだってありがたくなかったので、中には横着なカエルもいて、田の神さまのおとももせず、取入れのすんだあとの畑にもぐりこみ、冬ごもりをはじめるものもいた。

 こんなカエルは、お百姓さんが麦をまくため畑を耕しているとき、まちがってよく鍬の先で切られてしまうんだと。それで、鍬で切られたカエルは、田の神さまのもちしょいをしなかった罰なんていわれたと。

 

 田ほり、苗代づくり、種まき、田植え、田の草取り、収穫まで、米づくりの工程が、季節とともに展開します。

 楽しいのは、カエルのもちしょいをみたダイコンが、カエルの格好が面白いので、あっちのダイコン、こっちのダイコンが、土の中から、もっくりもっくり首をながくするが、十月がすぎると、ダイコンがせっかくのばした首を引っ込めてしまうので、畑には決して はいるもんでねえという。

 農作業の知恵が、こめられている昔話。聞いたらしぜんに、農作業の流れが わかるようになりそうです。


戦争をやめた人たち・・1914年のクリスマス休戦・・

2024年12月21日 | 絵本(社会)

   戦争をやめた人たち/1914年のクリスマス休戦/鈴木まもる:文・絵/あすなろ書房/2020年

 

 1914年、第一次世界大戦開戦から5カ月後のクリスマスイブ。
 最前線の塹壕のイギリス軍兵士は、敵方の塹壕から歌が聞こえることに気づきました。ドイツ語なので、なんといっているのかわかりませんが メロディで、「きよしこのよる」であることがわかりました。
 「きょうは12 月24日 、クリスマス・イブなんだね」「こっちも、歌おうか」

 イギリス軍の若い兵士が「きよし このよる」を歌いはじめると、まわりの兵士たちも歌いはじめ、ドイツ軍から拍手が聞こえました。
 つぎにドイツ軍が「もろびて こぞりて」を歌うと、イギリス軍の兵士も、いっしょに歌い、おわると拍手もおおきくなりました。こんどは、「みつかい うたいて」・・。両方の塹壕の中から、暗い夜空に いろいろなクリスマスの歌が流れていきました。

 翌日、12月25日、クリスマスの日の朝、ドイツ軍の兵士がゆっくりと両手をあげ塹壕から出てきました。イギリス軍の若い兵士も、両手をあげ、歩きはじめました。少しづつ、ゆっくりとちかづいたふたりは、鉄条網をはさんで、「メリークリスマス」というと、がっちりと握手しました。両方の塹壕の中で、息を止めて見守っていた兵士たちも、塹壕から出てくると、みんな握手をして、気持ちをつたえあいました。

 歌を歌ったり、食べ物やお酒をわけあい食べはじめた兵士もいました。家族の写真を見せ合っている人もいました。
 若い兵士が着ていたうわぎをまるめ、ひもでぐるぐるしばり、ボールをつくると、サッカーがはじまりました。・・・。

 大半は、セピア色のおさえた色調で描かれています。

 本当にあったという話で、戦場のほかの場所でも、同じようなことがあったといいます。

 戦争はこのあと四年近くもつづきました。クリスマスをいわった兵士たちは、銃で相手をうつことはせず、空に向かってうち、大きな攻撃作戦があるときは、相手に知らせ、木をつけるように伝えたといいますが・・。


 出版は2022年5月ですが、2022年2月22日には、ロシアのウクライナ侵攻がはじまり、おわりに、民族衣装をまとい、まるく手をつないだウクライナの子どもたちと「この星に、戦争はいりません」という一文を追加したそうです。

 それにしてもロシア正教会の司祭たちが、戦争を正当化しているのは、なんだろう。

 

 これを勉強会で話したとき、「世界で一番の贈りもの」(マイケル・モーバーゴ 評論社 2005年)を紹介していただきました。絵本とおなじ時期の戦場でサッカーをした感動的なお話しで、こちらも語ってみたいと思いました。


キャンドルナイトのお話し会 2012.6~

2024年12月21日 | お話し会

 冬至と夏至の頃、一年に2回開催されているピッコロさんの夜のお話し会。場所は、「食堂」。照明はろうそくだけ。語る雰囲気も落ち着いています。

 お話が語られる場所というと学校、幼稚園、保育園、図書館などですが、食堂というのも珍しいのではないでしょうか。
 お話し会は、お知らせをみて参加するケースがほとんどでしょうから、食事にきたら、お話し会というので、びっくりされた方もいたのではないかと思います。

 大分前、遠野にでかけ、おもいがけず、囲炉裏のそばで、土地のことばで語られる昔話を聞く機会があって、気持ちが軽やかになったことがあります。

 農業が主だった昔、日中は作業に追われ、昔話が語られたのは夜。囲炉裏を囲んで、または炬燵のなかで語られたのが普通だったのでしょうから、やっぱり原点は夜でしょうか。

 長い歴史があるおはなし会で土日2回から土曜日(または日曜日)1回の開催にかわっています。

2024.12.20

 1 歳神様(かたれやまんば1 藤田浩子の語りを聞く会)
 2 ヘルムの雪(やぎと少年 岩波書店)
 3 野ばら(小川未明童話集 童心社)
 4 とんだぬけさく(山の上の火 岩波書店)
 5 赤鬼エティン(愛蔵版おはなしのろうそく8 東京子ども図書館)

 午後5時をすぎると真っ暗。午後7時半ごろからの開始ですが、時間帯によってお話しの雰囲気もかわってきます。

2024.6.21

 1 あたごの浦(同名絵本 福音館書店)
 2 えんどうまめの上のおひめさま(アンデルセン 同名絵本 小学館)
 3 ふるやのもり(おはなしのろうそく4 東京子ども図書館)
 4 雀の仇討(せんとくの金 山形とんと昔の会)
 5 七羽のカラス(おはなしのろうそく10 東京子ども図書館)
 6 まほうの馬(同名本 岩波書店)

 ようやくの梅雨入り宣言。朝方から午後まで 雨でしたが 夕方からは晴れ。

2023.12.22

 1 かさじぞう(同名絵本 福音館書店)
 2 おいしいおかゆ(おはなしのろうそく1 東京子ども図書館)
 3 北風をたずねていった男の子(子どもに語る北欧の昔話 こぐま社)
 4 ほうまんの池のカッパ(同名絵本 BL出版)
 5 お月さまの話(おはなしのろうそく25 東京子ども図書館)
 6 やまなしもぎ(同名絵本 福音館書店)
 7 ガミガミシアールと少年(ファージョン作 ムギと王さま 岩波書店)

 風が冷たい一日。コロナで4年ぶりの開催。過ぎてしまえばあっというまの4年。それにしても時間のすぎるのが早い。

2019.12.21

 1 かさじぞう(同名絵本 福音館書店)
 2 熊の皮を着た男(子どもに語るグリムの昔話① こぐま社)
 3 はん天をなくしたヒョウ(アニタ・ヒューエット著 「大きいゾウと小さいゾウ」 大日本図書)
 4 くまとやまねこ(同名絵本 河出書房新社)
 5 ねこの大王(瀬田貞二訳 世界のむかしばなし のら書店)
 6 みどり色のつりがね(プロイスラー 偕成社)
 7 ねむりひめ(同名絵本 福音館書店)

 このごろ、19時過ぎは真っ暗。春が待ち遠しい時期です。はじめて聞いた「みどり色のつりがね」の中に小さな鈴がでてきますが、雪の中の鈴の音が聞こえてくるようでした。

2019.6.23

 1 なんでも信じるおひめさま(ものいうなべ デンマーク 岩波書店)
 2 徂徠どうふ(同名絵本 福音館書店)
 3 ボタンインコ(ファージョン作 ムギと王さま 岩波書店)
 4 まめじかカンチルが穴に落ちる話(おはなしのろうそく8 東京子ども図書館)
 5 七羽のカラス(おはなしのろうそく10 東京子ども図書館)
 6 金の髪(おはなしのろうそく19 東京子ども図書館)
 7 せんとく金(江口ヨシノ とんと昔七十二話 山形とんと昔の会)

 昨日は一日中雨、今日は一時雨で曇りの一日。先輩のどれも素敵な語りでした。 

 このところファージョンの作品を連続して聴く機会がありました。聴きたいと思ったときは聴けなくて、続くと連続するというのも面白い。

2018.12.22
 1 ネズミのおおてがら(チベット おはなしのろうそく30 東京子ども図書館)
 2 わらしべ三本(岡山 再話 丹波昔ばなし大学)
 3 こびととくつや(子どもに語るグリムの昔話6 こぐま社)
 4 せかいいちおいしいスープ(同名絵本 マーシャ・ブラウン 岩波書店)
 5 ガミガミシアールと少年(ファージョン作 ムギと王さま 岩波書店)
 6 十二人の異国人たち(バルバラ・バルトス=ヘップナー 新教出版社)
    「クリスマスの贈り物-家庭のための詩とお話の本」
          
 22日は冬至。17時にはもう真っ暗。移転した食堂で19時開始でした。この時期にぴったりのしっとりするおはなし会でした。「こびととくつや」も、この時期に聴くと感じ方がちがいます。
 「十二人の異国人たち」は、朗読でしたが、戦争が継続する中での、素敵なクリスマスの贈り物の物語でした。
 「わらしべ三本」は、わらしべ長者の岡山版ですが、やはり日本のものは欠かせません。
 少年と頑固なおじいさんのほのぼのした交流、ねずみの大活躍のお話とバラエテイにとんでいました。

2018.6.23

 1 たまごを売って子ぶたを買って(ブルガリア 吸血鬼の花嫁 福音館文庫)
 2 浦島太郎(おはなしのろうそく25 東京子ども図書館)
 3 ネギを植えた人(金素雲編 岩波少年年文庫)
 4 小さいお嬢様のバラ(ファージョン作品集 ムギと王様 岩波書店)
 5 カッパと瓜(おはなしのろうそく31 東京子ども図書館)
 6 せかいいちうつくしいぼくの村(同名絵本 ポプラ社)
 7 アリ・ムハメッドのお母さん(山室静編 新編世界むかし話集 文元社)

2017.12.26 

 1 コショウ菓子の焼けないおきさきと口琴のひけない王様の話(レアンダー作 ふしぎなオルガン 岩波少年文庫)
 2 歳神様(かたれやまんば第一集 藤田浩子の語りを聞く会)
 3 ねむりひめ(同名絵本 福音館書店)
 4 ねずみの大てがら(チベットの昔話 おはなしのろうそく30)
 5 カメの遠足(新編世界昔話集(1)イギリス編)
 6 賢者の贈り物(オー・ヘンリー)

2016.12・18
 1 あたごの浦(あたごの浦 福音館書店)
 2 モミの木(アンデルセン原作 西村書店)
 3 オフェリアと影の一座(魔法の学校 岩波書店)
 4 大歳の火(日本昔話百選 三省堂) 

2016.6.25

 1 くわずにょうぼう(同名絵本 福音館書店)
 2 ふるやのもり(おはなしのろうそく4 東京子ども図書館)
 3 若返りの水(子どもに語る日本の昔話3 こぐま社)
 4 ねずみのしゃもじ(女むかし 君川みち子再話集 ほうづきの会)
 5 スミレの葉にもきずつく娘よ(トルコ お月さまより美しい娘 小峰書店)

2016・6.26

 1 さるのひとりごと(同名絵本/童心社)
 2 かしこいグレーテル(子どもに語るグリムの昔話2 こぐま社)
 3 とりのみじい(日本)
 4 兵士のハーモニカ(岩波少年文庫 岩波書店)

2015.12.20

 1 北風に会いにいった少年(ノルウエー)
 2 だめといわれてひっこむな(プロセイン作)
 3 モミの木(アンデルセン)
 4 カメの遠足(イギリス)
 5 大工と鬼六(日本)
 6 ねずみの小判干し(日本)

2015.6.20

 1 火の鳥と王女ワシリーサ(子どもに語るロシアの昔話 こぐま社)
 2 やせた王さまとふとったコックさん(こんどまたものがたり 岩波書店)
 3 先におこった者の負け(子どもに語るイタリアの昔話 こぐま社)
 4 みそかい橋(子どもに語る日本の昔話1 こぐま社)

2015.6.21

 1 旅人馬(日本昔話百選 三省堂)
 2 アディ・ニハスの英雄(エチオピア 山の上の火 岩波書店)
 3 ラプンツェル(ねずの木・そのまわりにもグリムの話いろいろ2 岩波書店)
 4 てんまのとらやん(たなかやすこさんの語りより)

2014.12.20

 1 わらしべ長者(日本の昔話① はなさかじい 小澤昔ばなし研究所)
 2 きりの国の王女(太陽の木の枝 福音館書店)
 3 ふしぎなオルガン(レアンダー作 ふしぎなオルガン 岩波少年文庫)
 4 貧乏神(子どもに語る日本の昔話2 こぐま社)
 5 火の鳥と王女ワシリーサ(子どもに語るロシアの昔話 こぐま社)

2014.12.21

 1 夢を買うた男(日本の昔話(1)岩波書店)
 2 みみずの女王(村岡花子作 たんぽぽの目 河出書房新社)
 3 十二の月のつきのおくりもの(スロバキア おはなしのろうそく2 東京子ども図書館)
 4 ベニスの商人(シェークシピアより)

2013.12.21

 1 妖精のぬりぐすり(イギリスとアイルランドの昔話 福音館書店)
 2 ゆきんこ(ストーリングについて こども文庫の会)
 3 つるにょうぼう(同名絵本 福音館書店)
 4 ねずみのすもう(おはなしのろうそく18 東京子ども図書館)
 5 夢見小僧(子どもに語る日本の昔話1 こぐま社)

2013.12.22

 1 ブドーリネク(おはなしのろうそく1 東京子ども図書館)
 2 ヤギとコオロギ(子どもに語るイタリアの昔話 こぐま社)
 3 黄金の土(エチオピア 山の上の火 岩波書店)
 4 まほうのかさ(同名絵本 福音館書店)
 5 みどろいろのつりがね(同名絵本 偕成社)

2012.6.23

 1 孫地蔵(語りつぎたい日本昔話7 舌切りすずめ 小峰書房)
 2 四つの人形(子どもに語るアジアの昔話2 こぐま社)
 3 豆の上に寝たお姫さま(子どもに語るアンデルセンのお話1 こぐま社)
 4 小石投げの名人タオ・カム(子どもに語るアジアの昔話2 こぐま社)

2012.6.24

 1 あゆはかみそり(子どもに語る日本の昔話3 こぐま社)
 2 ボタンインコ(ファージョン作 ムギと王様 岩波書店)
 3 だんまりくらべ(子どもに語るトルコの昔話 こぐま社)
 4 妖精のぬりぐすり(イギリスとアイルランドの昔話 福音館書店)
 5 水晶の小箱(子どもに語るイタリアの昔話 こぐま社)


ふたりは クリスマスで

2024年12月20日 | 絵本(外国)

   ふたりは クリスマスで/イローナ・ロジャース:作絵 かどのえいこ・訳/そうえん社/2007年

 

 ネズおじさんと女の子ハニーが、ほんとうのクリスマスの においがするという クリスマスツリーをさがして、バスで森へ出かけました。

 とつぜんあらわれたのは、おおきなおおきなクリスマスツリー。枝の先にはおもちゃが くだもののように そだっていました。

 そこには、ドアもあって あらわれたのはサンタクロース。サンタクロースは、とっても いいにおいのするツリーを プレゼントしてくれました。ちゃんと 証明書までつけて!。

 

 クリスマスの絵本でもやや異色でしょうか。ネズおじさんは、ほんとに大きなネズミです。

 そしてサンタクロースは、既成概念とはまったくちがっていました。サンタさんは、クリスマスツリーの家?で クリスマスに間に合うように、おもちゃを そだて!ていたのでした。

 

 好き嫌いがわかれる絵本でしょうか。

 

 いわれているサンタクロース像を、まるごと信じてはいけないと ちょっと耳が痛いことも!