世界名作おはなし玉手箱/齋藤チヨ/すずき出版/2000年
雨の夜、ひとりぐらしのおばあさんのところへやってきたのはスズメ。おばあさんは、ぬれた羽に小さなタオルをそっとかけてやりました。だれかが戸を叩いて、おばあさんが戸口に出てみると、よたよたメンドリ。それから、カラス、ネコ、犬、雄牛がつぎつぎにやってきました。
次の朝、おばあさんがゆっくり寝てめをさますと、どうでしょう、動物たちはみんなで、忙しく働いていました。
スズメとカラスは、サモワールに火をつけて、お湯を沸かしています。犬は裏庭を掃いています。牛はぬれて でこぼこになった屋根をローラーで平らにならし、メンドリは牛の手伝いをしています。おばあさんは小さな家の中で、みんなが忙しく働いているのを見てうれしくなりました。そしてベールをかぶって、みんなのパンを買いに出かけました。おばあさんがおつかいから帰ってくると、みんなはサモワールを囲んで、朝ご飯を食べました。お茶を飲んでいるときまっくろ雄牛がいいました。「夕べ、ぼくたちは、どこへも行き場がなくて、おばあさんの家に泊めてもらったけれど、また、どこかにいかなくちゃならないんだね・・」
動物たちは、おばあさんのことがとても好きになっていたので、ここをでていくのがさみしくてたまらなくなりました。
「みんなが、ずっとここにいられたらいいのにね。でも、この家は、みんなで暮らすには小さいから、スズメひとりでも残ったら、あとのみんなは、でていかなくちゃならないんだろうね」と、おばあさんがいうと、牛は「小麦の脱穀をすることができるよ。おばあさんぼくにいておらいたくない?」といいました。おばあさんは牛の気持ちがわかったので、いいました。「家は狭いけれど,一緒に暮らそうか」
すると、スズメは小さな卵を産むことができるといい、ネコは、ネズミを捕ることができる、カラスは、朝みんなを起こしてあげられる、メンドリは、おおきな卵を産むことができる、犬は泥棒を追っ払うことができるといいました。
おばあさんは、みんなで力を合わせて、小屋をつくるようにいい、動物たちは小屋をつくり、みんなで幸せに暮らしました。
争いも、だましあいもない世界に、ほっとする話。