どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

赤いこん箱・・山形

2021年11月29日 | 昔話(北海道・東北)

    山形のむかし話/山形とんと昔の会・山形県国語教育研究会/日本標準/1978年

 

 口から口へ伝承されてきたという昔話。何世代か伝承されてくると、骨格の部分は同じでも細かなところがちがってきてもおかしくはない。そして、いくつかの昔話がつなぎ合わせたものがあっても不思議はない。これはそんな話。

 

 ばあさが川さどんぶりを洗いに行くと、川上から赤いこん箱(香箱)と、白いこん箱がながれてきたど。ばあが、「赤いこん箱、こっちゃ来い。白いこん箱、あっちゃいけ」というと、赤いこん箱が、にこにっことばあさのところに流れてきた。(桃太郎風出だし)

 赤いこん箱からでてきたのはめんこい子犬。お椀で食わせればお椀ぐらいの大きさに、どんぶりで食わせればどんぶりのおおきさになった白犬。ある日、じいさまとばあが、白犬のせなかにのって山へ行くと、「ここほれ、カンコーカェン、あそこもほれ、カンコーカェン」という。じさまとばあが土を掘ってみると宝物がざくざく。この話を聞いたとなりのじいがやってきて、「しろば、ちょっと貸してけろ」という。貸してくれないと殺してしまうといわれ じいさまは、貸してやったど。

 となりのじさまは、いやがるしろを山に連れていき、めちゃくちゃにそのへんを掘り返したが、でてくるのは石っころやくそなど。おこったじいはしろば殺して、穴を掘ってうめ、ちっちゃな松の木をそのうえに植えて、かえってきたど。

 じいさまがしろをかえしてもらおうと、となりのじいのところにでかけ、松の木のところに行ってみると、松の木は、すばらしい大木になっていたと。じいさまは、しろのことはあきらめて、松の木を切ってうすをこしらえ、もちをついてみると、もちは大判小判に変わったど。

 となりのじいが、うすを借りて、自分も大判小判をだそうとすると、もちはみな汚いものにかわってしまったので、うすを割って、かまどに燃やしてしまったど。(花さか爺風)

 しかたがないので、じいさまが灰をもちかえり畑にまくと、畑一面にヒョウができたので、じいさまとばあは腹いっぱい食べたど。

 じいさまが”へ”をこくと、そのへは「綾ちゅうちゅう 錦さらさら ごよの股のあいだから ツツラブンバンビー」と聞こえたど。めずらしい屁だからと、旦那衆に聞かせると旦那衆はおおよろこびで宝物をくれたど。

 となりのじいも、おなじようにやってみると・・・。(鳥呑み爺風)

 

 ヒョウというのがどんなものかイメージできないないのが残念ですが、サツマイモやカボチャならわかりやすそうです。


すてきなタータンチエック

2021年11月28日 | 絵本(日本)
     すてきなタータンチエック/奥田実紀・文 穂積カズオ・絵/福音館書店/2018年
 
 
 タータンとは、スコットランド・タータン登記所の定義では、①二色以上の色糸を使い、それらの糸が直角に交わるチエック柄であること ②たて糸とよこ糸につかう糸の色と数が同じで、基本パターンが繰り返されること のふたつ。
 
 タータンの織り方、発祥の地であるスコットランドとイングランドの戦い、イングランド、ウエールズ、アイルランドに とりこまれていく歴史まで とにかく幅広い。
 
 歴史的なタータンを守るため、タータンの柄を登録する公的な登録制度が整備されたのは2008年とつい最近。今では7000種類以上のタータンが登録されているといいます。
 企業や団体が、イメージアップや販売促進、宣伝のためにつくったタータンの神戸タータン、マクミラン・イセタンも紹介されている。
 
 服にも歴史が反映されて興味深い。
 
 一枚布のベルトでしめるブレードの着方にはびっくり。はいて 手を通してというわけにはいかず 着るのにまず寝転ぶことからはじまる。
 
 スカート上のキルトでたたかうのもいいが、相手から脛を狙われたらどうしたか心配。

チンチラカと大男

2021年11月27日 | 絵本(昔話・外国)

     チンチラカと大男/片山ふえ・文 スズキコージ・絵/BL出版/2019年

 

 「かしこいモリー」の後半部分と似ています。

 貧しい三人兄弟が仕事探しにいきます。末っ子チンチラカは、おなりの国の王さまにやとわれ、とんでもないことを命じられます。それも三つも。

 一つ目は、魔の山に住む大男から黄金の壺をとってくること、二つ目は、人間の言葉を話す黄金のパンドゥリをとってくること、三つめは大男をつかまえてくること。

 大男を箱に入れ城に持ち帰りますが、チンチラカは城の高い塔にのぼってから、王さまに箱を開けるよう叫びます。箱から出た大男は王さまも大臣も、兵隊を一人残らず呑み込むと、さらに塔の上のチンチラカを呑み込もうとしますが・・・。

 三人人兄弟ですが、兄さんたちの出番はほとんどありません。

 チンチラカは「とんちのきく若者」、大男は「デフ」と呼ばれる鬼で、ジョージアの昔話によくでてくるといいます。

 大男から逃げ出すとき、つり橋をわたりますが、このつり橋は、かしこいモリーでは「髪の毛一本橋」。はじめよくわかりませんでしたが、橋の背景は季節が変わっていて、出かける前に相当の準備をしたことを暗示しています。

 王さまは、大男をとらえて何をしたいとおもっていたのでしょうか。自分の首をしめてしまいました。

 魔法の楽器パンドゥリのせりふ

  「たいへん、たいへん! チンチラカがつぼをぬすみにきたわ!」
  「たいへん、たいへん! チンチラカがこんどはあたしをぬすみにきたわ!」

 チンチラカの二回のさけび。

  「こんどあったら、おまえを子分にしてやるよー!」も楽しい。

 

 とにかく、スズキコージさんのダイナミックな絵が迫力満点。


こがねのあしのひよこ・・アルゼンチン、赤いおんどり・・スイスほか

2021年11月26日 | 昔話(外国)

 奇想天外な昔話。誰がこんな話を生み出したのでしょうか。アルゼンチン、スイス、パキスタン、ハンガリーに共通する話です。


     こがねのあしのひよこ/秋野ゆきこ・再話絵/福音館書店/1998年初版

 アルゼンチン民話の再話です。

 貧しい夫婦のところに黄金の足をもったひよこが生まれました。
 ところがこれを知った王さまは片足を切り取り自分のものにしてしまいます。

 すくすく育ったひよこは、足をとりもどすために、王さまのところにでかけます。

 途中であったのはきつね。ひよこがきつねに食べられてしまうのかと思うと、ひよこは、一日歩いて疲れたしまったきつねをひとのみにしてしまいます。

 ライオン、とら、川もひよこと一緒にでかけようとしますが、途中でみんな疲れたというので、ひよこはみんなひとのみにします。

 王さまは、城に着いたひよこを、めんどりで殺そうとしますが、ひよこがが口からきつねをはきだすと、きつねはめんどりを一羽残らず食べてしまいます。次に王さまは羊にひよこを殺させようとしますが、ひよこの口からはきだされたライオンは、羊をたべてしまいます。ラバはとらに食べられてしまいます。

 そして、薪の山で焼き殺そうとすると、今度は川が火を消し、王さまの家来をおぼれさせてしまいます。

 ひよこは、手の打ちようがなくなった王さまから黄金の足をとりもどし、たくさんの宝物をもって、家に帰ります。
 

 ひよこは可愛いのですが、なかなかの曲者です。何しろ自分より大きいものを飲み込んでしまうのですから。
 ひよこは頼りないというイメージですが、王さまに敢然として立ち向かうさまは痛快そのものです。


赤いオンドリ(サンドリヨン/世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1979年初版)

 スイスの昔話です。

 ひよこが、自分より大きいものを飲み込むことにびっくりしていると、同じように赤いオンドリが、キツネ、オオカミ、池を飲み込みます。
 きっかけは、赤いオンドリが百姓に貸した百フランをとりたてようと、旅の途中で、であったことでした。

 キツネがリューマチのせいで、これ以上歩けないというと、赤いオンドリのくちばしのなかに飛び込みます。

 オオカミも疲れたからと、赤いオンドリのくちばしのなかへ。池も魚を飲みすぎたから疲れというと、赤いオンドリのくちばしのなかへ。

 百姓のおかみさんが、とり小屋に、一行をいれて殺そうとすると、頭や首をつっつくメンドリたちをキツネがでてきて食べてしまいます。

 百姓のおかみさんが、家畜小屋に入れて、牝牛に一行を殺させようとすると、オオカミがでてきます。パン窯で焼き殺そうとすると、今度は池の出番です。

 リュウマチがでてきたり、旅の途中で天候や、その日のニュースを話すなど、現代風です。

 この赤いオンドリは青いこうもり傘を杖代わりにしていておしゃれです。

 百フランが、どれくらいのものか疑問がわきますが、馬を買える金額とあって、こちらもわかりやすくなっています。


王さまとオンドリ(子どもに語るアジアの昔話5/アジア地域共同出版計画会議企画 ユネスコ・アジア文化センタ・編 松岡享子・訳/福音館書店/180年初版)

 パキスタンの再話です。

 オンドリの耳の中に、キツネ、オオカミ、ハイエナ、ライオンがすわります。

 王さまの土地で、小麦をつくっていたオンドリが、労賃として小麦をわけてくれるよう頼みます。耳の穴にはいるだけといわれ、オンドリは耳にいれはずめますが、山と積んであった小麦は全部オンドリの耳の中にはいってしまいます。王さまが自分の分け前を要求しても、約束だからと長い旅に出たオンドリ。

 遠くの国へ行って、王の姫君に結婚を申し込もうというのです。

 途中、キツネ、オオカミ、ハイエナ、ライオンがどうしても一緒に行きたいというので、同行しますが、すぐに歩けないというので、耳の中にすわるようにいいます。

 やがて、王さまのところにつきますが、もちろんすんなりといきません。
 オンドリがニワトリ小屋にとじこめられるとキツネが、羊の囲いにいれられるとオオカミ、ロバの囲いの中にいれられるとハイエナがでてきます。

 気も狂わんばかりにおこった王さまが、オンドリを懲らしめようとすると、ライオンがでてきて、みんな逃げてしまいます。

 王さまはオンドリと娘の結婚とひきかえに、自分と国の者には手を出さないように頼みます。おまけにオンドリは、持参金として国の半分も手に入れます。

 

・雄鶏とサルタン(英語と日本語で語るフランと浩子のおはなしの本/フラン・ストーリングス編著 藤田浩子と「かたれやまんばの会」訳/声社/1999年)

 ハンガリーの昔話ですが、フランさんの アレンジが楽しい。

 オンドリが道端で1ペニー硬貨をみつけ”お金を見つけた”と歌っていると、サルタンが歌を聞きつけ、1ペニーを取りあげてしまいます。オンドリは1ペニーをとりもどそうとサルタンのもとへでかけます。

 はじめは深くて暗い井戸へ投げ込まれますが、井戸の水を飲みほして サルタンのもとへ。炎のなかへ投げ込まれると、井戸で飲んだ水をはきだし、ハチの巣箱にぶちこまれると、オンドリはハチを飲み込んでしまいます。

 サルタンが、オンドリを自分のポケットにねじこむと、オンドリがハチを吐き出したのでサルタンは おしりをさされてしまいます。

 楽しいのはオンドリの表現。”けれどこのオンドリはそんじょそこらにいるような、ありきたりのオンドリではありません”というフレーズが何回か繰り返され、聞き手の反応が予想できます。


からだの中の時計

2021年11月25日 | 絵本(日本)
 
     からだの中の時計/月刊たくさんのふしぎ/吉村崇・文 いとう あや・絵/福音館書店/2021年
 
 
 大人になっても知らないことばかり。なぜという疑問に、やさしくわかりやすくこたえてくれることに、目を開かれる思い。
 
 体内時計のふしぎに、こたえてくれます。体内時計は、地球上に生息しているほぼすべての生き物に備わっていて、生き残るためにはなくてはならない存在といいます。
 
 人間は25時間でリズムをきざんでいるが、体内時計のズレは、太陽の光を感じることで直すこと。
 
 生き物が頼りにしているのは、太陽がでている時間、つまり一日の日の長さ。ウズラは日の長さが11時間30分だと卵を産みませんが、12時間を超えると卵を産むようになること。
 
 ヒトを含む哺乳類は目で光を感じますが、鳥やトカゲ、カエル、魚たちは、目のほかにも光を感じられる部分があること。
 
 沖縄のメダカは日の長さが13時間を超すと卵を産み、青森のメダカは14時間を超すと卵を産むこと。
 
 人間の遺伝子。親から子へと受け継がれ、早寝早起きの家族や遅寝遅起きの家族の遺伝子が親から子へとうけつがれること。
 
 などなど。
 
 
 
 あらためて生き物がいかに不思議な存在か思い知らされます。これからどんなことが解明されるのでしょうか。

ももたろう

2021年11月24日 | 絵本(昔話・日本)

     ももたろう/松居直・文 赤羽末吉・画/福音館書店/1965年

 おなじみの昔話で、このほかにも多くの絵本もあります。先輩の方とときどき保育園、幼稚園におうかがいすることがありますが、どういうわけか話されるのを聞いたことがありません。

 童謡「ももたろう」では 鬼ヶ島から宝物を持ち帰りますが、ここでは「宝物はいらん」と、とらわれていた おひめさまをたすけ、うみこえ、たにこえ、やまこえ、うちにかえってきます。

 桃が「つんぶく、かんぶく」ながれ、「じゃくっ」とわれ、ももからうまれた男の子は「ほおげあ、ほおげあ」と泣きます。

 ももたろうは、一ぱいたべると 一ぱいだけ 二はいたべると 二はいだけ 三ばいたべると 三ばいだけ と おおきくなり 

 いぬは わんわん さるは きやっきやっ きじは けーん けーん とやってきます。

 ももたろうと いぬと さると きじは、きびだんご たべたべ、おにがしま めざして、やまこえ、たにこえ、うみをこえ、ゆくがゆくが ゆくとー。

 こうしたリズムが なんとも 心地よく 響きます。

 ほかの絵本も見てみたいのですが、この絵本で ももたろうが、鬼ヶ島にでかけるのは、一わのからすがやってきて おにが 米や、塩、姫をさらったと なくのがきっかけです。

 さらに、きびだんごを いぬ、さる、きじにわける場面では「それでは おまえにも わけてやろう。これさえ たべれば 十にんりき」とだしてあげます。

 鬼ヶ島からかえる船の上で、鬼が舵をとっている赤羽さんの絵がこの絵本の特徴でしょうか。

    ももたろう/松谷みよ子・文 瀬川康男・絵/フレーベル館/2002年

 ももがながれてくようす

  どんぶり かっしり つっこんご

  どんぶり かっしり つっこんご

 ばあさまが きびだんごをつくるようす

  ごーりん ごーりん うすをついて きいだんごを みっつ つくった

 ももたろうが 鬼を退治するようす

  でん でん とたたきつぶした

 おとものいぬ、さる、きじは、ももたろうが船で鬼ヶ島に向かう途中の島であいます。

 きびだんごも「ひとつはならん はんぶん やる」

 宝物も、もってかえってきます

 ももたろうは「ちょっとひるねをする」「くっちゃあ ね、くちゃあ ね」と、昼寝大好きな若者です。

 腰にさしている剣の形が時代をあらわしています。

    ももたろう/松谷みよ子・文 和歌山静子・絵/童心社/1993年

 フレーベル館とおなじ松谷さんの「ももたろう」は「くっちゃあね」と、寝てばかりいる若者ですが、鬼退治で、昔話の助っ人が あらわれます。

 さるかにがっせんの「いしうす」「うしのくそ」「つぶくり」、かちかちやまの「うさぎ」、そして ハチの群れ。

 ももたろうは素手でおにに 立ち向かっています。うさぎが おにをなげとばしているのに 意表を突かれました。

    ももたろう(水谷章三・作 スズキコージ・絵/にっけん教育出版社/2003年)

 ももがながれてくようすは、「どんぶら こんぶら すっこんこん」

 はじめ、ももたろうは食べるだけ食べて ねてばかり。それでも食べるものがなくなると、山の ぶっとい木を ねっこから ひっこぬいて 「これ売って 食うもの買おう」と親孝行な面も。

 きびだんごは 「ひとつは やれん、はんぶんだ」です。

 助けたおおぜいのこどもが笑顔で船に乗っています。

 

ももたろう(日本の昔話3/おざわとしお・再話 赤羽末吉・画/福音館書店/1995年)

 ももたろうが、きびだんごをやる場面

 「これは日本一のきびだんご。一つ食えばうまいもの、二つ食えばにがいもの、三つ食えばからいもの、四つ食えば頭の鉢がざるになる」

 共通語で表現したという「桃太郎」ですが、昔話のリズムが感じられず、いまひとつでした。


ことしのセーター

2021年11月24日 | 絵本(日本)
 
      ことしのセーター/石川 えりこ/福音館書店/2016年
 
 
 そろそろ ころもがえ。おねえちゃんのセーターは、そでが みじかく、わたしのセーターは きつくて いきができない。おとうのセーターは おへそがこんにちわ。
 
 みんなほどいて、編なおしです。みんなで ほどいていきます。競争でほどくと、火鉢のやかんのゆげをあてながら、毛糸を通していくと、毛糸が まっすぐに。
 湯気をあておわった毛糸は ふかふか。
 あたらしく買ってきた毛糸で毛糸だまを作ると、いよいよ編み物。
 おかあさん、おばあちゃんは、時間を見つけては 編み物です。
 やがて、すきなボタンをえらんで、できあがりです。
 
 
 今のご時世、セーターをほどいて、編み直す家庭は、どのくらいあるのでしょう。サイズが合わなくなったら購入が当たり前。ただ家族全員で編み直す時間は、ほかには代えがたい体験です。
 
 ゆったりと時間をかけて手作りするより、ほかのことに時間を使うということでしょう。
 
 SDGsに、「つくる責任、つかう責任」があります。声高に叫ばなくても、昔の暮らしには、大事に使う、無駄な消費をしないといった知恵がありました。ちょっと前の暮らしに学ぶことも多いのでは。

あなほり長兵衛・・青森

2021年11月23日 | 昔話(北海道・東北)

     青森のむかし話/青森県小学校国語研究会・青森児童文学研究会/日本標準/1975年

 

 井戸掘りの”あなほり長兵衛”が頼まれたのは大根を抜くこと。長くて、長くて七日かかってやっと根元まで。

 頼まれたじさま、ばさまに声をかけて、ひっぱってもらうが、あとすこしというところで、長兵衛がつかまっていた大根のしっぽが ぽきんとおれ、穴の中へ真っ逆さま。

 ついたところがなんと地獄。閻魔さまが見たところ、地獄にくるような悪人の顔もしてねえ。「はやくかえれ」といわれても、どうして、かえったらいいかわからない。すると閻魔さまが「したら、この丸薬ばくれる。ひとつぶ飲めば穴の途中まで、もう一つぶ飲めば地面まででられる。あとのひとつぶは、もし、薬がきかなかったときのためだ。かならず、ひとつぶずつ飲めよ」と、黒くて丸い薬を、三つくれます。

 長兵衛は早く家へ戻りたい一心で、三つぶを一回で飲んでしまったから、さあ、たいへん。どんどん上にのぼりはじめ、どんどんあがっていて、ついたところが、雲の上。まわりには、かみなりさま。

 太鼓の係にされて、ばちでたたくが、重くて重くて持ち上げられない。かみなりさまからいわれて、汗をかきながら、一生懸命太鼓をたたいていると、だんだん上手になって、面白くなる。力を入れてたたくと、太鼓の皮が破れて、下界に大雨が降り、ためていた水も流れてしまい、かみなりさまはかんかん。

 かみなりさまからおわれた長兵衛はがむしゃらに走りますが、ふわふわした雲の上で、なかなか走れない。やがて雲の切れ目の中から、すとんと下に落ち、岩木山のふもとの大きな木の枝に、ぶらんと下がります。いくら叫んでも、山の中でだれも助けてくれる人がいない。しかたがないので木の枝で居眠りしていると、強い風がふいてきて、どしんと落ちてしまいます。そこがいまの弘前の富田だったと。

 

 最後は地名の由来まで。閻魔さまは、誰でも地獄に受け入れるということでもなさそう。 かみなり界も突然現れた長兵衛を太鼓係にするほどだから、人手不足か。


鉢かづき

2021年11月22日 | あまんきみこ

    鉢かづき/あまんきみこ・文 狩野富貴子・絵/ポプラ社/2004年

 

 備中の守、さねたかの娘の母君は、死期をさとり娘の頭に、肩が隠れるほどの大きな鉢をかぶせてなくなります。姫が十三のときでした。

 新しくきた奥方は、鉢をかぶっている姫を嫌がり、お子ができると、なおさら嫌やがり、告げ口をして、姫を追い出してしまいます。

 川で入水して死のうと思った姫は、鉢が浮いて漁師に救われます。

 姫は山陰の三位の中将から救われ湯殿の湯をわかす仕事をするようになります。つらいひびのなか、中将の四人目の宰相が、いつもおそく湯殿にはいる世話をしているうち、宰相から、かならず一緒になりましょうと思いを打ち明けられます。

 宰相が鉢かづきのもとに、毎晩あいにいくことが、ひとの噂になり、父ぎみ、母ぎみは、鉢かづきに近づかぬよう命じます。それでも宰相は、「たとえ 父上におてうちになろうとも、は鉢かづきのためならば、いのちもおしくない」と、朝夕 鉢かづきと あいます。

 宰相と鉢かづきを別れさせるため、鉢かづきが、おのれの姿を恥じて、でていくよう上の兄三人の奥方とよめくらべをすることに。それをしった鉢かづきは、宰相に恥をかかせてはいけないと、でていくことにしますが、宰相はともにでていくとゆずりません。

 よめくらべの日の朝、二人は歩き出します。そのとき これまでとることができなかった姫がかぶっていた大きな鉢が まえに ぽろりと おちると・・・。

 

 古典の世界らしい言葉遣い、要所要所におりこまれた和歌が 心情を表しているようでした。衣装、おみやげ、芸比べと、よめくらべも優雅そのもの。

 そして、二度目の母もかばう鉢かづきの度量の深さ、おいだした父との再会に、やさしさがあふれています。

 この物語は、一寸法師や浦島太郎等が収められている「御伽草子」の一つ。はちかづきは、寝屋川市のマスコットキャラクターになっているようで、言い伝えと同時に紹介されていました。


タラつけサブ・・青森

2021年11月21日 | 昔話(北海道・東北)

     青森のむかし話/青森県小学校国語研究会・青森児童文学研究会/日本標準/1975年

 

 「牛方と山姥」の青森バージョンですが、途中鬼ばばあから逃げ出すあたりは「長靴をはいた猫」風です。

 タラを売り歩いていたサブが、鬼ばばあから脅かされ商売物のタラだけでなく、赤べごっこ(牛)まで食べられ、次には命まで狙われて、逃げ出します。

 サブは、カヤかりをしている人のところにいって隠してくれるよう頼み、つぎには船大工のところでも隠してくれよう頼み込みます。

 ところが、カヤかりの人も、船大工も、鬼ばばあから「こねぇだま、なんだば おまえどを、かみしめるぁ」と、脅かされ、すぐに隠れた場所を白状してしまいます。

 家に逃げ帰ったサブは、ほし栗をふところにいれ、縄で屋根裏部屋にかくれます。

 鬼ばばあが、家にやってきて縄をのぼりはじめると、サブは ほし栗をピチカチッと かみます。すると鬼ばばあは、縄がきれそうだと 縄をおりますが、きらめきれず、またのぼりはじめます。するとサブは、もういちどほし栗をピチカチッとかんで、「縄が切れるところだ」と、叫びます。あきらめた鬼ばばあが、炉に火をごんごんもやし、眠ってしまうと、サブは、じゃんぐと煮立った湯を寝ている鬼ばばあに がおっとかけます。すると、鬼ばばああは ぐにゃぐにゃと、じぇんこ(お金)になってしまいます。

 

 「タラけろでぇ」「おまえば食いてぇでぁ」「これければ、あすから、あきないにならねもぇ」など、鬼ばばあとサブのやりとりは、共通語ではどぎつくなりますが、方言だと不思議なリズムがうまれます。


きみは たいせつ

2021年11月20日 | 絵本(外国)

     きみは たいせつ/クリスチャン・ロビンソン・作 横山和江・訳/BL出版/2021年

 

 「じぶんがたいせつかどうか、よくわからなくなった きみへ。」「きみは たいせつだよ」とかたりかけてくる絵本。

 だれも たすけてくれなくても わすれられてるわけじゃない。

 たいへんなことがおきても きっと だれかが ささえてくれる。

 たまらなく さびしいときもあるけれど きみは ひとりじゃない。

 そして、

 きづかれないほど ちいさな いきものがいる

 さきにいくものがいれば あとからいくくものもいる

 ちいさいこから おとしよりまで、いろんな ひとがいる

 と、あたたかく わかりやすいメッセージです。

 

 貼り絵で、恐竜のしっぽが蚊で刺され、自分ではどうにもできないと顔をゆがめたり、隕石の衝突で、地球が火の玉になっても、だれかがささえてくれると、思いもよらない描きかたにも好感が持てました。


いっすんぼうし

2021年11月19日 | 絵本(昔話・日本)

     いっすんぼうし/いしい ももこ・文 あきのふく・絵/福音館書店/1965年

 

 日本の昔話といえば「ももたろう」などと並んで「一寸法師」がかかせません。

 これまで縁がなく、ようやく石井さんの絵本をみつけました。50年以上も前に出版されていますから、孫に読んであげる感じでしょうか。

 秋野さんの絵も中世の絵巻風で豪華な衣装に惹かれました。

 少し前までは昔話の童謡をよくきいたように思いますが、今では聞く機会、歌う機会があっても、たぶん限られた機会しかなさそうです。

 ところで「一寸法師」の童謡では、清水寺で現れるのは鬼がひとりですが、石井さんは、青鬼、黒鬼、赤鬼と三匹?登場させています。そして一寸法師は 針の刀で目玉をチクリ。

 お椀で川をこぎのぼる前に、アリから 川の位置を「たんぽぽよこちょう、つくしのはずれ」と教えてもらい、たんぽぽの咲き乱れる道をあるく場面も印象にのこりました。


じぇんこがモッケになった話・・青森

2021年11月18日 | 昔話(北海道・東北)

     青森のむかし話/青森県小学校国語研究会・青森児童文学研究会/日本標準/1975年

 

 「じぇんこ」はお金、「モッケ」はかえるのこと。

 「かえるのぼたもち」という昔話は、よめさんにぼたもちを食わせたくなかった姑が、「ぼたもち、ぼたもち、もしよめが重箱の蓋取ったら、かえるになってくれ」と言い聞かせて外にでていくと、それを聞いていたよめさんが、ぼたもちを 食べてしまい、そのかわりに重箱にかえるをいれておき、かえってきた姑が重箱をあけると、なかからかえるがでてきたので「よめでねえ。ばあさまだ」と、あわてる話。

 この話も全国にみられ、この青森版では、金持ちと おじいさんとのやりとりで、かえるがでてきます。

 欲張りの金持ちが、火事になったらどうしよう、泥棒に入られたらどうしたものかと、心配して、漬物がめに、じぇんこをいれて畑にかくし、「ほかの者が、おまえをみつけたら かえるになれや」といいます。

 ところが、夜中に小便におきたとなりのじいさまが、これをきいて、畑をほって、じぇんこを全部とり、かえるを いれておきます。

 そして、金持ちは、かめからでて、とんでいく かえるをおいかけていきます。

 

 都会だけでなく地方でも、よめと姑の同居はすくなくなっているのではないでしょうか。また、デジタル化で、お金そのものの意味合いがことなってきました。こうした時代の中で昔話も淘汰されるものがでてくるのもやむを得ないかもしれません。


かぜをひいた おつきさま

2021年11月17日 | 絵本(外国)

    かぜをひいた おつきさま/レオニート・チシコフ 鴻野わか菜・訳/徳間書店/2014年

 

 ある晩、どしゃぶりの雨で、すっかりびしょぬれになったおつきさまは、風邪をひいてしまい、空に浮かんでいるのがつらくなって、地面におりて、ぬれた草の上で横になりました。そこにイワンさんがやってきて、傘をさしてくれました。イワンが ねつがある おつきさまを、家まで連れていき、リンデンの花を煎じて、薬といっしょに飲ませ、毛布でくるんであげると、おつきさまは からだがあたたまり、ぐっすり ねむりました。

 おつきさまが 目をさますと ふたりは ゆっくりと はなしをしました。イワンは、ともだちがいないこと、おつきさまは 星やほうき星のことを たくさん はなしました。

 三日たって、おつきさまは 空に かえろうとしますが、ひとりでは 空にのぼれません。

 風船をつかうことをおもいついたイワンは、自転車を買おうと まえからためていたお金で風船を50こ 買ってきて、おつきさまに むすびつけました。

 次の日、しぼみかけた 風船が ひとつ、イワンさんの庭に おちていました。風船には、手紙がついていて、そこには、「ありがとう、ぼくの ともだち」と、ありました。

 

 淡い色調で、少年とおつきさまの交流をやさしく描いたロシアの絵本です。

 空に浮かぶ三日月は、手で持とうと思えば、つかまえることができそうな大きさに見えます。そこから発想するのも絵本ならではの特権です。


ばけねこのおよめさん

2021年11月16日 | 絵本(日本)

      ばけねこのおよめさん/大海赫/復刊ドットコム/2016年

 

 さいしょの口上に

 「トイレにいきたい人はトイレにいってから、せきのでるひとは せきをしてから

背中をかきたい人は 背中をかいてから 紙芝居の前にすわってください」

とあって、紙芝居が絵本になったもの?

 トコちゃんが、風で さらわれていった赤い帽子を追いかけていくと、帽子はなんと ばけねこの頭の上。ばけねこの尻尾はヘビ!
 
 およめさんになれと いわれて トコは、虹になって、自動車にばけて、と注文。
 
 虹は 黒に黄色の縞模様、目もひげもある いやらしい虹。自働車はワニみたいにでっかい口のある自動車。
 
 「あなた、ばけるのへたね。それでもばけねこ?」
 
 「・・・すみません」
 
 最後のチャンスにバースディケーキに化けると、これが なかなか。だけど、トコちゃんが ナイフの先でつつくと「ギャギャギャギャーッ」「あらこのケーキ食べられないんだ。つまんなーい」
 こんどはトコちゃんが、化けるばん。トコは手紙を書き、ピンクの時計を 机の上に おき 机の下に。
 目をあけて、トコが時計に化けたという手紙をみて、よろこんだばけねこは、ピンクの時計といっしょに死ぬまでくらしたというお話。
 
 「・・・すみません」とあやまるばけねこ。恐ろしそうに見えて気弱なねこに、おもわず「がんばれ」といいたくなるほど。
 
 
 トコ、ばけねこ、ヘビ、オーム、それと花瓶の花にもある目が特徴的。
 
 版画のいい味がでています。
 ページ上下の帯の、トコとばけねこの百面相も楽しい。