日本昔話大成 第四巻/関敬吾/角川書店/1978年
ある兄弟が、朱の塊がたくさん埋まっている赤淵という深い深い淵に潜り、朱をとって、それを町へもっていって売り、暮らしをたてていました。
腹黒い弟が、淵の朱をひとりじめしようと、朱塗りの膳で蛇体頭をこしらえ、それをこっそり赤淵へ沈めておきました。何も知らない兄が、翌日朱を取ろうとしたら、大きな竜が真っ赤な口を開いて自分を飲み込むように見えたので、蒼くなって逃げてきました。それからは弟は自分ばかり朱を取って大儲け。
ある日、いつものように淵に出かけ水へ入ろうとしたら、気のせいか竜が生きているように見える。そんなはずはないと水に入ろうとすると、その竜はほんとうにいきていて、弟を一のみにしてしまう。
自分ばかりいいことをするもんでないという教訓。昔話では、腹黒いのは兄という相場ですが、この話では弟です。新潟県にも同様の話があるといいます。