どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

火の鳥・・ロシア

2012年11月19日 | 昔話(ヨーロッパ)

      子どもに語るロシアの昔話/伊東一郎訳・再話 茨木啓子再話/こぐま社/2007年


 火の鳥というと手塚治虫の漫画を思い浮かべるが、ロシアの昔話にでてくる火の鳥は金の羽をもち、目は水晶。「イワン王子と火の鳥と灰色オオカミ」では、羽はふしぎに明るくかがやいてたくさんのろうそくをともしたように部屋を照らす。

 昔話にはおじいさん、おばあさん、姉妹、兄弟のほかさまざまな動物、天狗や鬼、魔女、妖精といったさまざまなものが登場するが、これまで読んだなかでは火の鳥というのはあまりでてこない。寒いロシアで火というのはあたたかさの象徴として生み出されたのかなと思う。
 
 火の鳥は鳥かごにはいるおおきさとあるが、どんな種類の鳥でしょうか?


わらしべ長者

2012年11月16日 | 昔話(日本)
          わらしべ長者/小峰書店/語りつぎたい日本の昔話2/小澤昔ばなし大学再話研究会


 ある長者がひとり娘に婿をむかえようと、藁3本を千両にしたものを婿にするという立て看板をたてる。
 若者が旅にでて、藁3本をまず蓮の葉と交換し、次には蓮の葉2枚を味噌玉と交換し、さらに刀を作っている鍛冶屋が味噌玉がなくて刀を仕上げることができないでいるところに、味噌玉を提供し、そのお礼に短い刀をもらう。
 その刀を殿様にあげたお礼に、殿さまから千両をもらうというお話。

 タイミングよく場面が展開し、成功体験を続けて、最後には幸せがまっているという結末は、わかっていても楽しい。
 
 婿になりたいという動機はともかく、長者の娘がどんな娘かは一切でてこないので、一生幸せに暮らしたということから推測するほかはない。

 またここにでてくる若者は名前がついていないが、不特定多数がこうした幸せをつかむ可能性があることを暗示している。
 
 このあと、わらしべ長者といっても、さまざなバージョンがあることがわかりました。

ハリーポッターとイギリスの昔話

2012年11月12日 | 昔話(ヨーロッパ)

 少し前、ハリーポッターシリーズを何回か読み直していました。
 舞台設定に感心しながら何回読んでも飽きないところでした。読み始めたのは評判になってからだいぶあとでしたが、訳の巧みさもあってか一気に読めました。

 イギリスの昔話を読んでいてハリーポッターの原点がないか、探していました。訳されているのはごく一部でしょうから、あまり見つけることはできませんでした。

 しかし、「巨人たいじのジャック」という話に、巨人、三つ頭の怪物、姿をかくす上着、知りたいことを知らせてくれるぼうし、無敵の刀、とぶように走れるくつ、さらに魔法の城などがでてきます。
 ハリーポッターシリーズには、飛ぶように走れるくつはでてこなかったと記憶していますが、それ以外は何らかの形で登場してきます。
 おもしろいキャラクターの小鬼は「トム・ティット・トット」という話にでてきました。
 
 ハリーポッターはもちろんローリングの創作で、それはそれで楽しい作品ですが、昔話を読んで、似たようなキャクター発見し、ハリーポッターの世界に重ねてみる楽しさもありそうです。


           イギリスとアイルランドの昔話/石井桃子編・訳/福音館書店


影絵の森美術館

2012年11月05日 | ちょっと遠出
 甲府昇仙峡にある影絵の森美術館にいきました。

 藤城清治の幻想的な影絵のなかに「鶴の恩返し」がありました。雪が降りしきる空を鶴が飛んでいくさまが影絵になっていました。

 「鶴の恩返し」を読んでも冬という季節を思い浮かべることはなかったので、新しい発見をしたようで得をした気分。(後で絵本「つるにょうぼう」/矢川澄子再話 赤羽末吉画/福音館書店/をみていたら冬のイメージがはっきり。

 鶴には留鳥もあるということですが、やはり「鶴の恩返し」にでてくるのは冬鳥ということでしょう。渡り鳥の方がこの話にぴったりするところ。

 ストーリーテリング(ということばをはじめて知りました。これまで先入観にとらわれそうで解説の類の本は読まず、もっぱら本を読んでいた)で語り手が物語にどんなイメージをもつのかが重要な要素の一つとしてあげられていますが、同じ物語でも10人の絵本の書き手がいたら10の絵本ができあがるように、語り手がこれまで蓄積してきた経験も大きな要素になると考えると、同じ物語でも10人の語り手がいたら微妙に違ってくるということが、当然のように思いました。
 
 演劇の場合でも演出家が違うと、同じ脚本であっても解釈のちがいで全く違った舞台になるという経験もあり、物語の受け止め方をもっと考えてみたいと思いました。
 
 しかし、藤城影絵の幻想的な影絵は一つ一つに物語が感じられてイメージを膨らませてくれるものでした。

         影絵の森美術館

聴耳頭巾

2012年11月02日 | 昔話(日本)
 動物の話がヒントになって、そのとおり行動すると結末がハッピーエンドに終わる昔語も多い。

 昔の人は動物を理解するとことについてどのように考えていたのか。動物だけでなく草木についても精霊の存在を信じていたのか。
 
 日本昔話百選(稲田浩二・和子編著/三省堂)にある「聴耳頭巾」は、おじいさんがお宮にお参りしているときに、神様から鳥がさえずっているのも、木がはなしているのも人が話しているように聞こえるという宝頭巾をさずかります。

 この頭巾のおかげで貧乏なおじいさんが、庄屋からたくさんのほうびのお金を手に入れ、一生安楽に暮らします。
 
 この物語が木下順二の戯曲では、「聴耳頭巾」を
 「あまり使うもんではねえな」
 「いいこともあるが悪いこともあるべ」
 「鳥の話など聞いてまたどげな悪心をおこしとうなるもんではないわ」
 「地道に働くが何より大切だろうて」ということでおわるのが印象的である。

 助けられるのは、狐、蛇、亀、鯛、ねずみなどがでてくるほか、「聞き耳」は頭巾や、杖、笠、しゃもじが、聞き分けるのは、カラス、スズメ、シカそれに木などがでてくるといいますから、全国に幅広く分布しているようです。