静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年
力自慢が、中国で力比べをしようとでかけるが、あまりに相手が悪く逃げ帰るというのは、各地方にあるが、ふたりででかけるのははじめて。
西山寺の門前に、海の水を一口飲んでしまった仁王と、富士山をひとまたぎにしたという仁王がいた。ふたりの仁王は、じぶんより力の強い者はいるはずがないと、自慢して威張ってばかり。
あまりうるさいので、村の人が、中国に、ドウモコウモという世の中で一番強い人がいるというと、ふたりの仁王は、海を越え、山を越え、あちこち聞いて ドウモコウモの家に。
あまりの力持ちにおそれをなした仁王たちが寺に帰ると、ドウモコウモがおいかけてきた。おどろいた仁王たちは、あわてて観音さまに助けをもとめた。観音さまは、仁王たちをかわいそうに思い、寺の池のふちにあるサルスベリにのぼり、なるべく枝の先のほうにつかまるようにと教えました。
ドウモコウモが、仁王たちをさがしていると、池の中で仁王たちが笑っています。ドウモコウモは、「こんどこそにがさないぞ」と、池の中の仁王たちめがけて、とびかかりました。そのとき、観音さまが、すかさず池にふたをしてしまいました。仁王のかげだったと築いたドウモコウモでしたが、やがて池の底に沈んでしまいました。
あぶないところを救われた仁王たちは、それから力自慢をしていばることもなく、観音さまの門番をつとめるようになりました。