どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

桃太郎伝説・浦島太郎伝説

2013年04月30日 | 昔話(日本)

       日本の民話3 旅先で聞いた昔話と伝説/池原昭治/木馬書館/1993年初版
 

 池原氏の挿絵だけをみていても楽しい。一話一話はそんなに長くないので読みやすいが、しかし300ともなると読むだけでも大変。図書館から借り出して読むというより、やはり手元において少しずつ読みたい本。主に香川、埼玉を中心に東京、千葉、神奈川、群馬の昔話・伝説も。埼玉のものでは川越の話が多い。

 この中の「桃太郎伝説」は、
 高松の話として載っており、じいじいが芝を刈ったところが芝山(高松市香西北町)、ばあばあが洗濯したのが本津川、桃太郎が鬼を退治して勝ちどきをあげた山が勝賀山、その鬼をまつったところが鬼が塚としてのこっているという。
 
 「浦島太郎伝説」も香川県の庄内半島の話として載っています。
 太郎が生まれたところが生里(詫間町)、子どもたちから亀を助けたところが亀の越(詫間町箱崎)、竜宮城の場所は粟島(詫間町)とも伊吹島(観音寺市)ともいわれ、玉手箱を開いたところが箱の浦(詫間町)、白い煙が立ちのぼった山が紫雲出山であったという。
 
 こうした「伝説」をたどるのも楽しい。桃太郎神社で検索すると、岐阜県中津川市、愛知県犬山市、大阪府南河内郡河南町、香川県高松市に神社が存在します。
 また浦島太郎ゆかりの神社、寺を検索すると
  浦嶋神社  京都府与謝郡伊根町
  浦島神社  香川県三豊市    池原氏の伝説で紹介されているもの。
  寝覚の床・臨川寺 長野県上松町
    寝覚の床は竜宮城から戻った浦島太郎が玉手箱を開けた場所といわれ、中央の岩の上には浦島堂が建   つ。臨川寺は、浦島太郎が使っていたとされる釣竿を所蔵する。
  知里付神社・真楽寺  愛知県武豊町
    知里付神社には浦島太郎が竜宮城から持ち帰ったといわれる玉手箱が所蔵されており、日照りの際    の雨乞いに使われたという。また、真楽寺の境内には浦島太郎を背負った亀のものとされる墓がある。

 京都府与謝郡伊根町の浦嶋神社の社伝では825年に創建されたといいますから、浦島太郎の話はその前から存在したものでしょう。


おじいさんと三人のむすこ・・エヴェンキのむかしばなし

2013年04月25日 | 昔話(ヨーロッパ)

          おじいさんと三人のむすこ/お日さまとトナカイ シベリア・極東のむかしばなし集/むらやま あつこ・やく なかざわ みほ・え/新読書社/2001年初版


 この話は、エヴェンキのむかしばなしとなっています。エヴェンキ人は、ロシアに1万2千人弱、中国に2万人、モンゴルに3千人が住むといいます。

 おじいさんと三人の肝っ玉が太く勇敢な息子の物語。

 一番上の息子がヘラジカの足あとに気が付き、鉄砲をもってでかけようとします。おじいさんは悪い夢をみたからとひきとめるが、息子は、そんな夢は信じないとでかけます。息子はヘラジカを仕留めることに成功しますが、そこにぞっとするおばあさんが表れ、自分にも食べさせてくれと頼みます。

 息子はおばあさんに親切にしますが、このおばあさん、息子のもっていた鉄砲をこわし、おまけにクマとオオカミをよびよせて息子をずたずたにひきさいてしまいます。

 一番上の息子が帰ってこないので、二番目の息子が出かけていきますが、やはり家にもどってきません

 今度は一番末の息子がでかけていき、クマとオオカミを殺してしまいます。さらに、末息子は、ばあさんが兄さんたちを生きかえらせてやろうというので、おばあさんを案内させ、いのちの水の湖にたどりつきます。

 慎重な息子はおばあさんの言うことを信じなく、小鳥を鉄砲で撃つと、小鳥は石のように湖になって燃え尽きてしまいます。息子のどなり声に、ばあさんは別の湖に連れて行きます。息子が白樺の小枝を湖に投げ込むと、小枝は湖に落ちた途端に根をはやし、芽をふきはじめ新しい枝が生えてきます。息子が白樺の皮からつくった二つのコップに湖のいのちの水をくんで、兄さんたちの骨に水をたらすと、兄さんたちは生きかえり、ばあさんを焚火のなかに投げ込みます。

 三人の息子が登場し、末の息子が活躍して、兄さんたちを救うという昔話の定番の流れ。少数民族のこんな昔話が出版されていることに驚きます。読みやすく親しみやすい訳です。

 この本に収録されているのは11の物語ですが、ツンドラ、トナカイ、アザラシ、アシカ、セイウチなどシベリアという土地と結びついた動物が登場します。

 同じ出版社から「アムール地方の民話」「ウズベクのむかしばなし」も出版されています。
 オーストラリアの先住民アポリジニの昔話もこの出版社でした・・・。


うんちのちから

2013年04月22日 | 絵本(自然)
うんちのちから  

    うんちのちから/ぶん ホ・ウンミ え キム・ビヨンホ やく しん もとか/主婦の友社/2006年初版

 

 楽しみながらちよっと科学する心を育んでくれる絵本。

 この絵本には発見がもりだくさん。

 ・かたつむりのうんちは、赤い花を食べると赤く、黄色い花を食べるときいろい
 ・ライオンのうんちはすごいにおい(肉をたべるから)だが、パンダはささだけたべるからこうばしいにおい
 ・かばのうんちは、小さい魚たちがとってたべようと、おしりをちょろちょろおいまわす

 ぞう、らくだ、ハムスター、パンダ、コアラ、ひつじ、ライオン、うし、ぶた、いぬ、とり、かたつむりなど子どもがすきな動物たちのうんち。

 そして、だれかがしたうんちは、まわってまわって、むしたちのおいしいえさになってこまかくくだかれてつちになり、そのつちからくだものややさいがぐんぐんそだって・・・             


10年後のシンデレラ・・NHKEテレ「課外授業 ようこそ先輩」

2013年04月18日 | いろいろ

 NHKEテレ「課外授業 ようこそ先輩」で、林真理子さんが授業する番組が。
 
 小学六年生が「10年後のシンデレラを自由に」「妄想」して作文をつくるという番組。子どもたちが作った物語は、番組の最後に全員の作文を一冊にした本を子どもたちに配っていたが、その内容が紹介されていなくて残念でした。
 林真理子さんと子どもたちが一対一が面談するシーンで取り上げられていたのは(途中に面白いと思ってメモをとったので正確ではないのですが)

・シンデレラがぜいたくな生活で太ってしまい、だれかわかなくなって、離婚。お姉さんのところで、生活し、昔の体型を取り戻す。
・王子が王子をやめ、畑仕事にはげみ、それまでの色白から日に焼けたたくましい男になり、そこでとった野菜を食べてシンデレラと幸せに暮らす。

・王子は、シンデレラがきれいというので結婚したが、やがて飽きがきてしまう?。シンデレラは新しい人を探し、結婚する。

・林真理子さん自身も作文を
 継子いじめで知られる姉はシンデレラに負けないくらいきれいだったが、実はシンデレラの幸せを思って、ガラスの靴をはくとき、わざと指をそえて、はけないことをしめした。(というもの)

 林真理子さんは、幼少のころから本に親しみ、その中で理想の自分を思い描くという“妄想”を紡いできたといいます。中学時代、イジメにあった体験を子供たちに赤裸々に語り、それを乗り越えられたのは“妄想”の力だったのだと語ります。(番組紹介の中から)

 目に見えないものを考える妄想力という花園を耕せと、結びにありました。

 昔話は「幸せに暮らしました」とおわり、ほんとにそうかと突っ込みしたくなるところも(夢のない話ですが)。

 お話し会は、一方通行ですが、お話のあとにじっくりと話し合ってみると、又、別の世界が開けてくるのかもしれません。


あかりの花・・中国苗族民話

2013年04月15日 | 絵本(昔話・外国)


   あかりの花・中国苗族民話・/肖甘牛・採話 君島久子・再話 赤羽末吉・画/福音館書店/1985年初版
 

 ある夏の日、トーリンという若者が、山で働いていていると、豆のような汗が次から次へとながれ、地面にこぼれた汗が岩のくぼみに落ちます。

 その岩のくぼみから真っ白なユリの花が咲き、そのユリが風にゆれながら歌いだします。山へいくのが楽しみになったトーリンは、ある日ユリの花が踏み倒されているのをみて、うちへ持ち帰り、石うすのなかにうえます。するとユリは毎日美しい歌を聞かせてくれます。

 十五夜の晩に、あかりの灯心が赤い花になって開き、その中から美しい娘があらわれ、それからは、トーリンと娘は山で畑仕事をし、夜はトーリンは竹籠をあみ、娘は刺繍した美しい布をつくります。
 トーリンは畑で作った作物や、竹籠、刺繍のはいった布を市にもっていき、帰りはくわや糸を買って帰る生活をおくり、やがてトーリンの家は立派になり食べ物は倉いっぱい、牛や羊が群れるようになります。

 しかしトーリンはその後毎日遊び歩く生活が続き、娘が何をいっても、働こうとしません。愛想を尽かした娘は、ある満月の夜、金鶏鳥にのって月の世界へ舞い上がっていきます。

 残されたトーリンは、着るものも食べるものもなくなり、床に敷いたたった一枚のむしろを売ろうとしますが、そのとき刺繍した布が二枚あらわれます。トーリンと娘がたのしげに畑で取り入れをしているものと、もう一枚は二人がむつまじく夜なべをしている刺繍。

 これをみたトーリンは貧しくても充実したころを思い出し、夜も昼も一生懸命働きます。

 十五夜の晩に石うすのなかへなみだがこぼれると、石うすのなかからユリの花がのびてきて歌いだします。そのとき部屋のあかりの灯心がぱっと赤い花になって開き、そのなかから娘があらわれます。


 中国の苗族というのははじめて目にします。ミャオ族というのが一般的なようですが、ミャオ族は日本人のルーツとも言われ、人口約750万人。その半数が中国で一番貧しいと言われる貴州省に暮らしているという。
 ミャオ族が日本人のルーツというのは、昔の日本人の暮らしにみられる、髷を結い、もち米、納豆、麹による酒造、漆塗り、繭から糸を引いて作る絹などに共通性が見られるという。

 ミャオ族はおもに揚子江流域で暮らし、春秋戦国時代(BC770-BC403)に楚(~BC223)の文化を築くが、そこに秦の始皇帝が現われ戦に敗れたミャオ族は、南に追われていく。始皇帝が天下統一したのはBC221年のこと。ミャオ族はその後もどんどん奥へと追いやられ、中国西南部の山の中、現 貴州省に住みつくようになったという。

 こうした背景を知ると、この絵本の魅力が増すようである。日本の昔話「つるにょうぼう」に似た話であるが、「つるにょうぼう」は、つるが去っていくところでおわるが、この昔話はまた以前の生活を取り戻すことになり、ほっとする結末がいい。

 ついでに言うと、ここにでてくる金鶏鳥は雄。雄の冠羽が金色に光輝くのが名前の由来で、雌のほうは大分地味な色をしているようです。     


コンドルにさらわれたむすめ・・ボリビア

2013年04月10日 | 昔話(南アメリカ)

    コンドルにさらわれたむすめ/大人と子どものためのむかし話 ペルー・ボリビアのむかし話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版 


 みじかい話ですが、南米らしさがあらわれている話です。
 
 人間に姿をかえたコンドルが、村長の一人娘をさらって自分の家につれていきます。心配になった村長は村から村へと娘をさがして歩くが、みつかりません。

 そのときハチドリが、畑から追い払わず、いつでも花のみつをすわせてくれるなら娘の居所を教えてくれるという。村長が承知すると、ハチドリはきりたったがけのところに村長をつれていく。そしてハチドリが縄をがけの岩に巻きつけ娘をとりもどす。
 コンドルはそれいらいハチドリとおりあいが悪くなり、ハチドリがたくさん住んでいる畑には、おりてこなくなります。
 
 「コンドルは飛んでいく」の曲とは違うイメージのコンドル。
 ボリビアの国鳥とされているハチドリは南米のほかの国でも国鳥とされて、南米の神話には欠かせないという。
 
 おおきなコンドルと小さいハチドリという組み合わせが想像力をかきたてます。

 ところで、ボリビアといえば忘れることができないのが、ゲバラ。
 キューバで革命を成功させた一人であったゲバラがボリビアで革命を起こそうとするが、孤立したまま殺されてしまう。キューバに残っていればそれなりの人生をおくることができたにもかかわらず、あえて困難な道を選んだゲバラ。しかし、最近彼の評価を変えつつある動きがあるという。    


亡霊になった夫・・ペルー

2013年04月06日 | 昔話(南アメリカ)

      亡霊になった夫/大人と子どものための世界のむかし話 ペルー・ボリビアの昔話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版

 若い夫婦の夫が食べ物を盗もうとして店の主人にみつかって、殺されてしまう。

 妻マリアは夫が殺されたことを知らない。夫は亡霊になってマリアのところにあらわれ、あの世に連れ出そうとする。途中にある小さな小屋で食事をするが、亡霊は、のどに穴があいているのでいくらたべても次から次へとこぼれてしまう。

 小屋を出て寒くなってきたので、たき火をしてあたたまろうとし、森の中でまきをとろうとするが、亡霊は森がこわくて、森の中にはいらない。マリアが森のなかでまきをさがしていると、聖母があらわれて、マリアにあの世につれていかれてしまうと忠告する。そのとき聖母はせっけんとかがみと針とくしを手渡して、亡霊がおいかけてきたら、せっけんとかがみと針とくしを一つずつ亡霊のほうになげなさいという。

 亡霊がおいかけてきて、せっけんをなげると大きなドロ沼があらわれます。

 亡霊がやっとドロ沼をこえておいかけてくると、今度は、鏡をなげると大きな湖があらわれる。また亡霊がおいかけてくると、こんどは針を投げるとイバラにかわります。

 さらに、くしをなげると森にかわります。それでも亡霊が追いかけてくるので、マリアは教会に逃げ込みます。
 たくさんの亡霊がやってきてあの手この手で、マリアをおびきだそうとするが、マリアはじっと我慢し。やがて教会の鐘が鳴ると、にわとりが三度目に泣いたとき亡霊がきえる。

 この昔話は、お話し会で語られる機会も多い日本の昔話「三枚の札」をおもわせる。

「三枚の札」は、地域によって若干のちがいはあるが、青森県の場合のあらすじは

 ある寺の小僧が山へ栗ひろいにいきたいと駄々をこねる。和尚は仕方なく3枚の札を、小僧に持たせる。小僧は、栗拾いに夢中になっている内に日が暮れる。老婆が現れ小僧を家に泊めてくれが、夜に目覚めた小僧は、老婆が山姥の本性を現し小僧を食べる用意をするのを目にする。小僧が「糞がしたい」と言うと、山姥は小僧を縄で括って便所へ送った。小僧は1枚目の札を便所の柱に括り、「身代わりになってけろ」と頼んで窓から逃げる。山姥が「もういいか」と尋ねると、小僧に化けた札が「もうちっと」と繰り返す。山姥が我慢できず便所をぶち破ると、小僧は跡形もなく消えていて、破れた札があるだけ。

 だまされたと知った山姥は小僧を追いかけが、追い付かれそうになった小僧が2枚目の札を投げると大きな川が出る。だが、山姥はぐびぐびと飲み干した。おいつかれた小僧は、最後の札を投げ、火の海を出す。しかし山姥は川の水を吐いて吹き消す。

 寺に逃げ帰った小僧は和尚に助けを求め、壺に入れてもらう。やがて山姥が寺に入って来て「小僧を出せ」と和尚にいうが、和尚は知恵を働かせ、小さな豆にばけさせ、豆を餅に挟んで食べてしまう。

 この手の話は逃げるところに意味があるようで、こまかな部分はわきにおいて楽しんでみたいもの。

 外国の昔話という場合、どうしても欧州のものが目につくが、さがしてみるとこんなにも多くの国のものが翻訳されていることにあらためて驚かされる。しかし、それでもまだまだ部分的なものに限られていそう。  


すてきな三にんぐみ

2013年04月03日 | 絵本(外国)
すてきな三にんぐみ  

    すてきな三にんぐみ/トミー・アンゲラー・作 いまい よしとも・訳/偕成社/1969年初版

 

 ちょっぴりこわくて、やさしく皮肉のきいた一冊。文句なしに楽しい絵本。

 黒マント、黒帽子の三人組のこわーい泥棒が、みなしごのテイファニーをさらってきたのはいいが、この子に、宝の山を発見され「このたからどうするの」と聞かれて、それまでなんにも考えていなかった泥棒が考えたのは、すてごやみなしごをあつめること。

 城をまるごと買い取るとそこにあつまってきたこどもがどんどんふえます。こどもたちはすくすく育ち、やがて結婚。城の周りに家をたて、村をつくります。

 小さな村はどんどん大きくなり、みんなは、三人組を忘れないための、三人にそっくりの塔をたてます。

 眼だけをかすかにのぞかせている黒いマントと黒い帽子の泥棒と赤いぼうしと赤いマントのこどもたちの絵がなんともかわいらしい。

 泥棒が行き場のなくなった子どもたちに手をさしのべる(さしのべざるをえない)あたりが、そうした社会にした者たちへのやんわりした告発にもなっているようです。         


火うちばこ・・アンデルセン

2013年04月02日 | 絵本(昔話・外国)
アンデルセンの絵本 火うちばこ  

  火うちばこ/原作 アンデルセン 文・絵 エリック・ブレグバッド 角野栄子・訳/小学館/2004年初版

 

 戦争が終わって、ひとりの兵隊が家に帰る途中に魔女に会う。この魔女ががらんどうになっている木を降りて行って火うちばこをもってきてほしいという。みかえりに金持ちになれるという。がらんどうになっている木の下には部屋が3つあり、最初の部屋には、テーカップ目玉のどう猛な犬が銅貨の入った箱の上に、2番目の部屋には、水車目玉の犬が銀貨の入った箱の上に、さらに3番目の部屋には、円塔目玉の犬がいて、金貨の入った箱の上にすわっている。

 これらの犬は魔女のエプロンの上におくと悪さをしないといわれて、兵隊は銅貨を手に入れるが、2番目に銀貨を手に入れると、ポケットを銀貨でいっぱいにする。3番目に金貨を手に入れると、こんどは銀貨を捨て、ポケット、かばん、ぼうし、ブーツまでも金貨でいっぱいにしてしまう。
 火うちばこはどこにあると魔女にいわれて、兵隊は火うちばこをどうするのか、たずねるが、魔女は何もこたえない。兵隊はわけをいわない魔女におこって魔女の首を切り落としてしまう。
 金持ちになった兵隊は町でいちばんいい宿屋に部屋をとり、最上級の食事を注文し、新しいブーツと上等な洋服も買う。すてきな紳士になった兵隊は、たくさんの友人を持つようになり、王さまや、美しいおひめさまのことについても話を聞く。おひめさまはただの兵士と結婚すると予言されていて、そのため王さまはそれがいやでおひめさまを城の中に閉じこめているため、おひめさまにあった者は誰もいないという。

 兵隊は金持で多くの友人を持っていることを楽しんでいたが、あまりにも早くお金を使ってしまい、お金はやがてほとんど全部なくなってしまう。そのため彼は宿屋を出て、暗い小さな屋根裏部屋に住むことになる。友だちもきてくれなくなる。 ある寒い暗い夜、彼には部屋を照らすろうそくさえもなかったが、火うちばこを思いだし、火打石から火花を出すとすぐに、木の下で彼が会った最初の犬がでてきて、だんなさま、なにかごようですかと、犬がたずねるので、兵隊が「お金を持ってこい!」と叫ぶと犬は銅貨の袋を口にくわえてもどってくる。火うち石を2度打つと、銀貨の箱の犬が現れ、3度打つと、金貨の箱の犬があらわれ。3匹ともみんな、彼のしてもらいたいことは何でもしてくれる。また金持になった兵隊は宿屋にもどり、ふたたび最上級の食事を注文し、立派な洋服も着ることができるようになる。

 兵隊はお城に閉じこめられているおひめさまに会いたいと思い、火うち石を打ち、犬の力をかりて、おひめさまを城の中からつれだし、眠っているおひめさまにキスをする。しばらくしてから、犬はおひめさまをつれて、おしろにもどる。翌日、おひめさまは、王さまとおきさきさまに不思議な夢の話をし、犬が背中に私を乗せて、連れ去った夢を見、兵隊が私にキスしたと話す。翌日、兵隊は、また犬におひめさまを迎えにやるが、今度は侍女がついてくる。侍女は犬がおひめさまを家に連れていくのを見ていて、翌朝、王さまの家来がたやすくその場所をみつけるためにその家にチョークでドアに大きな十字を書く。しかし、犬は十字を見ると、チョークを持って町じゅうのドアに十字のしるしを書いてしまうので、王さまの家来は、兵隊をさがしだすことができない。

 おきさきは、ふくろをつくって、その中にそばの実を入れ小さな穴をあけおひめさまの背中にくくりつける。犬がおひめさまさまを連れにやってきたとき、そばの実がこぼれ、兵隊の家は発見されてしまう。

 そしてすぐに首つりされることになる。火うち箱を家においてきた兵隊は、靴屋の男の子に残された銅貨をあげるからといって、火うち箱を持ってきてもらう。いよいよ首になわがかけられそうになったとき。最後の願いに、パイプをいっぷくすわせてくださいといって、火うち石を1回、2回、3回と打つ。すぐに3匹の犬がそろって現れ、裁判官や大臣にとびつき、王さまとおきさきも空にほうりなげてしまう。人びとは兵隊に拍手を送り、「あなたが王さまになってください。そしておひめさまと結婚してください」とさけぶ。そこで、兵隊はおひめさまと結婚することになる。

 大分くわしくなったが、ブレグバッドが原作にどのていど手をいれているかわからないので、以下は独断。

 出だしの部分は、昔話の特長があらわれ、三匹の犬があらわれる。

 魔女からせっかくの贈り物をいただきながら、あっという間に魔女を殺してしまうが、これにはとくに意味がないと考えたい。魔女がほしかった火うちばこはそれほどのたからであったのか。魔女というからにはこれがなくても自分でなんでもできそうなものだが。またなぜ木の下に魔女自身がはいっていけなかったのかもよくわからないところ。

 チョークで町じゅうのドアに十字のしるしをつけるシーンはアラビアンナイトの「アリババと40人の盗賊」にそっくり。
 最後に「王さまになってください」と人々がさけぶシーンがあるが、この王さま、王さまでいたときあまり善政はしなかったということでしょう。

 お金持ちになった兵隊が、お金がないことがどんなにつらいものか知っていて、まずしい人たちにお金をあげるところが、救いか。