どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

もりのむしとのはらのむし

2014年08月29日 | 絵本(自然)

      もりのむしとのはらのむし/三芳悌吉作・絵  中根猛彦・監修/福音館書店/1966年初版 

 

 大分前の絵本なので、今は手に入りにくいかもしれません。

 題名通り、子どもの興味をひく森や野原の虫について、描かれていますが、少し専門的でとっつきにくいところもありそうです。
 しかし、いろいろな発見ができるのも、こうした絵本。
 
 ハチというのも面白い存在。
 かりゅうどばちというのは、竹筒などに、泥で小部屋をつくり、そのなかのクモにたまごをうみつけます。
 また、じがばちは、地面に穴をあけ、生け捕りにしたあおむしのおなかに、たまごをうみつけ、穴をうめます。
 (幼虫のえさにするためでしょうか。うまくできていますね)

 セミは、地中の中で7年ぐらい暮らしつづけるというのも長い。

 ちょうやとんぼ、かぶとむしなどもでてきます。よく注意すればまだまだ、さまざまな昆虫に出会えるのかもしれません。

 夏休み、NHKラジオの子ども科学電話相談によせられる質問や答えに、なるほどと思わせるものが多く、こちらも新しい発見をすることがたびたびあります。


黒いどろぼうと谷の騎士

2014年08月26日 | 昔話(ヨーロッパ)

       黒いどろぼうと谷の騎士/ラング世界童話全集9 みずいろの童話集/編訳 川端康成・野上彰/偕成社/1978年初版


 アイルランドの昔話をラングが再話したもの。

 映画の中に映画のシーンがあったり、劇のなかに劇のシーンがあったりするが、この話の中には別の話がうまくでてきて、話中話を楽しめるしかけになっている。

 三人の王子が継母から、あらあらしい<鈴の馬>をつれてくるようにいいつけられる。
 谷の騎士がもっているという<鈴の馬>を探すに旅に出た三人の王子は、途中黒いどろぼうとよばれる男にであう。

<鈴の馬>を連れ出そうとすると、鈴がさわがしいひびきをたて、谷の騎士のところへ連れていかれる。
 王子たちが、ぐらぐら煮立っているかまに投げ込まれそうになるが、同行していた黒いどろぼうが、谷の騎士を感心させる話を、三つ話して聞かせ、王子は助かることになるという展開。

 王さまのお妃がなくなって、継母が、得体知れない召し使いから王子を亡き者にするようふきこまれる前段の展開からいうと三人の王子が主人公に思えるが、後半は、黒いどろぼうだけが目立つ。

 王子一人を救うために一つの話をするが、短くてもたのしい。
 王子と黒いどろぼうの出会いの場面もさっぱりしたもの。

 長い話だと、途中経過がわかりにくくなる話もあるが、わかりやすくなっています。
 


百年の家

2014年08月25日 | 絵本(外国)
百年の家  

    百年の家/作・J・パトリック・ルイス 訳・長田 弘/講談社/2010年初版

 

 遠くにカメラを固定し、時代の変化を写しだしていきます。

 1656年につくられた家。

 廃屋になっていたこの家を修復し、すみはじめたのは、1900年。
 畑をたがやし、ぶどうの木を植えます。
 やがて丘のむすめが結婚し、こどもがうまれ・・・。

 しかし平和な日は長く続かず、戦争(第一次世界大戦)で、妻は夫をうしないます。
 しばらく平穏な日が続きますが、また破壊(第二次世界大戦)の日々がやってきます。
 避難所になり、抵抗運動の兵士たちの隠れ場所になった家。
 
 おおきくなった息子たちは、街へ移り住みます。

 やがて母親の死。

 1973年。墓標が小さく描かれているのが心に残ります。

 それから20年以上廃屋になった家は、新しくうまれかわります。

 母親の葬式の日。雨の中、傘をさしながら、柩をのせた車を見送る人たちの姿が印象に残ります。

 映画をみているような絵本で、ものを言わない家が語りかけてくるようで、百年の歳月を感じさせてくれました。


ソリア・モリア城

2014年08月22日 | 昔話(北欧)

      ソリア・モリア城/世界むかし話15 北欧 ソリア・モリア城/瀬田貞二 訳/ほるぷ出版/1979年初版
      ソリア・モリアの城/ラング世界童話全集9 みずいろの童話集/編訳 川端康成・野上彰/偕成社/1978年初版



 たまたま読んでいたなかに、おなじ話があった。ところが同じ話なのにうける印象がまったく別。
 
 ラングのほうがよみやすくなっていた。ラングが手を入れていたのははっきりしているが、これほど違う印象があるのも珍しい。
 
 ただ、なかには首をかしげるような表現もあって、訳が複数ある話では、比較しながら自分のものとする必要をあらためて感じた。

(ラング版の出だし)
 むかしむかし、ハルボアというむすこのいる夫婦がありました。ハルボアは、小さな子どものときから、仕事をするのがきらいで、灰のなかにすわって、灰をなでまわしていました。
(世界むかし話版の出だし)
 むかしある夫婦に、ハルホールというむすこがいました。ごく小さいときから、その子はなにもしたがらず、ろばたにすわって灰をかきならしているだけでした。

 この話の中に、鬼(ラング版)がでてくるが、(世界むかし話版)では、トロルというおなじみの表現になっている。この鬼が人間のにおいをかぎつけるところでは

  (ラング版)「くんくん、キリスト教の信者のにおいがするぞ。」
 (世界むかし話版)「ふんふん、ふんふん! なにやら人間の血のにおいがするぞ!」

 「キリスト教の信者」のにおいというのは余分か。


ないた

2014年08月21日 | 絵本(日本)
ないた  

    ないた/中川 ひろたか・作 長 新太・絵/金の星社/20046年初版

 

おとなになって
わかったことだけど、
すぐになけるのって、
すばらしいことなのね。
まいにちなけるなんて、
こっこいいことなのよ。

 「なく」ことについて、かんがえてみようかなという作者の思いがストレートに伝わってきました。

 小学校低学年の読書感想文全国コンクールの課題図書とされていたようですが、長新太さんのほのぼのとした絵が、この絵本の魅力になっています。

 子どもと話し合うお母さんの気持ちがうかがわれます。                     


無敵のミッコ

2014年08月20日 | 昔話(北欧)

    無敵のミッコ/世界むかし話15 北欧 ソリア・モリア城/瀬田 貞二・訳/ほるぷ出版/1979年初版


 タイトルがいま一つぱっとしないが、「長靴をはいたねこ」とおなじ話型の北欧の昔話で、長靴よりは、大分長くなっています。こうしたおなじような話型のものに出会う機会がなかったが、やはり同じような話型のものがあるということ。

 親が亡くなって、こどもだけが残されるでだし。
 父親が、けものをつかまえるワナを森にしかけてあるが、自分が死んだら、そのわなにかかったけものを家につれかえるように言い残す。
 わなにかかっていたのはキツネ。「長靴をはいたねこ」のネコの役割。
 キツネは王さまから、立派な衣装を手に入れ、ミッコがこれを着ていくと、姫君は、すっかりミッコにひかれる。
 やがて結婚した二人が住む場所をみつけために、キツネはリュウがすむという豪華なお城にでかける。
 途中で出会った、きこり、馬番、羊飼いをおどろかして、自分たちは「無敵のミッコの者です」といわせることに成功したキツネは、うまくリュウも退治することに。

 キツネが去っていく最後がにくい。

 このリュウがとぐろまきとされているが、なかなかイメージがわいてこない。また、キツネが、人々が小金をかくしておく、いなかの穴場や割れ目から、金貨や銀貨をさがすだすところがあるが、昔の人はこんなところに金貨などをかくしていたというのもわかりにくい。      


いのちは見えるよ

2014年08月16日 | 絵本(社会)
いのちは見えるよ  

     いのちは見えるよ/及川和男・作 長野ヒデ子・絵/岩崎書店/2002年初版

  出産シーンもあって、これをみた子どもが、自分の時はどうだったとお母さんに問いかけるのは自然なことで、そこから会話がはずみそう。

  目のみえないルミさんに、見えたらいいねと言ってしまったエリちゃんに「見えるよ、命は見えるよ」という言葉が、いつまでも残ります。

  命は、どうしてみえるんだろう。
  おちちを飲んだり、ウンチをしたり、泣いたり。
  心臓が動いて生きている。それが命?。それが見える?

  ルミさんが、学校に行って子どもたちに話しかけるシーンにジンとします。

  「わたしは、これまでたくさんの人にささえられたり、はげまされたりして、生きてこられたの。みんなの、いのちのおかげね。人間は、たすけあって、こころをむすびあってこそ、生きていかれるのね。みんなだって、そうよ。生まれたばかりの、この子をだいたとき、わたしは、いのち、いのちって、おもったわ」

 目がみえないルミさんの子育てが、深刻にならず、明るく描かれているのにも共感できます。


かしのきホテル

2014年08月15日 | 絵本(日本)
復刊絵本セレクション 2 かしのきホテル  

     かしのきホテル/作・久保喬 絵・駒宮緑郎/フレーベル館/1976年初版

 

 森の中にどっしりとかまえるカシの木。
 多くの鳥や虫たちが泊まって?います。

 たまむしのおじょうさんのそばに、ミノムシがくると、きたないみなりのひとがきたと、せみはほかのところへ引っ越ししていきます。
 さわぎをきいたむくどりやめじろも引っ越し。
 ふくろうのめがねやさんも、くも、あなばち、かえる、かぶとむし、こおろぎなども「ここはよくないらしい」と引っ越ししてしまいます。

 ところが、台風がやってきて、みんなが引っ越しした「かばのきホテル」「もみじホテル」は、木の枝がおれたりしてすめなくなります。
 みんなは、台風にも耐えた、かしの木ホテルにもどっていきます。

 よくないらしいという風評や、みてくれに魅かれて引っ越ししていく虫たちを通じて、何が大事なのか感じさせてくれます。

 「このホテルはどんなおきゃくもくべつをしないでとめますよ」というかしの木の姿勢と、見捨てて行ったものたちも暖かくむかえるふところの深い、かしの木です。


ぬすまれた月

2014年08月12日 | 絵本(日本)
ぬすまれた月  

     ぬすまれた月/和田 誠/岩崎書店/2006年初版


 
 満月、新月、月食、日食、そして、地球の海のみちひきと月の関係について自然に理解を深めることができます。

 面白いのは、泥棒が月を盗んだ男から、月を奪っていくところ。
  
 新月なので月がみえない。泥棒がすてていった箱から、三日月をみつけた女の人が竪琴をつくると、素敵な音がします。やがて竪琴が大きくなってだめになると女の人は海にすててしまいます。

 その月を飲み込んだ魚を、二つの国の二つ船が同時につりあげ、紛争がおきます。

 冷戦期に出版されたリニュアル版というので、当時の状況が反映されていますが、この状況は今もかわらず風刺がきいています。

 幾何学的な絵が、1ページにいくつか分割されて描かれていたり、黒が基調の背景も新鮮な感じです。                        


フケアタマ、金ぱつの騎士・・カナダ

2014年08月09日 | 昔話(北アメリカ)

 フケアタマ、金ぱつの騎士/トンボソのおひめさま/石井 桃子・訳/岩波書店/1963年初版


「フケアタマ」の最後に、ジャンという若者が、王さまのためにすばらしい手柄をたてる事件がもちあがりました。けれども、それは別のおはなしになります。とあって、次の「金ぱつの騎士」につながる構成になっています。

一話だけでは長すぎるので、こんな構成もありかなと思わせるお話。

3年前だったらけっして考えようとしなかったこんな長いものも、今だったら取り組んでみてもいいかなと思わせる話。

「フケアタマ」では、父親からいじめ続けられたジャンが、家をとびだし、魔法使いの城で働くことに。
ジャンの仕事は、白と黒の馬を世話すること。
城のどこを見るのも自由だが、この部屋だけはみるなと言い残して、魔法使いのおばあさんは旅にでかける。
ジャンは、見るなという部屋を開けてみることに。
この部屋をあけ、ジャンの髪の毛が、水にふれると金髪にかわり、こまかいお金を水につけると金貨にかわります。

かえってきたおばあさんから逃げ出す場面は、日本の「3枚の札」のよう。
山やびんの山があらわれ、なんとか魔法使いから逃げ出し、いきついたお城で王さまのお庭係の下働きとして働くことになります。

白い馬は、見るなといわれた部屋をみて、罰として、馬にかえられた若者。

「金ぱつの騎士」は、隣の国と戦争になったとき、ジャンが白い馬にのってひそかにでかけ相手を打ち破ります。
次に敵がせめてきたときは、赤い馬にのってこれも打ち破ります。
三回目は、黒い馬に乗って、敵を打ち破ることに。

これに三人の王女がからみ、ジャンは末の王女と結ばれることに。

 冒険あり,ロマンありで飽きさせない。昔話のさまざまな要素がこめられて、ひとつひとつの場面がイメージしやすくなっています。


すみれおばあちゃんのひみつ

2014年08月07日 | 絵本(日本)
すみれおばあちゃんのひみつ  

     すみれおばあちゃんのひみつ/植垣歩子/偕成社/2008年初版

 

  すみれおばあちゃんは、ネコ2匹と一人暮らし。

  縫い物上手のおばあちゃんは、洋服はもちろん、エプロン、カーテン、クッションなどなんでもつくります。

  おばあちゃんの部屋には、足踏みミシンがあって、壁には生まれた赤ちゃんと夫と一緒に写っている写真や、まごのれんげちゃんの写真が。
  すみれおばあちゃんは、れんげちゃんのワンピースを仕上げようとしますが・・・。

  カエルのベッドや、チョウの羽、ひよどりの巣を繕ったりしているうちに糸がなくなってしまいます。救いの手を差し伸べてくれたのは、クモ。
  クモが糸をわけてくれます。
 この糸をつかって仕上げたれんげちゃんのワンピースの刺繍は、雨粒をはじくような不思議な色です。

  カエル、チョウ、ひよどりの繕いものをしてあげるきっかけが楽しい絵本です。
  刺繍箱の中身や、鳥の形をしたハサミなどが、さりげなく描かれています。

  おばあちゃんのネックレスがきになりました。


じぶんの木

2014年08月06日 | 絵本(日本)
じぶんの木  

     じぶんの木/最上一平・作 松成真理子・絵/岩崎書店/2009初版

 

 他の人の語りを聞いていいなと思ったのが、じつは、そのテキストが絵本というので、読みはじめた絵本。

 これまで絵本から触発されて覚えてみたのは、「おおきなかぶ」「ブレーメンの音楽隊」「さんびきのやぎのがらがらどん」「てんぐのかくれみの」など。これらは昔話としてのっており、絵本からはいる必要はかならずしもありません。

 創作絵本「じぶんの木」は、語ってみたいと思った一冊。

 漁師はなじみやすいが、猟師のほうはいまでは、昔話や絵本でしか見られなくなっている存在。

 93歳の「伝じい」は、50年前に鉄砲はやめたが、村でさいごの鉄砲撃ちとか、最後の熊撃ちとよばれていた男。伝じいが住むのは、いくつも山をこえ、奥へ奥へ入った村。

 限界集落の村が消滅しようとしているが、この絵本ではただ一人の小学生、わたるとひいじいさん伝じいとの交流が、忘れられた家族のありようを考えさせてくれます。

 伝じいは、わたるにせがまれて、まったく目の前がみえない冬山の猛吹雪のなかで、熊が眠っている穴にもぐりこみ、一夜をすごしたこと、熊とはちあわせしたこと、かしこい熊との知恵比べの話など、自分が感じた熊のうつくしさを語ります。

 また、村から歩いて一日がかりの雪をかぶった大朝日岳が真っ赤に燃えるように輝いているのみて「極楽浄土の入口」と思ったこと、春の山で若葉が萌え出す頃、木と木が、しゃべりあっているようだったとも語ります。

 この伝じいが急に具合がわるくなって病院に入院したとき、わたるは自転車で一時間かけてお見舞いにでかけます。

 伝じいは、今度来るときは、大朝日岳をかわりにみてきてけろとわたるにたのみます。二度と見ることができないことをさとっていたのです。

 わたるが見舞いくると、人が生まれると、どこかにぽっと同じように木が芽を出す。どこの山かはわからないが、たしかにじぶんの木というものがあると語ったのが最後となります。

 伝じいのように、たんたんと自分の生と死について語れるだろうか?と自問しました。           


トンボソのおひめさま・・カナダ

2014年08月04日 | 昔話(北アメリカ)

   トンボソのおひめさま/トンボソのおひめさま/石井桃子・訳/岩波書店/1963年初版


 月のようにうつくしいといわれるトンボソのお姫さまと三人の王子。

このような登場人物だと、王子とお姫さまが結ばれるかと思うと、ストーリーは意外な展開で楽しめる。

ただ少し長い話。

一番目の王子は、口をあけるたびに金貨を出してくれる財布。
二番目の王子は、兵隊がでてくる銀のラッパ。
三番目の王子は、行く先をつげると、どこにでも連れていってくれる皮のベルトを手に入れます。

三番目の王子がトンボソのお姫さまのところにいきますが、お姫さまにうまくいいこめられて、皮のベルトを取り上げられてしまいます。

お兄さんたちのもっている財布や銀のラッパをかりて、皮のベルトを取り戻そうとしますが、この二つもとりあげられてしまいます。

絶望の王子が森のなかでであったのが、リンゴとスモモの木。
リンゴを食べると鼻がのび、スモモをたべると、伸びた鼻がもとに戻ります。

このリンゴをお姫さまにうまく食べさせ、伸びた鼻をもとにもどしてやることを条件に皮のベルト、財布、ラッパをとりもどすことに成功しますが、トンボソのおひめさまの鼻を完全にもとにもどすことをせず、30センチほどのこしたまま、自分の国にかえってしまいます。

 金貨をだしてくれる財布やどこにでもいけるベルトなどがでてきて、それが取り上げられますが、無事に取り戻すことができるまで起伏あるストーリーで、飽きさせません。