どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ナイチンゲールのうた

2022年02月28日 | 絵本(外国)

     ナイチンゲールのうた/ターニャ・ランドマン・作 ローラ・カーリン・絵 広松由希子・訳/BL出版/2022年

 

 むかし、地球はみずみずしく、空も、山も、海も、砂漠も、森も色にあふれていた。ところが、動物たちは色がなく、ぼんやりくすんでいました。

 なんとかしないと、と立ちあがった「えかきさん」。

 えかきさんは、すべての 動物たちをよびあつめ、絵の具箱をあけて、あらゆる動物たちに色をつけていきました。

 テントウムシ、チョウチョから、シマウマ、キリン、ペンギン、フラミンゴ。

 ワニ、ゾウ、カンガルー、オランウータン、ライオン、そしてクジラ、オウム。

 えかきさんが一日中はたらき、家に帰ろうとすると、一羽の小鳥が とんできました。この鳥は 行列に並んだ動物たちのさわぎにおびえていました。そのうえ、明るい昼間のあつさが 苦手で、夕方のすずしさと、夜のしずけさが すきでした。

 えかきさんが、絵具箱を開けると絵具がありませんでした。ほかの棒物たちに すっかりつかってしまったのです。しかし、筆を見ると、筆の先に、金の絵の具が ひとしずくだけ のこっていました。えかきさんは 小鳥の くちばしに 金の絵の具の ひとしずくを のどのおくに ぽつんと たらしました。その小鳥は、ナイチンゲールー夜なきうぐいすーでした。

 

 ぼんやりくすんだ動物が、カラフルに変わっていく様子は、あらためて色の持つ魅力にあふれています。


大三の鬼たいじ・・福島

2022年02月27日 | 昔話(北海道・東北)

          福島のむかし話/福島県国語教育研究会/日本標準/1977年

 

 昔話というと、ひとのいいおじいさんと欲深いおじいさんがでてきたり、末っ子を大事にしない兄弟がでてきたりと、対立の構造が目立ちます。ただ、この話はこうした対立がないので、安心できます。

 

 むかし、西鬼といわれるおっかねえ鬼になやまされていた村の人々。この鬼の話を聞いた人々は、岳街道を通らず、鬼もいたずらはできないし、人の物をとることもできなかったから、岳山から人里近くまででてくるようになりました。

 この鬼退治にかけたのは、力自慢で頭のいい大三という若者。若造に大事な役がつとまるかと村人は心配したが、それでも大三に頼むしかないので、酒やさかな、食いものや着物まで用意し、大三に鬼退治を託します。

 岳街道をのぼり、もうちょっとで坂の上というところで一休みした大三。ガサガサ、ピチャピチャという音が聞こえてくるので、じっと音のする方をみると、赤銅色の鬼。

 よくみると、鬼は頭の毛もひげも伸び放題、ぼろぼろの着物で、力なく沢の水をガブガブ飲んでいた。「鬼のやつめ、何日もなんにも食わねえで、体がまいっているだんべ」と思った大三は、鬼退治にきたことも忘れ、持ってきた食い物を全部広げて、鬼にくれてやった。鬼はちょっとのあいだ、びっくりしたようだったが、目の前の食い物が山盛りにおいてあるので、夢中になって食いはじめた。

 満腹になった鬼は、大三の情けが身にしみて、大粒の涙を流し、なんどもなんどもお礼をいいます。大三が、「これ、鬼よ。おめえがいままでしてきたのは、悪いことだったんだぞ。んだから、村の人や旅の人は、どれだけ難儀したかしんねぞ。おれはおまえをつかまえにきたんだが、どうしたらいいべな」とさとすように言うと、鬼は両手を広げて大三の前にさしだします。鬼を村につれていくと必ず殺されると思った大三は、これからは決して人里に出てきたり、いたずらをしないようにといい、鬼を逃がします。

 このまま、村にかえることもできねえし、大三がこれからどうしようと考えていると、鬼が、でっけえ石をもってもどってきました。よくみると、その石は鬼そっくりの形をしていました。鬼は、この石をここへおくと鬼退治した証拠になるといって、笑って別れました。

 次の日、村人は大三の案内で、おっかなびっくり、退治した鬼を見にきましたが、鬼の形をした石をみて、みんなたまげて、村ににげもどりました。

 それから鬼は、人里にあらわれなくなり、鬼石は、いつまでもおなじところにころがっているという。

 

 「原瀬の才木(西鬼)」という地名がでてきますが、二本松市に原瀬というところがありました。この原瀬には、縄文時代集落跡があり原瀬上原遺跡として整備されています。


つんぶくだるま

2022年02月26日 | 紙芝居(昔話)

     つんぶくだるま/鳥兎沼宏之・作 金沢佑光・画/童心社/1981年

 

 暑い夏のこと、村のいたずらっこが お寺の お堂にまつってある だるまさんを持ち出し、川で浮袋代わりに遊んでいました。ところが、ばんげになって 「かえるが なくから かーえろ」と、子どもたちは だるまさんを おいてけぼり。

 だるまさんは「つんぶく つんぶく」と、川を流れて、おおきな川へ ながれこみました。夜が明けてみると、だるまさんは 海のそばまで。

 ちょうど 釣りに来ていたおじいさんは だるまさんを 家に持って帰り、なんども なんども手を合わせて おがみました。

 何日かたって、だるまさんは「村に わるい病気がはやっていて みんなを助けたい。わしを もとの 村へ もどしてくれんかの。」と、おじいさんに 頼みました。

 おじいさんは、夢の中でだるまさんの ことばを聞き、「えっさ えっさ えっさっさ」と、もとの村へ連れ帰ります。

 お寺の和尚さんが だるまさんを お堂に おまつりして 「なむ だるまたいし。」とおいのりすると、病人は 元気になります。

 だるまさんを運んだ川下のおじいさんは、「もしも、わしらのほうで はやりやまいがおこったら、ぜひとも たすけにきてくだされや」と、たのむし、いたずらっこは「もう 川へ ほうりこまんから、ここにいて、村をまもってくれや」といったし、和尚さんも「ありがたや、ありがたや」と、おがんだという。 

 

 放置されたことを怒るのでなく、流行り病に苦しむ 村の人を 助けようとする こころやさしいだるまでした。

 大きな川は最上川。つまり山形の話がもとになっています。

 作者の鳥兎沼さんは、小学校教諭とありました。


回れ右してかえる「カエル」

2022年02月25日 | 昔話(日本)

・大和のカエルと河内のカエル(奈良のむかし話/奈良のむかし話研究会/日本標準/1977年)

 大和のカエルは、いっぺん河内の国を、河内のカエルは大和の国を見たいと二上山でであう。

 おもいっきり背伸びをして、大和のカエルは河内の国を、河内のカエルは大和の国を見るが、同じ景色が見え、わざわざでかけることもないと、ひっかえしてもどる。

 かえるの目玉が、うしろについているので、まわれみぎしてみなけりゃならんのに、そのままたってみたので、もとの風景が見えたという。

 「大阪のカエルと京都のカエル」と同じですが、地名だけが違う話。地名を変えるとどこにでもありそう。もしかすると、「大阪のカエルと京都のカエル」がもとになって、それでは面白くないので、伝承の過程で地名をかえたのかも。

 

・江戸のびっきと大阪のびっき(福島のむかし話/福島県国語教育研究会/日本標準/1977年)

 大阪見物にでかけた江戸のびっきと、江戸見物にでかけた大阪のびっきが、箱根八里の峠でであい、自分のところと同じ風景をみて、ベッタァーリ ベッタァーリと、ひきかえすという話。

 ここから、びっきのことを「カエル」となったというオチが楽しい。

 

・カエルの見物(佐賀のむかし話/佐賀県小学校教育研究会国語部会/日本標準/1977年)

 肥前と筑前のビッキー(カエル)が三瀬峠で、出会う。

 おしまいが、「そいばぁっきゃ」は、「そればっかり」か?

 

・山形のビッキと置賜のビッキ(山形のむかし話/山形とんと昔の会・山形県国語教育研究会共編/日本標準/1978年)

 山形のビッキと、置賜のビッキが、虚空蔵山で、であいます。

 おしまいは、「どんびん」


殺し屋ですのよ

2022年02月24日 | 星 新一

      星新一YAセレクション/和田誠・絵/理論社/2008年

 

 別荘地の朝、林の小道を散歩していたエヌ氏のまえにあらわれた若い女。「こんにちわ」と声をかけられても見覚えはない。

 「どなた?」というと、「殺し屋ですのよ」と、簡潔な答え。見たところ虫も殺せそうにない。エヌ氏は笑いながら「まさか・・」といいますが、女はまじめな口調と表情。おもいあたることがあり、「殺さないでくれ」と哀願を繰り返すと、女は「誤解なさらないで、いただきたいわ。殺しにきたのでは ございませんのよ」という。さらに「注文をいただきにあがってきたので ご用命いただけないかしら」

 女は、最大の商売敵G産業の社長が死んでくれたらと思わないでもなかったエヌ氏に、決して不審をいだかれない死、病死させるという。さらに成功報酬は後払いでいいといい、ただ期間は余裕をもって六か月ほしいと条件をだしました。

 「成功すればお礼は払う。やりそこなって発覚しても、わたしが巻き添えになるような証拠も 残らないようだ。」と、エヌ氏はついにうなずいた。

 手付金なしで、べつに損することもないからと、忘れたころ、問題のG産業の社長が、病院での手当てのかいもなく、心臓疾患で死んだというニュースに接します。警察が不審をもって調べはじめたという動きもなく、無事に葬儀もおわった。

 報酬を断ったら、こっちが対象にされるかもしれないと、エヌ氏は、女に金をわたしました。

 

 完全犯罪はありうるでしょうか。この若い女は一切手を下すことなく情報だけで報酬を得ていました。看護師で、余命まじかな患者の情報を知りうる立場を利用したのでした。


スーツケース

2022年02月23日 | 絵本(外国)

     スーツケース/クリス・ネイラー・パルステロス・作/化学同人/2022年

 

 ある日、緑の見なれない動物が大きなスーツケースだけを持って、どろどろで、よろよろと。おどおど、とぼとぼ あるいていました。

 「ちょと、そこのあんた。このスーツケースのなかにさ、いったいなにが はいっているのさ?」と、これも 赤い鳥のようなみなれない生き物。

 黄色いキツネもどきも カップひとつと聞いて やけに大きいときくと、「この中には、テーブルとイスもあるから」と、見なれない動物。

 「そんなわけないじゃん。」と、茶色のキツネもどき。それでも、見なれない動物は、木の家もあるという。

 みんなは、スーツケースの中身が気になって、見なれない動物が、やすませてと ねむっているあいだにスーツケース あけますが パッカーンと、カップがわれてしまいました。

 夢からさめた動物が目を覚ましてみると そこには 補修したカップが。それだけではありません、家もテーブルもイスもありました。

 見なれない動物はそれをみて、友だちの分の カップも ほしいと 思うのですが・・。

 

 どんな事情かしれませんが、見なれない動物は いろんなおもいを スーツケースに詰めて長-い長-い旅をしてきたのでした。みんなは 思い出を 呼びさましてくれたようです。

 動物の色と 動物のセリフの色が 同じで だれが話しているのかが一目瞭然です。


つぼが トコトコ

2022年02月22日 | 紙芝居(昔話)

     つぼが トコトコ/文・東川洋子 絵・小林ゆき子/教育画劇/2009年(16場面)

 

 デンマークの昔話からとありますが、ほかの昔話にみられる導入部で、最後の方も 子ども向けに、ウンコでおわります。

 「銅のなべ」(子どもに語る北欧の昔話/福井信子・湯沢朱美・編訳/こぐま社/2001年)が高学年むきなのに、この紙芝居は、絵もふくめ低学年むけでしょうか。

 

 むかし、まずしいけれど きの よいお百姓が、市場に牛を売りに行きました。
とちゅう、ヒツジを連れた男にあい、とりかえっこしようと持ち掛けられ、牛とヒツジを とりかえっこ。

 しばらくいくと ガチョウをつれた おばさんから ヒツジと ガチョウの とりかえっこを もちかけられ ガチョウを連れて 市場へ。市場で たいそうなおとしよりから つぼと ガチョウを とりかえてもらえんかなぁ といわれ つぼをもって家に帰ると、おかみさんは ビックリガックリ。

 おかみさんは 牛が こんなつぼひとつじゃ まるっきりの まるぞんと、怒りますが、お百姓は、とりかえちまったものは しかたないさ と動じません。

 ところがそのとき、つぼが「そろそろ でかけるかな」と、コトコト家から出ていこうとします。おかみさんが「どこへ いくんだえっ」?と聞くと「地主さまの、トコロ!」と、つぼはきっぱり。

 つぼは、地主のお屋敷を目指して 広い田んぼ、畑をつっきって 屋敷の中へ。つぼが 台所にすわっていると、女中さんが「まあ おかゆをいれるのに ちょうどいい」と、おいしそうなおかゆを ザンブリ なかにいれると、つぼは そのまま家にかえります。

 お百姓とおかみさんは、おいしいおかゆを おなかいっぱい たべると、つぼをきれいに洗っておきました。すると「そろそろ でかけるかな」と、つぼは トコトコ また地主さまのお屋敷へ。「バターを入れるのにちょうどいい」と、上等なバターが 中へ入れられると「じゃ、いくかな」と、家に帰ります。お百姓さんたちは、ゆでたジャガイモ、かたいパンにバターをつけて 豪華な食事をすると、つぼをきれいに あらっておきました。

 つぼは、地主に屋敷から、銀のお皿、カップ、スプーン、金貨までもちかえります。

 怒った怒った地主は、つぼがやってくると なんと つぼに ウ・ウ・ウンコ! ところがつぼがふくらみ、地主は ウンコの うえに 真っ逆さま。

 地主が「どこへ いくんだえーっ」ときくと、つぼは「じごく、へさ!?」


小さな小さなウイルスの大きなはなし

2022年02月21日 | 絵本(日本)

     小さな小さなウイルスの大きなはなし/伊沢尚子・文 坂井治・絵 中屋敷均・監修/くもん出版/2021年

 

 新型コロナが変異をかさねながら三年目。まだまだ先が見えません。昨年のタイムリーな出版です。

 こわい存在のウイルスですが、元気な赤ちゃんがうまれるのは、はるかむかしに感染したウイルスの遺伝子が、いまはヒトの遺伝子として、役に立っていること、海ではウイルスに感染することでプランクトンが増えないよう保っているというのは意外でした。まだよくはわからないことも多いが、環境をちょうどよい状態に保つ役割もあるという。

 ウイルスの大きさ、細胞とウイルスの違い、ウイルスの増殖、ウイルスの種類から感染のしかたまで。

 ウイルスは、4のあとにゼロが30個つく数もいて 重さもシロナガスクジラ7500万頭分にもなるとあって驚き。 

 ヒトを病気にする新しいウイルスは、森の奥にすむ野生動物からやってくることが多く、ヒトが自然にはいりこみすぎたため、それにふれる機会がふえ、さらに世界のグローバル化が進んで、ウイルスが広がるには、好都合になった というのには考えさせられるところ。

 パンデミックは、自然を破壊する人間への警鐘です。


ぼくはおこった

2022年02月20日 | 絵本(外国)

     ぼくはおこった/ハーウィン・オラム・文 きたむら さとし 絵・訳/評論社/1996年

 

アーサーは おこった。

アーサーがおこると 雷が鳴って 稲妻がはしり ヒョウがふった。

アーサーは おこった。

アーサーがおこると あたしが吹き荒れ 屋根と煙突と 教会の塔を 吹き飛ばした。

アーサーは おこった。

アーサーがおこると 台風がやってきて 町を全部 海の中へ ひっくりかえした。

アーサーは おこった。

アーサーがおこると 地球に バリバリ ひびがはいって たまごみたいに こわれてしまった。

・・・

・・・

まだまだ アーサーの いかりは とまりません。

アーサーが 火星の かけらにすわって、「ぼく どうして おこったんだろう」と考えましたが さっぱり 思い出せませんでした。

 

(テレビに夢中になっていたら お母さんから もう遅いから 寝なさい といわれたのでした)

あなどるなかれ こどもの 怒り。

思わず環境破壊や戦争しようとする大人への痛烈な諷刺かなと思いました。


パナンペ・ペナンペ話・・北海道

2022年02月19日 | 昔話(北海道・東北)

        北海道のむかし話/北海道むかし話研究会編/日本標準/1978年

 

 アイヌの昔話です。”パナンペがいた。ペナンペがいた”と はじまります。

 ペナンペ(川上の者)はまじめな働き者で、やさしい心の持ち主。一方、パナンペ(川下の者)はなまけ者、ひがみやで意地のわるい男。

 

<海の水を飲むほす>

 パナンペが、ペナンペをやりこめようと、魚をすっかりとるため海の水を飲みほしようにもちかけます。

 「それは勘弁してくれ」とあやまるだろうと思っていると、ペナンペは「海の水だけならすぐにも飲みほしてやろう。けれど、あそこの川からも向こうの川からも、川の水が流れてくるので困る。お前がまえもって、川の水を全部せきとめて、一滴も海に流れ込まないようにしておくれ。」と、切り返しました。

 

<キツネがり>

 ペナンペが河原の石の上に死んだマネをして、ねころびました。そこへキツネがやってきてパナンペのからだをゆすりますが、ペナンペはじっとがまんします。しばらくして、からだの下にかくしておいたこん棒で、キツネどもを打って打ちまくり、たおれたキツネの肉を毎日食べ続けます。

 話を聞いたパナンペもおなじようにします。キツネが、わきの下やら首のまわりをかぎまわったので、がまんしきれず目をあけてしまいます。ペナンペが、こん棒でキツネを打とうとすると、キツネはいっせいにとびかかったり、ひっかいたり、かみつきます。

 

<金の犬と銀の犬>

 ペナンペが川で釣りをしていると、カラスがやってきて「魚を一匹くださいな。」というので、ペナンペは、魚の中でいちばん大きなやつをつかんで、川の水できれいに砂をあらってカラスにあげます。

 魚をとりながら川を上っていくと一軒の草ぶきの家がありました。ひと休みさせてもらおうとすると、金と銀の子犬がじゃれついてきました。そして、家から黒い着物を着た若い女がでてきて「おや、先ほどはありがとうございました。おかげでうちの年よりが、よろこんでいただきました。」といって、ていねいにもてなしました。

 帰り際、黒い着物の女が金の犬と銀の犬のどちらかをつれていくかたずねます。ペナンペは銀の犬とウバユリだんご二つをもらい帰り道につきました。しばらくして子犬がなくのでウバユリだんごを一つやり、二つやりしながら歩くうちに、ペナンペの食べるウバユリだんごはなくなってしまいます。その夜、音がするのでペナンペがおきてみると、金のおかね、銀のおかね、美しい玉が部屋いっぱいにあり、銀の子犬のすがたはありませんでした。

 パナンペも宝物を手に入れようと川へ出かけると、そこへカラスがやってきて魚をいっぴきくれるようといいます。パナンペは、いちばん小さな魚を、泥だらけのまま、投げてあげます。ここから先は同じような展開ですが、パナンペがもらったのは金の子犬。そしてはらをすかした子犬に、だんごをあげることもしません。

 夜中になって音がするので、よろこんだパナンペがよくみると、ごつごつした砂と岩だらけ。さらっては捨て、とっては投げたが、きりがありませんでした。


からいもとどろぼう

2022年02月18日 | 紙芝居(昔話)

     からいもとどろぼう/脚本・さえぐさひろこ 絵・高部晴一/童心社/2018年(12場面)

 

 むかし、肥後の国のたすけが、薩摩の国へ荷物をはこび、その家の夕飯をごちそうになったときのこと。

 はじめて味わう食べ物はじつにおいしく、おじいさんに聞くと、それは「からいも」で、ひでりでも畑いっぱいに育つという。

 たすけのところは、ひでりで 米も麦も不作で こどもたちも はらぺこ。苗をもらって 育てたら助かると思い、苗をゆずってもらおうと思いましたが、持ち出し禁止で、見つかったらころされてしまうという。

 つぎの日、船で帰ろうとするとき、おじいさんは、娘さんのために買った手毬を たすけに 持っていくよう 話します。役人の目を あざむいて おじいさんがくれた手毬には、よくみると葉のようなものが。

 苗を植えると、雨も降らず 暑い日が続いても からいもは 元気にそだっていきました。やがてツルがぐんぐん大きくなり ちいさな花も つきました。ところが 実はひとつもなりません。

 たすけがあきらめかけたころ 野菜を狙った泥棒が やってきました。泥棒は 葉っぱの下やあいだをひっしに 探しましたが なにひとつ なっていません。

 みんなが、泥棒にきがつき、追いかけると みごとに たおれました。追いついたたすけがよくみると、泥棒の足に からいもの ツルがからみつき、その先には たくさんの「からいも」が ついていました。

 「からいも」は、土のなかになるものと知った たすけは、泥棒のおかげで 「からいも」が 見つかったと、泥棒を許し、からいもをふかし みんなで 食べます。それからどこの畑でも 「からいも」が つくれるようになり こどもらも おなかを すかせることが なくなりました。

 

 「からいも」は、サツマイモのことですが、事前に話した方がいいのか オチとして最後まで取っておくほうがいいのか悩むところ。


ハタハタ

2022年02月17日 | 絵本(日本)

     ハタハタ ー荒海にかがやく命ー /高久至/あかね書房/2021年

 

 寒い時期ハタハタは定番で食べていました。というのは育ちが秋田で、おなじみの食材。最近はまったく食べることがなくなりましたが、頭に比べ身の部分は食べるところが少ない魚。

 ところがしらないことばかりでした。

 写真集ですが、海藻につく卵は、ゴルフボールぐらいのおおきさで、赤、紫、白、緑、青などじつにカラフル。母親が食べるエサによって色が異なるという。

 ふだんは水深200~300メートルにすんでいるハタハタが、水深2~5mの荒れ狂う海までやってきて産卵。

 しんだハタハタは、イソギンチャク、イトマキヒトデ、マダコ、巻貝などに食べられて数日もすると、ほとんどなくなってしまうという。

 ハタハタの群れが、先が見えないほど集まる様子、卵からのふ化、稚魚の泳ぐさまなども興味深い。

 

 ハタハタは、一度は資源回復したが、今では禁漁が必要なほど減っていること、魚の歴史、料理まで幅広くふれられています。

 小学生のころ秋田の海からほとんどいなくなったハタハタ料理や、昔のことを聞かせてくれたという作者のおばあちゃん。出版の半年前になくなった祖母への感謝をこめた作者の思いがつまっていました。


粋な応援メッセージ

2022年02月16日 | 日記

受験の時期。

「受験生がんばれ」の粋なメッセージが駅の構内に。コロナ禍で頑張る受験生に駅のスタッフが考えたものでしょうか。

ぱっと目に入るところに貼ってありました。


繁次郎のとんち・・北海道

2022年02月16日 | 昔話(北海道・東北)

      北海道のむかし話/北海道むかし話研究会編/日本標準/1978年

 

 江差の町に住んでいた繁次郎のとんち話。背が低く頭と目玉が大きく、甘いもの、お酒、なんでもござれの大食漢でした。

<頭も名人>

 ニシンつぶし(とれたニシンの腹をさいて、なかのものを取り出し、カズノコヤシラコをえり分け、魚体は身欠きにまわす作業)の名人というふれこみで、やとわれた繁次郎。

 ところがさっぱり働かない繁次郎をぎゅうととっちめてやろうと、大だるにいっぱいニシンをいれて、腕前を見せたら全部くれてやろうと親方がいいます。

 すると、繁次郎は人を呼び集め、「これからニシンつぶしの競争だ。つぶしただけは、みんな自分のものだ。さあ、かかれ、かかれ」と、たるのニシンをつかんではなげ、つかんではなげしたので、あっというまにニシンつぶしが終わってしまいます。

 くやしがる親方に、繁次郎はいいました。

 「親方、おれはニシンつぶしも名人だけど、頭の方もめいじんだね。」

<家宝のハラワン>

 おれの家には家宝があるから、いつでも借金をかえせると、けむにまいていた繁次郎。

 暮れもおしせまって、借金とりが繁次郎のところにいくと、繁次郎は、頭にはちまき、着物の前を広げて腹をだし、へその上におわんをひとつ のっけていました。

 「借金はどうしてくれる。家宝はどこだ」

 「これだよ、これだよ」

 「これとはなんだ」

 「これ。腹の上のわん。ハラワンハラワン。借金はハラワンという家宝だ」

<火がもえている>

 夕暮れの町にクリをにるうまいにおい。腹ペコの繁次郎が、いきなり大声で、「そのへん火がもえている」とさけんだので、「火事はどこだ。火事はどこだ。」と、みんな大騒ぎ。

 火元がわからないので、繁次郎を問い詰めると「おれは、そこらだ火がもえている、といっただけだ」

 「そこらだとは、どこだ。」

 繁次郎「その鍋の、クリの下だ。」といって、うまくクリにありついた。

<大飯ぐらいは身の毒>

 なまけるわりに、たくさんの飯を食う繁次郎に困った親方が「大飯は身の毒だぞ」と文句をいいます。

 次の日から、繁次郎、山から運ぶ薪が半分になってしまった。「どうしてそんなに少なく背負ってきた?」という親方に、繁次郎はいいます。

 「親方、大飯ぐらいは身も毒といったべさ。重荷は背中の毒だってばせ。」

<とうふとセンベイ>

 繁次郎酒一升のかけを若者にもちかけます。

 「とうふ一丁を四十八に切って、ひとつづつ全部食べられたら一升ふるまう。もしくいきれなかったら、そいつは おれに一升出せ。」

 繁次郎は、とうふのいっぽうを薄く切り、その一枚を四十七に細かくきざみます。そして残った大きなとうふとともに若者にさしだします。若者は細かいほうは、あっというまに食べますが、大きい方は一口ではたべきれず、賭けは繁次郎の勝ち。

 この若者が、繁次郎をやりこめようと、センベイ五十枚を三百までかんじょうする間に食えたら、お前の好きなもの腹一杯ごちそうしてやると、山もりのセンベイを繁次郎の前につきだします。

 繁次郎は、台所から、スリばちとスリこぎをもってきて、若者が持ってきたセンベイを粉々にして、水でこね、団子を作って、あっという間にたいらげてしまいます。

 

 この他にもたくさんあります。


いろいろ かえる

2022年02月15日 | 絵本(日本)

     いろいろ かえる/きくち ちき/偕成社/2021年

 

緑、黄色、桃色、青色、橙色のかえる、そしてシルバーと黒い とうさんかえると かあさんかえる。

虫を捕まえる、はねる、おどる、およぐ、うたう。

全ページ かえるが 躍動しています。

そして さいごの可愛らしさ。やられました!

かえるの 塗り残しが 効果的。