岡山の昔話がもとになっています。
「幸せに暮らしました」と終わることが多い昔話ですが、ちょっとちがったオチが楽しめます。
一人暮らしのおばあさんが、お彼岸のだんごをつくっていると、だんごがひとつころがって、土間の穴におちてしまいます。
おばあさんが穴をのぞきこむと、からだ全体がちぢまって穴にひきこまれてしまいます。
穴の道を歩いていくと石の地蔵さんが立っていました。だんごはお地蔵さんが食べてしまったのですが、そのときやってきたのは鬼でした。
鬼に見つかったおばあさんは、食べられてしまうのではと思いましたが、ご飯炊きとして手伝うことになります。
大きな釜にたっぷり水を入れますが、米粒はたった一つ。何という無茶なことだというと、鬼はヘラを取り出し、このヘラでかきまわすと一粒の米が釜いっぱいにふくれるという。たしかにそのとおりでした。
当初、臨時の手伝いだったはずのおばあさんは、何日かご飯炊きをしますが、代わりの人はやってきません。そこで逃げ出します。
三途の川を船で渡ろうとすると十匹の鬼が追いかけてきて、川の水を飲み込みはじめます。
おばあさんが、ヘラを手に持ち、おかしな身振り、変な顔つき、おしりをぬっとつきだしたりすると、見ないふりをしていた鬼が笑い出し、飲み込んだ水を吐き出してしまいます。
助かったおばあさんが、このヘラをどうしようとお地蔵さんに相談すると
「ヘラは米粒一つが万倍にもなる鬼のヘラ、たからものだよ。わしがよごれただんごをそっくりたべてしまったなんて人にやたらというんじゃないぞ。だんごやヘラのことを、だれにかもヘラヘラいうなということじゃ」。
ころがってきただんごを食べてしまったお地蔵さん、あまり人に知られたくないと思うあたりがほほえましいところです。
このヘラ、ほかのものも増やしてくれたのでしょうか。
まあ、米を増やしてくれればあとはどうでもなりそうです。