子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎編/実業之日本社/1964年
ネズミなのに「ネズミトリ」とは?
ネズミトリというネズミが、銅貨を拾い、ネズミを見つけて結婚しました。あるとき、ネズミとネズミトリは友だちにまねかれて、でかけました。
とちゅうまでくると、ネズミは、おかみさんのネズミトリが大事にしまっておいたチーズのことを思い出しました。食べたくて食べたくてたまらないネズミは、ハンカチをわすれたという口実で、ひとりでうちへもどると、台所の天井にぶらさがっているチーズめがけて、エイッととびつきました。ところが、チーズの下には大きなお鍋がかかっていて、そのお鍋のの中に落っこちて、あっというまに死んでしまいました。
ネズミトリは、友だちの家で、だんなさんのネズミがくるのをまっていました。けれども、いつまでたっても、こないので家にかえりました。さんざんさがしまわって、お鍋の中で死んでいるのを見つけました。
そのとき、戸口の「とびら」が、だんなさんのネズミが死んだことを知ると、とびらは、かわいそうにおもって、ギーギーなきました。「とびら」が落ち着かないので、庭に立っていたダイダイの木が、不思議に思ってたずね、ネズミの話を聞くと、ダイダイの木は、葉っぱを一枚残らず、落としてしまいました。
雌牛がダイダイの木の話をきくと、おちちをだすことをやめ、いずみは水をからしてしまいました。
そこへ、ひとりの男の子が、手おけをもって、水をくみにきました。男の子は いずみが悲しんでいる話をきいて、手おけをこわしてしまいました。男の子が、水をくまずに家にかえり、わけをはなすと父親はちっとも悲しまず、ありったけの力を出して、ピシャンピシャンとおしりをたたきました。すると、とびらやダイダイ、雌牛、いずみ、子どもにかけられていた魔法の力が、あっというまにとけてしまいました。
いつまで繰り返すと思って聞いていると、ちゃんとオチがまっています。