どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

塩とパン・・スエーデン

2015年01月30日 | 昔話(北欧)

     塩とパン/お日さまと世界をまわろう/多賀谷千恵子・訳/ぬぷん児童図書出版/1992年初版


 王さまと三人の娘。

 王さまが三人の娘に、どのくらい自分を愛しているかたずねると、上の二人は「神さまのように敬っております」「自分の命のように大切に思っております」と答えるが、末娘は「塩とパンのように思っています」との答え。 
 王さまは、可愛がっていた末娘が自分のことをそのくらいしか思ってくれていなかったのかと、烈火のように怒り、娘を森におきざりにする。

 ところが、別の国の王子が森の中で娘をみそめ、結婚することに。

 結婚式に招待されたお客のなかに、末娘の父と二人の姉も同席する。
 宴の席には、あらゆる種類の料理が並べられるが、そのどれにも塩気がなくパンもありません。
 なにか足りないと問う父親に、末娘は、塩とパンの二つこそが何より貴重なものとこたえ、これを聞いた父親が、末娘の誠意を知ることに。

 他の国にもこの話型があり、シェークスピアの「リア王」の出だしにもなっているプロット。

 シェークスピア劇にでてくる多彩な人物やセリフの面白さはいうまでもありませんが、筋立てという点では、昔話によくあるものも多いようです。


きょうはなんのひ?

2015年01月27日 | 絵本(日本)
きょうはなんのひ?  

    きょうはなんのひ?/瀬田貞二・作 林明子・絵/福音館書店/1979年初版 

 

 絵本もさまざまで、毎回ちがう発見がある。

 朝、小学生のまみこは、「おかあさん、きょうはなんのひだか、しっている? しらなきゃ かいだん 三だんめ」といいのこして、学校へいってしまいます。
 おかあさんが、階段の三だんめから、手紙をみつけます。
 そこには、「ケーキのはこをごらんなさい」とかいてありました。ケーキの箱をあけると、また手紙が入っています。

 おかあさんがつぎつぎに手紙をさがしていくと・・・・。

 結果がわかっていても、次々にでてくる手紙にひきつけられます。
 ワクワク感があり、繰り返し読んであげても喜ばれそうです。
 
 この絵本を読んだ子どもから、手紙をもらったことがいくつか紹介されていましたが、これが絵本の力なんでしょうか。

 子どもから手紙をもらえるなんて幸せですね。              


これもむしぜんぶむし

2015年01月26日 | 絵本(日本)
これもむしぜんぶむし  

    これもむしぜんぶむし/作:内田 麟太郎 絵:斎藤 隆夫/鈴木出版/2011年初版

 

 虫の絵本かと思ったら、でてくるのは”はらのむし””むしめがね””にがむし””ちゃわんむし””なきむし””ふとんむし””よわむし”。

 おまけに見返しには”てんとりむし”まで。

ここにでてくる”むし”。よくもこんなむしを、イメージしたものと感心させられるものばかり。齋藤さんも楽しみながら絵をかいたようです。

 言葉のリズムと奇想天外な”むし”を楽しめます。


シバ犬のチャイ

2015年01月24日 | 長谷川善史
シバ犬のチャイ  

       シバ犬のチャイ/文:あおき ひろえ 絵:長谷川 義史/BL出版/2013年初版

 

 シバ犬のチャイはキリリと男前。

 「おいら、豆シバのチャイってんだ」の決め台詞がタイミングよくでてきますが、誰も、キミのこと忘れてないよと答えたくなります。

 シバ犬のチャイが犬語でつぶやいています。
  わるガキ兄弟がうるさくて、昼寝もできやしないよ
  近所の人がよしよしするんだけど、相手をするのも楽じゃないよ

 チャイが犬語でつぶやいているとは別に、絵の方ではパパが一生懸命料理をつくっています。

 チャイがおとなりのマルチーズに恋をしますが・・・・

 最後の一枚の絵に余韻があります。

 ご夫婦で絵本をつくれるというのはいいですね。

 長谷川家を舞台にしているようですが、ストーブがあり、無垢木材の床、広いリビングに耐震構造の柱がどーんと鎮座しているのが目につきました。

 それにしても、長谷川さん、犬語がわかっているんですね。            


だれのあしあと

2015年01月22日 | 絵本(日本)
だれのあしあと  

   だれのあしあと/作・絵:accototo ふくだとしお+あきこ/大日本図書/2008年初版

 

 雪がやんで晴れた日、当たり一面は銀世界。
 ねずみくんが外にでてみるとだれかのあしあと。
 きつねくんとだれかの足あとにきがつきます。
 きつねくんとにわとりくんとだれかの足あとにきがつきます。
 ・・・・
 ・・・・

 ねずみくんのお母さんがあたたかいスープを用意してくれていました。

 寒い冬の日にいただくスープがおいしそうです。

 まっさらのキャンバスに点々と続く足あとをみながら、次にでてくる動物をあてる楽しみがあります。

 繰り返し読むのによさそうです。          


きみの家にも牛がいる

2015年01月20日 | 絵本(日本)
きみの家にも牛がいる  

    きみの家にも牛がいる/作:小森 香折  絵:中川洋典/解放出版社/2005年初版

 

 タイトルをみて、牛乳やチーズ、さらに、小さな畑に利用している牛ふんの堆肥をイメージしました。
 肉製品がお店の店頭に並んでいるのをみても、どういう経過で作られているのかは、わかにりくい。

 この絵本は、牛の解体に従事する人のおかげで、手に入る経過がよくつたわってきます。
 そして、毛も、脂肪も、角も、ひずめものこさずつかうことも。
 動物の命をいただいていることに、あらためて感謝です。

 のこさず使うというので、思ったことは、日本で捨てられる食材が多いということ。
 日本ほど大量に食糧を輸入しながら、廃棄を続けている国はないという。

 日本の食品の半分以上は、世界から輸入し、年間 5500万トンの食糧を輸入しながら、1800万トンも捨てているという。これは世界の食料援助総量470万トンをはるかに上回り、3000万人分(途上国の5000万人分)の年間食料に匹敵するという。
 日本全体で年間11兆円にものぼるという試算もあるようだ。

 日頃、口にしているものが、どのような過程で家庭に届いているか考えてみたら、食品廃棄も少なくなるのでは。      


ミルシーナ・・ギリシャ版白雪姫

2015年01月19日 | 昔話(外国)

     ミルシーナ/世界むかし話3 南欧 ネコのしっぽ/木村 則子・訳/ほるぷ出版/1979年初版


 おもったより、白雪姫と同じ話型の昔話が少ないようです。 
 タイトルが人名になっているので、内容が分かりにくいこともありそうですが、大筋では白雪姫と同じで、出てくるのは両親のいない3人姉妹。

 白雪姫ではこびとですが、「ミルシーナ」は、12の月の兄弟。

 姉二人がミルシーナの美しさをねたみ、森に追いやるが、12の月の兄弟のところで無事だったことを知ると、毒入りのパイをもってミルシーナのもとに。
 しかし、そのパイを犬にわけてやると、その場で死んでしまうので、毒入りと気がつきます。

 次に姉二人が毒が塗られた指輪を、おっかさんの形見だと渡し、ミルシーナが指輪をはめると、死んだように床にたおれてしまいます。

 12の月がミルシーナを金のひつぎにおさめて、家のなかにおいておくと、やがて、若い王さまがあらわれ、どうしてもゆずってほしいと柩を城に運び込みます。

 白雪姫は、ガラスの棺におさめらますが、この話では、王さまが柩の中身をみることなく城に運び込んでいます。

 白雪姫は、胸紐、櫛で倒れ、こびとの機転で助かりますが、「ミルシーナ」では、12の月に助けられるということではありません。

 白雪姫は、こびとに注意されていたのもかかわらず、珍しいものにすぐ目がいってしまい、手に入れたいという欲望?をおさえきれずにいますが、「ミルシーナ」では、おっかさんの形見といわれて指輪をはめるのは自然な成り行きです。


どっちがうまいか・・井上ひさし

2015年01月18日 | いろいろ

      <イソップ株式会社/井上ひさし 絵・和田誠/中央公論社/2005年初版>


 妻をなくした男が、姉弟に毎日、お話を届ける形式のなかの一つ。

 平凡な時代の平凡な国に平凡な王さまがいたが、この王さまは、ときどき途方もない難題をだして、家来を困らせます。

 この王さまが、城壁の外に遊びにでかけたときに、畑で鍬をふるっている子どもをみつけ、「お前は朝から何回鍬をふったかこたえろ」と問いかけます。その子は「答える前に、王さまはここまで馬で何歩きたか」と逆に問います。

 王さまが、はるかかなたの山をここまで運んで来いというと、その子は、山を乗せる船を貸してくれるなら、山を運びますと切り返します。

 さらに、王さまは、おやつに持ってきたソーセージを二つに折って、どちらがうまいかと問いますが、その子はぽんと手を鳴らし、どちらの手が鳴ったかと問い返します。

 賢い子が、王さまの難題を見事に解くというのは、昔話の一つのパターンなので、これがもとになっているのはわかりますが、一味ちがう味付けがあります。
 それは難題を解けなかったら税金をいまの2倍にするぞと脅す場面。大人には妙に実感があるオチになっています。

 昔話にでてくる難題は、ときとして首をかしげるものが多く、回答をみてもピンとこないのが多く、話るうえでは、もっとわかりやすいものがいいと思うのですが。


魔法の大金

2015年01月17日 | 星 新一

 これまでは、個人的に楽しむだけだった小説。

 最近は語ってみたらと思うことも。
 とはいっても長いものは無理ですが、例えば星新一のショート。オチがあざやかで楽しめそうだが・・・?

 「魔法の大金」は、ぐうたらな男が魔法にたよろうと、悪魔をよびだし、紙幣をだしてくれるようにお願いするというもの。

 悪魔は一回だけとことわり、エヌ氏のもっていた幣を参考にして、たちまち紙幣の山をつくりだします。

 男は、用心のために大金を銀行に預けることにしますが、銀行員に指摘されたのは・・・?

 ”紙幣の番号がどれもこれも同じ番号” 

 紙幣は信用がなければだだの紙切れ。紙幣に右往左往する人間を風刺しているようにも見えます。


 じつは、これを話してみました。オチがわかりにくかったようです。
 見本の紙幣と同じものをつくったので、番号が同じというのは当然ですが、ぐうたらなエヌ氏が、この紙幣を使ったかどうかは、さだかではありません。
 多分、捕まったでしょう。
 でも、もしかすると印刷局のきわめてまれなミスというので、プレミアムがついて超高額になったかも。


言葉はいろいろ

2015年01月16日 | いろいろ

       イソップ株式会社/井上ひさし・作・和田誠・絵/中央公論社/2005年初版

 

 普段なにげなく使っている言葉でも、井上さんからいわれるとなるほどと思うばかり。

 一つは、母音の長短で意味が対立するということ。
 
 オバサン  オバーサン
 オジサン  オジーサン
 ユキ    ユーキ      雪と勇気
 キテ    キーテ      来てと聞いて
 クツ    クーツ      靴と苦痛
 ビル    ビール
 カク    カーク      書くと架空
 ツチ    ツーチ      土と通知
 クロ    クーロ      黒と空路

 アクセントはよく注意されてはいますが・・・。

 二つ目は、擬音語の澄む濁るでは感じが対立すること。

 大きな太鼓がドンドンドンならいいが、トントントンなら小さな太鼓に

 笛がピーピーならいいが、ビービーなら下手くそ

 額から汗がポタポタなら、ご苦労さまっていうけど、ボタボタなら、きたない

 こそ泥ならコソコソ、強盗ならゴソゴソ

 なるほど、澄む濁るで、感じが大分異なりますね。
 ちょっとした違いが、聞き手のイメージのふくらみに影響しそうです。             


最初の質問

2015年01月14日 | 絵本(日本)
最初の質問  

    最初の質問/詩・長田弘 絵・いせひでこ/講談社/2013年初版

 

 文ではなく詩とありました。絵は視覚の詩といった人がいますが、この絵も詩です。

 いせひでこさんの「チェロの木」をみたとき、音と木の香りがする不思議な感覚におそわれましたが、この絵も語りかけてくるようなやさしさがあります。いわさきちひろ風のタッチがほんのりとあたたかさを伝えてくれます。

 どきりとする質問が続きますが、答えられない自分がいました。
   「今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか。」
             いつも遠いです。近くはありませんでした。
   「ありがとう」という言葉を、今日、あなたは口にしましたか。
             残念ながら、いえませんでした  
   「風はどんな匂いがしましたか」
             ・・・・・・・
   「「うつくしい」と、あなたがためらわず言えるものはなんですか。」
   「これだけはしないと、心にきめていることがありますか。」
             ・・・・・・・
             ・・・・・・・

 最後のページには
   「時代は言葉をないがしろにしている-あなたは言葉を信じていますか」
             信じられない言葉が多すぎます

 次からつぎへと続く質問に、即答でき、肯定的にこたえられたら、多分その人は幸せなのかも。

 ”最初”というのは、何に対する最初なのでしょうか。                 


クモをおよめさんにしたくつ屋・・ポルトガル

2015年01月13日 | 昔話(ヨーロッパ)

       クモをおよめさんにしたくつ屋/世界むかし話3 南欧 ネコのしっぽ/木村 規子・訳/ほるぷ出版/1979年初版


 昔話にでてくる昆虫。これまでのものはほんのわずか顔を出すだけでしたが、この話ではクモが重要な役割をもちます。

 くつ作りをしていた若者が、父親が亡くなったとたん仕事をたたんでしまったために、母親が息子を家から追い出してしまいます。いつか金持ちになって帰ってくると旅に出た若者は、最初にあった女の人をおよめさんにするときめていました。
 最初にあった大きなクモをおよめさんにします(どうしてメスとみわけたかわかりませんが)。
 それからはやることやることがうまくいって金持ちになります。
 このおよめさん、食べるもの、着るもの、暮らしにひつようなことをなんでもこなしてしまうクモ。
 
 最後には、このクモが美しいおひめさまになります。

 できすぎのストーリーですが、素直に楽しみたい。

 異類婚の中でも、クモというのはこれまでではじめてです。


お話の出前

2015年01月11日 | いろいろ
 テレビを見ていたら、特養などにはいれず、寝たきりのまま一人で暮らす高齢者が映し出されていました。東京では、待機高齢者が4万人とありました。

 印象に残るのは、取材チームが帰ろうとすると、なんでもいいから話してくれないかと引き止めたこと。

 たしかに、ヘルパーさんをのぞけば、ほとんど一人ぼっちで、話す相手もいないとなると、こうした気持ちは痛いほどわかるようなきがします。

 テレビをみながら、語る場所は、実はあちこちにあり、一人を対象にした出前も今後ありかなと感じました。

 ところで、新年早々聞いたいい話。

 離れている友人と京都旅行にいって、神社や鴨川べりで、即興のお話をしたそうです。

 ここいいわねといった感じで、次々にお話をはじめたそうですが、観光地ですから、友人だけではなく、観光客の方も耳を傾けたようです。
 なんだかほほえましい光景が目に浮かぶようでした。

きょうというひ

2015年01月09日 | 絵本(日本)
きょうというひ  

    きょうというひ/荒井 良二/BL出版/2005年初版

 

3.11後、停電になる時期がありました。
このときごやっかいになったのはロウソクでした。
ロウソクのやさしい灯りがなんとも力づよいものでした。

深々と降る雪の日、夜があけると、朝日が雪を照らし、今日のはじまり。
今日という日に着るために、女の子は、セーター、帽子、マフラーを編みます。

そして、ロウソクがはいるくらいの、かまくらをいくつもいくつもつくり、ロウソクを灯していきます。
きえないように・・・きえないように。
そして無数のロウソクの灯りが、夜を照らします。

祈りのロウソク。
この祈りに込めるものは、人によってさまざまでしょうが・・・。
たしかに、今日という日は、人生に一度しかないんですよね。


よあけ

2015年01月08日 | 絵本(外国)
よあけ  

   よあけ/ユリ・シュルヴィッツ作・画 瀬田 貞二・訳/福音館書店/1977年初版

 

 まさによあけの光景です。

 闇の中に月がてり、湖が眠っています。

 湖面にはさざなみがたち、林の中からはこうもりがおともなくまいで、かえるの飛び込む音がします。

 よあけがあけるのをまつかのように、毛布でねていたおじいさんとまごが、湖にボートをこぎだします。
 その時、夜があけ、山と湖が一面のみどりでおおわれます。

 夜の風景は墨絵のようで、よあけの緑色があざやかです。光のコントラストに目を見張ります。

 落ち込んだ時に見たい絵本。絶望的ななかにも希望が。