みにくいアヒルの子/アンデルセン童話集1/大畑末吉・訳/岩波少年文庫/1986年初版
小さいときに誰かに読んでもらった記憶はないし、本も読んだ記憶もさだかでないが、何十年たってもこんな話の中身といえるのは「はだかのおうさま」と「みにくいアヒルの子」の二つでしょうか。多分どこかで何かの機会に紹介されたものを覚えているという程度のものでしかなかったかも。
しかし今回初めて読んでみて、絵本や子ども向けの簡略化されているものでは、アンデルセンの情景描写のたくみさが伝わってこないので、一度は全文を読みたいもの。
「みにくいアヒルの子」の生まれたところはどんなとこと聞かれても、うまく応えられるだろうか。
岩波版でいうと
そのいなかはとてもすばらしいところでした。小麦は黄色く、カラス麦はあおあおとそだち、向こうの牧草地では、干し草がうずたかくつみあげられていました
リンゴの木が花ざかりで、リラ(ライラック?)がいいにおいにかおっていました。
長いみどりの枝は、入り江になっている掘割の上にたれていました。ああ、なんて美しい、春らしいさわやかさでしょう。
秋になりました。森の木の葉は黄色く茶色になりました。そして風にふかれてくるくる舞いをさせられました。空はいかにもさむざむとして、あられと雪をふくんだ雲がどんよりとたれさがっていました。
リラは、水の上の白鳥のほうへ枝を低くくたらしました。太陽はあたたかに、そしてやさしく照っています。
お話の内容だけでなく、こうした情景描写についても、じっくりと子どもたちに読んであげたいもの。
ところで「お話し会」でアンデルセンの話を聞くことが少ないのは、長いというのが原因でしょうか。「エンドウ豆の上のお姫さま」のように短いお話を聞いたことはあるのですが・・・・。