どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

こんにちわ あかぎつね!

2023年07月31日 | 絵本(外国)

   こんにちわ あかぎつね!/エリック・カール・作 さのようこ・訳/偕成社/1999年

 

 見開きのページの左側に、動物やら鳥、魚など。右側に ポチンと黒点。

 左をみて、ゆっくり十かぞえ、それから 右の白いページにある黒点を見て 三つかぞえると、反対色や補色が見えるという仕組み。

 色の不思議さを教えてくれる絵本ですが、根気強さが不足でしょか。かすかに形は 垣間見えるのですが 色を見ることが できませんでした。

 ちょっとした コツが あるのでしょうか。

 オレンジ色の魚が 青の魚へ

 黄色い蝶が 紫色の蝶へ

 色の不思議さを体験できますが・・・。??


とっておきのはなし

2023年07月30日 | 絵本(日本)

   とっておきのはなし/月刊かがくのとも/こがしわかおり・作 まるもとただゆき・絵/福音館書店/2023年8月号

 

「とっておき」って、どんな話かと思うと・・・

今の時期にぴったりのトマトのはなし。

夏野菜の定番トマト。我が家でもミニトマトなどが、ちょっと前まで、毎日のように収穫できていました。冷やしたトマトを生で食べてもおいしいのですが、おおめに植えると食べきれないほど。

ただ、ひと手間かけると、「とっておき」で、長く楽しめるアイデアが、いっぱい。

今年は、ジャムにしましたが、そのほかに、ドライトマトや、ピクルス、ピューレなどが、レシピつきで紹介されています。

露地野菜は、特定に時期に収穫が集中するので、こうすればながく楽しめるという知恵。

保存食にして、食べ物がなくなった時期に備えるというのは、昔からちゃんと工夫されてきたことと、あらためて気づかされます。


猛暑日つづく

2023年07月29日 | 日記

猛暑日が続き、ぐったり。ちょっと散歩すると汗だらだら。

ハンカチではぬぐい切れない汗。一回使用すると、もうびしょびしょ。

こんな中でも、木陰に入ると 暑さが全然異なる。おもわず、緑の恩恵に感謝です。

繁華街とはことなり、緑が多いと思っても、暑さとは無縁でない。


がわっぱとお竹どん・・熊本

2023年07月28日 | 昔話(九州・沖縄)

       熊本のむかし話/熊本県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1973年

 

 熊本では、かっぱのことを がわっぱといった。 

 ある夏の日の昼下がり、川の中にある大石の上で、がわっぱが 五六匹並んで、甲をほしていた。

 かっぱは、魚を釣りにきた男に、魚のいる場所を教え、男が釣った魚を、全部横取りしてしまった。男は、つぎからつぎへとつれる魚にきをよくしていたが、びくをみて、一匹も入っていないのを見て、がわっぱに、思い知らせようと、横目で、びくをのほうを見ていた。そして、水の中からすうっと黒い手がのびてくると、その手をおさえ、がわっぱの頭をたたいて、さらの中の水を落としてしまった。

 男は、「もうけっして悪さはせんから許してはいよ。」という、かっぱを、馬小屋の柱にしばりつけ、自分は、フナの料理で一杯飲みながら、夕涼みをしていたが、いつのまにかねむってしまった。

 この家のお竹どんが、馬に水やりにいったら、がわっぱが泣いて仕方がない。「ああ、やかましか。」と、お竹どんが、馬の飲み水をがわっぱの頭にあびせた。すると、がわっぱは、泣くのをやめ、笑い出した。がわっぱは、さらに水がたまると、何十倍もの力が出て、縄を引きちぎって、お竹どんに、お辞儀をしながら逃げていってしまった。それからは、お竹どんがいるあいだは、がわっぱのいたずらがなかったそうな。

 

 「かっぱ」は、「かわ(川)」に「わらは(童)」の変化形「わっぱ」が複合した「かわわっぱ」が変化したもので、その呼び名や形状は各地方によって異なる存在といいます。


おおきなぼうし

2023年07月27日 | 紙芝居

    おおきなぼうし/作画・木曽秀夫/教育画劇/1998年(8画面)

 

 ぞうさんのぼうしは、それはそれは大きなぼうし。あまり大きいので、みんなが くす くす わらいました。

 ところが、大雨になって困っていた いぬとうさぎさんは ぼうしが 傘になってなって大助かり。

 大きなぼうしは、ぶたさんの たくさんの 荷物の かごがわり。

 なかなかねつかない ねこさんの あかちゃんには、ゆりかごがわり。

 川でおぼれていた ねずみさんの ボートがわり。

 

 ぞうさんの 大きなぼうし、あちこちで 大活躍です。ほかの 使い道も 話し合えるかな?。


つぶむこ

2023年07月26日 | 絵本(昔話・日本)

    つぶむこ/小林輝子・再話 飯野和好・絵/福音館書店/2006年

 

 田んぼの水漏れに難儀していた男が、「水が漏れないようにしてくれたら、つぶでも だれでも おれのむすめを よめにやってもよいがな」とつぶやいていたのを聞いたつぶは、その田んぼに はいって なんにちも なんにちも 泥を つめていた。

 ようすをみにきた一番上のむすめは、「のろまな つぶめ、いつまでも 田さ はいっていろ」と、大きな石を つぶめがけて べーんがりと 投げ込んで かえってしまいます。

 二番目のむすめは、小石を ぱーらぱら ぱーらぱらと、つぶを めがけて 田さ なげいれて、「だりゃあ、つぶの よめっこになんかに なるもんか」と、しりをたたいて かえってしまいます。

 すえのむすめは、ねばる 土を 田の すみっこさ そっとおいて、「つかれたら やすんでたもれ」と かえっていきます。

 約束をはたしたあと、すえのむすめが よめになることを 承知するのが、昔話のパターンですが、この再話では、事前に むすめたちに 話をしています。大きな石、小石、ねばる土で固めて 水の漏れない 田んぼが出来あがりますが、三人の むすめがいないと、水の漏れない田んぼは できあがらなかったかも。

 七日後、むすめをもらいに こいといわれ、つぶが 男の家に いきますが 家のまわりは 幅のひろい せきになっていて、みずがたまっていました。ただそこには、ほそい棒が 一本たててありました。すえむすめに助けられたつぶは、「おらの からだを おもいっきり ふんずけてけろ」といいます。すえむすめが おそるおそる つぶを ふんづけると、つぶは ぱかっと われて、目を見張るほど りりしい 若者に なり、すえむすめと じさまと ばさまのところへ かえっていきます。

 

 このつぶは、子どものいない夫婦が、さん、しち、にじゅういちにち、いちにちも かかさず 観音さまにおまいりして授かった小さな貝(つぶ)でした。このつぶが口をきくようになったのは、夫婦が、じさま、ばさまに なったころでした。

 

 人物の存在感が抜群ですが、好みがわかれるかもしれません。


ほうきぼしの まほう

2023年07月25日 | 絵本(外国)

   ほうきぼしの まほう/ジョー・トッド=スタントン・作 まつかわ まゆみ・訳/評論社/2023年

 

 パパの仕事のために田舎から引っ越こしてきたナイラ。見えるのは、灰色の建物と 星がたったの七つ。パパは家でも いつも仕事ばかり。通りは人ごみばかり、あたらしい学校は うるさいどうぶつでいっぱい。ねむるときに 波の音も きこえません。

 でも、あるばん ほうきぼしをみた。ほうきぼしは、光の樹になった。あとをおいかけて、空を渡り、ほうきぼしに おいつくと、そこは ひかりの 海。でも、それは・・・。

 前半は、豊かな自然のなかでのパパとナイラの二人暮らしのようす。パパは 毎日、学校に迎えにきてくれて、おいいしいごちそうをつくったり、すてきな おはなしをつくったり。朝は おうちから 日の出がみられ、昼は 楽しく 動物ごっこ。夜は、波の音を聞きながら ねむる。

 環境の激変にとまどうナイラ。わかってくれないと思っていたパパが、ナイラが、部屋の中に描いた光景に気がつき、パパも部屋の中に、ほうきぼしの世界を 表現していきます。ナイラとパパのともだちも くわわって協力していきます。

 

 ママが存在しないのは なぜ? どうして、「みんなで、ここを ほんとの おうちに すればいい!」と思ったのか わかりにくいのが 難点でしょうか。

 鮮やかな色をみるだけでも楽しい絵本です。


うさぎさん てつだって ほしいの

2023年07月24日 | 絵本(外国)

   うさぎさん てつだって ほしいの/シャーロット・ゾロトウ・文 モーリス・センダック・絵 こだま ともこ・訳/富山房/1974年

 

 女の子が、うさぎさんに手伝ってもらいながら、お母さんが好きな色から、赤いもの、黄色いもの、緑のもの、青いものと、お母さんにあげる誕生日プレゼントを次々に選んでゆきます。

 選ぶ途中の会話で、女の子とお母さんの性格が 浮かび上がってきます。

 べにすずめ、カナリア、オウム、青い鳥は、お母さんは鳥が、外の樹で、うれしそうに歌っているのが好きと、プレゼントの対象にはなりません。

 お母さんは、消防自動車やいもむしは 好きでありません。

 バターは、家にあります。

 エメラルド、サファイアは、高すぎて、女の子には 買えません。

 タクシーや湖もプレゼント候補にあがってきます。

 結局、おんなの子が かごにいれたのは、あかいリンゴ、きいろいバナナ、あおいブドウ、みどりいろのナシでした。

 

 女の子の左肩に、右手の肘をあてているうさぎは、耳が長く、おまけに二本足で、動き回って、これまでのうさぎとは、ややイメージがことなります。

 原著は1962年発刊です。センダックの絵は、いまとなっては、やや古風でしょうか。


3びきのくま・・イギリス、”3びきのくま”絵本版

2023年07月23日 | 昔話(ヨーロッパ)

 この話は、1834年から1837年にかけて書かれたロバート・サウジという詩人の創作で、昔話の条件にかなっているので、ほんものの昔話?として使われてきたといいます。(岩波書店の訳者のことばから)

 あるお話し会で、小さい子も熱心に聞いていたのが印象に残りました。絵本もたくさん出ています。

三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話/石井桃子 編・訳/福音館書店/1981年)

 この本は何回か読んでいたはずなのですが、語るのを聞いて、覚えてみたいとあらためて目をとおしてみました。
 例によって、一冊だけではなく、文元社からだされている山室静編著も参考にしてみました(新編世界むかし話集1 イギリス編/山室 静 編著/文元社/2004年)

 石井訳では
 ちいさいおばあさんがおかゆをたべてしまって、三匹のクマが叫ぶところ。
 おっきなクマは「だれかが、おれのおかゆをたべたな!」
 中くらいのクマは「だれかが、おれのおかゆをたべたな!」
 ちっぽけなクマは「だれかが、ぼくのおかゆをたべたな。そして、すっかりたいらげちゃった!」

 これが文元社では
 デカグマは「だれだ、おらのオートミールにさわったのは!」
 中グマは「だれかがわたしのオートミールにさわったのは!」
 チビグマは「だれかがあたいのオートミールを、みんなたべっちゃったわ!」

 三匹のクマの表現、おかゆとオートミールのちがい。クマの性別をうかがわせるセリフ。

 これ以外にも微妙な表現のちがいがあります。
 
 さらにほるぷ出版では麦がゆと訳されています。クマのところに入ってくるのはゴールデロックという女の子。
 石井訳では、ちいさなおばあさん、文元社版では小さな女の子。

岩波書店の木下順二訳(ジェイコブス・作/イギリス民話選/ジャックと豆のつる/木下順二・訳 絵・瀬川康男/岩波書店/1967年)では、小さなおばあさんとオートミールと訳されています。

・さらに篠崎書林版(ブリッグの世界名作童話集1/フローラ・アニー・スチール・再話 小林忠夫・訳/篠崎書林/1988年)では、おかゆ、かんしゃくもちのゴールデイロックス。


    3びきのくま/ポール・ガルドン ただ ひろみ・訳/ほるぷ出版/2020年新装版

 3びきのくまのところにやってくるのは、無邪気な感じのキャンディという女の子。前歯が欠けています。”おかゆ”は、キャンディの目の高さのやや高いところ。

 ちいさなこぐま、ちゅうぐらいのこぐま、でっかいおおぐまと、くまと、説明の文まで大きさがちがいます。

 3びきが椅子に座って本をよんでいますが、もっている本は、おおぐまの本がいちばん小さく描かれています。

 ベッドがどの階にあったのかは不明です。


    3びきのくま/スズキコージ文・絵/鈴木出版/2015年初版

 スズキコージさんのものは2015年と最近の出版。

 スズキさんのは、やや短くなっています。
 きんいろのかみのおんなのこがでてくるのは、ほかにもありますが、やんちゃなおんなのこが天衣無縫といった感じです。

 くまのいえにやってくるところ。
    あたい かえりみちが わかんなくなったちゃった。
    あれえ、あそこに ちっこい おうちがあるわ。
    それに ドアもあいているし。(手書き文字です)
 くまの朝食をたべるところ。
    でっかいまめのスープ      うわあ、アッチッチイ
    ちゅうくらいのさらのスープ   うーん まだまだ、アッチッチイ
    ちっこいおさらのスープ     うん、ちょうど いいわ。
 いすにすわるところ
    みあげるぐらいのいす      うわあ、この いす いわみたいに かたいわね
    つぎのいす           うわあ、わたみたいに フワフワだわ
    ちっこいいす          あっ、このいす あたいに ピッタリ

 このあとも擬音語がうまく生かされています。

 訳されているのは繰り返しが多すぎる感じもしますが、スズキさんのものは別のリズムのようです。

 くまの朝食を「おかゆ」「オートミール」と訳されているのが多いのですが、スズキさんは「豆のスープ」とされています。



    3びきのくま/バーナデッド・絵 ささきたづこ・訳/1987年初版

 バーナデッド版の最後。くまから追いかけられる場面ですが、窓から飛び出すというのが多いのですが、女の子は階段をかけおります。
 そして、くまが追いかけるというのはあまりありませんが、バーデッド版では、くまが女の子をおいかけ、髪が キラキラきんいろにひかるので、まぶしくてつかまえられませんでしたとあります。

 くまのベッドは、2階にあり、窓から飛び出すとたしかに足をくじたり、骨折したりしそうなので、バーデッド版は、そのあたりも配慮したのかもしれません。

    3びきのくま/L・N・トルストイ バスネッツオ・絵 小笠原豊樹・訳/福音館書店/1962年初版

  出版年からいうと、最初にふれるのはトルストイ版が多いでしょうか。女の子には名前がなく、クマのお父さんは、ミハイル・イワノビッチ、お母さんはナスターシャ・ペトローブナ、クマの子はミシュートカとロシア風。

 朝食はたんにスープとあります。そして椅子に座りながら女の子がスープをおわんで飲むというのが、ほかのものとの違い。

 絵も、お父さんクマが薪を背負い、お母さんクマが野イチゴ?、子クマがキノコをもっていますから、単に散歩しただけでなく、食材も調達してきたようです。


王さまABC

2023年07月23日 | 絵本(日本)

    王さまABC/原作・寺村輝夫 作絵・和歌山静子/理論社/2016年

 

 いばったり、食べたり、あいさつしたり、あそんだり、「えいごであそぶ」のは、王さま。

 短文で表現しているのは、ありそうであまりありませんでした。単語を置き換えるのも楽しそう。長く活用できそうですが、そのためには、手元においておく必要がありそうです。

 小学校の英語の授業が、どんな教材ですすめられているのかわかりませんが、文法などにとらわれず、役に立つフレーズがいっぱい。

 AからZまでにちなんだ文章が並んでいます。


ねこはすっぽり

2023年07月22日 | 絵本(日本)

    ねこはすっぽり/石津ちひろ・文 松田奈那子・絵/こぐま社/2020年

 

表紙は、ダンボールのなかに ねこが 顔を出し 「すっぽり」

床のマットで 「のびーん のびーん」

ソファーで、「がり がり」

しっぽを おいかけて 「くるくる くるくる」

いつまでも 「ぴた ぴた」「ぺちゃ ぺちゃ」「なめ なめ」

きもちよさそうに 「ごろ ごろ」

 

しろいねこの動きが シンプルな構図で 展開します。

がんばって 「ぴと-ん」は?

ねこずきのかたは こんな風景を いつも みているのでしょうか。


かんぺきなこども

2023年07月21日 | 絵本(外国)

   かんぺきなこども/ミカエル・エスコフィエ・作 マチュー・モデ・絵 石津ちひろ・訳/ポプラ社/2019年

 

 マカロン夫妻のピエールという子。

 かわいくて、かしこくて、れいぎただしい。

 あそんでも ちっとも ちらかさないし、よくねむり ぎょうぎもよくて 勉強もよくできて・・・。

 いうことなしのかんぺきなピエール。

 ところがある日、パパ、ママが朝おきるのが遅く、ピエールを仮装大会があるとミツバチの恰好をさせて、急いで学校に送り出すと、その日はクラスの写真を撮る日で、みんなから大笑いされてしまいます。

 「ぼく、いやだぁー!!」と 駄々をこねるピエールを パパ、ママがつれていったさきは?

 

 でだしにびっくりです。なにしろ「こどもストアー」があって、おんがくかタイプやすうがくしゃタイプなどの あらゆるタイプの こどもをかうことができるのです。

 ピエールは、マカロン夫妻が「かんぺきなこども」と注文したものでした。

 駄々をこねないように、こどもストアで 修理しようとすると、ピエールは「かんぺきな パパとママに、かえてほしい」といいだします。

 裏表紙で、親子があそんでいて、ピエールは普通の子に。ピエールには虫歯もあります。

 こどもを買うというのは、いただけませんが、完璧な子どもも 親もいないというのが結論でしょうか。裏表紙が本来の親子関係です。

 親は子どもを選べませんし、子どもも親を選べません。


まほうのひょうたんいけ

2023年07月20日 | 紙芝居(昔話)

   まほうのひょうたんいけ/文・柴野民三 画・小松 修/教育画劇/2000年

 地主の十べえさんの屋敷には、ひょうたんの形をした大きな池があり、くびれたあたりに橋が架かっていました。十べえさんは、いつも橋の上から、ぱらっこ ぱらっこと、えさをまいていました。

 ある日、いつものようにえさをやろうと、橋にやってくると、赤い色をした棒が 池に浮かんでいました。十べえさんが、棒をすくいあげてみると、それはうるしぬりの笛でした。口にあててふいてみると、池の中から女の人(おとひめさまでした)があらわれ、「いつも魚をかわいがってくださって ありがとう。なにか いりようの 道具があったら、その笛を吹いてください。すぐにとどけてあげましょう。けれど、使いおわったら すぐ かえしてください。」と、いいました。

 それからしばらくたった 夏のこと、都の偉い坊さまが、十べえさんの家で、おはなしをくださることになりました。あちこちの村から千人もの人が お話を聞くに来るというのですが、さすがの地主さんの十べえさんも千人のお膳やお椀がありません。そこで笛を吹き、あらわれた おとひめさまに 千人分のお膳とお椀を 貸してくださいと お願いしました。すると次の日の朝、千人分のお膳とお椀が おいてありました。

 さらに、みんなが休むための千人分の蚊帳が必要と、おとひめさまにお願いすると、すぐに、小さな包みが池に浮かびました。この小さな包みは、蚊帳を吊りだすと、ぐんぐん大きくなって千畳敷の大きな部屋に ぴったりの蚊帳になりました。そこで、みんなはゆっくりやすむことができ、つぎの朝、みんなは よろこんで かえっていきました。

 十べえさんは、千人分のお膳とお椀は、きれいにあらって 池のふちに かえしておきましたが、めずらしい蚊帳は ほしくなり、引きだしに しまってしまいました。

 冬になって、十べえさんの家に 村の人たちが 大勢集まることになって、十べえさんは、また お膳とお椀を 借りようと、笛を吹きますが、笛は ピーともブーとも なりませんでした。十べえさんは、はっと気がついて 蚊帳を池の中に 返しましたが、笛はどうしてもならず、おとひめさまも あらわれませんでした。


百合若大臣

2023年07月19日 | 絵本(日本)

   百合若大臣/たかしよいち・文 太田大八・絵/ポプラ社/2004年

 

 ”百合若大臣”は、幸若舞(鼓みににあわせた謡ったり舞ったりするもの)、説教節の一つとして語られていたが、その後歌舞伎や浄瑠璃にもうけつがれ広く親しまれるようになったといいます。

 十七歳ではやくも右大臣になり、大納言のあきよりの姫ぎみを北の方としてめとり、百合若大臣とよばれていた若者。

 蒙古襲来のとき、天照大神のお告げで、大将になった百合若大臣が、軍勢をひきいていくと、蒙古の軍勢は、さっさとひきあげていきます。

 国司に任命された百合若は、後顧の憂いをなくそうと、船をしたがえて攻めに出ます。霧の妖術をつかう蒙古軍を、神に祈り、打ち破った百合若でしたが、疲れをとるため玄海島でごろりと横になります。ところがこのとき、同行していた別府兄弟によって、島に取り残されてしまいます。

 勝ち戦でわきたった博多の屋敷にいた北の方に、別府兄弟は、百合若が死んだことを報告しますが、そのことばに北の方は、不審をいだきます。別府兄弟は、美人の誉れ高い、北の方に恋文をしたためます。この手紙を読んだ北の方は、自害を考えますが、乳母が千部のお経をかきうつすまでは、何も考えたくないと、北の方の名前で返事を書きます。

 北の方は、「とのがだいじにしていたものを、神社や寺に奉納して、とののごぶじをいのろう」と、楽器や馬にいたるまで、かっていた犬や鷹も、とも綱ををきってはなしてやります。

 十二羽いた鷹のなかいた緑丸という鷹は、おにぎりをくわえると、どこへともなく、姿を消します。それから四日後、緑丸は百合若のいり玄海島にたどりつきます。

 このあと、まだまだつづく波乱万丈の物語です。

 

 学んだ歴史には、百合若という名前は、でてきませんから、まったくの物語です。戦いがあり、仇討があったりと、まったくあきさせません。太田さんの絵巻物風の絵だけでも、見る価値があります。


おなかの皮が ぼろぼろにむけた牝ヤギのお話・・ロシア

2023年07月18日 | 昔話(ヨーロッパ)

  子どもに語るロシアの昔話/伊東一郎:訳・再話 茨木啓子・再話/こぐま社/2007年

 

 昔話を聞いている子どもは、お話しの世界をイメージしているといいますが、「おなかの皮が ぼろぼろにむけている」牝ヤギのイメージはどうでしょうか。

 あるお百姓が、おなかが半分なく、あとの半分も、皮がぼろぼろにむけている牝ヤギをみつけ、かわいそうにおもい、納屋にねかせてやりました。ところがこの牝ヤギ、お百姓とウサギがでかけると、家に入り込んで、中からカギをかけてしまいました。

 かえってきたウサギが、家に帰ってきて、入り口をあけようとしても、戸があきません。「中にいるのは、だれ?」と、ウサギが聞くと、「あたしさ、半分腹なし、半分皮むけの牝ヤギさ。すぐに出て行って、おまえをの腹をけとばしてやる!」と、大声で答えたので、ウサギはびっくりして逃げ出し、道ばたで泣いていました。そこへオオカミがやってきて、おいだしてやろうと、戸口でどなりますが、牝ヤギが「あたしさ、半分腹なし、半分皮むけの牝ヤギさ。すぐに出て行って、おまえをの腹をけとばしてやる!」と大声を出すと、オオカミがあわてて逃げ出してしまいます。

 ウサギの話を聞いたオンドリも、「オンドリがきたぞ! 肩にサーベルをかついで、牝ヤギの心臓をつきさし、頭を切り落とそうと、オンドリがきたぞ!」と、大声を出しますが、牝ヤギに、脅されて、逃げ出してしまいます。

 次はミツバチ。牝ヤギに脅かされると、ミツバチは怒って、家のまわりをブンブンとびはじめ、壁に小さな穴を見つけ、そこから中へ入り込むと、牝ヤギのおなかを、いきなりチクンと、さしました。牝ヤギは、びっくりぎょうてん。そのまま逃げて行ってしまいました。

 ウサギは、無事家に入って、思う存分食べたり飲んだり。そしておなかがいっぱいになると、ゴロンと、横になって、寝てしまいました。