どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ないた赤おに

2014年01月31日 | 絵本(日本)
ないた赤おに  

     ないた赤おに/浜田廣介・作 いもと ようこ・絵/金の星社/1988年初版

 

 近代童話の傑作として、多くの方がとりあげています。

  どこの山かわからないが、とにかくその山の中に、一人のわかい赤鬼が住んでいました。赤鬼はいつも人間たちの仲間になって仲良く暮らしたいと思っていました。そこで、
「ココロノヤサシイ オニノ ウチデス。ドナタデモ オイデクダサイ。オイシイオカシガ ゴザイマス。オチャモワカシテ ゴザイマス」
という木の立札を書き、家の前に立てておきます。

 立札をみた人間たちは、近くまできますが、気味悪がって誰一人として赤鬼の家に入りません。赤鬼は、信用してもらえないことを悔しがり、ついには、せっかく立てた立札を引き抜き、壊してしまいます。

 そこに、友達の青鬼が赤鬼のところにやってきます。赤鬼の話を聞いた青鬼はいいことを思いつきます。それは、「ぼくが人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ君が出てきて、ぼくをこらしめる。そうすれば人間たちにも赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう」ということでした。赤鬼は考え込んで立とうとしない赤鬼の手をひっぱって村にむかいます。
青鬼が村を襲い大暴れしているところに、赤鬼がやってきて青鬼を追い払います。
おかげで赤鬼は人間と仲良くなり、村人達は赤鬼の家に遊びに来るようになります。居心地のいい赤鬼の家には、毎日、人間がやってきます。

 ところが、赤鬼には一つ気になることがありました。親友である青鬼があれから一度もたずねてこなくなったことです。具合がわるくなっているのか心配した赤鬼は青鬼の見舞いにでかけます。青鬼の家の戸は、固く締まっており、戸の脇には、貼り紙がしてありました。

 それは
「アカオニクン ニンゲンタチトハ ドコマデモ ナカヨク マジメニツキアッテ タノシククラシテイッテクダサイ。ボクハ シバラク キミニハ オメニカカリマセン。コノママ キミト ツキアイヲ ツヅケテイレバ、ニンゲンハ、キミヲ ウタガウコトガナイトモカギリマセン。ウスキミワルクオモワナイデモアリマセン。ソレデハマコトニツマラナイ。ソウ カンガエテ、ボクハコレカラ タビニデル コトニシマシタ。ナガイナガイ タビニナルカモシレマセン、ケレドモ、ボクハ イツデモ キミヲ ワスレマスマイ。ドコカデ マタモ アウヒガ アルカモシレマセン。
サヨウナラ、キミ、カラダヲダイジニシテ クダサイ。ドコマデモキミノトモダチ アオオニ」
という張り紙でした。

 赤鬼は黙ってそれを2度も3度も読み上げ、涙を流して泣きます。

 やはり、赤鬼が青鬼と再会することはなかったのでしょうか。

 得たものもあったけれど、失ったものも大きかったんですね!

 「村の人たちが座る椅子は手製で、ぐあいがよく、からだがらくらくするだけでなく、心までゆったりと落ち着くことができ、赤鬼のだしてくれるお茶やお菓子は美味しく、村人はなんどでもでかけていきます。」

 「青鬼のすみかには、夏も暮れていくのに、ヤマユリが、真っ白な花を咲かせて、ぷんぷんにおっている。」
などの細かな描写に魅かれました。

 ところで、2月15日、ラジオで、この「ないた赤おに」が朗読されていました。アナウンサーはやっぱりプロですね。じっくり聞かせてくれました。


洪水・・中国

2014年01月29日 | 昔話(アジア)

       洪水/子どもに贈る昔ばなし4 黒いさくらんぼ/小澤俊夫監修/小澤昔ばなし研究所/2006年初版(原話 世界のメルヘン図書館12/小澤俊夫・編訳/ぎょうせい/1982年)


 旧約聖書のノアの方舟に類似している内容もでてくるので、その影響があるとすれば、今から4000年以上前の話が盛り込まれています。

 夫をなくした女の人には一人の男の子がいました。

 この親子のまえに、すっかりやつれ果てたおばあさんが物乞いにやってきます。おばあさんの体はとてもよごれていて、いたるところにのみやしらみがたかっています。親子で体をきれいにあらってあげ、着物についたしらみをとってあげると、壺が一杯になるほど。おばあさんは、壺を庭に埋め、いつか洪水がきたときにつかうよう話します。

 洪水がいつくるのか男の子がたずねると、おばあさんは、町の門にある石の獅子の目が赤くなるのがそのしるしだと答えます。そして木で小さな船をつくって箱にいれておくようにも言います。

 男の子が毎日、獅子の目を見ているので、不思議に思った鶏売りがたずねると、男の子は獅子の目が赤くなったら洪水がくると答えます。

 鶏売りは、大笑いして、鶏の血で獅子の目を赤く塗ります。するとこれを見た男の子がおばあさんに知らせると、おばあさんは、庭の壺を掘り出し、木で作った船を箱から出すように言います。船はすぐに大きくなってほんとうの船になります。

 やがて本当に洪水がやってきます。

 親子は、流されてきた犬やねずみ、ねこ、からす、雨に濡れて飛ぶこともできない蜜蜂を船に助けてあげます。
 男の子は、おばあさんから黒い髪をした男は助けてはいけないと言われていましたが、かわいそうに思って黒い髪の男も助けます。

 やがて、洪水が収まって、親子が壺を開けてみると、その中には美しい真珠が入っていました。

 黒い髪の男が、真珠を横取りしようと裁判官のところにいって、盗んだものに違いないと訴えると、親子は牢屋に閉じ込められてしまいます。

 しかし、洪水のときに助けてやったねずみが、牢屋の壁に穴をあけ、犬やネコが肉やまんじゅうを運んだので、ひもじい思いをすることはありません。

 やがて、からすが一通の手紙を裁判官にもってきます。

 実は、この手紙はおばあさんに姿を変えた神さまが書いたもので、この親子をすぐに自由にするように書いてありました。
 神さまから不幸にするといわれた裁判官は、すぐに二人をよびだして、どのようにして洪水からのがれたかについてたずねます。二人がありのままを話すと、それは神さまの手紙にかかれたとおりです。

 裁判官は訴えてきた男をきびしく罰します。

 やがて男の子が成長して立派な若者になったとき、ベールで顔をおおってかごにのったおおぜいの娘の中から、王女さまの乗っているかごを見つけた者を、王女の結婚相手にするというおふれがだされます。

 若者は、洪水のとき助けてあげた蜜蜂の助けで王女の乗っていたかごを見つけだし、めでたく結婚し、幸せに暮らします。

 おばあさんに親切にしてあげるという導入部で、昔話によくあるのは、次に冷たく追い返す者がでてくるパターンですが、この話では神さまが姿をかえていたということ。

 洪水のとき助けてあげた動物たちが、中盤から終わりの部分に登場して、主人公を助けるというのも一つのパターン。

 蜜蜂が、誰が王女か主人公に教えてくれるというのも、他の昔話にもみられます。    


ふたごのかいぞく

2014年01月28日 | 絵本(外国)
ふたごのかいぞく  

   ふたごのかいぞく/ウイリアム・ニコルソン・作 谷川俊太郎・訳/復刊ドットコム/2010年初版

 

 文と絵の掛け合いが楽しめる絵本。

 メアリーがゆうぐれの海辺でみつけたのは、貝のなかにいたふたごのかいぞく。
 つれかえったメアリーはお風呂に入れたり、たべさせたり。

 「こんなもの」という文の上にはケーキの絵があったり、カニやワインも。
 服をきること、ことば、地理、天文から踊り、楽器の演奏もメアリーはおしえます。

 でも、二人は手紙を残していなくなります。
 どんな手紙かは絵のなかに。

 ボートを盗んで海にのりだした二人は、お家のことはわすれず、まにあうようにかえってきます。
 「まにあうように」という文のページをめくるとメリーの誕生日の絵。

 ソックスで作った人形を見た作者が、これをモデルにしてつくったという何とも不思議としかいえない絵本。

 メアリーがみつけたのが、どうして双子の海賊だったのか。
 言葉ももっていなかった二人。
 貝の上にいるふたりに、太陽?が息を吹きかける絵が最後のページにあります。

 文が手書き風なのがあたたかい感じです。


ちいさなとりよ

2014年01月25日 | 絵本(外国)
ちいさなとりよ  

    ちいさなとりよ/N・W・ブラウン・文 R・シャーリップ・絵 与田准一・訳/岩波書店/1978年初版

 

 絵本の作り方も一様ではなく、絵のみ・文章のみのページが交互に繰り返されています。

 小鳥の死(原題は「THE DEAD BIRD」)をあつかっていて、絵だけを見ていても分かる内容です。

 子どもたちが登場するので、にぎやかな声が聞こえてきてもよさそうですが、伝わってくるのは静寂さだけでした。

 野原に横たわっている小鳥をみつけた子どもたちが、触ってみると、まだあたたかさが残っていましたが、小鳥の体がだんだんかたくなります。
(このへんは文章がないと伝わりにくいところ)

 子どもたちは森の中に小鳥を丁寧に埋葬し、レクレイムの歌をうたいます。

 そして「しんだとりここにねむる」とかいた石の墓標をつくり、毎日、花をかざり、歌を歌います。

 人生では、もっとも死とは遠い存在のはずの子どもたちと「死」を対比させています。


宝さがし・・スペイン

2014年01月23日 | 昔話(ヨーロッパ)

       宝さがし/こども世界の民話 上/山内清子他訳/実業乃日本社/1995年初版


 アラビアンナイトの「空飛ぶじゅたん」とほとんど同じです。

 こどもの読み物として書かれているので、大分手がはいっていると思いますが、原話の骨格が入っているという前提で読んでみました。

 三人の王子が、隣の国の王女をお嫁さんにもらいたいと王さまにいうと、王さまは世界で一番とおといものをもってきたものが王女をおよめさんにもらうことにしなさいとアドバイスします。

 旅に出た一番上の王子は魔法のじゅたんを、二番目の王子は見たいところを見ることができる望遠鏡を、そして末の王子は病気がなおるリンゴを手に入れます。

 やがて王女が病気になっていることを望遠鏡で発見した王子たちは、じゅうたんにのっていき、リンゴで王女の病気をなおすことになります。

 アラビアンナイトでは、二番目の王子が王女と結婚するが、スペイン版では王女が末の王子と結婚するという結末。

 スペインはイスラムに支配された時期もあるので、こんな話が伝わっても不思議はありません。


トチの木の1年

2014年01月22日 | 絵本(自然)
トチの木の1年  

    トチの木の1年/太田威 写真・絵/福音館書店/2012年初版

 

 トチの木の季節を巡る写真絵本。

 遠くまででかけないと出会えないトチの木の四季の味わいが、数分で味わえるというのはぜいたくな時間。
 写真家の方の1年の苦労に感謝です。

 春はカタクリの花のあとに、トチのつぼみが。
 そして森一面の若葉。

 初夏になるとクリスマスツリーのようなトチの花が可憐です。
 蜜とりが終わると、新巻きづくり。
 トチの葉には食べ物を腐りにくくする力があるといいいます。

 やがて秋を迎えると、木の葉が黄色に色づき、実が自然に落ちます。
 トチの実を、とちもちにする準備がはじまります。

 やがて冬になると、トチは雪に埋もれながら、じっと春をまちます。

 自然の営みに思いをはせながら見ました。


まっくらまっくら

2014年01月20日 | 絵本(日本)
まっくらまっくら  

   まっくらまっくら/いちかわ けいこ・文 たかはし かずえ・絵/アリス出版/2006年初版

 

 ねむる前にそっと読んであげたい幼児むきの絵本。
 真っ暗は怖い反面、なにか冒険したくなる?

 まっくろな中に、箱が
 しろねこくんが中をのぞいてみると
 真っ赤なリンゴがいっぱい。
  (黒から赤へとぱっときりかわります)

 次に、まっくろなへやのなかにしろねこくんがみつけたのは
 おふとんをかぶったぼうやたち
  (まっ黒から明るい場面にきりかわります)

 つぎにしろねこくんがみつけたのは・・・
 ねずみをみつけて大騒ぎしていると
 騒ぐのなら外へ行きなさいと家からだされてしまいます
 でも、そこにはおつきさまときらきらおほしまさまが・・・
  (鼻だけえがかれた猫が見つめるのは、月とお星さま)

 しろねこくんが屋根に上って、垣根をこえてついたところは?

 表紙と裏表紙のねこの絵が対になっていて楽しい。

 「なんだろう?」と次のページへの興味をかきたててくれます。    


黒いさくらんぼ・・スイス

2014年01月19日 | 昔話(ヨーロッパ)

      黒いさくらんぼ/子どもに贈る昔ばなし4 黒いさくらんぼ/小澤俊夫監修/小澤昔ばなし研究所/2006年初版
      黒いさくらんぼ/子どもに贈る昔ばなし9 うさぎ楽土/小澤俊夫監修/小澤昔ばなし研究所/2008年初版


 ある国の王女が病気になり、この病気は黒いさくらんぼを食べさせなければ治らないということから、この黒いさくらんぼを持ってきた者を王女の婿にするというおふれを出します。

 冬の最中でも黒いさくらんぼのなる木をもっていた父親は、三人の息子に黒いさくらんぼを持たせて王さまのところに持っていかせます。

 長男と次男が失敗し、末息子が無事にさくらんぼを届けることに成功しますが、王さまは王女と末息子の結婚を許す条件として難題を出します。
 末息子は、この難題も無事にクリアすることになりますが・・・・。

 小澤昔ばなし大学の再話コースからうまれたものであり、この大学で学んだ方がたまたま同じ話を再話したようですが、二つの再話グループの表現が微妙に違っています。

 三人息子が、一方では<長男、次男、すえっ子>、もう一方では<一番上の息子、二番目の息子、すえ息子>と表現されているほか、上の二人は「ごうまんでいじわる」とされているのが、片方では三人の息子とさらりとしている。

 また話し言葉で表現されているのが、一方では地の文で説明されている。
 
 二つの再話は、原文を生かしながら工夫されているので、違いがどうということではなく、お話のテキストを選ぶ際に大いに参考になりそう。

 やたらと地の文が続くものがあったりしますが、登場人物に語らせるとやわらかな感じがでそうです。


ふたりはいつも

2014年01月18日 | 絵本(外国)
ふたりはいつも  

   ふたりはいつも/アーノルド・ローベル・作 三木 卓・訳/文化出版局/1977年初版

 

 季節をめぐる五つの話から構成されている絵本。
 絵本といいながら挿絵風に描かれ、かえるくんとがまくんの友情がほのぼのとしています。

<そりすべり>
 寒い寒い冬。いやがるがまくんをそりすべりにさそったかえるくん。
二人でそりすべりをはじめたのはいいが、かえるくんはそりから落っこちて。それに気がつかないがまくんは、かえるくんが一緒に乗っているものと思ってどんどんすべりおります。
 途中、からすが、ひとりだよと声をかけると、そりは木にあたってゆきにつっこみます。

 がまくんは暖かいベッドのほうがよかったみたいです。

<そこの かどまで>
 雨に降られたかえるくんとがまくん。かえるくんがお父さんから聞いたお話をはじめます。
春を探しにいったかえるくんのお父さん。角を曲がって、曲がって、曲がっていくと、鳥が歌って、お父さんとお母さんが働いているところへ。
 雨が止むと、かえるくんとがまくんは、春を探しに外にでかけます。
 「春がそこのかどまできているんだよ」と、春を探すに行く気持ちがつたわってきます。

<アイスクリーム>
 暑い暑い夏の日。がまくんはアイスクリームを買いに。
 かえるくんのアイスクリームも買って帰る途中、アイスクリームが溶けてしまいます。溶けたアイスクリームが上着や足や顔の上にかかっておばけのよう。

 でも、かえるくんはそんなことはきにしません。二人でお店に行ってアイスクリームを買って、大きな木の陰で二人仲良くアイスクリームを食べます。

<おちば>
 10月になって地面は落ち葉だらけ。
 友だちおもいのかえるくんは、がまくんの家の落ち葉をかきあつめに。
 一方、がまくんは、かえるくんの家の落ち葉をかきあつめに。

 お互いに驚かそうと考えたのですが、かきあつめた落ち葉は、かぜにまってもとのもくあみ。
 二人は、明日は自分の家の落ち葉をかきあつめようとおもって、ねむりにつきます。

<クリスマス・イブ>
 クリスマスのばん。がまくんはごちそうをつくって、かえるくんを待ちます。
 ところが、かえるくんがなかなかやってこないので、心配になります。
 深い穴におこっていないか、森で迷子になっていないか、おおきなけものにおっかけられていないか?
 フライパンでけものをぶんなぐってやろうと外に出たがまくん。そこでかえるくんに出会います。かえるくんはプレゼントを用意するのに時間がかかっていたのです。

 <アイスクリーム>や<落ち葉>ではよかれと思ってやったことがうまくいきませんが、二人はそんなことは気にしてなくて、怒るなんてことはしません。

 <そりすべり>や<クリスマス・イブ>では、友だちを思う気持ちがつたわってきます。
 <クリスマス・イブ>では、がまくんがいろいろ想像をたくましくするところは笑えます。

 劇的なことはありませんが、気持ちがやさしくなれる絵本です。
 小型本なので、眠る前に親子で読みたい本です。
 
 同じ作者の語りも聞くことがありましたが、新鮮な感じでした。          


ひみつのひきだしあけた?

2014年01月16日 | あまんきみこ
ひみつのひきだしあけた?  

   ひみつのひきだしあけた?/あまん きみこ・さく やまわきゆりこ・え/PHP研究所/1996年初版/2008年新版

 

 押入れのすみっこから桜色の毛糸玉がころりでてきて、チイばあちゃんはベレー帽を編もうとかぎ針を探し始めます。

 とらねこのとらたがはなをぴくぴくさせると、においは古机のひきだしから。

 「みたよと」というチイおばあちゃんに「おくのおくまでみたの」ととらたがいいます。
 もういちど見てみようと引き出しの取っ手を引っ張ると、引き出しはするするとでてきます。
 すると引出しには、かいがら、かせき、うごかない時計やら、きれいな小石、千代紙、包装紙が次々にでてきます。

 何でも引出しにしまうくせがあるおばさあんもびっくり。
 引出しは引っ張るだけ「歩い」ていきます。
 どこまでも伸びる引出し。壁で行きどまると、おばあちゃんは壁に穴をあけます。
 それでも歩く引出し。

 よもぎのはらまで伸びると、ようやくかぎ針は見つかりましたが、野原で遊んでいた子どもたちが走ってきます。
 長―い長―い引出しのなかにみんなは目をまるくし、これを頂戴、あれを頂戴と大騒ぎ。

 おおばあちゃんがなんでもおとりよというと、子どもたちはよろこんでいろんなものをもらいます。
 すると、子どもたちがとった分だけ、引き出しが縮みはじめます。
 おばあさんはベレー帽を編めたし、おまけに素敵な六人の遊び友達まで。
 そして、引出しは普通に戻ります。

 この引出しは、一人暮らしのおばあちゃんへの素敵なプレゼントだったんですね。
 なんとも夢のある引き出しです。


とんとんとん だれですか

2014年01月13日 | 絵本(日本)
とんとんとんだれですか  

     とんとんとん だれですか/はやし ますみ/岩崎書店/2012年初版
 

 次の展開がどうなるのか興味をひいて、読み聞かせにピッタリの絵本。

 とんとんとん
 誰かがドアをとんとんしています
 ドアの窓には怪しい影が
 でもドアをあけてみれば
 さるくん、くまくん、はりねずみ
 また、とんとんとん
 今度は、あしかくん、はとくん、ほたるくん
 つぎは、コアラくん、カンガルーさん
 つぎは、りすくん、ねこくん
 つぎは、わにくん、へびくん
 最後は、らいおんくん、かえるくん
 にぎやかな家のうえには、お月様と、ひとでの形の星がやさしくみつめています

 とんとんとんという繰り返しのリズムとともにあらわれるのは子どもたちがが大好き?な動物たち。
 ドアに怪しい影が映ってびっくりするが、開けてみれば動物たちという絵の構成にドキドキします。


星どろぼう

2014年01月09日 | 絵本(外国)
星どろぼう  

   星どろぼう/文・アンドレア・デイノト 絵・アーノルド・ローベル 訳 八木田 よしこ/ほるぷ出版/1978年初版/2011新版

 

 文字通り星をぬすむどろぼうのお話ですが、とても夢があってロマンチックです。

 子どもも大きくなっているので読んであげる機会がないのが残念ですが、もし自分が小さいころ読んでもらったらどんな感じだったろうかと思わせます。

 自分だけの星を一つほしいとおもっていた泥棒。でも心の奥のそのまた奥では、星という星を全部自分のものにしたいと思っていたことから、すべての星を盗んで自分のものにしてしまいます。  

 村では大騒ぎ。今度は月を盗もうとするに違いないと、月にわなをかけ、見事、泥棒をつかまえます。しかし、地下室に星を見つけたものの、星を空におしつけても、のりをつけても、タール、ねりこをつかっても、星は地面に落ちてしまい、空にかえすことができません。

 しかし小さい男の子が、願い事をすると、空にもどっていきます。
 なぜって?
 願い事は“空の星”にするものだからです。
 村人たちが次々と願い事をすると星は全部、空にかえっていきます。

 泥棒だけは願い事をすることができませんでしたが、おじさんの願い事は星にさわることだったといいます。
 この星どろぼう、実は、子どもたちをふくめ村じゅうの人たちに星にさわらせたかったのです。

 山のてっぺんにある村。支えあうように建っている家のベランダから、星がとっても近くにみえる絵が印象的です。
 星を盗むときには、はしごをのぼっていきます。

 盗んだものは自分で返しなさいと、泥棒に星をかえさせる村の人たちの気持ちがうれしい。


三人兄弟・・フィリピン

2014年01月06日 | 昔話(東南アジア)

     三人兄弟/子どもに語るアジアの昔話Ⅰ/松岡享子・訳/こぐま社/1997年初版

 

 三人の兄弟がでてくる話には二つのパターンがあって、その一つは上のほうから順番に出かけていって、末っ子がうまく問題?を解決するというもの。上の二人に比べてぱっとしない末っ子が活躍するのがみそ。

 もう一つは、三人が同時に旅に出て、三つに分かれた道で各々が別れ、旅をするもの。
 後者は兄弟間の優劣はあまりでてこなくて、一旦別れた兄弟が再開し、三人が協力して何かを成し遂げる。

 個人的には兄弟が協力するという話のほうに魅かれる。
 
 そして面白いのは、三人姉妹がでてくる話では、姉妹が協力してことにあたるという話に出会ったことがないということ。この違いはどこからくるのか?

 フィリピンの「三人兄弟」というのは、教訓を含んだ後者の話。

 百姓仕事より、いっぺんに大もうけしたい思っていた三人兄弟が、母親から「自分の運をさがしておいで」といわれ旅にでます。三人は7年目におなじ場所で落ち合うことにします。

 一番上は、ガラス工場で働いて立派なガラスづくりのわざを身につけ、2番目は腕の良い船大工になりますが、末っ子は泥棒の名人になります。

 三人兄弟が家に帰ってから、美しい王女が魔法使いにさらわれ、無事に王女を連れ戻した者は、王女と結婚し王子の位もあたえられるというおふれがだされます。

 三人はおのおのが身につけた技をつかって王女を助け出すことに成功します。

 三人兄弟の誰が王女と結婚するのか結末が気になるところですが、結婚のかわりに、国の半分の土地をもらい、それを三人で平等にわけることになります。

 この手の話で泥棒の名人になるというのが日本の昔話にもあって、泥棒もかかせない役割をもっているのが楽しい。           


ふくろうくん

2014年01月05日 | 絵本(外国)
ふくろうくん  

    くろうくん/アーノルド・ローベル・作 三木 卓・訳/文化出版局/1976年初版

 

 劇的な感動やドラマがあるわけではないが、ほのぼのしてくすりと笑いがこみあげる絵本。

 この語りを聞いたことがありますが、語り手の味とあいまって、こんなお話を聞くのもいいなと思いました。
 これまでこんな味のお話をきいたことがなかったので、あらためて語りの奥深さにきずかされました。

 五つのお話からなっています。

 一つのお話ではふくろうくんの愛らしさが十分につたわってこないが、五つのお話で、ほのぼのとしたなんともいえない味がある絵本。

 多分、ひとり暮らしのふくろうくんは、1階が居間、2階が寝室という2階建ての家に住んでいます。
 すごく勉強家で、居間にはたくさんの本があります。

 年齢はいくつぐらいでしょうか。“ぼく“と訳されていますから多分若者ですね。

やさしいふくろうくん
 ドアをどんどんする冬をあったまったらどうと招きいれると、冬は部屋のなかをあばれまわって部屋の中はめちゃくちゃ。ふくろうくんは二度とかえってくるなとドアをしめます。(おきゃくさま)

好奇心のかたまりのふくろうくん
 毛布のしたに、こんもりしたものをみつけたふくろうくんは、それが気になってねむれません。足をうごかすとこんもりくんもうごきます。ベッドから毛布をぜんぶとってみると、こんもりしたものはなくなります。ベッドの上でどたんばたんしたり、階段をかけおりたり。結局は、暖炉のそばの椅子でねます(こんもりおやま)

なんでもやってみたくなるふくろうくん
 涙でお茶をいれようと悲しいことを思い浮かべるふくろうくん。ちょっとしょっぱいがあじが。(なみだのおちゃ)

想像力が旺盛なふくろうくん
 1階にいると2階が気になって、2階にいると1階が気になるふくろうくん。上に行ったり下にいったり。階段の真ん中に座り込んでしまいます(うえとした)

さみしがりやのふくろうくん
 つきに、おともだちにならなくちゃとはなしかけるふくろうくん。
いえにかえるみち、つきはふくろうくんについてきます。どこまでもついてくるおつきさん。家のまどからもずっとさしこんでいます。(おつきさま)


 手元にあるのは、2009年第55刷ですが、初版は1976年で、30数年間にわたる息の長い絵本です。         


せんねん まんねん

2014年01月03日 | 絵本(日本)
せんねんまんねん  

    せんねん まんねん/詩 まど・みちお 絵 柚木沙弥郎/理論社/2008年初版

 

 この絵本が2008年に発行されているということは、まど・みちさんが99歳の時に書かれた詩で、絵は柚木沙弥郎さんが86歳で書かれたものということ。
 素敵なプレゼントです。
 詩もゆったりしていて、絵もぴったりと、読み聞かせで聞いてみたい絵本です。

“せんねん まんねん”
人間の尺度でみる長い長い千年、万年も、自然のスケールでみるとほんとに短いのかも知れない。しかし昆虫時間というものがあるとすれば、人間のいう一年は“ながい”のかもしれない。

いつかのっぽのヤシの木になるために
そのヤシのみが地べたに落ちる
その地ひびきでミミズがとびだす
そのミミズをヘビがのむ
そのヘビをワニがのむ
そのワニを川がのむ
その川の岸ののっぽのヤシの木の中を
昇っていくには
今まで土の中でうたっていた清水
その清水は昇って昇って昇りつめて
ヤシのみの中で眠る
その眠りが夢でいっぱいになると
いつかのっぽのヤシの木になるために
そのヤシのみが地べたに落ちる
その地ひびきでミミズがとびだす
そのミミズをヘビがのむ
そのヘビをワニがのむ
そのワニを川がのむ
その川の岸に
まだ人がやって来こなかったころの
はるなつあきふゆ はるなつあきふゆ
ながいみじかい せんねんまんねん


土の中でうたっていた清水が、昇って昇りつめて、ヤシのみの中で眠る
その眠りが夢でいっぱいになると
と続くフレーズがなんともいえず心地よい。

 水が歌うんですね・・・・。