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ないた赤おに/浜田廣介・作 いもと ようこ・絵/金の星社/1988年初版
近代童話の傑作として、多くの方がとりあげています。
どこの山かわからないが、とにかくその山の中に、一人のわかい赤鬼が住んでいました。赤鬼はいつも人間たちの仲間になって仲良く暮らしたいと思っていました。そこで、
「ココロノヤサシイ オニノ ウチデス。ドナタデモ オイデクダサイ。オイシイオカシガ ゴザイマス。オチャモワカシテ ゴザイマス」
という木の立札を書き、家の前に立てておきます。
立札をみた人間たちは、近くまできますが、気味悪がって誰一人として赤鬼の家に入りません。赤鬼は、信用してもらえないことを悔しがり、ついには、せっかく立てた立札を引き抜き、壊してしまいます。
そこに、友達の青鬼が赤鬼のところにやってきます。赤鬼の話を聞いた青鬼はいいことを思いつきます。それは、「ぼくが人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ君が出てきて、ぼくをこらしめる。そうすれば人間たちにも赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう」ということでした。赤鬼は考え込んで立とうとしない赤鬼の手をひっぱって村にむかいます。
青鬼が村を襲い大暴れしているところに、赤鬼がやってきて青鬼を追い払います。
おかげで赤鬼は人間と仲良くなり、村人達は赤鬼の家に遊びに来るようになります。居心地のいい赤鬼の家には、毎日、人間がやってきます。
ところが、赤鬼には一つ気になることがありました。親友である青鬼があれから一度もたずねてこなくなったことです。具合がわるくなっているのか心配した赤鬼は青鬼の見舞いにでかけます。青鬼の家の戸は、固く締まっており、戸の脇には、貼り紙がしてありました。
それは
「アカオニクン ニンゲンタチトハ ドコマデモ ナカヨク マジメニツキアッテ タノシククラシテイッテクダサイ。ボクハ シバラク キミニハ オメニカカリマセン。コノママ キミト ツキアイヲ ツヅケテイレバ、ニンゲンハ、キミヲ ウタガウコトガナイトモカギリマセン。ウスキミワルクオモワナイデモアリマセン。ソレデハマコトニツマラナイ。ソウ カンガエテ、ボクハコレカラ タビニデル コトニシマシタ。ナガイナガイ タビニナルカモシレマセン、ケレドモ、ボクハ イツデモ キミヲ ワスレマスマイ。ドコカデ マタモ アウヒガ アルカモシレマセン。
サヨウナラ、キミ、カラダヲダイジニシテ クダサイ。ドコマデモキミノトモダチ アオオニ」
という張り紙でした。
赤鬼は黙ってそれを2度も3度も読み上げ、涙を流して泣きます。
やはり、赤鬼が青鬼と再会することはなかったのでしょうか。
得たものもあったけれど、失ったものも大きかったんですね!
「村の人たちが座る椅子は手製で、ぐあいがよく、からだがらくらくするだけでなく、心までゆったりと落ち着くことができ、赤鬼のだしてくれるお茶やお菓子は美味しく、村人はなんどでもでかけていきます。」
「青鬼のすみかには、夏も暮れていくのに、ヤマユリが、真っ白な花を咲かせて、ぷんぷんにおっている。」
などの細かな描写に魅かれました。
ところで、2月15日、ラジオで、この「ないた赤おに」が朗読されていました。アナウンサーはやっぱりプロですね。じっくり聞かせてくれました。