天のかみさま金んつなください/津谷タズ子・作 梶山 俊夫・絵/福音館書店/1988年こどものとも発行
母親が買い物に行くので、留守番をたのまれた三人のわらし。
いちろう、じろう、さぶろうと名前もわかりやすい。
そこへやまんばがやってきますが、しわがれこえだったので、わらしたちは戸をあけません。
やまんばは桑の実手あたり次第たべて声をかえてまたわらしたちのところへ。
こんどは頭の毛を指摘され、河原で泥と水でばさばさ髪をなおし、その次は爪。
ようやくわらしの家に入り込んだやまんば。
ここまでは、グリムの「オオカミと七ひきの子ヤギ」の展開。
いちろう、じろうは木の上ににげだし、一度はうまくやまんばが登れないようにしますが、やまんばもさるもの、とうとう二人をおいつめます。
ふたりが必死で「てんのかみさま、てんのかみさま、かねんつなください」とがんをかけると、天からゆっくり、かねんつなが、おりてきます。
タイトルの「金んつな」って、なにと思っていたら、金の綱だったんですね。やまんばも別の かねんつなをのぼって追いかけます。
さぶろうは、やまんばにたべられたのですが、無事にやまんばのはらのなかからでてきます。
ところで、兄弟がにげだしたえんじゅのきには、なじみがありませんでした。
槐(えんじゅ)ともいうようです。
・天とうさん金の鎖(日本の昔話百選/稲田浩二 稲田和子・編著/三省堂/2003年改訂新版)
大分県の昔話です。
子どもが5人、山姥が母親、子ども二人を食べてしまうとあります。
あとの三人は星になるというものです。
怖いのも少し考え物。天から金の鎖が下がってくるには同じ展開です。山姥が里芋で毛むくじゃらの手で、子どもらをだまします。
・天とうさん金のくさり(子どもに語る日本の昔話②/稲田和子・筒井悦子/1995年)
福岡の昔話です。
ちょっと怖い展開です。母親と子ども三人。母親は、山の中で鬼ばばに食い殺されてしまいます。
子ども三人が留守番している家にいった鬼ばばは、手に毛がいっぱいはえているといわれ、レンコン畑のはすの葉を手に巻き付けて、なんとか家にはいります。
三人目は、まだ赤ん坊。鬼ばばは、赤ん坊もボリボリいわせてたべてしまいます。
二人は家を抜け出し、井戸のそばのしゅろの木に登って隠れます。
鬼ばばは井戸に映った二人を見て、井戸の中にはいろうとしますが、上からクスクス笑い声がするので、木の上の二人にきがつきます。
ここで昔話のパターンでは、鬼ばばをうまくだますことになりますが、兄が斧を打ち込み打ち込みして登ったとこたえたことから、鬼ばばが、ふたりにせまります。
ここで兄弟が、天とうさまに、金の鎖をおろしてくれるようにお願いし、天まで上がっていきます。
鬼ばばも、天とうさまにお願いしますが、くされ縄が下がってきて、のぼり途中で縄が切れて下に落ちて死んでしまいます。
兄弟は兄弟星。落ちた鬼ばばの血が そばの根元にかかって、そこが赤くなったといういわれまで。
・山姥と三人の子ども(鹿児島のむかし話/鹿児島のむかし話研究会編/日本標準/1975年)
題名からはわかいにくいのですが、同じパターンの鹿児島の昔話。
おっかさんが山姥に食べられ、花子、太郎、次郎のところへ。山姥は とくに声を変えることはありません。
夜、山姥がもぎとった母親の腕をポリポリ食べているのにきがついた三人の子が、ゆずいの木にのぼりかくれます。
山姥は井戸に映った二人を見て、井戸の中にはいろうとしますが、笑い出した太郎にきがつき、切り倒そうとします。そこへ天から金のくさりがおりてきます。そしてカランコロンといい音を立てながら天へのぼっていきます。
山姥も天からおりてきた綱につかまって、三人をおいかけますが、綱が途中でプッツリ切れて、真っ逆さに落ちてしまいます。
三人は星になり、山姥の血が白いそばのくきを、あかくそめてしまいます。
同じような昔話でも、桑の実で声をかえたり、毛むくじゃらの手を里芋でかえたり、毛むくじゃらの手を はすの葉でおおうなど あの手この手。
子どもたちが登る木も絵本では えんじゅの木、大分版では桜、福岡版ではしゅろの木、鹿児島版ではゆずいの木で、地域の特色がでているのでしょうか。