天候不順で不作がつづいたり、海が荒れて漁ができなかったり、一日中、山に入っても思うように獲物にあわなかったりすると、豊作や大漁にあこがれる気持ちがよくわかる話。
・まのいいりょうし(日本のむかしばなし/瀬田貞二・文/のら書店/1998年初版)
猟師が息子の七つのお祝いのため、なにかとってこようと山の池にでかけます。
筒が曲がった鉄砲をかもに向けて発砲すると12羽にあたり、さらに弾が岩に跳ね返ってもう一匹のかもにもあたります。
傷ついたかもを捕まえようと池に入っていくと鯉が飛び出し、これをつかまえようとして、山うさぎと山芋を手にいれます。
それで終わらず、もっとたくさんの収穫があるという豪快なお話。芋づる式というのは、こういうことでしょうか。
今では猟をする人がなくなって猟師というのも昔話だけのできごとになってしまうのか心配なところ。絵本にもなっていました。

・鴨取り権兵衛(日本の民話11 民衆の笑い話 角川書店 1973年)
権兵衛という漁師が、新しい鉄砲を手に入れ、山にでかけると沼に七羽の鴨。
ところが玉がはずれて、あたったのはきつね。きつねがあばれまわり、あちこちの土をけまくったので山芋が25本。もってかえろうとすると、いのししがやってきたので、そばの梨の木にのぼると、いのししが、梨の木の根元に頭をぶっつけ、梨の実がバラバラ落ちてきた。おまけにいのししも死んでいて、山のような獲物を負うやら、引きずるやら、えんさど、えんさど山を下ると、どう道をまちがえたか大川にでた。
ざぶざぶ川をわたり、家で着物をかわかそうと、着物を脱ぐと、雑魚がピチピチ、ふんどしを取れば、川エビの一升も取れたのだと。
権兵衛さん、一度に鴨の百羽もとろうと、九十九日も寝て考えているような男です。
・清左衛門の話(鳥取のむかし話/鳥取県小学校国語教育研究会/日本標準/1977年)
カモ八わが、一列にならぶのをまって鉄砲をうったら、みごとに命中し、その弾が兎の足にあたる。ウサギがあばれ用水路の水をせき止めてしまうと、川の水がほしあがってドジョウがいっぱい。さらにウサギが前足でかいた土の中から、大きな山芋が。
清左衛門は、カモが一列になるまで一晩中まっていました。
「こんな人が名人というのだろう」と、しめています。
・藤助どんの鴨とり話(千葉のむかし話/千葉県文学教育の会編/日本標準/1978年)
藤助どんの鉄砲の台じりが急に曲がって、玉もまがって、いっぺんに10羽の鴨にあたります。しかしそこまでいく田んぼの中を渡り、山へ登ろうと木につかまったと思ったら、山ウサギの後ろ足。ウサギが逃げ回るのでおいかけているうち着物が重くなり、みてみるとどじょうがたくさん。それだけでなくウサギが暴れたところに、長いもが。
ようやく鴨を探して、家に帰ると鉄砲の筒の中から、うなぎ。
食いきれないごちそうを、近所の人たちをよんでふるまいます。
・間がいいてっぽぶちの話(千葉のむかし話/千葉県文学教育の会編/日本標準/1978年)
きつねとむじなを引いて山道を歩いていて、うっかり崖から落ちそうになり、夢中でしがみついたら、これがおおきな山芋。
やっと田んぼに出ると、数知れないほどの鴨。田んぼの水がこおりついて動けない鴨を、帯にはさみはさみすると、鴨が急に羽ばたきして空へ。
いつまでも空にいてはたいへんと、茂原のおおきな寺のそばにつくと、五重の塔のてっぺんにしがみつきます。
それを見た町のもんが、みんなで五重の塔の下に火口綿を山のようにしいて、飛び降りるようにいいます。てっぽぶちが、勇気出して飛び降りると、おりたひょうしに、ひでえいきおいでぶつけた目から火が出て火口綿が燃え、よってたかってた町のもんも、この話も、みんな焼けて消えてしまいます。
昔話らしく、楽しいおわりかたです。