どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ポレポレやまのぼり

2017年04月30日 | 絵本(日本)


    ポレポレやまのぼり/たしろ ちさと・文絵/大日本図書/2011年初版

 たかいたかいやまにでかけたのは、あわてんぼうのやぎくん、おちょうしもののはりねずみくん、しっかりもののぞうくん。

 林をこえ、草原をこえ、きりたった岩の下には雲海がずっと続いて、とうとうついた頂上。

 頂上でテントをはり、食事の支度。
 クマもサルも、ブタもウサギも輪になって食事。食事がおわると、みんなで輪になって踊る光景がたのしそうです。

 深い闇の静寂の星も印象に残ります。

 のぼる途中、やぎくんが疲れると、ぞうくんが荷物をもってあげ、やぎくんは食事づくりに腕をふるいますが、やぎくんの荷物のなかみはびっくりするほどです。

 「ポレポレってなあに?」「”ゆっくり”ってことさ」

 やまのぼりにあせりは禁物です。


ふくろにいれられたおとこのこ・・フランス

2017年04月28日 | 絵本(昔話・外国)


   ふくろにいれられたおとこのこ/山口智子・再話 堀内誠一・画/福音館書店/1982年こどのとも発行

 フランスの昔話の再話です。

 オニが男の子を袋にいれて家に帰る途中、のどがかわいて袋をおろし、川におりていったすきに、男の子はハサミで袋を切って、外に飛び出し、袋には石ころを詰めておきます。

 おかみさんに大なべを用意させ、袋の中身をあけると・・・・。

 男の子の名前はピトシャン・ピトショ。
 男の子、オニがでてくるとどうしてもかかせないのが、オニのおくさん。一見魔女風です。大なべに袋の中身をあけると石ころがでてきて、オニのおくさんのながい鼻にぶつかって、鼻を包帯しています(文にはありません)。

 堀内さんの画はシャレた感じです。オニの家は三角屋根で、丸い窓が両側にあり、ドアが鼻という顔のイメージです。

 袋に入れられた男の子がタイミングよくハサミをもっていたり、せっかく袋から逃げた男の子が、オニの様子をみるため、オニの家の煙突のうしろにかくれるなど、いろいろ突っ込みたくなるのですが、お話の世界をまるごと楽しめます。

 冒頭のイチジクがあっという間に大きくなるのは「ジャックと豆のつる」そのもの。

 オニが男の子に、どうして屋根に登ったかときき「大なべぜんぶと、こなべ ぜんぶと、おさらぜんぶ つみあげて、のぼったのさ」というのを鵜呑みにして、転げ落ちるのですが、やはりオニは憎めません。

 男の子の名前も楽しいのですが、オニのおくさんは「カトリーヌ」と若い美女風です。


はるになったら

2017年04月28日 | 絵本(外国)

    
   はるになったら/シャーロット・ゾロトウ・作 ガース・ウィリアムズ・絵 おびかゆうこ・訳/徳間書店/2003年

 ちいさな女の子がちいさな弟に話しかけます。
   はるになったら、おはなを たくさんつんできて、はなたばを つくってあげる
   ゆきが いっぱい つもったら、ゆきだるまを つくってあげる
   かぜがふいたら、びんのなかに つかまえてきてあげる あついひに おうちのなかで、すーと にがすの
   うみにいったら、まきがいを ひろってくるわ。なみのおとを きかせてあげる。

 女の子の優しい気持ちがいっぱいです。

 「夢のなかにおばけがでてきたら、助けに行くわ」・・うーん。

 二人だと、どうしても下の子に手がいって、上の子はひがみ?がち。でも、このお姉さんは・・・・。

 子育てにつかれたお母さん、お父さんを原点にもどしてくれそうです。


みんなでつくっちゃった

2017年04月25日 | 絵本(日本)


    みんなでつくっちゃった/長 新太/大日本図書/2014年


 2014年に発行されていますが、四十年前の復刊です。

 森の中に落ちていた、たくさんの新聞紙で、ねこは帽子を、うさぎはドレスを、ねずみは家を、りすは手袋と・・・・・思い思いのものをつくります。

 絵の中には新聞の切り抜きが貼り付けられています。

 おなかがひえないように作ったブタのはらまきは、新聞のテレビ番組です。

 「新聞紙でこんなにいろんなものが作れるんだ~」と工作したくなること間違いありません。

 おったり、きったり、ちぎったり、まるめたりと自由自在の新聞紙ですが、工作した後の手洗いは欠かせません。


兄弟の話・・古代エジプト

2017年04月24日 | 昔話(アフリカ)

    兄弟の話/世界の民話7 アフリカ/小澤俊夫・編 中山淳子・訳/ぎょうせい/1999年新装版


 昔話といっていいのか疑問ですが、何しろ紀元前千二百年前のパピルスに書かれているという物語。

 兄の名前はアヌビス、弟の名前はバータ。

 弟は兄のところで畑を耕し、着るものもつくり、家畜の世話も全部こなしているが、住んでいるのは家畜小屋。

 250キロもの荷物を軽々という弟が、兄の妻に誘惑されそうになるが、これを断ると、心配になった兄の妻は、逆に弟に誘惑されそうになったと兄にいいます。
 怒った兄は弟を殺そうとしますが、牛に注意されて(弟は動物のいうことがわかるというのは昔話の世界か)翌日、二人は争うことに。

 弟は妻から中傷されたことを話し、自分の男根を切りおとし、川の中に投げ込んでしまいます。すると大なまずがそれを飲み込み、弟は弱弱しくなってしまいます。

 弟は傘松の谷にいくので、何かかが起こったら、自分のことを心配してくれるように言います。そして心臓を傘松の花の上に置いておくので何年かかっても探し出し、新鮮な水がはいった皿の中に心臓をつけると生き返ると言い残して傘松の谷にむかいます。

 バータは傘松の谷に城をつくり、神の力でひとりの女と一緒になります。

 やがて、バータの妻は王さまから愛されるようになり、王さまをたきつけて、バータの心臓がのっている花を切りおとします。すると弟は死んでしまいます。

 兄のアヌビスはコップのビールがあわだってあふれると、弟の異変にきづき傘松の城にいってみると弟が死んでいるのをみつけます。
 兄は心臓を捜す出す旅にでます。

 話はまだまだ続くのですが、ここにでてくる女はいずれも男を簡単に裏切ります。

 男女の愛憎がでてきて、現代の小説を思わせる物語が今から三千年以上も前に記録されているのに驚かされます。

 傘松の谷といってもよくわかりませんが、レバノンの海岸にある谷で、傘松の実は色、形、大きさとも人間の心臓のようであるという。

 心臓が独立したり、弟が雄牛に変わったり、ベルゼアの木のかけらが口に入ると身ごもるなど、これは昔話の世界でしょう。


黄色いハンカチを見たら手をかしてください

2017年04月22日 | 絵本(社会)


    黄色いハンカチを見たら手をかしてください/葉 祥明・絵文 宇野弘信・監修/PHP研究所/1999年初版



 知らないのは私だけかも知れませんが、これまで黄色いハンカチ運動を知りませんでした。

 黄色いハンカチは「SOSの合図」ということ。

 内部疾患をかかえた障害者たちは、見た目にはわからないため、手をかしてもらえないことが、たくさんあります。こうして、だれにも手をかしてもらえず困った体験が「困ったときに手をかしてもらえる合図が欲しい」という、黄色いハンカチ運動が生まれるきっかけとなったとあります。

 日本語と英語が表記されています。

 「できる人が、できる時に、できることから」「自分ができる範囲の中で」というので、自分のやりかたを考えてみたいと思います。

また一つ絵本で教えてもらいました。

 2004年4月には、全国黄色いハンカチ推進本部が設立されて活動しています。


どろんこハリー

2017年04月21日 | 絵本(外国)


   どろんこハリー/ジーン・ジオン・文 マーガレット・ブロイ・グレアム・絵 わたなべしげお・訳/福音館書店/1964年



 絵本といえば忘れられない一冊。わが家に残っている数少ない一冊です。

 お話も色もいたってシンプンなのですが、世代をこえて読み継がれてきた一冊です。

 ハリーは黒いぶちのある白い犬ですが、ハリーはおふろが大嫌い。ある日、お風呂にお湯を入れる音が聞こえてくると、ブラシをくわえて、にげだします。

 道路工事をしているところで遊んで、どろだらけ。鉄道線路の上で、蒸気機関車の煙ですすだらけ。
 公園でほかの犬と鬼ごっこをして、もっとよごれて。

 うちに帰っても、誰もハリーときがついてくれません。ちゅうがえりや芸当をして、ハリーとわかってもらおうとしますが、それでも誰にもわかってもらえません。

 はっときがついて、うえたブラシをくわえて、うちにかけこみます。


 お風呂が嫌いだったハリーが、自分とわかってもらうため、すすんで体をあらってもらい、じぶんのうちって、ほっとするのですが、こちらまでほっとします。

 どろまみれのハリーが、自分とわかってもらうための努力がいじらしく、とぼとぼ歩くハリーの表情もなんともいえません。

 蒸気機関車や石炭トラックがでてきて、少し前の時代を彷彿とさせます。


ヒマヤラのふえ

2017年04月20日 | 絵本(昔話・外国)


   ヒマヤラのふえ/A.ラマチャンドラン・作絵 きじまはじめ・訳/木城えほんの郷/2003年初版

 「昔 ヒマラヤのふもと クマオンというところで うたわれていた物語」とはじまります。

 ラモルとプリンジャマテイには、ちょっぴりの畑しかなく、どんなに働いてもそこは岩だらけの不毛地帯でした。

 ある時、一晩泊めてくれるよう訪ねてきたおじいさんに、こころよく食事をだしてあげると、あくる朝、おじいさんは、お礼にと竹の笛をくれました。

 それから何日もたってからラモルが笛のことを思い出し、口に当てるとすばらしいひびきがきこえだします。そして不思議なことに、不毛の大地に岩だらけの土地に花が次々と咲きだします。

 ラモルは夜にも竹の笛を吹きならします。山々、谷間にこだまするひびき。
 笛の響きは三ツ星のところまで届きます。三ツ星はフクロウにはやがわりして、ラモルの笛を聞きにいきますが、その響きに魅惑され、夜が明けるのにも気が付きませんでした。笛の響きに縛り付けられた三ツ星は、笛をふいているラモルをまるはなばちにかえてしまいます。

 ラモルがいなくなって、プリンジャマテイが泣き叫び、あちことさがしていると、笛をくれたおじいさんが、ラモルははちにかえられたが、心配することはない。三ツ星は三日月の夜に3びきの銀色の魚になって、この池にあらわれるので、三ツ星をつかまえ、モラルをかえすと約束するまで、網からでられないようにするように話して、消えていきます。


 特徴ある人物の描き方が他にはみられません。人形のイメージでしょうか。花も、おじいさんも、三ツ星の顔も楽しいですよ。

 この絵本を出版している木城えほんの郷というのは、はじめて目にしました。

 宮崎県の木城町にあり、日本や海外の絵本たちと絵本原画を蒐集・展示しているほか、森のほんやさんと森のコーヒーやさんがある『きこり館』、毎夏北欧など海外からの劇団公演などが行われる『森の芝居小屋』、秋の新月か満月の夜年に一度コンサートが行われる『水のステージ』と『森のステージ』、また宿泊施設の『森のコテージ』が、点在しているとHPにありました。

 地方に頑張っている素敵な施設があるのですね。


女のたくらみ

2017年04月19日 | 昔話(アフリカ)

    女のたくらみ/世界の民話7 アフリカ/小澤俊夫・編 中山淳子・訳/ぎょうせい/1999年新装版

 

 アフリカ カビールの昔話です。といってもカビールといってもピンとこないかもしれません。ベルベル族の一種族で北アフリカで、地中海文明および中近東文明をアフリカに仲介する役割を果たしてきたといいます。

 身重の奥さんが肉を食べたいといっても、夫は肉をかってきたことなど一度もありません。

 夫は市場で友だちにあうと、一緒に食事しようと珍しく二羽のやまうずらを買います。そして奥さんに料理するよういいます。

 奥さんはやまうずらを料理しますが、わざとケーキもパンも作らず、夫にケーキかパンを買ってくるようにたのみます。

 あとに残ったのは奥さんと夫の友人。奥さんは刃物を研ぎだし、友だちが何をするのかたずねると「あなたのこう丸をきりとるだけ。はじめてきた客には、そうする習わしなんですよ」といいます。

 驚いた友だちが逃げ出すと、奥さんはすぐに二羽のうずらを食べてしまいます。

 帰ってきた夫が尋ねると「自分で確かめなさいよ」という奥さん。

 友だちをおいかけた夫が「一つだけでも残しておいてくれ」というと、友だちは「おまえが俺に追いついたら、二つともやろう」と大声をだします。

 夫はうずらを食べたい一心しかなく、友人は大事なものと勘違いし、すれ違いを楽しめる話です。

 グリムの「かしこいグレーテル」を思い出させますが、「こう丸」で脅すので、大人向けに話されたのでしょうか。


三人のりこうな王さま

2017年04月18日 | 創作(外国)

     三人のりこうな王さま/フィオリモンド姫の首かざり/ド・モ-ガン・作 矢川澄子・訳/岩波少年文庫/1996年初版


 跡継ぎのいない王さまが、亡くなった後を、甥の三人に後を託します。
 交代でためしてほしいというものでした。

 最初に王位を継ぐことになったのはアルドヴランド。自由にできると喜んだものの朝は早くおこされ、羽根つき遊びをしていると、ゲームを中断されて、怒って王位をなげだし、農夫に頼み込んで羊の番をすることに。

 二番目に王位を継いだのはアルデベルト。
 何でも側近任せ。都の建て直しを進言されればよきに計らえ、軍隊の士気をたかめるため兵士の給料を倍にしたいと総司令官がいうと、まったくそのとおりとのおことば。
 顧問官が,先代の王さまが浪費したので国庫はほとんどからっぽで、あらゆる公共投資をストップする必要があるというと、その考えでやってくれといいます。すると当然ながら兵士の給料は増やすどころか削減が必要で、都の建て直しもできずません。
 アルデベルトも王位を投げ出し、鋳掛け屋になります。

 三番目のアルデレートは、一切を自分で取り計らう、民は従えばいいといいだし、町の様子を視察にでかけます。
 そこで出した命令は豆スープの臭いが強烈に立ち込めているので、豆スープを禁止します。するともちろん群衆が騒ぎ出します。アルデレートも王位を投げ出し、煙突掃除をすることに。

 迎えに来た宰相と顧問官のいうことを聞こうともしなかった三人でした。

 りこうな王さまというのは、王さまにならなかったことがりこうという意味でした。
 戯画化されていますが、国を治めるというのはとにかく大変なこと。
 言うことを聞かないとすぐに処刑する独裁者は、何を考えているのでしょう。三人の選択は正しいかもしれません。


あっぱれ四人兄弟

2017年04月17日 | グリム(絵本)


     きつねがひろったグリム童話2 あっぱれ四人兄弟/安野光雄/岩波書店/1991年


 二段構造になっています。上(といってもこちらが8割)にグリムの童話。下はきつねの子と父さんきつね。

 四人の兄弟が、世の中に出ていって、四年後、泥棒、星のぞき、鉄砲の名人、仕立て屋となってかえってきます。

 星のぞきは大木の鳥の卵をかぞえ、泥棒は親鳥に気づかれないで卵をさらい、鉄砲の名人は五つの卵を一発で、まっぷたつにし、仕立て屋は、われた卵をぬいあわせ、無事にひなをかえらせる腕前。

 ここでいつものパターンになり、竜にさらわれたお姫さまを四人で救い出します。

 花婿にするという条件つきでしたが、王さまの裁定はなかかのもので、国の半分を四人兄弟にあたえます。

 きつねのお父さんは「あっぱれ四人兄弟」を自由に解釈して、これはサーカスの話しに違いないとコメントします。

 お姫さまがいなくなったのを嘆くお妃さま
 「おきさきはやさしいかただから、サーカスや動物園に反対なんだ。なぜって、動物を、動物の自由でなく、人間の自由のままにすることに反対なさっているだ。」

 お姫さま
 「王さまには、こどもがなかったから、お姫様になってはもらえないか」と持ち掛けます。
 お姫さまのいない城なんて考えられない・・確かに昔話には、城がでてきたらお姫さまでしょうか。

 「サーカスの動物は、食べものをさがさなくてもいいし、きれいな舞台の上で喝采をうけることもある。だが、そのかわりに自由がない」

 パロディも楽しく、昔話の世界が広がること間違いありません。 


うさぎのみみはなぜながい

2017年04月16日 | 絵本(昔話・外国)


    うさぎのみみはなぜながい/北川民次・作絵/福音館書店/1962年初版

 メキシコがまだナオワといった時代の再話です。初版は1962年と息が長い絵本です。

 うさぎの耳が、なぜ長くなったのかとありますから、むかしうさぎの耳は短かったのでしょう。

 うさぎは山の神さまのところへでかけ、ちっぽけなからだしか授けてもらえなかったために、森の仲間にいじめられてばかりいます、今にきっと殺されてしまうでしょう、もっとからだを大きくしてください、とお願いします。

 神さまはしばらく考えてから、
 「よし。では、おまえがとらと、わにと、さるとを、じぶんの てで ころして、その かわを もってきたら、おまえの ねがいを かなえてやろう」といいます。

 途方にくれるうさぎでしたが、知恵と勇気で皮を手にいれます。

 皮を手にいれるあたりがイソップの寓話を思い出させるようです。

 虎にはすごい大風が吹いてきて、みんな吹き飛ばされるといい、大きな木に虎を縛り付けます。

 ワニは地上でうまく踊るようにしむけ、棒でワニの背中をいやというほど殴りつけます。

 猿は眠っているところ棒で頭を殴ります。 

 うさぎが、三つの皮をもっていくと神さま言います。

 「わしは、おまえにからだをちいさくこしらえた。だがわしは、おまえをしばしっこくすばっしっこくしてやり、利巧に作ってやった。だから三匹に勝つことができたのだ。この上、大きなからだをさずけたら森中のけものを殺してしまうに違いない。だから願いを聞き届けるわけにいかない。しかし、せめてひととこだけでも、おおきくしてやろう」
 そして、神さまはうさぎの両方の耳をつかんで遠い遠い大地の上へ投げ出します。

 そのときから、うさぎの耳は あのように おおきく長くなったのです。

 このお話、うさぎと虎たちとのやりとりがかなり長くなっています。

 皮は殺さないと手に入りませんから、神さまが殺生をお許しになったというのはどうでしょうか。

 弱そうなうさぎが、ワニの皮をとるため、ナイフを研いでいるのは、こわいですよ。


こんや、妖怪がやってくる

2017年04月15日 | 絵本(昔話・外国)


    こんや、妖怪がやってくる/君島久子・文 小野かおる・絵/岩波書店/2014年初版

 中国の少数民族トウ族の再話です。

 むかし、ある村にざんばら髪に、青黒い顔、するどいきばで、馬でも牛でも手あたりしだい食べてしまうという妖怪がいました。

 あるばん妖怪はおばあさんが大事にしていた子牛を一飲みにすると、明日はおばあさんを食いにくるといいのこします。

 今夜おそろしい妖怪が自分を食べにくると泣くおばあさんですが、だいじょうぶ,きっと助けてあげるからと,たまご,ぞうきん,かえる,こん棒,火ばさみ,牛のふん,石のローラーが力を合わせて迎え撃ちます。

 とてもユニークな面々です。ひとつひとつの力は弱くてもまとまれば大きな力になります。

 「さるかに合戦」に似た後半部です。

 一度「魔物」って何といわれはっとしたことがありました。子どもには、魔物というより妖怪のほうがなじみやすいのかもしれません。

 この絵本の妖怪はどことなく憎めません。ゴツゴツした岩の山の雰囲気が印象に残りました。


おおぐいひょうたん

2017年04月14日 | 絵本(昔話・外国)

               
    おおぐいひょうたん/吉沢 葉子・再話 絵:斎藤 隆夫・絵/福音館書店/1999年

 こどものとも世界むかし話の旅シリーズの一冊で、西アフリカの昔話の再話です。

 フライラという女の子が、小さなまるいひょうたんを見つけて、どうしてもほしくなり、とってもらいました。
 そのひょうたんは不思議なことに、フライラがとびはねるといっしょにとびはね、かけだすと追いかけてきます。すっかり気に入ったフライラは、そのひょうたんといっしょに遊びますが、突然そのひょうたんが、「肉が食いたい」といって足の指に噛みつきます。
 お父さんは、ひょうたんに化けて肉を食う魔物の話を思い出し、羊のところへ逃げるように言います。
 
 お父さんに言われて、フライラは羊のところへ逃げますが、ひょうたんは羊の群れをさぷさぷと飲み込んでしまいます。
 「肉だ、肉、もっと食べたいと」とひょうたんはフライラを追いかけます。
 フライラは、牛のところへ逃げますが、ひょうたんは牛たちもこぷこぷと飲み込みます。
 ラクダのところに逃げると、ラクダもがふがふと飲み込まれます。

 さらに、「やわらかそうな おまえがのこっている」とひょうたんはフライラのひざにがぶりとくいつきます。おとうさんが蹴飛ばしても、びくともしません。

 小さなひょうたんが、大きな大きな羊、牛、ラクダも飲み込んでしまうのですからハラハラ、ドキドキのの連続。

 ここで、フライラの運命はいかにとなるのですが・・・・。

 どうなるかと思っていると、昔話は、ちゃんとうまい終わりかたをします。

 かわいがっていたやぎが、つのでひょうたんをずこんとつくと、ひょうたんは地面に。もういちどがっぷーん!とつくと、ひゅるるるるーんとバオバブの木より高く突き上げられ、地面に落ちてぽっからぽんとわれてしまいます。われたひょうたんからはらくだ、牛、羊が元気よくでてきます。

 食べるところの擬音語におもわず引き込まれます。でもちゃんと元気で生きています。

 お父さん、お母さん、フライラ、空に舞い上がったひょうたんをみあげる村の人達の顔も楽しいですよ。


おおきなかぬー 

2017年04月13日 | 絵本(昔話・外国)


    おおきなかぬー/大塚勇三・再話 土方久功・画/福音館書店/1963年

 ポリネシアの再話です。 

 遠くの島で亡くなった父親の亡骸をもってくるために、立派なカヌーを作ろうと、ラタという若者が森に入り大きな木を斧でり倒します。
 あたりが暗くなってその日は家に帰り、翌日いってみると、木はもとのところにがっしりと力強く立っていたのです。
 昨日切り倒したのは夢だったかのかなとラタは思いましたが、木が倒れて地面にめりこんだあとが、はっきり残っていました。
 もういちど木を切り倒しますが、次の朝いってみると、木は、なにごともなかったように高くそびえ、ラタをみおろしていました。

 もういちど、木を切り倒し、木から見えないところで見張っていると、何百、何千という鳥、蝶も蛾も森中の虫たちがおしあい、へしあいしながら歌い始めます。
 すると木がふわりとうかびあがって切り株の上に立ちあがります。

 森の精たちは、一番大切な木を守ろうとしていたのです。 

 「こんな立派な木の命をとろうとしたのか」と問われ、ラタは恥ずかしいような気がします。

 父親の亡骸を運ぶには、どうしても大きなカヌーが必要なことを話すと、鳥や虫たちはカヌー作りをひきうけます。
 そしてラタは出来上がったカヌーで父親が亡くなった島へ急ぎます。

 出来上がったカヌーは、ラタが切り倒した木なのか、それとも別の木だったのでしょうか。

 ラタの思いが通じたカヌーですが、ラタも森の動物たちが木を大事にしていた思いを受け止めていたようです。

 鳥、トンボ、蝶、ねずみ、トカゲが、切り倒された木をもとどおりにする場面は圧巻です。