どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

やぎや

2014年11月30日 | 絵本(日本)
やぎや  

    やぎや/長野ヒデ子・作 スズキコージ・絵/すずき出版/2014年初版

 

 トンネルくぐると料理屋「やぎや」の看板が目につきます。
 なにしろ、この店はとうさんやぎの手づくりの店
 かあさんやぎはチーズ
 にいさんやぎはパン
 ねえさんやぎはスープをつくります
 
 そしてここで出される野菜も、やぎのさんの畑でつくったもの
 
 ここでだされる料理を食べると
 もりもり もりもり うめえー うめえということ まちがいなし

 自給自足ですから、堆肥や肥料も自家製でしょう。
 無駄なものは何一つない生活は、一昔にはあたりまえのことだったのですが、大量の処理困難な廃棄物をうみだしている今の生活をあらためて見直してみたいものです。

 カラフルな色をみるだけで楽しくなります。      


がにまたビル、ポールバニヤン・・アメリカ

2014年11月29日 | 昔話(北アメリカ)

   がにまたビル、ポールバニヤン/世界のむかし話9 北米 北の巨人/田中信彦・訳/ほるぷ出版/1979年初版   

 昔話には大なり少なり、”ほら”がふくまれているが、この二つの話のスケールも大きい。

 がにまたビルはカウボーイ。
 巨大なマグロ(二頭のクジラを飲み込むことができる大きさ)を二日二晩のりまわしたり、嵐で海に落ちた牛を、木の馬にのりながらおいたてる。

 ポール・ヤニオンは木こり。
 バニヨンが、アブにさされて、あまりの痛さに、すきをひきづったまま、一目散に走ると、幅が6キロ、長さが320キロにもわたってひろがり、これがグランドキャニオンになったというもの。
 ヤニオンが植えたトウモロコシとカボチャ。
 カボチャはどんどんのびて、実を何千、何万もつけ、カボチャとトウモロコシがあまりにも、地面の水をすいあげるので、五大湖の水がへりはじめる。

 他にも、地球をひとまわりぐらいの投げ縄をつくるベイカル・ビル。この男が結婚した娘が、白毛の野生馬にまたがると、この馬が娘を月まで飛ばしてしまう話など、

 西部のとてつもない男たちの壮大なほら話で、話す方も楽しんでいるかのようだ。


よかったね かかしくん

2014年11月27日 | 絵本(外国)
よかったねかかしくん  

   よかったね かかしくん/マリー・ジョゼ・サクレ 作・絵 保富 康午 文/学習研究社/2003年初版

 

 今は案山子もあまり見られなくなったように思いますが・・・。

 晴れの日も、雨の日も風の日も一年中たちどうしのイメージがある案山子にも、ひそかな楽しみと夢が。

 雨の日は大きな帽子や袖の下に鳥たちをいれてあげて、お百姓さんの暮らしをいろいろ話してあげたり、本当は、花畑にたちたいという夢を語ります。

 秋の取入れがおわると、他の案山子は家にはこばれますが、古くから働き続けた案山子は、ぼろぼろになって畑に置き去りにされてしまいます。

 でも、冬の寒い日に、優しい男の子につれられていった案山子くん。

 そこでお父さんからこわれた骨組みをなおされ、おとうさんの若いころの上着をきせられ、お花畑に立つことに。

 つれられていった男の子の物置小屋で、うさぎやねずみと話し合ったり、おかあさんが、リニュアルされた案山子をみて「おとうさんも、あんなにやせてかっこよかったころがあったのね」とつぶやく場面にやさしい感じがでています。

 ベルギーの作家がつくった絵本ですが、外国にも案山子があるというイメージは、ありませんでした。

 素朴な絵がなんともいえない雰囲気を醸し出しています。


雲の上にいってしまった子ども・・北米

2014年11月26日 | 昔話(北アメリカ)

  雲の上にいってしまった子ども/世界の昔話9 北米/田中信彦・訳/ほるぷ社/1979年初版     


 ふたりの子どもが、たいらな岩の上に寝ころび、空をみあげているうちに眠ってしまうと、たいへなことがおこります。岩が地面からどんどんのびはじめたのです。


 日暮れになっても帰ってこない子どもを心配した両親が動物たちにたずねます。
 コヨーテがかぎまわって、この高い岩の上にいるにちがいないというと、動物たちがあつまって救出作戦がはじまります。

 くまもキツネも、ビーバーもなかなかいい知恵がうかびません。

 岩を登れるだけ登ってみようと、ネズミが、リスが、うさぎが、カモシカが、ライオンがかけあがろうとしますが、いずれも失敗。
 そのとき小さなシャクトリ虫がやってみようとやってきます。みんなは馬鹿にするのですが・・・・。 
 シャクトリ虫は、子どもがいる岩のてっぺんまで1か月かけてのぼり、無事救出に成功します。

 お話としては、シンプルですが、たくさんの動物が登場して、子どもたちが楽しめそうなお話。みんなからばかにされた小さな小さなシャクトリ虫が、子どもを救うのが、痛快です。

 おちがあって、「どうやっておろしたかは、それはだれも見たことがないのでわかりません」というもの。


フィフィのそら

2014年11月22日 | 絵本(日本)
フィフィのそら  

    フィフィのそら/村上康成/ひさかたチャイルド/2005年初版

 

 梅雨のころのはなしなので、今は時期外れかも。 

 お母さんとはぐれてしまいひとりぼっちのなったカルガモの赤ちゃんのフィフィ。うしがえるのモーじいさんが、やさしく見守る中で、へびににらまれたり、いたちにおいかけられても何とか生き延びて・・・・。
 何回も挑戦しながら、空へ飛び立つ場面が、数ページ続きます。

 派手さはないがフィフィが一生懸命なのが伝わってきます。

 フィフィもほんとにかわいらしい。でもフィフィはお母さんにあえたのかな?

                 
                  村上さんのHP 素敵な美術館です。


フラニーとメラニー しあわせのスープ

2014年11月20日 | 絵本(日本)
フラニーとメラニー しあわせのスープ  

    フラニーとメラニー しあわせのスープ/あいはら ひろゆき・ぶん あだち なみ・え/講談社/2012年初版

 

 うさぎのフラニーとメラニーの姉妹は、森のスープ屋さん。フラニーはお料理が上手だけど、メラニーはヘンリーおじさんにしかられてしょんぼり。

 牛のフィーフィーおばさんのところで、おいしいいおいしいごはんをごちそうになり、おいしいものを作るコツをおしえてもらいます。

 メラニーは美味しいスープが作れるようになって、森のみんなをよんでごちそうします。

 フィーフィーおばさんの10匹の子牛が、お昼ご飯を食べているところと森を散歩しているのが、かわいらしく、でてくる熊のヘンリーおじさん、フィーフィーおばさんもチャーミングです。
 
 おいしいスープをつくる秘密がなんともやさしい。       


「悪魔がヴァイオリンを教わった話」などお役御免になった兵士の昔話

2014年11月17日 | 昔話(外国)

 ヨーロッパでは、傭兵が重要な役割を占めていたようですが、傭兵はいわば契約兵士。
 戦が終われば無用となります。常時軍隊をかかえておくことは、莫大な費用が必要なので、きわめて便利だったにちがいありません。
 次から次へと戦いが続くわけでもないので、お払い箱になった兵士の物語があってもおかしくありません。



悪魔がヴァイオリンを教わった話(メドヴィの居酒屋 世界むかし話7 ドイツ/矢川 澄子・訳/ほるぷ出版/1979年初版)

 長年つとめあげて除隊になった兵士と、悪魔がでてきます。

 宿をたのむが、ことわられて、勇気あるなら城で休めといわれた兵士。この城は悪魔が采配をふるっていて、これまで行ったものは誰も帰ってこないという城。

 さっそく馬の足をしてヤギの角をはやした悪魔がでてきて、兵士を怒鳴りつけるが、兵士は笑って、一夜の宿をねがいたいんでねと落ち着いて答えます。

 ひどく悪魔に気に入られた兵士が、ヴァイオリンを弾きはじめ、悪魔にむかってまねをしろというと、悪魔もまねしてみるが、ひと指ごとに弦が切れてしまう。

 指先のたこを少しけずりとったら、立派なひき手になれるだろうと、兵士は、万力に悪魔の指をはさんでしまう。万力をきりきりしめあげると、悪魔は痛みにねをあげて、もうヴァイオリンは教わらねえというが、兵士は城をあけわたすという約束をさせるという話。

 小道具としてヴァイオリンがでてくるのが、ドイツの話らしいが、こどもに万力というのが理解できるか心配な点。

 ヴァイオリンは、十字軍遠征以降にイスラム世界からもたらされ、相当に高価なもののよう。ヴァイオリンをかなでると人々が踊りだす話も、ヴァイオリンの歴史と重ねたい。

悪魔のすすだらけの兄弟(グリム童話集 下/佐々木 田鶴子・訳/岩波少年文庫/2007年初版)

 ある兵隊がお払い箱になり、お腹をすかして森にはいっていくと、年とったこびとの悪魔にであいます。

 悪魔は「下男になれば一生困らない、七年間仕えたらまた自由になれる、だが七年間のあいだ、からだをあらってはいけないし、髪もとかしてもいけない、髪や爪もきってはいけない」と持ち掛けます。

 兵隊は地獄で、罪人がゆでられている大釜の火を燃やし、家の中をきれいに掃除し、掃除したごみはドアの後ろにすてることになりました。ただ、悪魔は大釜のなかを絶対に見ないようにいいます。

 兵隊が見てはならないといわれた大釜のなかをのぞくと、なかにすわっていたのは軍隊でどなり、殴り、食事をさせなかった下士官。兵隊は大釜のふたをしめると、火をかきたて、まきをたしてやりました。

 二番目の大釜のふたを少しあけてのぞくと、いつもいばって命令し、すきなように兵隊をこきつかった見習士官。兵隊はふたをしめるとうんと熱くなるように丸太をたしてやりました。

 三番目には軍隊でいちばんえらい将軍。兵隊は、ふいごで火に風をおくり、めらめらとよくもえるようにしました。

 すぐに七年間がたちますが、悪魔は兵隊が大釜のふたをあけて、なかをのぞいたことに気がついていました。ただ兵隊が、まきをくべたから命が助かったことをおしえます。

 さらに悪魔は、からだをあらわず、髪もとかさず、髪や爪もきらずに家に帰るようにいいます。さらにだれかからどこからきたのか聞かれたら「地獄からだ」、もし、おまえがだれだときかれたら「悪魔のすすだらけの兄弟で、おれの王さまだ」と答えるようにいいます。

 七年間のお礼がこれだけかと不平たらたらの兵隊ですが、ドアのうしろにすてたごみを入れたリュックが重いので、中身をすてようとすると、地獄のごみはピカピカの金貨に変わっていました。

 兵隊の身なりを見た宿屋でとまるのをことわられますが、金貨をみせると宿屋の主人の態度がころりかわって、一番上等の部屋に泊まることになりました。

 ところが、案の定、兵隊は宿屋の主人にリュックをぬすまれてしまいます。

 兵隊は、もういちど悪魔のところへいき、助けを頼むと、悪魔はからだをあらい、髪も爪もきって、さらにもういちど地獄のごみをいっぱいにつめたリュックをくれました。

 兵隊はもう一度宿屋にいき「もし盗んだ金貨をかえさないと、おれのかわりに地獄に行くことになって、さっきのおれのようなかっこうになるんだぞ」と脅かしたので、主人は恐れ入って金貨をかえし、その上にいくらかたして、このことをだまってくださいとたのみました。

 ずいぶん親切な悪魔ですが、兵隊に同情したのでしょうか。大釜をのぞくなというからには、怖いものがあらわれるかと思うと、軍隊時代のさんざんな扱いのお返しも用意していました。

 この結末はだいぶあまく、王さまの末の娘とあっというまに結婚することになるのですが、ついでにつけくわえた感もあります。


うかれぼうず(ねずの木 そのまわりにもグリムのお話いろいろ1/矢川 澄子・訳/福音館書店/1986年初版)

 ぼうずとありますが、でてくるのは使途聖人。

 おひまをもらった元兵士が、乞食にパンと銅貨をやること3回。この乞食は聖ペトルスが身をかえていたもの。聖ペトルスと元兵士が一緒に旅をすることに。
 聖ペトルスはさまざまの奇跡をおこし、お世話になった人が、お礼をさしだすと断りますが、元兵士はもらえもらえとけしかけます。

 「悪魔がヴァイオリンを教わった話」とおなじように、城にとまった元兵士が、城に住む鬼をやりこめる場面もありますが、この話は大分長く、後半元兵士が地獄にいくと、この鬼がいて、地獄入門はまかりならんという場面や天国でも入るのを断られるなど楽しい場面もあります。

 ところで、兵隊がふるさとにかえる昔話は、日本にはみられないようです。


もくたんじどうしゃもくべえ

2014年11月16日 | 絵本(日本)

   もくたんじどうしゃもくべえ/渡辺 茂男・文 岡部 冬彦・絵/岩波書店/1972年初版

 

 1972年初版ですが、この時点でも木炭自動車はほとんどみられなかったはず。
 それから40年以上たっていますから、今の子は骨董品を見ることになるかも。
 おじいさんがお孫さんに、こんな自動車もあったんだよと話してあげるのに適していそうです。

 修理がおわった木炭自動車が、走り始めます。
 最高速度は40キロ。

 高速道路に入っていくと、ほかの車の邪魔になるからと、Uターンさせられて一般道へ。
 子どもたちの注目をあび、新幹線を見ながら山道へ。
 急な上り坂を登って行った先は?

 カウボーイの帽子をかぶったおじさんの存在感がいい。

 昔よくみた岡部冬彦さんが、こんな絵本にもかかわっていたのを発見して、新鮮です。


ほっぺのすきなこ

2014年11月15日 | 絵本(日本)
ほっぺのすきなこ  

     ほっぺのすきなこ/木坂 涼・作 杉田 比呂美・絵/岩崎書店/2007年初版

 

”ほっぺ”と聞くと、なぜか温かみがあります。

 

赤ちゃんをイメージしてしまいますが
  はなのほっぺ
  いぬのほっぺ
  こぶたのほっぺ
  ぞうのほっぺ
  もものほっぺ
それから
  みずにうつった満月のほっぺ
まで、いろいろでてきます。
そして、もちろん赤ちゃんのほっぺも  

春の風は
  さらさら そより~ん
  そよそよ さらり~ん

雨は
  ぽつぽつ ぽっつ~ん
  ぽっつん つ~ん
赤ちゃんは
  ほわほわ ぽよよ~ん
  くうくう ぽわわ~ん
と、とてもリズミカルです。

感じるというのをよくあらわしているようでした。


ミシンのうた

2014年11月12日 | 絵本(日本)
ミシンのうた  

      ミシンのうた/こみね ゆら/講談社/2014年初版


 
 いつの時代でしょうか。

 洋裁店に見習いとして住み込んでいる女の子(まさに女の子です)。

 ウインドウーに飾られている時代物の手回しのミシンが呼んでいるようで、満月の夜、カタカタ歌うミシンを使って大きな服をつくります。

 お店の主人には、見習いはかってに布にさわっちゃいけないといわれますが、その服はすぐに売れてしまいます。

 次の満月の日も、ミシンは歌います。

 何度も店の主人に怒られますが、女の子がつくる洋服はお客様に喜んでもらえるものでした。

 ところが急にお客がとだえます。

 小さな可愛い服がふたつ残っています。

 あるひ小さい女の子がはいってきて、その服着てみていい?といいます。
 いいわよと”わたし”がこたえ、小さな女の子が着てみると、サイズはぴったり。
 もう一枚の服は”わたし”にぴったりです。
 そして・・・・・。

 夜が中心なので、どこか暗い感じがしますが、なぜか、なつかしいかおりがします。

 満月の日に、手回しミシンをまわすというのが、幻想的です。

 しかし、このミシンは、誰がつかっていたのでしょうか?


アオムシの歩く道

2014年11月11日 | 絵本(自然)


        アオムシの歩く道/月刊たくさんのふしぎ/福音館書店/2013年 

 こんな絵本もあるんですね。
  
 今では丸裸になった山椒の木に、10月ごろまでアオムシのすがたがみられました。いる間は、いつも観察するのが日課でした。
  
 アオムシがキャベツの葉の裏側にまわろうとしたとき、ボタッと地面に落っこちたことにびっくりした作者が、どうしてと疑問をもって、研究しはじめたことが克明に描かれています。

 絵本はだいぶ専門的で、気軽に読めるという感じではありません。

 しかし、断片的ですがいろいろ教えられることたくさん。
    モンシロチョウは、卵からチョウになるまで、春から秋にかけて8回も繰り返すこと。
    モンシロチョウのメスが、2週間の寿命の間にうむ卵は300個以上とあります。
 それにしては、見える数が少ないのは、自然淘汰されるということでしょう。
               
 小学高学年ぐらいからだと、こんな絵本に触発されて研究者の道をあゆむ子もでそうな感じです。                  


メドヴィの居酒屋・・ドイツ

2014年11月09日 | 昔話(ヨーロッパ)

      メドヴィの居酒屋/世界むかし話7 ドイツ メドヴィの居酒屋/矢川 澄子訳/ほるぷ出版/1979年初版


 題名と矢川澄子訳にひかれました。

 居酒屋というと大人のイメージですが、クマ、キツネ、オオカミ、ウサギがでてきて、その軽妙なやりとりがなんとも楽しい話。

 動物たちがメドヴィのマグレッテさまにおまいりに行く途中、居酒屋から腸詰のいいにおいがただよってきます。
 この居酒屋でたっぷりのんだり、たべたりした動物たち。
 ところが、このメンバーお金をもっていません。

 ところが、居酒屋の主人もさすがで、ふところぐあいを見ぬいていて、毛皮屋を呼び寄せてあって、動物たちの毛皮を頂戴することに。

 クマとウサギはしっぽを壁にくぎ付けされてしまいますが、必死にあばれ、もがき、のたうつうちにしっぽを壁にのこしままま逃げ出します。
 オオカミ、キツネはなんとか逃げ出します。

  あとのことを考えず目の前のことにひかれてしまうのは、自分にもありそう。


”ん”

2014年11月07日 | 絵本(日本)
ん  

    ん/さく 長田 弘 え 山村 浩二/講談社/2013年初版

 

 ”「ん」たった一文字なのにこんなに面白い日本語”とありました。

 口と目だけで、それも線で表現されているシンプルな絵が想像をふくらませてくれます。

 たしかに、おまけのように思っている「ん」ですが、ないと困るんですね。

 「にっぽん」も「にっぽ」
 「ごはん」も「ごは」
 「ごめん」も「ごめ」

 やっぱり「ん」がないとさまにならんのですね。                  


ベニスの商人(私家版)

2014年11月06日 | 私家版
 今年(2014年)はシェークスピア生誕450年の節目。
 こんな話が語れるといいと思った一つ。
 お話しの限界からすると、20分程度以内におさめられたらいいと思いつつ・・・。
 多彩な人物がでてきて捨てがたいが、そこをやむをえず、割愛してみました。
 シェークスピア劇を見たり、読んでみたいというきっかけになればというところです。

<ベニスの商人>
 アントーニオは、ベニスに住む裕福な商人でした。その船はほとんど世界中と取引をしていたのです。自分の富をほこってはいましたが、アントーニオは富をおしげもなく使い、友人たちが困っていると気前よく援助していました。友人の中でとくに親しいのはバッサーニオという貴族でした。バッサーニオは、親譲りの財産はわずかで、派手な暮らしのためいつも貧しく、困ったときはいつもアントーニオにたすけてもらっていました。
ある日、バッサーニオがアントーニオのところにきて、いいだすには、
「ベルモントに、莫大な遺産を相続したポーシャという女性がいる。世界中からいたるところから、名のある者が結婚の申し込みにやってくる。ポーシャは金持ちであるばかりか、美しく気立てもいいかただ。この前あった時、わたしは好意を持って見てもらえた。彼女が住んでいるベルモントへいく金さえあれば、私はライバルたちをおしのけて、その愛をかちとる自信があるのだが。」
 アントーニオにはそのとき持ち合わせがありませんでした。「わたしの財産は全部、海に出て行ってしまっていて、手元に金がない。けれど運のいいことに、わたしはベニスで信用がある。君に必要なだけ借りてあげよう」。
 そのころベニスに、シャイロックという名の裕福な金貸しがすんでいました。高利で金を貸しつけてはもうけます。薄情者で、借金のとりたてもきびしいので、みんなに嫌われていました。
 アントーニオはシャイロックが大嫌いで、たいそう軽蔑し、このうえなくあらっぽくとりあつかい、このうえない侮辱をしたのでした。
 シャイロックは、どんな侮辱的なあしらいにも、肩をすくめて、じっと耐えていました。しかし、心の奥では、裕福なとりしましたアントーニオに仕返ししたいという気持ちをいだいていたのです。
 だからバッサーニオとアントーニオがやってきて、三千ダカットの金を3か月、貸してくれとたのんだとき、シャイロックは自分の憎しみをかくし、アントーニオに向かってこういいました。
「あんたは、これまでわしを手荒にあつかってきなさったが、わしはあんたと仲良くしたいんでね。恥かかされたことなんて忘れて、ご用立てしますとも。しかも無利子でね」
 いかにも親切めかした申し出にアントーニオはびっくりです。シャイロックが親切ごかしでつづけるのに
「これもただ、あなたの愛がほしければこそ。このとおり三千ダカット。利息はなし。ただ万一返せなかったときには、あなたの体の肉一ポンドいただくってはどうです?。それもわしの好きな場所から切り取っていいってことにしていただきたいんだが」
 アントーニオは冗談のつもりで承知しました。「よかろう喜んで借用証書にサインをしよう。」
 バッサーニオはそんな危険な証文にサインするなといいましたが、アントーニオは「なあに、おそれることはないさ。借金の期限が来る1か月もまえに、わたしの船がもどってくるさ。」といいはりました。
 こうして、バッサーニオは、ベルモントに行って、ポーシャに求婚する金を手に入れました。
 バッサーニオが旅だったちょうどその晩、シャイロックのかわいい娘、ジェシカが恋人と手に手をとって父の家から逃げました。ジェシカは、父のたくわえのなかから、金貨や宝石のはいった袋をいくつか持ち出したのです。
シャイロックの嘆きと怒りは、みるもおそろしいものでした。娘への愛情は、憎しみにかわりました。
「宝石を身につけた娘が、わしの足元で死ねばいい。」
 いっぽう、バッサーニオはベルモントに着き、美しいポーシャの家を訪れていました。ポーシャの富と美しさのうわさをきいて、いたるところから結婚を申し込む者がやってきていました。
 ポーシャは、父親の遺言通りにすると誓う求婚者しか受け入れないという返事をしました。おおぜいの熱心な求婚者たちがおどろいて帰ってしまうような条件でした。というのはポーシャの心と手を勝ちうるものは、三つの箱のなかからポーシャの肖像画がはいっている箱をあてなければならないのです。正しくあてれば、ポーシャはその者の花嫁になる、まちがえた者は、今後誰に対しても結婚を申し込まない。また自分がどの箱をえらんだかけっしていわないという誓いをたてたうえ、すぐ立ち去らなければならないというものでした。
 箱は金、銀、銅でできていて、金の箱には「わたしをえらんだ者には、多くの男がほしいものをあげよう」
銀の箱には「わたしをえらんだ者には、その者にふさわしいだけのものをあげよう」
そして、鉛の箱には「わたしをえらんだ者は、持てるものすべてを出して、運試しをしなければならぬ。」という言葉がきざんでありました。
 勇敢なモロッコ王は、このテストをうける最初のグループに入っていました。王はいやしい鉛も銀も、ポーシャの肖像画にはふさわしくないと思い金の箱をえらびました。箱の中には、多くの男がのぞむものーどくろが、入っていたのです。
 その次には、ごうまんなアラゴン王がえらんだ銀の箱には、道化師の頭がはいっていました。
「わたしは、道化師の頭にすぎないのか?」と王はさけびました。
 しまいに、バッサーニオがやってきました。ポーシャはまちがったえらびかたをするかもしれないとおそれて、バッサーニオの箱えらびを、引き延ばせるものなら、引き延ばしたいと思いました。ポーシャもバッサーニオの人柄にほれこんでいたのです。
「しかし、」とバッサーニオはいいました。「いますぐわたしにえらばせてください。こうしていても拷問のような苦しみを味わうだけですから。」
 バッサーニオは宣誓をし、箱のほうに歩み寄りました。
「ただ見かけだけでえらぶのは、軽蔑すべきことだ。世の人びとは、相変わらず装飾品にまどわされている。けばけばしい金や、キラキラ光る銀は、わたしにふさわしくない。わたしは鉛の箱をえらぶ。結果が喜びでありますように!」
 鉛の箱をあけてみると、なかにはポーシャの肖像画がはいっていました。バッサーニオはポーシャのほうをむき、あなたがわたしのものであるのはまことですか、とたずねました。
「そうです。」とポーシャはいいました。「わたし自身も、わたしの持ち物もいまではあなたのものに変わりました。この屋敷もあなたのものです。この指輪と一緒に納め下さいませ」そういってバッサニーニオに指輪をひとつ贈りました。
 バッサーニオは、金持ちで気品あるポーシャが、財産もない自分を受け入れてくれたことに感激して、口もろくにきけなありさまです。この指輪は、けっしててばなさないぞと彼は誓いました。
 そのとき、バッサーニオのすべての幸せが、悲しみで打ち砕かれてしまいました。ベニスからの使者がやってきて、アントーニオの船が嵐で難破し、シャイロックが借用証書に書かれていることを実行するよう求めているというのです。
 ポーシャは、夫となる人の友人にふりかかった危険のことをきいて、バッサーニオとおなじくらい心を痛めました。
「まず、わたしを教会につれていって、あなたの妻にしてください。それからすぐ、あなたのお友だちを助けるために、ベニスにいらしてください。お友だちが髪の毛一本でもなくさないうちに、二十倍でも払ってやってくださいませ。お立ちになるまえに結婚してしまえば、わたしのお金はあなたのものですから」
 けれど、結婚したての夫がいってしまうと、ポーシャはアントーニオの身の上が心配で、法律家に変装してその後をおいました。そして、有名な法律家ベラーリオにベニスの公爵あての紹介状を書いてもらいました。
 ベラーリオはベニスの公爵が、シャイロックがアントーニオの肉一ポンドを要求したことから起きた法律的な問題に決着をつけるため、よんでおいたのでした。
 バッサーニオはシャイロックに、もし要求をとりさげるなら、借りた金の二倍の金額を提供するといいましたが、シャイロックはどうしてもアントーニオの肉一ポンドでなければと言い張ります。
 裁判の当日、変装したポーシャが到着しました。夫でさえも、その変装を見破れませんでした。公爵は偉大なベラーリオの紹介のため、ポーシャを歓迎し、この事件の裁きを若い法律家にまかせました。
 ポーシャは、高潔な言葉でもって、シャイロックに慈悲をもてと命じます。しかしシャイロックは、ポーシャの懇願にもきく耳をもたず「わしは肉をいただきます」というのが返事でした。
 シャイロックがナイフを研いでいるあいだ、ポーシャはアントーニオたずねました。
「なにかもうしのこすことはないか」
アントーニオは落ち着いてこたえました。
「なにもいうことはありません。死は覚悟しております。バッサーニオおさらばだ。この不運を悲しまないでくれ。立派な奥さんによろしく。」
 ポーシャは「肉の重さをはかる秤の用意はできたか」とたずね、さらに「シャイロックよ、医者も必要だろう。出血で死ぬかもしれないから」とはなしました。
 シャイロックはアントーニオを殺すつもりでしたから、その答えはこうでした。「証文にはそんなことは書いてありません」
 ポーシャが「証文にはないが、それくらいの慈悲はかけてやるものだ」とさとしても、シャイロックは証文にないとの一点張りです。
「ならば、アントーニオの肉一ポンドをそなたに与える。法律によって保障された権利だ」
「お若いのに、このうえなく正しいお裁きだ!」
 シャイロックはさらにナイフを研ぎ、アントーニオに「覚悟はよいか。」と糺しました。
「ちょっと待て。」ポーシャがさえぎりました。「この借用証書には一ポンドの肉とあるだけで、血は一滴もやると書いてないぞ。万一一滴でも血を流せば、そなたの財産は国に没収だ。」
 そんなことはもとより不可能です。
 シャイロックは残酷なもくろみが失敗したことがわかると、がっかりした様子で、金をせびりました。
「では、バッサーニオの申し出を受けることにいたします。」
「だめだ。」ポーシャはきびしい声でいいました。
「そなたには借用証書に書かれたもの以外は与えることができぬ。そなたのいうように、肉を一ポンド切り取れ。だが忘れるなよ。少しでも多すぎたり少なすぎたりすれば、たとえそれが髪一本の重さにしても、そなたは財産と命を失うだろう。」
 シャイロックは、いまはもう、すっかりおそろしくなっていました。
「わしが奴に貸した三千ダカットをください。そしてやつを釈放してやりましょう。」
 バッサーニオが金を払おうとしましたが、ポーシャがそれをさえぎり、「シャイロック、まだ申すことがある。そなたはベニスの市民の命をとろうとした。ベニスの法により、そなたの財産は没収。生命だけは公爵様のおぼしめしに任せる。ひざまずいて、公爵の許しを乞うがよい。」
 こうして形勢は逆転しました。アントーニオがいなかったら、シャイロックは、情けある取り計らいをまったくしてもらえなかったろう。公爵がくだした判決は、金貸しの財産の半分は国家に没収し、もう半分は、アントーニオがあずかって、シャイロックが死んだのち、娘の夫にまかせることになったのです。これで、シャイロックは満足しなければならなりませんでした。
 バッサーニオは、かしこい法律家に感謝するため、お礼をしようとしましたが、どうしてもともとめられるまま、妻がくれ、いつもはめていると約束した指輪をぬいて、法律家にわたしてしまいました。
 ベルモントにかえると、バッサーニオが指輪をしていないことに、ポーシャはひどく腹をたてたように「どこかの女にやったにちがいありませんわ」と皮肉をいいました。
 バッサーニオは妻の機嫌をそこねて、気が気ではありません。
 しかし、アントーニオのとりなしで、とうとうポーシャは、法律家に変装してアントーニオの命を救い、また指輪をとりあげたのはわたしですわ、と夫に話しました。
 バッサーニオは、妻の勇気と知恵でアントーニオが救われたと知って、おどろいたり喜んだりでした。
 ポーシャはあらためてアントーニオを歓迎し手紙をわたしました。偶然ポーシャが手に入れたその手紙には、難破したと思ったアントーニオの船が無事、港に着いたと書かれていました。
 
 こうして、ベニスの商人の物語は、悲劇にはじまりながら、思いがけない幸運続きで、めでだしめでたしとなりました。
                                       (2014.12.13 3稿)

ズキンガラスと妻

2014年11月04日 | 昔話(北アメリカ)

   ズキンガラスと妻/アンドルー・ラング世界童話集12 ふじいろの童話集/東京創元社/2009年初版


 あまり詳しい説明がないが、出典は、西ハイランドの昔話という。あまりなじみがないが、多分アメリカの話。

 三人姉妹がズキンガラスから求婚され、末の娘がズキンガラスと結婚することに。
 このズキンガラス、人間にもなれるが、この話にはどうしてカラスになっているかについては、ふれられていない。

 やがて三人の子どもができるが、どの子も妻が目をさますといなくなる。
 だれが子どもをつれていったのかにもふれられていない。

 子どもがいなくなるのが続いたので、夫は遠くにある家に引っ越しをしようとしたが、妻が「目のあらい櫛」を忘れたので家にとりにいくと、いつの間にか夫がいなくなってしまう。
 ここから妻が夫を尋ねる旅が続く。

 話の途中にでてくるものは、伏線として存在し、どこかで出番があるのが昔話のパターンであるが、この話では、なぜという問いに答えないで結末になるというあまり見られない構成である。

 ズキンガラスというのは聞きなれないが、日本でもよくみられるハシボソガラスと同じくらいの大きさで,頭・顔・胸・翼・尾羽は黒いけれど,背中・翼の上部・腹は白味の強い灰白色という。