特定の作者の絵本をえらんでいるわけではありませんが、ここ何年かふれた絵本リック・カールさんの絵本。ここにあげたもの以外にもたくさんあるのですが、個人的に読んだものをまとめてみました。
エリック・カールさんの絵は、手作り感があって、どの絵本も温かみがあります。薄紙をつかって特製の色紙をつくり、それを切り貼りして描かれているのですが、時代をへても古さを感じさせず、楽しい仕掛けもあって、子どもの気持ちをつかんでいます。
ごちゃまぜカメレオン/やぎた よしこ・訳/ほるぷ出版/1978年
ときどきCG風の絵本もありますが、無機質的でどうにもすきになれません。
全部を塗りつぶすことなく、白い部分が残っている感じがなんともいえない味わいです。
動物園の動物を見て、いいなと思うのに変身していったカメレオンですが、フラミンゴをみるとピンクの翼と長い足、キツネみたいにスマートになれたらとおもうと、しっぽがはえて、シカのように速く走れたらと思うと、頭にツノが・・。
いろんなものがくっついて、だんだんごちゃまぜになっていくカメレオン。最後はどうなる?
出版社の紹介に、この絵本誕生のいきさつがのせられています。あるとき子どもたちが「動物の絵を描いて」と作者にせがみ、いろんな動物の絵の注文をするので、動物たちの特徴ある部分を描きつないでいくと、できあがっていったのは複雑な生き物。複雑になればなるほど子どもたちは喜び、この絵本誕生のきっかけになったといいます。
絵本だけではなく紙芝居もあります。紙芝居の方がひとまわりおおきいので、複雑な様子と色使いが楽しめそうです。
たんじょうびのふしぎなてがみ/偕成社/1978年初版
ワクワク感がいっぱいです。
チムの誕生日は明日。
枕の下から、とこどころ△☆□がある謎の手紙が。行き先を示すような手紙。
ページが山、石、階段の形に切り取られています。そのほかページに丸い穴があいていたり、まどがあったり。
こどもの興味をひきつける簡単な仕掛け。それだけ次に”なにが”あるか引き込んでいきます。
まるで宝探し。誕生日にこんな手紙をもらったらうれしくなります。
はらぺこ あおむし/もり ひさし やく/偕成社/1988年初版
今年、50cmほどの山椒の木から10匹以上のナミアゲハが育っていきました。青虫のころ毎日楽しみで観察していました。青虫がいつのまにかいなくなり、どこでさなぎになるのか見たいと思っていましたが、最後の青虫が玄関のタイルの上を散歩?しているのを見ていると、土台のコンクリートと外壁の間に姿を隠し、茶色に変身。誕生が楽しみです。
2年ほど前は、モンシロチョウの青虫をみつけ、部屋の中においておいたら、部屋の中を飛び回っていたので、外にだしてあげたことも。そのときの抜け殻は今もおいてある。
ということで、久しぶりにこの絵本を取り出してみた。
手元にあるのは、手のひらサイズの小型本。子どもが小さいころ何度も読んであげた記憶が。どんな反応だったか忘れてしまう昔のこと。
この絵本の魅力は絵本の作り方とリズム感。そして大きくなっても年齢に応じて楽しめることにありそう。
我が家の20倍はありそうな超大型版が図書館にあって、借りてきました。読んであげるなら二人がかりの絵本です。今の印刷技術では、大きさも自由自在にできそうです。
ユウチューブで様々な動画が見られるのも、この絵本のもつ魅力をあらわしています。
ところで「はらぺこあおむし」は、アメリカでこの本を印刷・製本してくれる印刷所がみつけられずにいたとき、偕成社の当時の社長が印刷所をみつけたというエピソードがありました。
さびしがりやのほたる《光る絵本》/訳:もり ひさし・訳/偕成社/1996年
ホタルが光るラストの仕掛けに感動でした。
十八匹のホタルがでてきて、順番に光っています(全部ではありませんが)。
絵には物足りなさをかんじている方もいますが、光を効果的に表現するための工夫だったのではないかと思いました。
図書館から借りてきたのですが、仕掛けは電池式のようで、ホタルの光をみることもできなかった方もいました。
ストーリーはいたってシンプル。ひとりぼっちのホタルが 電球や、ろうそく、懐中電灯やちょうちん、動物の目、車のヘッドライトや花火を、仲間と見間違えながら、結びで、ホタルの群れに合流します。
ホタルは世界で二千種類、ホタルの光は熱をださないに冷たい光で、まだすっかり解明できていないとありました。
川の護岸がコンクリートになって、ホタルをみたことがない子が圧倒的というのも、さびしい限りです。
できるかな?あたまからつまさきまで/くどうなおこ・訳/偕成社/1997年
ペンギンさんが、頭をくるんとまわして
キリンさんは くびを ぐいんとまげて
アザラシは 両手を ばんばんして
ゴリラは むねを どどんと たたいて
ワニは おしりを くいくい ゆすって
ほかにもラクダ、ロバ、ゾウ、ねこが
「できるかな?」
といって挑発?
そういわれたら、だまっていられません。
ついつい 体をうごかしてしまいそう。
そうです。読むというより動きをまねしたくなる絵本です。
10このちいさなおもちゃのあひる/訳:くどう なおこ/偕成社/2005年初版
おもちゃのアヒルがのった船が嵐にあって、10このアヒルが海に投げ出されてしまいます。
アヒルたちの冒険を通じて、豊かな海の表情がつたわってきます。
アヒルのうえを飛び越えるいるか。
あざらし、しろくま、フラミンゴ、ペリカン、かめ、たこ、かもめ、くじら。
10番目のおもちゃのアヒルは、本当のアヒルの家族と出会い、そのあとをついていきます。
お月さまが、みんなに声をかけると、アヒルのかあさんも、こどもも”くっわくっわくっわくっわ”と返事。
最後に子どもが喜びそうな仕掛けがあって、おもちゃのアヒルのおなかをおすと、返事をします。
ホットケーキできあがり!/アーサー・ビナード/偕成社/2009年初版
朝一番に「きょうは、でっかいホットケーキがたべたいなぁ」と思ったジャック。でも、すぐには食べられません。
小麦を刈り取り、ロバに乗せて水車小屋へ。もみ殻と小麦をわけ、製粉し・・・
卵を用意し、牛乳をしぼり、バターをつくり、イチゴジャムを用意し、ようやくホットケーキをつくりはじめます。
いまは、スーパーにいけば、なんでも簡単に手に入るように見えますが、口に入るまでは、じつは、ながーい過程があって、さまざまな人のかかわりがあり、材料が必要なことをさりげなく教えてくれます。
ジャックがかるがると仕事をこなし、水車小屋で製粉するのですが、なぜかジャックは裸足です。
それにしてもエリック・カールさんの絵には、いつも驚かされます。
牛がでてくるのですが、まるでパッチワークのようです。
えを かく かく かく/アーサー・ビナード/偕成社/2014年初版
画面いっぱいの
あおいうま あかいわに きいろいうし ピンクのうさぎ
みどりのライオン オレンジいろのぞう くろいしろくま みずたまもようのろば
とにかく圧倒されます。
まちがった いろ?
そんなものはない
既成概念をうちやぶってくれます。解説をよまなくても、絵だけで楽しめます。
読み聞かせをされたかたの子どもの反応もなるほどとうなずけます。