どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

つかまえた

2021年08月31日 | 田島征三

      つかまえた/田島 征三/偕成社/2020年

 

なにを”つかまえた”?

川の浅瀬で見つけた大きな魚。そうっと そうっと近づいていったら、足がすべり、まっさかさまに 水の中。

にがすもんか にがすもんか

手の中で ぬるぬる にぎると ぐりぐり いのちがあばれる。

せっかくつかまえた魚。草原に寝転んでいると 魚をだいて 魚にだかれる 夢を見た

目がさめると 魚はぐったり 草の上

しんじゃだめ しんじゃだめと、川のそばにくると 手からにげだして 川の中 そのまま・・。

魚だって 死ぬのはいや! 

 

川で魚を手づかみする光景は、だいぶ昔。今だと危険だからと すぐにストップがかかりそう。

田島さんの、いつもながらのダイナミックなタッチに圧倒されました。


おはなしばんざい

2021年08月30日 | 絵本(外国)

     おはなしばんざい/アーノルド・ローベル・作 三木 卓・訳/文化出版局/1977年

 

 いたちに捕まって、スープにされそうになったねずみが、「スープにおはなしをいれないと おいしくないよ」と、4つのお話をいたちに聞かせます。

・みつばちと どろんこ

 ねずみのおとこのこが みつばちに どこまでも おいかけられますが どろんこにもぐりこんで たすかります。

・ふたつのおおきないし

 大きな二つの石が、丘の向こうがわがきになり、とりの 町やお城、山、谷のすばらしい ながめだったというはなしに かなしくなります。でも 百年後、ねずみの 報告を聞いて 向こうがわも こっちと そっくり おなじとわかって、幸せな気持ちになります。

・こおろぎ

 ねずみのおんなのこが こおろぎの なきごえで ねむれなくなり こおろぎに やめてといいますが、こおろぎは それを無視して 仲間をふやし、大きな声で なきます。

・とげのあるき

 ねずみのおばあさんのイスに とげがはえ、おまわりさんの忠告で、水をやるとつぼみがでて、おおきなバラに。

 いたちは、おはなしにでてきた みつばちの巣、どろんこ、二つの大きな石と、おろぎ10ぴき、とげのある木を見つけ、家に帰って全部スープにいれようとしましたが、スープのなべは からっぽでした。
 いたちは、いそいで飛び出したので、ドアを閉め忘れていました。ねずみは、自分の家へ走って帰ってほっとしました。それから暖炉に火をつけて、晩ご飯を食べ、読みかけの本を読みおえます。

 

 どれもとぼけたような軽妙な話ばかりです。


空神さまと万作さん‥和歌山

2021年08月29日 | 昔話(関西)

         和歌山のむかし話/和歌山県小学校国語部会編/日本標準/1977年

 

 夏のある日、万作さんという男が、おかみさんと喧嘩してついと家を出た。すると白い衣を着た山伏すがたのもんが手招きする。なにかおもしろいことがないかと山伏もんの誘いにのって、背中におわれると、そんまま地上を離れ、空へ。

 大きな木の上に降りると、そこから見える村では、人形芝居の楽屋の準備。万作さんが見物したいというが、山伏はまだ日が高いからと、山伏たちが酒を飲んだり、歌ったり踊ったりしている場所へつれていきます。万作さんも思いっきり飲ましてもらい、いい気分になったところで、眠ってしまいます。

 どのくらいたったかわからんとき、ふと目をあけた万作さんのまえには、おくさんが。

 二日も何をしていたかとやかましく言われた万作さんは、山伏の言葉を思い出し、口をつぐみます。山伏から他言するなといわれていました。

 それからも、おかみさんがガミガミやかましく言い出すと、黙っとることにした万作。おかみさんはおかみさんで、いくらいうても万作がすぐだまるので、つまらんようになって、あんまりいわなくなってしまいます。

 

 夫婦の関係も微妙で、何か言われても黙ると、文句を言う方もいつか文句を言わないようになります。空神さまが、かわったいたずらをしました。万作さんの得難い体験でした。


ぼくのニセモノをつくるには

2021年08月28日 | ヨシタケ シンスケ

      ぼくのニセモノをつくるには/ヨシタケ シンスケ/ブロンズ新社/2014年

 

 宿題、お手伝い、部屋の掃除、やりたくないことだらけで ゲンナリしていたけんたくんはある日 いいことを おもいついた。

 お手伝いロボットを買って、そいつに 代わりになってもらおうというのでした。

 ロボットは、ニセモノだとバレないためにあなたのことをくわしく教えてほしいといいます。

 そこから けんたくんは 家族のこと、からだの特徴、すきなもの、できること、できないこと、うまれてからのこと、と次々に考えていきます。

 けんたくんの情報をたっぷり 仕入れて ロボットは、ニセモノになることを決意し、家に戻りますが・・・。


 一ページに情報がいっぱい詰め込まれ、まさに あるある辞典。

 <できること>

  ウインク ピーマンだけをじょうずにどける いっしゅんハンドルから手をはなす いちどに二本の木にのぼる カニに挟まれても我慢する 枕をつかわずにねる

 <できないこと>

 女子のきもちを理解する すなおにあやまる ひとりでスーパーの試食コーナーにいく

 <ぼくのあと>

 食事のあと、給食をひっくりかえしたあと わすれもの おねしょ

 <ぼくはマシーンでもある>

 ぼくはまいにちごはんをたべてうんちする。つまりぼくは「うんち製造マシーン」でもある。

 かみのけがどんどんのびるから。「かみのけ製造マシーン」でもある。

 夕方5時くらいにいつもおなかがなるから 「もうすぐ夕ごはんどけい」でもある。

 くつしたにすぐあながあくから「くつしたボロボロマシーン」でもある。

 

 けんたくんは まだつくりとちゅう ひとりしかいない と自己分析。ぼくってなんだろう・・ 自分のことを 考えるのって めんどうくさいけど なんかちょっと たのしい気もします。

 昔に戻ってみれば、思い当たることばかり。笑いながら考えさせらえることも たくさんありました。

 裏表紙では、女の子とウサギ型ロボットが会話していて、ニセモノをつくる相談をしています。 


サル手の嘉右衛門‥和歌山

2021年08月27日 | 昔話(関西)

          和歌山のむかし話/和歌山県小学校国語部会編/日本標準/1977年

 

 柿の皮をむくのに、柿を一つほりあげといて、それが落ちてこん間に別の柿をむいたうえ、落ちてくる柿を受け止めたという器用な男。ついたあだながサル手の嘉右衛門。

 あるとき嘉右衛門の家の藁ぶきをふきかえることになって、近所の男たちが手伝いに集まってきた。ところがふきかえにつかう縄がどこにもない。すると嘉右衛門は「これからなうから」といって、どんどん縄をないはじめます。手伝いの人が、小半日もかかって屋根の古藁をはぎ終わって、屋根からおりてくると、嘉右衛門はふきかえようの縄をないおわっていて、みんなあきれてしまいます。

 あるとき、おかゆをたこうとおもったが米がない。嘉右衛門は湯をわかしておいてから、裏山でしゅろの皮を百枚ほどはいで、それを一枚一枚ひろげてたばね、市場にもっていって売って、その金で米を買い込んで帰ってくると、さっきしかけた湯が、ちょうどよい加減に煮えていたという。

 

 そんなことが?と思う間もなく話が続いていくというのが、昔話の面白いところです。


すなのおしろ

2021年08月26日 | 絵本(外国)

     すなのおしろ/作・エイナット・ツァルファティ 訳・青山 南/光村教育図書/2021年

 

 浜辺で大勢の人が日光浴。(こんな光景が はやく復活してほしい)

 おしろをつくるのが すきな わたし。すなの おしろをつくりました。そんじょそこらにあるお城ではありません。本物のお城で、ドームも塔もあるし、ワニを放し飼いできます。

 すぐに世界中から 王さまやお妃さまがやってきました。24時間いつでもでる アイスクリームが好評。

 ところが朝食のあたりから雲行きが怪しくなってきました。食べ物がすなだらけ。騎士たちの三種競技のトーナメントも ぜーんぜんだめ。鎧にすなが入っています。温室の貴重な植物も育ちません。王さまの宝箱の鍵穴に すながつまって あけられません。イチジクミルクのお風呂も すなで台無し。

 みんなかんかん。

 すなの お城だから しかたない。そこで おっきい すなの 玉をつくったら・・。

 史上最大の すな合戦が はじまりました。と、いきなり海水が入ってきて 海が ぜーんぶ ながしてしまいました。

 それから わたしは?

 

 作者は、浜辺のすなで あそんでいる子どもをみて、想像の翼を広げて描いたのでしょうか。さまざまな人物と衣装、お城の様子、パーティや おいしそうな食事が カラフルです。


うどんの字・・和歌山

2021年08月24日 | 昔話(関西)

          和歌山のむかし話/和歌山県小学校国語部会編/日本標準/1977年

 

 村の一軒のうどん屋がお寺の和尚さんに頼んで「うどん」という字を書いてもらい、あんどんに貼り付けていた。

 旅の男が、あんどんの字をみて、五円で売ってくれともちかけた。五円というと米一升かえる額。うどん屋は喜んで、あんどんの紙をはがして売ることに。

 あじをしめたうどん屋が、和尚さんのところにでかけ、もう一度字を書いてくれるよう頼みこむと、おくへはいった和尚さんは「うどん」「うどん」と、下書きした何百枚もの紙をかかえてきて「これ見よ」と、うどん屋の前に投げ出します。

 

 オチがわかりにくい話ですが、和尚さんがうどん屋にわたした「うどん」という文字は、何百枚もの下書きの中で、一番できのよかったものでした。二匹目のドジョウはいないと いいたかったのかも。買った旅の男が何者かも気になるところ。


モモンガのはいたつやさん

2021年08月23日 | 絵本(日本)

      モモンガのはいたつやさん/ふくざわ ゆみこ/文溪堂/2012年

 

 森の配達屋モモンガさんの一日は、毎朝、はためく青い旗がないか見渡すこと。モモンガさんの家は、森でいちばんのっぽの杉の木にありますから、森全体をみまわすことができます。

 青い旗をみつけ、ウサギのおばあさんのいえにいってみると、注文は、もりのみんなに にんじんケーキをとどけること。

 クヌギの木の掃除中のリスさん、川のなかの中洲で釣りをしているクマさん、崖の穴のコウモリさん、楠の木の家で洗濯しているネズミさん、露天風呂でくつろいでいるシカさんに、ケーキをとどけ、受け取りのスタンプをもらいましたが、あれ、お届け物が一個あまっています。

 モモンガさんが、森を見渡していると、しらないいえの明かりが見えました。いそいでいってみると・・・。

 

 受け取りは、はっぱのノートにつけた手形(足形かな?)。はみだしているのは、どうやらクマさん。

 ふくざわさんの描く 優しく、かわいいキャラクターと、ほんわかするお話が楽しめました。


ぼくのきいろいバス

2021年08月22日 | 絵本(日本)

     ぼくのきいろいバス/荒井 良二/学研/2007年

 

 はじめてひとりでバスにのってとなりの町へでかけることになった日の朝、どきどきして 目覚ましよりはやくおきると、太陽からでてきたのは、きいろいもこもこ。まぶしいもこもこは、きいろいバスになりました。

 おはようとあいさつして、バスに乗り込むと いつもの町をゆっくりゆっくり はしります。

 町は、あさごはんの支度。

 きょうひとりで ほんとうのバスに乗るんだよと、こごえでいうと、きいろいバスは、たのしそうに もこもこ おしりをふりました。

 町をぬけると、やぎやうしが あさごはんをたべ

 ひろばでは みんないろんなことを しています。

 たのしそうに!
 いっしょうけんめいに!

 ぼくもなにかしたくなって 地面に 絵をかきました。

 たのしそうに!
 いっしょうけんめいに!

 たのしく たのしく たのしく たのしく!

 もういちど バスにのると とおくから ジリジリジリリーッという音。

 家にもどると 朝ごはんの においがしてきました。

 きいろいもこもこのバスは かえっていきました。

 ぼくは いつもより いっぱい ごはんを 食べ 

 ひとりで バスにのり 隣の町へ いきます。

 

 きいろいバスは ひとりでも大丈夫と ぼくの 背中をおしてくれたのでしょうか。

 きいろいもこもこのバスの下には とても不思議な光景。

 建物が人物で、広場ではウエイトリフテング、編み物、縄跳び、ボール遊び、玉乗り。バレエをしている人も。

 最初から最後まで黄色が主役です。


公爵夫人のふわふわケーキ

2021年08月21日 | 絵本(外国)

    公爵夫人のふわふわケーキ/ヴァージニア・カール・作 灰島かり・訳/平凡社/2007年

 

 原著は1955年でアメリカで子どもたちに読み継がれてきたものが、2007年まで翻訳されていなかったのが不思議なくらいです。

 ある日、暇をもてあました公爵夫人が、とつぜん公爵と子どもたちにケーキを作ることを思いつきました。「ケーキの作り方を お教えしましょう」と料理番が もうしでましたが 「けっこうよ」と 断った公爵夫人。これは事件がおこりそうとおもっていると、そのとおりのことが。

 ふくらまし粉をいれすぎたせいで、ふんわり ふわふわ ふんわり ふわふわ ふくらんで 町を見下ろすほどの高さまでふくらんでしまったので、さあ、大変。

 石投げ機で大きな石を投げても弓矢で放っても、どうにもなりません。

 でも、上と下で話ができるので、夫人は上から指示したり お願いしたり。

 そのとき、13人の一番末っ子が「おなかが へったよお。なんか たべたいよ。エーンエーン」となきはじめました。

 なにか食べ物は?

 ありました。ありました。ふわふわケーキ。

 みんな たべはじめました。王さまも、女王さまも、将軍たちも、家来たちも。公爵も、おひめさまたちも。もちろん、上からは公爵夫人。13人のお姫さまの出番がなかなかないのですが、ちゃんと出番が到来して一安心。

 おかげで、公爵夫人は無事帰還です。

 ケーキの材料は さとう、小麦粉、バター、アーモンド、ほしぶどう、ウシのあぶら お酢、たまご、もも、すもも、プリン、シナモン、ペパーミント、アンゼリカ、ナツメグ、ローレル。どんな味でしょう。

 ユーモアもたっぷり。

 公爵夫人がケーキをつくる場面。「お酢は すっぱい、こりゃ しっぱい」

 公爵もなかなか。「みんな、おかあさまに いってらっしゃいを しようね。おかあさまは ケーキのくもに のって お空へ のぼっていかれるようだ」

 泣きはじめた一番末っ子のガンヒルダをなだめるのは「なんなら あたらしいおかあさまを みつけてこようか」。

 ただ、「公爵さまは、お城で やすんでいないときには、いつも 戦を していました。」というのは余分です。


このあかいえほんをひらいたら

2021年08月20日 | 絵本(外国)


          このあかいえほんをひらいたら/ジェシー・クラウスマイヤー・文 スージー・リー・絵 石津 ちひろ・訳/講談社/2013年


 赤い絵本?ですが、表紙は赤ではありません。開くと赤と黒い丸の表紙。さらに開くと表紙が緑の絵本、その次はだいだいろの絵本と絵本の表紙が次々にかわり、絵本がだんだん小さくなっていく仕掛け。

 「あかいえほん」では、てんとうむしがちっちゃなてで ひらこうとしているのが「みどりのえほん」
 「みどりのえほん」で、かえるが開こうとしているのは「だいだいいろのえほん」とつづきます。

 絵本が小さくなるにしたがってでてくる動物が大きくなって、指がえほんをひらけなくなると、こんどは絵本がだんだん大きくなります。

 森の図書館?ではキリンやクマ、ヤギ、ウサギ、そしてヘビなど読書の真っ最中です。

 よくもまあ、手のこんだ絵本を作り上げたものです。


子どもの本の作家たちの戦時下の記憶

2021年08月20日 | いろいろ

   子どもたちへ、今こそ伝える戦争ー子どもの本の作家たち19人の真実ー講談社2015年

 

 とりあえず、図書館で目についた本を読むことがほとんどです。作家について知ったうえで読んでいなかったのですが、80歳代前後の方は戦時下どのような体験をしていたのでしょうか。

・「ねんどの神さま」で記憶にのこっている那須正幹さんが、この7月22日になくなりました。那須さんは1945年8月6日爆心地から3キロの地点にいました。

 頭と足に軽いけがをしただけといいますが、そのときいっしょにいたおばさんは日傘が燃え、半身大やけどをされたといいます。3歳ですから記憶がないというのもわかるようなきがしますが、そのあとのひどい雨のことはおぼえているといいます。父親も爆心から2キロの校舎で被爆し、教職に戻らず会社づとめをはじめたといいます。お姉さんも動員先の工場で被爆したが、生涯あの日のこと話さなかったという。

・井上洋介さん(1931年ー2016年)は1945年3月10日、東京大空襲にあい、やけだされた人たちの行列の風景をたんたんと描いています。

田島征三さんは、大阪堺市で3歳のとき機銃掃射をうけ、2年後町が空襲にあったが、別の町に移住して助かっています。

 その後住んだ町の廃棄物最終処分場反対運動で、「反対」といえない状況においこまれ、処分場賛成に決まった経験をあげ、「戦争反対」という声も、あしたにあげられるか?と疑問をていしています。

長野ヒデ子さんの病弱の父に赤紙が来たのは1945年5月8日、4歳のとき。母親は「お父ちゃんまでも戦争にいくのだから負ける。」と思ったそうだ。

 1945年8月5日、空爆の予告ビラどおり空襲。

 1945年8月15日 死んだような廃人になって父親が帰ってきた。

 1946年5月23日、父親が井戸で自死。

 父親の出征記録がなく、父親に何があったのか判明しないという。

かこ さとしさんが、戦車工場で部品をつくっていたときのこと。腹が痛み工場付属の病院で、ただの腹痛といわれ安心したら、戦地にいって盲腸になったら麻酔無しで手術されるといわれ、手術することに。手術してくれた先生は出征して帰ってこなかったこと。

 盲腸の再手術で、同室となった水兵(やはり盲腸炎)が、乗っていた戦艦がミッドウエー海戦で沈み、海軍の発表とはちがい、全滅にちかい大敗で、生き残りの水兵の口封じのため、工場に隔離されたことを話してくれた後、憲兵が不意に水兵を連れ去ったこと。

 病院でお世話になったおばさんが、隣近所から非国民と罵られ家に石を投げられ、自宅で自死したことにもふれられています。


よくばりぎつねのじろろっぷ

2021年08月19日 | 絵本(日本)

    よくばりぎつねのじろろっぷ/おの りえ・作 たるいし まこ・絵/福音館書店/1997年

 

 落ち葉の山でうまれそだったじろろっぷは、とてもよくばり。

 おちば、どんぐり、だんごむし、おさかなもひとりじめ。お月さまをほしがって、たかい木に登り しっぽのほね?をおっても はんせいはみられません。

 ぬまひきがえるの魔法のくつを、ぬきとると かぜよりはやく、びゅんとかけだします。

 おおきなくまの くちからはみでた さかなのしっぽを とおるついでに ひっぱれば、それは のどにつまった魚の骨。

 海を駆け抜け、えびの ひげをひっぱると 漁師の網からぬけだせて、えびはおおよろこび。

 とおい国にやってきて、あれこれもらい、山の上に のぼると でっかいりゅう。

 りゅうの金のきばがほしくなり、きばに しがみつくと りゅうはびっり おおきなくしゃみ。ふき飛ばされたとたん、りゅうの 虫歯がぬけてしまいます。

 虫歯をかかえたじろろっぷは、りゅうのくしゃみで そらのかなたへ。魔法のくつも抜け落ち、おちたさきは とうさんのうえ。

 

 よくばりが なぜか役に立つという憎めないじろろっぷ。

 このじろろっぷが 大人になって 歯医者になるというのがみそ。診療所の屋根には、りゅうの虫歯が鎮座しています。

 軽快なテンポにひきこまれます。


カキ売りとトウガラシ売り・・群馬

2021年08月18日 | 昔話(関東)

          群馬のむかし話/群馬昔ばなし研究会・編/日本標準/1977年

 

 旅商いをするカキ売りとトウガラシ売りが都で商いをしたが、正月も近いのに、いっこうに売れない。

 山道の途中で夜になり、寒さがひとしお身にしみる。焚火でほっとした気持ちになると、ふたりは急にはらがひっていることに気がつく。べんとうをたべようと腰に手をやると、べんとうはなくなっていた。

 カキ売りは荷のなかからカキをだして、ひとりでもぐもぐ食べはじめます。これをみたトウガラシ売りが、カキをわけてくれるよう頼んでも、今日は売れなかったが、あしたになればまた売れるからと、お金を出せといいます。トウガラシ売りが、自分があんまりみじめになるからと、くやしまぎれにトウガラシを食べたが、これがからくてからくてしかたがない。ところがひとつ、またひとつと口にすると、からだから、ぽっぽ、ぽっぽと汗がふきだして、いーいのでしょうか気持ちに。

 カキ売りがねぼけ声でもっと火を焚いてくれと頼んでも、トウガラシ売りの方は、からだじゅうが、ぽっぽ、ぽっぽと燃えているようにあったかい。そのうちうとうと眠ってしまう。

 ところが、まっくろな空から雪が降ってきて、あたりは一面銀世界。

 よく朝、村の人が二人を見つけます。一人の男は凍って死んでおり、もう一人は雪の中で汗をかいてねており、まわりの雪がとけていたという。

 

 何が分かれ道になるかわかりません。困ったときはお互いさまです。


ぼくとポチのおかしな12人のともだち

2021年08月17日 | 絵本(日本)

      ぼくとポチのおかしな12人のともだち/きたやま ようこ/理論社/1999年

 

季節ごとにやってくるともだち。

 1月は ゆきだるま

 2月は 鬼の女の子

 3月は ロボット

 4月は くま

 5月は ワニ

 6月は こぶた

 7月は ひまわり

 8月は ペンギン

 9月は お月さま

10月は おばけ

11月は りす

12月は クリスマスツリー

季節感満載。ぼくとポチ、ともだちのユーモラスな遊びにほっこり。何をして遊んだのか想像してみてください。真っ先に自分の誕生月に目がいきそうです。

<ともだち>って どんな存在?

ともだちがいると ともだちがふえる
ともだちがいれば さむさなんて へっちゃら

ともだちがいると ゆうきがでる

ともだちがいると つぎつぎに ゆめが うまれる

ともだちは げんきのもと
ともだちは いるだけで あかるくなる

ともだちは わくわくさせてくれる
ともだちがいると たからものが ふえる