赤ちゃんに液体ミルクを 災害に強いママの味方 「解禁」に企業・国鈍く 「暮らしアイ」
その他 2016年2月9日 (火)配信共同通信社
乳幼児用の液体ミルク製造が国内で認められていないことに疑問を持った母親が、解禁を求める署名集めなどの活動に乗り出し、反響を呼んでいる。お湯で溶かして調乳する必要がない液体ミルクは、清潔な水がない災害時に赤ちゃんの命をつなぐ栄養になり、外出の際の携帯にも便利だ。しかし、粉ミルクが広く普及している日本で、企業や行政の動きは鈍い。
▽海外では普及
昨年12月、東京都内のビルの一室に商社や飲料メーカー社員、経済産業省職員、女性起業家といった男女が集まった。横浜市鶴見区の主婦末永恵理(すえなが・えり)さん(36)の呼び掛けで発足した「乳児用液体ミルク研究会」の初会合だ。
液体ミルクは紙パックやペットボトルに無菌状態で密閉され、常温で半年~1年保管が可能だ。清潔な水が不足したりお湯を沸かしたりできない災害時も利用できるため、東日本大震災ではフィンランド在住の日本人女性らが計1万4千個を被災地に送り、喜ばれた。
研究会に私的に参加した神戸市消防局の沢田邦彦(さわだ・くにひこ)さん(29)は「災害時は哺乳瓶の洗浄が難しく、現時点でベストの選択肢。各家庭で備蓄するのが理想的だ」と話す。自らも個人輸入して長女(10カ月)に与えている。
手軽に持ち運べるため、海外では広く流通している。「日本にもあったら便利なのに」。子育てをするうちに思い立った末永さんは2014年11月、インターネットで署名活動を始めた。すぐに1万人が賛同し、今は1万2千人を超えた。賛同者のコメントは大手粉ミルクメーカーに届けた。
2児を育てる東京都の会社員藤井亜樹(ふじい・あき)さん(33)は「緊急時に近くのドラッグストアで簡単に買えるようになれば便利。価格が割高でも需要は高いはず」と話す。米カリフォルニア州で長男(11カ月)を出産した西川絵理(にしかわ・えり)さん(32)は「外出のハードルが下がった」と強調する。米国ではスーパーやベビー用品店でも販売しているという。
▽独占市場で
国内で製造できないのは、食品衛生法に基づき乳製品の成分や製造基準を定める厚生労働省の省令が、乳幼児用の食品を「粉乳」と限定しているためだ。1951年の制定当時、保存期間が長く常温で流通できる粉乳が最適と考えられていた。
技術向上により海外では液体ミルク製造が盛んになり、利便性に着目した国内の乳業関係者らは09年、厚労省に解禁を要望。改正に向けた議論が始まったが、衛生面での安全性を示すデータが未提出で、中断している。
日本乳業協会は「いずれはデータ収集に取り組む」と説明するが「日本では育児には粉ミルクというのが一般的。液体ミルクは認知度が低い」との本音も漏れる。国内市場は森永乳業や明治乳業など大手6社が独占し、「新規事業の必要性を感じていないのでは」と指摘する消費者もいる。
厚労省の担当者は利点を認める一方、「液状で常温保存すると微生物が増殖しやすい。まずは製造者側が安全性を示す必要がある」としている。
その他 2016年2月9日 (火)配信共同通信社
乳幼児用の液体ミルク製造が国内で認められていないことに疑問を持った母親が、解禁を求める署名集めなどの活動に乗り出し、反響を呼んでいる。お湯で溶かして調乳する必要がない液体ミルクは、清潔な水がない災害時に赤ちゃんの命をつなぐ栄養になり、外出の際の携帯にも便利だ。しかし、粉ミルクが広く普及している日本で、企業や行政の動きは鈍い。
▽海外では普及
昨年12月、東京都内のビルの一室に商社や飲料メーカー社員、経済産業省職員、女性起業家といった男女が集まった。横浜市鶴見区の主婦末永恵理(すえなが・えり)さん(36)の呼び掛けで発足した「乳児用液体ミルク研究会」の初会合だ。
液体ミルクは紙パックやペットボトルに無菌状態で密閉され、常温で半年~1年保管が可能だ。清潔な水が不足したりお湯を沸かしたりできない災害時も利用できるため、東日本大震災ではフィンランド在住の日本人女性らが計1万4千個を被災地に送り、喜ばれた。
研究会に私的に参加した神戸市消防局の沢田邦彦(さわだ・くにひこ)さん(29)は「災害時は哺乳瓶の洗浄が難しく、現時点でベストの選択肢。各家庭で備蓄するのが理想的だ」と話す。自らも個人輸入して長女(10カ月)に与えている。
手軽に持ち運べるため、海外では広く流通している。「日本にもあったら便利なのに」。子育てをするうちに思い立った末永さんは2014年11月、インターネットで署名活動を始めた。すぐに1万人が賛同し、今は1万2千人を超えた。賛同者のコメントは大手粉ミルクメーカーに届けた。
2児を育てる東京都の会社員藤井亜樹(ふじい・あき)さん(33)は「緊急時に近くのドラッグストアで簡単に買えるようになれば便利。価格が割高でも需要は高いはず」と話す。米カリフォルニア州で長男(11カ月)を出産した西川絵理(にしかわ・えり)さん(32)は「外出のハードルが下がった」と強調する。米国ではスーパーやベビー用品店でも販売しているという。
▽独占市場で
国内で製造できないのは、食品衛生法に基づき乳製品の成分や製造基準を定める厚生労働省の省令が、乳幼児用の食品を「粉乳」と限定しているためだ。1951年の制定当時、保存期間が長く常温で流通できる粉乳が最適と考えられていた。
技術向上により海外では液体ミルク製造が盛んになり、利便性に着目した国内の乳業関係者らは09年、厚労省に解禁を要望。改正に向けた議論が始まったが、衛生面での安全性を示すデータが未提出で、中断している。
日本乳業協会は「いずれはデータ収集に取り組む」と説明するが「日本では育児には粉ミルクというのが一般的。液体ミルクは認知度が低い」との本音も漏れる。国内市場は森永乳業や明治乳業など大手6社が独占し、「新規事業の必要性を感じていないのでは」と指摘する消費者もいる。
厚労省の担当者は利点を認める一方、「液状で常温保存すると微生物が増殖しやすい。まずは製造者側が安全性を示す必要がある」としている。