11月17日(金) 10時40分~10時55分/1ch NHK総合
ひざが痛む場合、温めるのか冷やすのか迷うときがある。ランニングが趣味のAさんは、ランニング中に外側に強い痛みが出て走れなくなった。Bさんは長年お茶を習っており、運動不足を自覚している。Bさんは数年前から立ったり座ったりするときなど、ひざの内側に痛みが出るようになった。同じひざの痛みでも原因によって対処法は異なる。テーマは「その痛み 原因は?」。専門家は帝京大学の中川匠教授。
ひざの痛み
ランニング中にひざを痛めたAさんは腸脛じん帯に炎症が起きたと思われる。腸脛じん帯は骨盤と膝下のホネを繋ぐ長い靭帯で、ひざの外側を安定させる役割がある。足の外側に体重をかけるクセがあると炎症が起こる場合がある。これが腸脛じん帯炎で、ランニングする人に多くみられる事から、ランナーひざとも呼ばれる。ひざが熱を持ってズキズキ痛むようなら冷やす方がよい。炎症が治ったら、ストレッチなどで靭帯の柔軟性を高める。Bさんのように動き始めに痛みがある場合などは、変形性ひざ関節症の可能性が高い。これは慢性の痛みなので、こわばった関節を温める事で痛みが和らぐ。ひざの痛みの原因には変形性ひざ関節症、スポーツによるけが・障害、関節リウマチ、痛風・偽痛風がある。原因によって治療法が異なるので、まずは整形外科を受診して痛みの原因を調べてもらう事が痛みを解消する第一歩となる。中高年のひざの痛みのほとんどは変形性ひざ関節症によるものである。日本では予備軍も含むと男性が860万人、女性が1670万人と、50歳以上の2人に1人がかかっている事になる。私達のひざは大腿骨、脛骨、膝蓋骨の3つの骨でできている。大腿骨と脛骨の間には半月板と軟骨があり、クッションとなりひざの衝撃を吸収する。しかし負担がかかり続けると半月板と軟骨がすり減り、欠片が散らばって滑膜を刺激して炎症になる。さらにすり減りが強くなると、関節が変形し、骨と骨の間がさらに狭くなり、痛みや動かしづらさも強くなる。重度になると軟骨がなくなり、強い痛みが生じるようになる。また骨棘といって骨が棘のように変形する事もある。
50歳以上の2人1人が「変形性ひざ関節症」
スタジオで「骨と骨がぶつかれば想像するだけで痛そうですね。軟骨や半月板がすり減るというのは、なぜでしょうか?」という質問の回答。まず挙げられるのは「加齢」、長年に渡り歩いていたりするとどうしてもひざなどに負担がかかってしまうためである。2つ目は「肥満」、実は我々人間は立っているだけで、片方のひざに体重の1.1倍の重さの負担がかかっている。歩行時には体重の2.6倍、階段を下るだけで3.5倍の負担がかかるので、もし体重60キロの人で考えると、階段を降りるときには210kgもの負担がかかる。つまり元々の体重の重さが多ければ多いほど負担がかかっていく。しかし体重というだけでは単純には言い切れない部分があり、例えば同じ身長体重のメタボ体型と、マッチョ体型の2人で比べると、やはりメタボ体型の方が変形ひざ関節症になりやすいという報告がある。メタボ体型の人はお腹と同じようにひざにも脂肪がついてしまう。そこからひざの下に脂肪がつくと、脂肪細胞から出るアディポカインという物質が出る。その物質が関節の軟骨などに炎症を起こし、変形関節症を起こしやすくするという事が明らかになってきたという。「運動不足」について聞いてみると、ひざには大腿四頭筋という筋肉と、ハムストリングスという筋肉があり、これらがひざに衝撃を与えるのを和らげる働きがある。運動不足になってこれらの筋肉が減ってしまうとひざに負担がかかりやすくなるという。「ひざを酷使する職業」と「ひざのけが」については、まず、職業については重いものを持ってひざの曲げ伸ばしをすることが多い、農業や建設業などの方が挙げられるという。またけがにスポーツをやられる方に多く、特にスポーツ活動中に半月板やじん帯を痛めてしまい、適切に治療がされない場合は変形性ひざ関節症のリスクが高くなるといわれている。ひざを痛めた場合は将来のことを考え、きっちり治す事が推奨されている。「しかしスポーツをしていても、特にけがをしていない場合や、けがをしても適切な治療をしていれば変形性ひざ関節症のリスクは上がらないので、安心していただきたいと思います」と中川匠教授は語った。
その他のひざの痛み対処法
「スポーツによるひざのけが」の場合は、一旦運動を中止し、整形外科を受診する。熱を持って腫れている場合は冷やす。薬や手術で治療し、その後はリハビリも行う。
「関節リウマチ」の場合は手首や手足の指などにも症状が出やすく、朝のこわばりが特徴、痛み関節がやわらかく熱を持っている。リウマチ科・内科・整形外科を受診する。薬での治療が中心だが、症状や患者の希望があれば、手術も検討される。
「痛風・偽痛風」は、まず痛風は関節に尿酸の結晶がたまり、足の親指のつけ根などに痛風発作という激痛が走る。偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶がたまることが原因。ひざに水がたまる、発熱などの全身症状が出る事もある。どちらも内科や整形外科を受信し、薬で治療を行う。痛風の場合は食事や生活習慣の改善も必要。
中川教授は「中高年のひざの痛みは主に変形性関節症が多い。しかしそれ以外にも色々と原因がありますので、まずは整形外科を受信し、正しい診断を受けていただき、適切な治療を受けていただくとうのが大事になると思います」と語った。