1~9月末の75歳以上の死亡事故件数は294件で昨年同期の328件より減ったが、全体に占める比率は高水準が続く。警察庁の坂口正芳(さかぐち・まさよし)長官は2日の記者会見で「高齢者の特性に応じたきめ細かな対策など、さらに取り組むべき課題もある。高齢運転者の交通事故防止策のさらなる充実に向けて総合的な対策を推進したい」と話した。
第1分類と判定された人は医師の診察が義務付けられており、受診を終えたのは7673人。このうち、697人が免許の取り消しや停止の行政処分となったほか、925人がこれらの処分を受ける手続きをしている。
受診結果から免許保有の継続が認められたのは6051人で、この中の4326人は「認知機能の低下がみられ、今後、認知症となる恐れがある」として、半年後の再診断を課せられた。
ほかに診断前に免許を自主返納したのは6391人。返納手続きをせずに免許が失効したのは1267人。医師の診察などを待っている人が約1万人おり、これらの人数はさらに増える見通し。
第1分類以外の人数は、認知機能低下の恐れがあるとされた「第2分類」が30万165人、問題なしとされた「第3分類」が78万7541人だった。第1分類の3万170人のうち3929人はいったん第1分類に集計されたが、その後に保有者側の要望などによって再検査し、第2、3分類と判定されている。
検査を受けた理由は、105万6779人が免許の更新時。6万1097人が、信号無視など重大な事故につながる一定の交通違反をしたことによる臨時検査だった。
第1分類を都道府県別で見ると、多かったのは愛知の1536人、茨城と神奈川の1256人など。少なかったのは鳥取の147人、島根の202人、沖縄の228人などだった。
※高齢運転者の事故対策
高齢ドライバーによる重大事故が相次いだことを受け、75歳以上への認知機能検査強化を柱とした改正道交法が2015年6月に成立、今年3月に施行された。免許更新時の検査で「認知症の恐れ」と判定されれば医師の診断を受け、正式に認知症と判断された場合、免許停止や取り消しとなる。信号無視など一定の違反に対する臨時検査も義務付けている。警察庁は、運転技能が衰えた高齢者に対して運転できる車種や時間帯などを制限する「限定免許」の導入も検討。民間企業では自動運転技術の開発が進んでいる。