親の寝不足、喫煙などの生活習慣が子どもの孤食や栄養バランス不足に影響
富山大、「生活にゆとりのない」家庭の親は食育に関心がない傾向
富山大学は6月3日、富山県教育委員会との連携事業として実施された文部科学省スーパー食育スクール事業の追加調査により得られた、食育に関する新たな知見を発表した。この研究は、同大地域連携推進機構地域医療保健支援部門、同大医学部医学科の天神久実 6年生、関根道和教授らによるもの。研究成果は「Journal of Epidemiology」に掲載されている。
今回の調査は、高岡市内の5つの小学校に通う1年生~6年生までの全児童2,129名を対象として、平成28年1月に実施された、家庭の社会経済環境、親子の生活習慣などに関するアンケート調査。回収数は1,986名(回収率:93.3%)、有効回答数は1,632名。
調査の結果、「生活のゆとりがない」と回答した家庭は、「ゆとりがある」と回答した家庭と比較して、親が食育に関心がなく、栄養バランスを考えない傾向があった。また、子どもが野菜をあまり食べない傾向があった。年齢や性別等の他の要因を考慮した統計分析の結果、「ゆとりがある」家庭を基準とした場合の「ゆとりがない」家庭の望ましくない習慣に対するオッズ比(リスク指標)は、「食育に関心なし」で1.46(p<0.05)、「栄養バランスを考えない」で1.52(p<0.05)、「野菜を食べない」で1.52(p<0.05)だった。
また、「適切な睡眠時間、喫煙をしない、適正体重を維持、過度な飲酒をしない、定期的な運動、朝食を毎朝食べる、間食をしない」の7つの生活習慣のうち、当てはまる項目が多いほど生活習慣が良いと判断する「Breslowの7つの生活習慣」による得点で、当てはまる項目が0~3個の場合を生活習慣が「悪い」、4~5個の場合を「ふつう」、6~7個の場合を「良い」として、子どもの食習慣との関係を評価した。
その結果、親の生活習慣が悪いと、親は食育に関心がなく、栄養バランスを考えなく、子どもの孤食も多かった。年齢や性別等の他の要因を考慮した統計分析の結果、父親の生活習慣が「良い」家庭を基準とした「悪い」家庭の望ましくない習慣に対するオッズ比は、親が「食育に関心ない」で1.53、「栄養バランスを考えない」で1.47、子どもが「朝食を1人で食べる」で1.47だった。また、同じく母親の生活習慣が「良い」家庭を基準とした「悪い」家庭の望ましくない習慣に対するオッズ比は、親が「食育に関心ない」で2.95(p<0.05)、「栄養バランスを考えない」で3.86(p<0.05)、「朝食を1人で食べる」で 2.42(p<0.05)だった。
さらに、子どものメディア利用時間が長くなるほど、 朝食を欠食し、野菜をあまり食べず、1日2回以上間食するなど、望ましくない食習慣が増える傾向にあった。年齢や性別等の他の要因を考慮した統計分析の結果、メディアの利用時間が「1時間未満」の子どもと比較した場合の、「2時間以上」の子どもの望ましくない習慣に対するオッズ比は、「朝食を欠食する」で2.75(p<0.05)、「野菜を食べない」で2.68(p<0.05)、「1日2回以上間食をする」で4.16(p<0.05)だった。
今回の調査により、子どもの望ましい食習慣づくりには、社会環境の要素、家庭環境の要素、子ども自身の生活習慣の要素の3つの要素があることがわかった。要素の中には、社会環境のような自分自身の力だけでは見直しが難しいものと、親の生活習慣や子どもの生活習慣のように見直しが可能なものがある。子どもの望ましい生活習慣づくりには、子どもに対する健康教育だけではなく、親に対する健康教育も必要であり、地域社会や学校の協力の下に子どもの健康習慣づくりを進める必要があるといえると、研究グループは述べている。