進まぬ3回目接種 遅れた前倒し判断 副反応忌避感
新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が進んでいない。
オミクロン株による感染拡大に歯止めがかからない中、政府は積極的な接種を呼びかけるが、27日現在で3回目の接種率は全人口の2・7%にとどまっている。接種間隔の前倒し判断が遅れたことに加え、副反応が多数報告されているモデルナ製ワクチンへの忌避感も重なり、3回目接種が政府の計画通り進むかは見通せない。(今仲信博) 「スタートが遅かったことを、率直に認めなければならない」。自民党の高市早苗政調会長は30日のNHK番組で、3回目接種に関しこう述べ、接種間隔については「(2回目から)4カ月後とかに短縮できないのか」と注文をつけた。 3回目接種は昨年12月、医療従事者や高齢者らを中心に始まった。政府は同月は876万人、今月は593万人を対象とし、2、3月は2千万人台と拡大するスケジュールを描いている。しかし、実際には今月27日時点で接種を終えたのは約342万人。今月末までに想定する1469万人の約23%にとどまる。 当初、政府は2回目からの接種間隔を8カ月以上としていた。これは欧米などの動向を踏まえたもので、昨年9月に厚生労働省の分科会で承認され、同11月に基本方針を決定した。
海外でオミクロン株による感染が相次いで確認されると、日本医師会や全国知事会などから接種間隔の前倒しを求める声が上がった。だが、政府の腰は重かった。特にファイザー製ワクチンの調達に不安を抱えていたことが大きい。 昨年12月17日、医療従事者や高齢者施設の入所者らに対し接種間隔の6カ月への短縮を決めたが、対象者が少なすぎたのは否めず、今月13日、一般の高齢者や64歳以下に対しても前倒しする方針を示した。だが、64歳以下の人は、わずか1カ月前倒しの7カ月間隔で3月から、という計画しか示せなかった。
8カ月間隔で準備を進めていた自治体は、相次ぐ方針変更に振り回されており、計画通り進んだとしても、オミクロン株の感染拡大には間に合わない。 モデルナ製ワクチンの副反応への懸念が根強くあることも3回目接種の広がりにブレーキをかけている。 順天堂大などが行った調査では、モデルナ製を2回接種した人の約8割に37・5度以上の発熱が見られ、ファイザー製の2倍近い結果となった。モデルナ製の3回目接種の副反応は、接種者が増えた時点で調査するとしているが、すでに希望がファイザー製に偏る傾向もみられている。
岸田文雄首相は24日、記者団に「ペースアップのためにはモデルナ製の活用が不可欠だ」と強調し、自身も3回目はモデルナ製を接種する考えを示した。首相官邸のツイッターにモデルナ製の活用を呼びかける動画も投稿したが、国民の理解がどこまで進むかは不透明な状況だ。 富山県衛生研究所の大石和徳所長は「打ち控えの人たちは、オミクロン株が今後どうなっていくかを見極めているのではないか」と分析。「軽症者が増えれば、必ず重症者は出てくる。『オミクロン株は大丈夫』とはならない」と早期接種の必要性を強調した。