牛乳1日コップ1杯飲むと脳梗塞予防の可能性 岩手医大・教授
1日コップ1杯程度の牛乳で脳梗塞予防の可能性―。岩手医大の丹野高三特任教授(51)=衛生学公衆衛生学講座=が県北地域の約1万4千人を対象にした調査から導き出した。「週7杯以上12杯未満」を飲むと答えた女性は「週2杯未満」の女性より、発症リスクが47%低かった。本県は脳梗塞を含む脳卒中死亡率が高く「予防薬」として注目を集めそうだ。
2002年から04年にかけて二戸、久慈、宮古医療圏の市町村で集団検診を受けた40~69歳の1万4111人に牛乳摂取頻度を聞き、その後の約10年間に脳梗塞を発症したかどうかの関係を解析した。
男女別に、コップ1杯を飲む頻度によって対象者を四つに分類。女性は「週2杯未満」と答えた集団の発症リスクを1としたとき、「週7杯以上12杯未満」(1日1杯程度)と答えた集団のリスクが最も低い0・53で、47%低かった。
丹野特任教授は、牛乳を飲む人は飲まない人に比べて、健康的な生活・食習慣の人が多い傾向があったと指摘。血圧を下げる効果があるミネラルが多く含まれる牛乳を飲むことで、血圧上昇が抑えられ、リスクが低下した可能性があると分析している。
一方、男性は、喫煙や大量飲酒といった脳卒中の危険因子を持つ人が多く、牛乳摂取による影響を明らかにできなかった。
日本人は欧米人に比べて牛乳や乳製品の摂取量が少なく、脳卒中の発症が多いと言われている。特に本県の脳卒中死亡率は全国ワーストクラスと深刻だ。
研究は栄養学に関する国際科学雑誌に発表した。牛乳摂取が脳梗塞の発症に及ぼす影響について、日本人を対象とした研究報告はこれまでになかったといい、丹野特任教授は「予防の観点から意味のある結果だと考えている。至適摂取量や、男性における関連性についてはさらなる研究が必要だ」と話す。