Mars&Jupiter

おおくぼっちの屋根裏部屋へようこそ!

グロリア・コーツの交響曲第15番「モーツアルトを讃えて」を聴く

2020-04-29 14:24:07 | 古典~現代音楽北アメリカ編
今回は1938年に生まれたアメリカの作曲家グロリア・コーツが、
2004年から翌05年に作曲した交響曲第15番をとりあげる。
副題は「モーツアルトを讃えて」である。
今回聴いたCDはミハエル・ボーダー指揮、
ウィーン放送交響楽団の演奏による。
冒頭から重層的な音により始まる。
第1楽章は虹色の意味だが、多層的なイメージが、
音のうねりを生み、不気味ともいえる音響の世界である。
巨大な音のうねりが迫ってくる感じでもある。
こんな時期に聴いていると何か避けられない災いが、
聴き手に迫ってくるような風にも聞こえてしまう。

第2楽章は困惑のカノンという意味で、
木管楽器がほのぼのとした旋律を奏で安心させるが、
背後では重層的な音がグリッサンドをしていき、
不安をかきたてるかのようである。
いったいどこに聴き手を誘うのかもわからない。
再び調性のある旋律が奏でられるが、その音も、
やがて音のうねりの中に巻き込まれていく。
その音のうねりが静まると、旋律が現れ、最後静かに終わる。
第3楽章はティンパニの強打を繰り返して始まる。
金管楽器が旋律をファンファーレのように奏でる。
そのファンファーレの後は再び色々な音が重なり合っていく。
再び旋律が現れるが、重層的な音が創り出すうねりによって、
やがて消され、再びそれが静まると旋律が現れ、
最後はティンパニの強打が繰り返されて終わる。
副題の “What Are Stars?”は、アメリカの詩人
エミリー・ディキンソンの中から採っているようだ。
その賛美歌的な部分は救いのようにみられるが、
災いと救い、その危うい中に人間は生きているのだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョルジュ・エネスコの交響曲第1番変ホ長調作品13を聴く

2020-04-26 18:12:37 | 古典~現代音楽バルカン地域編
今回は1881年に生まれたルーマニアの作曲家エネスコが、
1904年から翌05年に作曲した交響曲第1番変ホ長調作品13をとりあげる。
今回聴いたCDはクリスティアン・マンデール指揮、
“ジョルジュ・エネスコ”ブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による。
第1楽章「十分に活発でリズミックに」は、
金管楽器の力強いユニゾンで始まり、
活気のある第一主題が弦楽器により奏でられる。
第二主題は対照的で抒情的で穏やかな旋律である。
展開部は主題がリズミックに再構成され、
金管楽器も加わって盛り上げていく。
最後も金管楽器と打楽器で盛り上げ、
主題が繰り返され、力強く高揚して終わる。

第2楽章レントは、幻想的な雰囲気で始まる。
弦楽器と木管楽器中心にロマンティックな感じが続く。
甘美な旋律であり、ワグナーの音楽のような雰囲気も感じさせる。
ホルンが響いたあと、弦楽器が美しい旋律を奏でて静かに最後終わる。
第3楽章「活発で力強く」は、弦楽器と金管楽器で、
生き生きとした力強い主題が奏でられて始まるソナタ形式の楽章である。
聴いているうちに何となくブラームスの音楽を感じてしまうが、
しかし、主題の展開の手法などなかなかであり聴きごたえある。
とてもエネルギッシュに盛り上がり、最後は力強く終わる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アレクサンドレ・タンスマンの交響曲第9番を聴く

2020-04-18 15:15:21 | 古典~現代音楽ポーランド編
今回は1897年に生まれたポーランドの作曲家タンスマンが、
1957年から翌58年にかけて作曲した交響曲第9番をとりあげる。
今回聴いたCDはオレグ・カエターニ指揮、
メルボルン交響楽団の演奏による。
第1楽章アレグロ・コン・モート-
ウン・ポコ・ピュ・レント-ア・テンポは、
軽快で激しくリズミックな旋律で始まる。
ストラヴィンスキーを思わせるような音楽である。
途中ゆったりとした部分を経て、
再び冒頭の荒々しい音楽になり、
金管楽器が鳴り響き、最後力強く終わる。

第2楽章グラーヴェ-ピュ・レント-テンポⅠは、
重々しい弦楽器の上で、オーボエが旋律を奏でて始まる。
そのあとは弦楽器中心に沈鬱な音楽が続き、最後は静かに終わる。
第3楽章モルト・ヴィヴァーチェ-ペルデンドージは、
舞踏風の音楽がリズミックに展開される。
弦楽器のピチカートや木管楽器の軽快な動きが印象的で、
金管楽器も荒々しさを加え、徐々に消え入るようにして終わる。
第4楽章レント-アレグロ・コン・モート,
モルト・リソルートは、ゆったりとした弦楽器の上で、
木管楽器が旋律を奏でて始まり、
それからは弦楽器が奏でる旋律をもとに、
各楽器がそれを引き継いでいくフーガ風の展開となり、
最後は金管楽器や打楽器中心に盛り上がって力強く終わる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヨシプ・ストルチェル=スラヴェンスキのオリエンタル交響曲を聴く

2020-04-04 10:46:11 | 古典~現代音楽バルカン地域編
今回は1896年に生まれたユーゴスラヴィアの作曲家、
ヨシプ・ストルチェル=スラヴェンスキが、
1934年に作曲したオリエンタル交響曲をとりあげる。
スラヴェンスキはクロアチアのチャコヴェツに生まれ、
(CDの解説書ではなぜかザグレブになっている)
ブダペストで音楽を学び、コダーイに師事した。
オリエンタル交響曲は様々な宗教に関する音楽である。
今回聴いたCDはメラニア・ブガリノヴィチのメッゾ・ソプラノ、
ドゥシャン・ツヴェイッチのテノール、
ドゥシャン・ポポヴィッチのバリトン、
ザーコ・ツヴェイッチのバス、ジヴォイン・ズドラフコヴィチ指揮、
ベオグラード・フィルハーモニー合唱団及び管弦楽団の演奏による。
なお、独唱者の人名や各楽章の内容は自ら訳したので、
誤りなどがあると思いますが、ご了承ください。

第1楽章異教徒(先史時代の音楽)は、
打楽器の原初的なリズミックな音に続き、
独唱者と合唱が歌うが、歌詞はない。
力強い生命感あふれる音楽である。
第2楽章ユダヤ教徒(音色のある音楽)は、
ハープの音に始まり、フルートが神秘的な旋律を奏でる。
やがてその他の木管楽器が絡んでいき、
独唱者や合唱が加わっていく。
そしてアーメンを繰り返して終わる。
第3楽章仏教徒(構成的な音楽)は、
木琴とヴァイオリン独奏で始まる。
同じ音型を繰り返し、やがて活気あふれていく。
金管楽器のファンファーレ的な音のあと、
バリトン独唱と合唱が歌い出す。
途中からソプラノ独唱も加わり、盛り上がっていく。

第4楽章キリスト教徒(旋律的な音楽)は、
ハープと弦楽器で始まり、合唱も加わる。
合唱は「キリエ・エレイソン」と繰り返していく。
第5楽章イスラーム教徒(明瞭な発音の音楽)は、
合唱が伸ばすの音の上にテノール独唱が、
コーラン読誦のような旋律を歌っていく。
それが終わると打楽器の叩くリズムの上で、
フルートが旋律を奏でていき、他の木管楽器も絡んでいく。
とてもエキゾチックな感じあり、やがて合唱が加わり、
スーフィーの音楽のように盛り上がり、突然終わる。
第6楽章自由思想(多声的な音楽)は、
様々な楽器の奏でる旋律が絡み合っていく。
まるで今までの色んな宗教が絡み合っていくような、
そんな文化の融合を感じさせる音楽である。

第7楽章戦いの賛歌(調和的な音楽)は、
前奏に続き合唱が力強く歌い始める。
力強いその歌は、今までの苦しみを乗り越え、
勝利に向かっていこうとする感じが伝わる。
打楽器や金管楽器が鳴り響き、最後盛り上がったところで終わる。
この音楽はユーゴスラヴィアという様々な文化が混ざりあう
その地域ならではの中で生まれたんだろうなと思わせる。
昨今の新型コロナウイルスのニュースとともに、
この音楽を聴いていて、改めて宗教や国を超えて、
目には見えない敵に戦っていくことが必要だなと感じた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする