Mars&Jupiter

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エドヴァルド・グリーグの劇音楽「十字軍の兵士シグール」作品22を聴く

2023-11-05 12:01:14 | エドヴァルド・グリーグの作品
今回でエドヴァルド・グリーグの特集を終わりにします。
今日は、1870年から71年に作曲された
劇音楽「十字軍の兵士シグール」作品22をとりあげる。
聴いたCDはシェル・マグヌス・サンヴェーのテノール、
エスタ・オーリン・ヴォーカル・アンサンブル、
プロ・ムジカ室内合唱団、ネーメ・ヤルヴィ指揮、
エーテボリ交響楽団の演奏によるものである。
シグール(シーグル)はノルウェー十字軍を率いた
ノルウェー国王シーグル1世(シグルス1世)のことである。
1107年から1110年にかけて聖地イェルサレムに向かった。
ヴァイキングでもあるからだろう途中イベリア半島では、
略奪行為や戦闘行為をおこなったりもしている。
聖地イェルサレムへは陸路をつかって到着している。
この話を題材にビョルンスティエルネ・ビョルンソンが戯曲を書いており、
その戯曲の付随音楽としてグリーグが作曲した。
角笛の合図(ファンファーレ)は、ホルンの吹奏で始まる。
やまびこのように他のホルンが呼応する。
第1曲 第1幕前奏曲は、堂々とした音楽で始まり、
威厳のある旋律が力強く奏でられる。
第2曲 ボルグヒルの夢(間奏曲)は、弦楽器中心に旋律が奏でられて始まり、
途中から荒々しい音楽になり、それと対照的な夢想的な旋律になって終わる。

第3曲 力競べ(第2幕前奏曲)は、行進曲風の旋律で始まり盛り上がり、
中間部は木管楽器中心に感傷的または牧歌的な旋律が奏でられる。
冒頭の旋律が繰り返され、金管楽器中心に盛り上がって終わる。
第4曲 北国の民「北国の民、そは世界に乗り出し」は、
力強い音楽とともにテノールの独唱が入る。
そして、合唱も加わり、壮麗な音楽になっていく。
独唱と合唱は4番まで歌われ、最後力強く終わる。
第5曲 オマージュ・マーチ(第3幕前奏曲)は、
華々しい金管楽器の響きのあと、弦楽器による室内楽風の響きの中、
奏でられる主題がそのあと他の楽器に引き継がれて繰り返され、
徐々に金管楽器と打楽器で盛り上がったあと、
いったん静かになり、弦楽器中心に別の旋律が奏でられ、
また冒頭の金管楽器の華々しい音楽と、
弦楽器による室内楽風の響きが繰り返され、
その主題が繰り返され、金管楽器と打楽器に盛り上がって終わる。
第6曲 間奏Ⅰは、第5曲の主題が弦楽器中心に奏でられ、
木管楽器も絡んでゆったりとしたテンポで繰り返され、
そのあと明るく軽快な音楽になって盛り上がって終わる。
第7曲 間奏Ⅱも、第5曲の主題が弦楽器の室内楽的な響きで始まり、
弦楽器が主題を繰り返し、ホルンやトランペットなどが加わる。
そして、金管楽器と打楽器中心に奏でられ、最後堂々とした感じで終わる。
第8曲 王の歌「旅に出て一働きせんことを夢見しものは」は、
オーボエの感傷的な旋律に続き、テノール独唱が入る。
そのあと合唱も加わり、金管楽器と打楽器とともに、
盛り上がりをみせて、最後力強く終わる。
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エドヴァルド・グリーグのピアノのための23の小品 EG.104を聴く

2023-11-04 07:48:13 | エドヴァルド・グリーグの作品
今回は1843年ノルウェー生まれのグリーグが、
1859年に作曲したピアノのための23の小品 EG.104を聴いた。
聴いたCDはアイナル・ステーン=ノックレゲルグの、
ピアノ演奏によるものである。
初期の作品であるから習作的な部分がある。
彼は死後この作品を破棄してほしいと言い残しているようだ。
この中には3つのピアノ小品EG.102と、
子どものための9つの小品EG.103も含まれている。
最初のアレグロ・アジタートはショパン風である。
情熱的な曲やロマンティックでゆったりとした曲も多い。
15曲目の2声の前奏曲はバロック音楽風でもある。
最後の曲アッサイ・アレグロ・フリオーソは、
駆け抜けていくように軽快でドラマティックな曲である。
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エドヴァルド・グリーグの6つの歌曲 作品48を聴く

2023-11-03 09:07:24 | エドヴァルド・グリーグの作品
今回は1843年ノルウェー生まれのグリーグが、
1889年に作曲した6つの歌曲 作品48から、
第1曲「挨拶」、第3曲「この世のなりゆき」、
第5曲「ばらの季節に」、第6曲「ある夢」、
第2曲「いつの日か、わが思いは」を聴いた。
聴いたCDはディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのバリトン、
ハルトムート・ヘルのピアノ伴奏によるものである。
第1曲「挨拶」はハイネの詩によるもので、
軽やかな伴奏に乗って、彼女への思いを
春到来の喜びとともにさわやかに歌っている。
第3曲「この世のなりゆき」はウーラントの詩に基づいている。
薔薇の花は、そよ風がいたずらしても「愛してくれる」とは言わないし、
露が薔薇の花を濡らしても、自ら「濡らしてよ」とは言わない。
男女の恋も同じで「愛している」とはなかなか言ってはくれない。
そんなもんだよね、世の中というものはというような感じの内容。
軽快な伴奏とともに歌は滑稽な感じで歌っている。

第5曲「ばらの季節に」はゲーテの詩によるもの。
枯れようとしている薔薇の花を見て、
自分の人生と重ねているかのような内容の詩である。
哀しい曲調の伴奏に乗って、歌は過ぎ去った青春の日々と、
消えてしまった希望を歌っているかのようである。
第6曲「ある夢」はボーデンシュテットの詩にも基づく。
女性に愛される夢を見て、それが今現実になったという内容の詩。
ロマンティックな曲で、夢が現実になった高鳴る喜びが、
自然の情景とともに徐々に盛り上がって表現されていく。
第2曲「いつの日か、わが思いは」の歌詞はガイベルの詩。
自分の命が消えるときに、自分の見つけられなかったものが与えられ、
心の安らぎを得るだろうといった内容の詩である。
ゆったりと始まる伴奏と歌に人生の終わりを感じさせ、
諦めではなく、たどり着いた真実という感じで歌われる。
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グリーグの伝承によるノルウェー民謡 作品66を聴く

2023-10-27 05:32:02 | エドヴァルド・グリーグの作品
今回は1843年ノルウェー生まれのグリーグが、
1896年に作曲した伝承によるノルウェー民謡 作品66を聴いた。
聴いたCDはアイナル・ステーン=ノックレゲルグの、
ピアノによる演奏のものである。
19曲からなる作品の旋律はどこか物悲しく、
どれもノルウェー民謡らしい魅力にあふれている。
第10曲「明日は君の婚礼の日」はタイトルが示すように、
途中から明るく陽気な舞踏的な旋律が入る。
第14曲「オーラの谷で、オーラの湖で」の旋律の一部は、
どこかで聴いたことがあるなと思っていたら、
デリーアスの「春初めてのカッコウの声を聴いて」の、
旋律に使われているものと同じである。
第16曲「小さなアストリー」は明るく舞踏的な曲である。
第18曲「私は深く想い巡らせた」は懐古的だが、
徐々にその思いが高ぶり、情熱的に盛り上がっていく。
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グリーグの8つの連作歌曲「山の娘」作品67を聴く

2023-10-25 05:59:13 | エドヴァルド・グリーグの作品
今回は1843年ノルウェー生まれのグリーグが、
1868年に作曲した8つの連作歌曲「山の娘」作品67を聴いた。
聴いたCDはシヴ・ヴェンベリのソプラノ、
ジェフリー・パーソンズのピアノ伴奏によるものである。
歌詞はノルウェーの新ロマン主義の小説家・詩人で、
アルネ・ガルボルグという人物による詩に基づく。
第1曲「誘惑」は、山羊の魔物が山の娘ヴェズレモイの、
住む家の窓辺に来て、誘惑のメロディを歌う話である。
力強く歌う最初とそのあとの北欧らしい美しい旋律、
その旋律が魔物の歌う誘惑の歌ということか。
歌詞は3番まであり、同じように繰り返していく。
第2曲「山の娘」は、ヴェズレモイの容姿や振る舞いなど、
美しさだけでなく、霊の世界を見る力を持つことが歌われている。
ゆったりと歌う中で彼女の怪しい魅力も感じさせる。
第3曲「ビルベリーの丘」は、山の娘が恋する若者と、
丘の上で話をしている情景が5番まである歌詞の中で歌われる。
楽しさがあふれるように軽快で民謡風の歌である。
第4曲「密会」は、山の娘と若者が会い、
惹かれあっていく様子が描かれている。
ロマンティックな曲で、運命的な出会いを感じさせる。
2番の詩の最後に出てくる「あなたは背が高いのね」という
会話のあと二人の気持ちが一気に恋へと向かっていく。

第5曲「愛(恋)」も、若者を山の娘が恋する場面が歌われる。
5番まである歌詞の中で山の娘の夢が広がり、
有頂天になっていくような心の高ぶりと、
一方ではうまくいくかわからない心の不安も表している。
第6曲「山羊の踊り」は、軽快な踊りの楽しい場面が歌われる。
音楽もそれを表すように軽快な民謡風の踊りの音楽である。
第7曲「不運な日」は、一転して恋人に裏切られた場面である。
歌も感傷的な旋律で始まり、曲が進行する中、
深く落ち込んでいく山の娘の気持ちが歌われる。
第8曲「山の小川で」は、流れる小川を見ながら、
つらい思い出を忘れ去ろうとする山の娘の気持ちが歌われる。
ピアノ伴奏は小川の水が流れる様子を描写し、
5番まである歌詞の中で、山の娘の沈んだ気持ちが歌われる。
自問自答しながら、若者を忘れようとする歌が淡々と歌われる。
でもやるせない気持ちは残っている感じでもある。
この8つの連作歌曲「山の娘」はグリーグの歌曲の中でも、
歌詞の内容と音楽が密接に関係して傑作とも言えるのではないだろか。
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