温泉クンの旅日記

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陸奥、川渡温泉(2)

2022-04-10 | 温泉エッセイ
  <陸奥、川渡温泉(2)>

 内湯をたっぷり独りじめで堪能して部屋に戻る途中、フロントのそばにある小さな「談話室」に寄ってみた。
 チェックインした時に赤々と燃える薪ストーブをみかけたからだ。

 

 それほど広くないスペースと、常備している珈琲がインスタントなのはまあいいとして、灰皿がひとつも無いので自分には無用と決めつけ早々に引きあげる。

 部屋に入ると、脱ぎ散らかしたままで散乱した服を手早く片づける。あらかじめ布団を敷いてあるのはわたしには無問題(モーマンタイ)、却ってすぐに昼寝もできるし好都合である。

 

 

 宿は平屋であり客室も全部で十室足らずなので、民宿並みの狭い客室を覚悟していたのに広縁があるせいで思ったより広く感じる。
 洗面所、トイレも綺麗で快適だ。これなら二人客でも充分だろう。

 

 ザックから飲みかけの焼酎を出して薄い水割りをつくる。
(夕食は六時だったな。それにしても、腹が減った・・・・・・)

 

 乗換時間が小一時間ある小牛田(こごた)駅前で、軽く食べようと思っていたのだが当てが外れたのだった。閑散とした駅前にある飲食店は、居酒屋の昼営業と食堂の二択で、食べたかった麺類、つまり夕食に予定されている蕎麦以外うどんとかラーメンのメニューはなさそう。では肉まんとかカレーパンにでもするかといっても、コンビニもない。
 東北本線、石巻線、陸羽東線の接続駅だというのに、駅には売店すらなかった。もう、いいや。旅先ではいつも時間通りに食事ができるとは限らない。一関駅の喫茶店で食べたトーストのおかげもあって、昼はあきらめたのである。

 

 駅の外にはまるでなかったのに、なぜか小牛田駅のホームの端に喫煙所をみつけて、一服する。東北にはホームに設置されている駅がけっこうあって、これだけは嬉しい限りだ。

 六時ちょっと前にようやく部屋にノックがあって、夕食会場の部屋へ案内された。かなり離れた席にカップルがいるようだが、衝立があるので声しか聞こえてこない。女性のほうの声と話しぶりは落ち着いていて、もしかしたら年上なのかもしれない。

 

「どぶろく、を一杯頼みます」
 この宿では自家米で仕込んだ自家製“どぶろく”を売りにしているのだ。それに自家菜園の野菜と、楽しみにしている地元鬼首産の蕎麦粉を使った手打蕎麦が続く。

 

 呑みやすくて旨い“どぶろく”だが、これは一杯だけにしとくほうが無難そうだ。
 さあて、得意の好きなもん順で、まずは、刺身の前に牛肉から始めるとするか。

 

 いつだったか珍しく電車で津軽を旅して、鰺ヶ沢から五能線で五所川原に向かう車内で津軽弁を聞いた時にまるで意味不明で遠いまるで外国を旅してるような気がしたものだった。
 津軽弁は寒い土地のせいか言葉を極端に省略する。

「どさ」
「ゆさ」
 とは津軽の会話の典型だが、「どさ」は「どごさ行くの」の省略形で、「ゆさ」は「湯(温泉とか銭湯)さ、行ぐどご」の省略形だ。

 居酒屋など飲食店にありがちだが、故郷から離れたよその土地で店を開くひとはたいてい、故郷につながる屋号を付けるという。
 この宿「旅館 ゆさ」の名称の由来も、先代か先々代あたりが津軽の人ではないのだろうか。実は川渡温泉に宿は十軒ばかりあるのだが、この名前の津軽を感じる響きに妙に魅かれたせいもあった。帰るまでにそれとなく訊いてみよう。

 

 さすがに、朝食以外トーストしか食べていなかったので今日はちょっと健啖家みたいに皿が進む。
 どぶろくのお代りは危険なので、二杯目からは"一ノ蔵"に切りかえている。

「このあと、ご飯とお蕎麦になります」
「あ、蕎麦だけでいいですから」

 

 

 しまった!
 できれば蕎麦は大盛りにして欲しい、と言えば良かったな。

  

  ― 続く ―


   →「陸奥、川渡温泉(1) 」の記事はこちら
   →「駅前」の記事はこちら
   →「鰺ヶ沢温泉の記事はこちら


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