温泉クンの旅日記

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おごと温泉(1) 滋賀・大津

2021-07-11 | 温泉エッセイ
  <おごと温泉(1) 滋賀・大津>

 京都駅から湖西線を使い、乗換なしで5駅目、約20分で京都に最も近い温泉街がある「おごと温泉」駅に到着できる。でも、この日は京都の次の山科駅で遅めのランチタイムをたっぷりとってからの到着となった。

 

 1974年の開業時、この駅の名は由緒ある地名の「雄琴」だった。
 雄琴とは、平安時代の貴族「今雄宿禰(いまおすくね)」の荘園があり、その屋敷からよく琴の音が聞こえたことから、姓の「雄」と「琴」をとって“雄琴”と呼ばれるようになったのである。
 しかし2008年、訳あって平仮名表記の「おごと温泉駅」に改名した。

 さてと、駅からホテルまでは1.5キロだから徒歩で約20分、車なら5分くらいだ。時計を確認すると14時20分、チェックインタイムは15時からである。
(ダメ元で、電話入れてみるか・・・)

「今日の宿泊予定ですが、早めに駅に到着してしまいました・・・」
 予約の氏名を訊かれて、告げるとすぐにお迎えに参りますという。
 よしよし。いつもながら、まったくもって理想的なフライングである。大浴場の先客は少ないに越したことはないのだ。
 
 駅前にあった足湯を見学して時間をつぶす。わたしは身体まるごとで温泉を満喫する流派なので、足湯といえば桜島のそばにあった、当時日本一といわれた足湯くらいしか経験したことはない。

 

 2008年、設置された足湯「六角足湯」の建物だが、比叡山延暦寺の門前町である坂本にある“早尾地蔵”の建物を模したそうである。最澄が刻んで安置したという“早尾地蔵”は、六道(地獄・鬼・畜生・修羅・人・天)で救いの手を差し伸べる六体の菩薩だったため六角堂だったそうだ。

 

 説明書きを読んでいると、ロータリーに車が入ってくる気配がして振り返る。横付けされたマイクロバスの脇腹に、ホテルの名が入っているのを確認して素早く乗り込んだ。

 

「琵琶湖グランドホテル 京近江」は映画「ちはやふる」とか、山村美紗「赤い霊柩車シリーズ」など二時間ドラマのロケ地で頻繁に使われる、客室数194室、収容人数900名のおごと温泉最大のホテルである。

 

 

 検温、手指の消毒、チェックイン手続きを済ませて部屋に入るや否や、いつにも増した光速で浴衣に着替えを済ませ脱兎のごとく大浴場に走る。
 2008年の改名以来今日まで、温泉街は努力に努力を重ね尽くして客をとり戻した。しかして雌伏二十数年、漸くわたしみたいな男独り旅の温泉好きも、変装する必要もなく山ほどの後ろ指さされずに“おごと温泉”を楽しめるようになったのである。さあ、急ぐがいい。

 

 東館一階の男性用大浴場「しゃくなげの湯」。女性用が「比叡の湯」というが、逆のほうがぴったりくる。
 内湯は百人が入ることができるという広さである。

 

 

 他の平仮名表記の温泉では、例えば「温海温泉」の場合、「温海」が難読のため昭和52年(1977年)国鉄「温海駅」が「あつみ温泉駅」に改称され、以降平仮名の「あつみ温泉」の表記が多くなっていった。
 ところが「雄琴温泉」の場合は違う。
 昭和46年(1971)3月に京都で風俗特殊営業が禁止され、生き残るため隣接している雄琴に大量に流入を始めた。ために、東京の浅草吉原、神奈川の川崎堀之内みたいな関西屈指の風俗の街として有名になってしまった。
「雄琴イコール風俗街」というイメージが強くなって、観光客や修学旅行客が寄りつかなくなり、旅行雑誌やガイドブックからも温泉地の評価が低迷してしまった。
 それを払拭するため“雄琴”を「おごと」の平仮名表記にして、歓楽街から観光地へと「街ぐるみでイメージ脱却」を図って今や成功しつつあるのである。

 

 ルーティンの掛け湯をたっぷりして、ゆっくり身を沈めていく。
 百人入れるとは、つまりは「循環クルクルのケッ!」温泉なのだが、塩素臭は思ったほどで強くはない。むしろ弱い。
 アルカリ性単純温泉で泉温は30度とも25.6度ともいわれるので、加温しているのは間違いないが、湯はすべすべでぬるりとした肌触りで、思いのほかジツに温泉ぽい。嬉しい。

 

 外の露天風呂に移動した。

 

 こちらの浴槽も三十人が一度に入れるそうだ。
 庭園風な造りのいい感じの露天だが、景色が寂しい。できれば琵琶湖のような眺望がみたくなってくる。

 

 ここまで、ずっと独り占めの大満足である。
 ひょっとすると、もうひとつある琵琶湖が見える大浴場のほうも、今なら独り占めできるかも知れんぞ。よし、行ってみよう。


  ― 続く ―


   →「あつみ温泉、萬国屋(1)」の記事はこちら
   →「あつみ温泉、萬国屋(2)」の記事はこちら
   →「あつみ温泉、萬国屋(3)」の記事はこちら
   →「あつみ温泉、萬国屋(4)」の記事はこちら

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