<米沢牛特撰ロースランチ>
米沢駅から西へ放射状に伸びるふたつの路のうち、上杉神社に向かう左側の路を歩き始めるとすぐに左手に「べこや」がある。
米沢から各駅停車でふたつ行った高畠というところに泊ったときに、近所の庶民的な焼肉店で手頃な料金で米沢牛を食べた。わたしは、それ以来の米沢牛の信奉者である。
開店時間の十一時半の十分前から椅子に座って待った。
時間になると店の女性が出てきて、いきなり焼肉かステーキかしゃぶしゃぶかと訊かれた。食べる料理の種類により案内する席が違う、メニューの詳細はあとで決めればいいという。
「焼肉でお願いします」
中に入ると、どうやら二階席や奥のほうにも席があるようだ。
案内されたのは、入ってすぐ右手の、靴を脱いであがった隣と高く仕切られた四人掛けテーブルで、掘炬燵ふうにゆったりと脚が伸ばせる。
ざっとメニューを調べ、一応確認する。
(あれれ・・・ない、ない)
わたしが頼もうと決めていた、千二百円のカルビ定食がメニューにない。最低でも二千円を超すのしかないので、思い切り、焦る。
もう一度よく見ると「土日祝日用ランチメニュー」である。そうか平日には地元客も来るのでリーズナブルな千円台メニューがいっぱいあるが、休日用にはないのだな。
テーブルに設置してある別のメニューも広げて繰って調べて見たが、もっと高いものばかりだ。
こうなればしかたがない。メニューを見てから逃げ帰るわけにはいかない。
焼肉でわたしが一番好きなのはカルビ、二番がロースだ。カルビが入っているべこや御膳はタンとか余計なものが多い。ロースにするか。
二千七百八十円・・・か。旅のどこかで倹約することにしよう。
「特選ロースランチをお願いします」
メニューを閉じると、女店員を呼んできっぱりと注文した。
待つほどもなく届く。
なんとも見事な肉だ。
「お肉には味がついていませんので、ご自分で塩と胡椒をお好みで」
ふむ、テーブルにあるペッパーミルと、ソルトミルでつけろということだろう。
まずは試しにと小さめなひと切れを選び、丸い焼き網に載せる。
塩と胡椒をミルを使って少量ふった。
いい肉なので、炙るていどで裏返す。
待ち切れず、色が変わったところで摘まみあげ、ひと齧りする。
とたんに旨味が口いっぱいに広がる。肉質はあくまで柔らかく、口中で溶けるようだ。思わず一瞬眼を瞑り、そして眼を見開く。
(ひえー、なんていう旨い肉だ!)
つづいて肉をご飯に載せて食べると、肉自体と箸に残る旨みのある脂も絶妙にご飯にからんで、得も言われない。
夢中で次の肉にとりかかる。
ヤバいぞ。この肉を食べたらこの味を忘れられず、きっとしばらく焼肉は食べられなくなる。本気でそう思った。それほどの衝撃的な肉だ。
いつもはあまり食べない添え物の野菜も、焼き網や箸に付いた旨味たっぷりの米沢牛の脂のせいだろう、すべて平らげた。
会計をすませ、いったん店を出たのだが別の入り口があったので覗いてみると、いかにも旨そうなお値段高めの米沢牛をずらりと並べて販売しているコーナーだった。
米沢駅から西へ放射状に伸びるふたつの路のうち、上杉神社に向かう左側の路を歩き始めるとすぐに左手に「べこや」がある。
米沢から各駅停車でふたつ行った高畠というところに泊ったときに、近所の庶民的な焼肉店で手頃な料金で米沢牛を食べた。わたしは、それ以来の米沢牛の信奉者である。
開店時間の十一時半の十分前から椅子に座って待った。
時間になると店の女性が出てきて、いきなり焼肉かステーキかしゃぶしゃぶかと訊かれた。食べる料理の種類により案内する席が違う、メニューの詳細はあとで決めればいいという。
「焼肉でお願いします」
中に入ると、どうやら二階席や奥のほうにも席があるようだ。
案内されたのは、入ってすぐ右手の、靴を脱いであがった隣と高く仕切られた四人掛けテーブルで、掘炬燵ふうにゆったりと脚が伸ばせる。
ざっとメニューを調べ、一応確認する。
(あれれ・・・ない、ない)
わたしが頼もうと決めていた、千二百円のカルビ定食がメニューにない。最低でも二千円を超すのしかないので、思い切り、焦る。
もう一度よく見ると「土日祝日用ランチメニュー」である。そうか平日には地元客も来るのでリーズナブルな千円台メニューがいっぱいあるが、休日用にはないのだな。
テーブルに設置してある別のメニューも広げて繰って調べて見たが、もっと高いものばかりだ。
こうなればしかたがない。メニューを見てから逃げ帰るわけにはいかない。
焼肉でわたしが一番好きなのはカルビ、二番がロースだ。カルビが入っているべこや御膳はタンとか余計なものが多い。ロースにするか。
二千七百八十円・・・か。旅のどこかで倹約することにしよう。
「特選ロースランチをお願いします」
メニューを閉じると、女店員を呼んできっぱりと注文した。
待つほどもなく届く。
なんとも見事な肉だ。
「お肉には味がついていませんので、ご自分で塩と胡椒をお好みで」
ふむ、テーブルにあるペッパーミルと、ソルトミルでつけろということだろう。
まずは試しにと小さめなひと切れを選び、丸い焼き網に載せる。
塩と胡椒をミルを使って少量ふった。
いい肉なので、炙るていどで裏返す。
待ち切れず、色が変わったところで摘まみあげ、ひと齧りする。
とたんに旨味が口いっぱいに広がる。肉質はあくまで柔らかく、口中で溶けるようだ。思わず一瞬眼を瞑り、そして眼を見開く。
(ひえー、なんていう旨い肉だ!)
つづいて肉をご飯に載せて食べると、肉自体と箸に残る旨みのある脂も絶妙にご飯にからんで、得も言われない。
夢中で次の肉にとりかかる。
ヤバいぞ。この肉を食べたらこの味を忘れられず、きっとしばらく焼肉は食べられなくなる。本気でそう思った。それほどの衝撃的な肉だ。
いつもはあまり食べない添え物の野菜も、焼き網や箸に付いた旨味たっぷりの米沢牛の脂のせいだろう、すべて平らげた。
会計をすませ、いったん店を出たのだが別の入り口があったので覗いてみると、いかにも旨そうなお値段高めの米沢牛をずらりと並べて販売しているコーナーだった。
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