温泉クンの旅日記

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赤湯温泉(1) 山形・南陽

2012-11-11 | 温泉エッセイ
  <餅搗きの宿(1)>

 朝はパン、パンパ、パン。
 意外だが、古都の京都の地元民は朝食パンが定番だそうだ。やっぱり日本人だから朝はご飯、和食じゃなければなぁという人もいまだに多い。
 パンもご飯もいいのだが、たまには搗きたての餅っていうのも「至極格別な日」の感じがしてすこぶるいい。

 男には餅好きが多いが、なにを隠そうわたしもそのひとりである。
 その餅好きが狂喜する、正月の三が日だけではなく三百六十五日、毎日搗きたての餅が供される宿が山形の赤湯温泉にある。



 しかも効能豊かな温泉つきの宿だから、わたしなどは狂喜の二乗となってしまう。
 源泉は飲泉もできるといういい泉質の湯なのだ。



 宿の名は「行き帰りの宿 瀧波」である。



 朝の八時前、館内放送が流れると、泊り客はぞろぞろと会場のある二階の大広間に向かう。会場は満員盛況で百人は超えているようだ。
(よっしゃ、もうすぐ食べられるぞ・・・今朝はいっぱい食うぞ)
 早起きしてこの時間が来るのを待ちわびていたのだ。



 大広間の中心には巨大な臼があり、宿のスタッフがすでに杵をふるって迫力ある餅つきが始まっている。とにかく百人分を超える餅であるから、あるていど完成寸前までは玄人がついているのである。



 臼の両側にはそれぞれ雑煮用の大きな鍋が火にかけられている。
 この日の朝に使われたもち米は一斗以上というから驚きである。



 時間がきたところで、<鼓童>のリーダーみたいに威勢のいい宿の六代目当主が、よくとおる声で朝の大宴会を仕切る。
 まずは宿の挨拶の口上を流暢にすませると、客のなかから数名の搗き手を選んで、いよいよ「餅搗き大会」が始まる。

 膂力のない女性や子どもでも搗けるように、杵は三キロから十キロまで重量が違うのが三本揃っている。
 見守る客たちも合いの手の声をあげて相当盛りあがる。
 それぞれのグループの連れが、代表が餅を搗いているところを写真におさめ、ひとりが搗き終わるたびに万雷の拍手である。

 客の代表たちの餅搗きが終わると、宿の三人の玄人衆が最後の仕上げにかかる。やはり素人衆とは搗くときの音が「ドスン」と腹に響いてぜんぜん違う。

 フィニッシュは、杵で餅を持ち上げるパフォーマンスで宴を盛りあげて締めくくった。



 そうして、搗き手ができあがったばかりの餅を食べやすい大きさに均一に引きちぎり、雑煮用の大鍋やらきなこやら餡子が入った大皿やらへの投入が始まった。



 待ちに待った雑煮がまずは運ばれてきた。



 今日は雑煮を三杯は食べる心づもりである。




  ― 続く ―

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