<美瑛の女(ひと)>
富良野から旭川方面に国道で向かう。
「おっ、ぜるぶの丘だ・・・」
ということは、ちょっと行き過ぎである。ここのすぐ手前の路を左折である。ここのぜるぶの丘も見どころのひとつだが、今回はパスだ。
空き地でUターンして戻ると、右折して丘陵地へはいっていく。
すこし走って、まず「ケンとメリーの樹」。
1976年、スカイラインという車のコマーシャルにこのポプラのある場所が使われた。スカイラインのファンならこのころの型式を「ケンメリのスカG」と言って区別するのだ。
正面にみえる大雪山連峰には、まだ活火山もある。その山は十勝岳で、桜島と同じ火山ランク。わたしは、いちどその轟き渡る噴火音を実際に聞いたこともあるのだ。
ケンメリからかなり離れた丘の上にある、「セブンスターの樹」。
こちらもケンメリと同じく1976年に煙草のコマーシャルに使われた場所だ。こちらの樹は柏である。
次々とバスや、タクシーが観光客を連れて丘にやってくる。
ただ、シーズン前のしかも平日なのでそれほどの人出ではないので、ゆっくり観光できる。
今日の北海道の空は不安定だ。陽がでたり陰ったり、雨が降ったり熄んだりの繰り返しである。
いまもまた降り始めた。
丘の路をひとりの女性が歩いている。
洒落た小さなザックを背負いジーンズの長い脚、傾けた傘の下にはキャップから長い髪がこぼれている。雨が強くなってきて、折り畳み傘ではさばききれないほどになってきた。
「よかったら国道まで送りましょうか」
車を脇に寄せて声をかけた。国道までは歩いたらかなりの距離である。
声を掛けられた女性は「えっ、わたしのこと?」みたいな反応を見せたので、わたしは頷く。
振り向いた女性をよくみると、女子大生くらいの年齢で、鼻筋がとおり、瞳の力がつよい美人である。
車に近づいてくると、なんでしょうか、日本語はあまりわからない、と英語でいった。日系の二世なのだろうか。
「もしよかったら、国道までこの車で送りましょうか」
拙い英語でわたしは言った。
もし美瑛の駅までいくならそこまで送ってもいい。どうせ暇なのだから。決して怪しいものではございませんので、と付け加えて言えばよかったかな。でも、そのほうがかえって怪しいし。
「いえ、けっこうです。ありがとうございます」
きっぱりと、断られてしまった。
「そうですか・・・では、気をつけて」
手をあげて車を走らせた。
オレってやっぱり怪しいものにみえたのだろうか。「警視庁捜査一課の十津川です」とか冗談かませばよかったか。でも英語でよう言えんし、外人に通じる冗談とも思えない。
なんとなく気落ちしてしまう。
(四季彩の丘にでも廻ってみるか・・・)
こちらもちょっと花はまだ早かった。
また、大きな黒い雲が流れてきたな・・・。それからほどなくしてまた雨が降り出し、だんだんと強くなり、雷をともなった豪雨に代わった。
ワイパーが豪雨を捌ききれずに前がみえない。
国道の端に車をとめて、天候が変わるのを待つことにした。
突然、カンカンと車の屋根を叩く音がして吃驚する。だれか石でもぶつけているようである。よく見ると豪雨に雹が混ざっている。それも大きなもので、外に出たらコブをつくりそうだ。
あの彼女は、だいじょうぶだっただろうか・・・。
富良野から旭川方面に国道で向かう。
「おっ、ぜるぶの丘だ・・・」
ということは、ちょっと行き過ぎである。ここのすぐ手前の路を左折である。ここのぜるぶの丘も見どころのひとつだが、今回はパスだ。
空き地でUターンして戻ると、右折して丘陵地へはいっていく。
すこし走って、まず「ケンとメリーの樹」。
1976年、スカイラインという車のコマーシャルにこのポプラのある場所が使われた。スカイラインのファンならこのころの型式を「ケンメリのスカG」と言って区別するのだ。
正面にみえる大雪山連峰には、まだ活火山もある。その山は十勝岳で、桜島と同じ火山ランク。わたしは、いちどその轟き渡る噴火音を実際に聞いたこともあるのだ。
ケンメリからかなり離れた丘の上にある、「セブンスターの樹」。
こちらもケンメリと同じく1976年に煙草のコマーシャルに使われた場所だ。こちらの樹は柏である。
次々とバスや、タクシーが観光客を連れて丘にやってくる。
ただ、シーズン前のしかも平日なのでそれほどの人出ではないので、ゆっくり観光できる。
今日の北海道の空は不安定だ。陽がでたり陰ったり、雨が降ったり熄んだりの繰り返しである。
いまもまた降り始めた。
丘の路をひとりの女性が歩いている。
洒落た小さなザックを背負いジーンズの長い脚、傾けた傘の下にはキャップから長い髪がこぼれている。雨が強くなってきて、折り畳み傘ではさばききれないほどになってきた。
「よかったら国道まで送りましょうか」
車を脇に寄せて声をかけた。国道までは歩いたらかなりの距離である。
声を掛けられた女性は「えっ、わたしのこと?」みたいな反応を見せたので、わたしは頷く。
振り向いた女性をよくみると、女子大生くらいの年齢で、鼻筋がとおり、瞳の力がつよい美人である。
車に近づいてくると、なんでしょうか、日本語はあまりわからない、と英語でいった。日系の二世なのだろうか。
「もしよかったら、国道までこの車で送りましょうか」
拙い英語でわたしは言った。
もし美瑛の駅までいくならそこまで送ってもいい。どうせ暇なのだから。決して怪しいものではございませんので、と付け加えて言えばよかったかな。でも、そのほうがかえって怪しいし。
「いえ、けっこうです。ありがとうございます」
きっぱりと、断られてしまった。
「そうですか・・・では、気をつけて」
手をあげて車を走らせた。
オレってやっぱり怪しいものにみえたのだろうか。「警視庁捜査一課の十津川です」とか冗談かませばよかったか。でも英語でよう言えんし、外人に通じる冗談とも思えない。
なんとなく気落ちしてしまう。
(四季彩の丘にでも廻ってみるか・・・)
こちらもちょっと花はまだ早かった。
また、大きな黒い雲が流れてきたな・・・。それからほどなくしてまた雨が降り出し、だんだんと強くなり、雷をともなった豪雨に代わった。
ワイパーが豪雨を捌ききれずに前がみえない。
国道の端に車をとめて、天候が変わるのを待つことにした。
突然、カンカンと車の屋根を叩く音がして吃驚する。だれか石でもぶつけているようである。よく見ると豪雨に雹が混ざっている。それも大きなもので、外に出たらコブをつくりそうだ。
あの彼女は、だいじょうぶだっただろうか・・・。
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